2023年5月25日木曜日

再び人減先進国へ向かって!

少子化対策の無意味さを一通り確かめてきましたので、再び人減先進国の構築に向かって、新たな議論を進めていきます。

初めに人減先進国についての、これまでの展望と提案を一通り整理しておきます。 


世界の主要国は人口減少へ!

世界人口の急減が注目される中で、人口大国を誇る国々にも減少が迫っています。

10億人以上の国々では、中国が2024年、インドが2042年、5億人以下の国々でも、ロシアが2020年、ブラジルが2031年、バングラディシュが2039年、インドネシアが2045年、アメリカが2047年と、各大陸の主要国が2050年より前にピークとなります。

2050年を過ぎるころ、世界の主要国はいずれも人口減少への対応を迫られることになります。それゆえ、21世紀後半の世界をリードするのは、人口減少に積極的に対応する国家、つまり「人減先進国」なのです。

人減先進国へ向かって!

人減先進国として、日本が取り組むべき課題を大まかに整理してみました。

①経済・・・人口容量を維持するため、国際分業と自給自足のバランスを回復し、国内市場でも過剰な資本集中や所得の不均衡分配などを是正していく。

②社会・・・福祉国家への過剰な期待を緩和し、家政・互酬・福祉的再分配・市場交換の制度的バランスを目ざす。

③政治・・・形骸化した民主主義を再構築し、人口減少に見合った縮小型政治・行政制度の構築をめざす。

④科学技術・・・現代社会を支えている第5次情報化の成果を積極的に活用して、統合型の科学技術へと接近し、現在の分散型エネルギーの統合化をめざす。

⑤生活・・・人口増加に支えられた成長・拡大型のライフスタイルを止揚し、人口減少に見合った飽和・濃密型ライフスタイルを創造するとともに、その成果を地域共同体の再建に広げていく。

人口容量をいかに維持する・・・人減先進国・日本の課題

これまでの人口容量18700万人を2100年ころまで維持していくには、1564歳の人々が従来の23ほど関わっていかなければなりません。そんなことができるのでしょうか。大きな対策として、4つが考えられます。

生産年齢の範囲を変えて、1580まで上げていく。

ITやロボット技術等を活かし、分担推進力、つまり生産性を大幅に上げていく。

❸海外からの移民を増やし、該当者の数を増やす。

❹上記が無理なら、人口容量を徐々に落としつつ、国民全体の容量水準をできるだけ維持していく。

人口容量1人を維持するには・・・

2070年に8,000万人の人口を養うため、人口容量も現在の約8割、10,000万人程度に落としていく、という方向も考えられます。

最大時の半分ほどに減っていく生産年齢人口で、8割ほど縮小した容量を維持していくには、➌の移民増加はかなり困難と思われますから、1580歳の日本人が❷ITやロボット技術などを駆使して、この容量を創り上げていく、という方向こそ実現性が高いと思われます。

誰がGDI規模を維持していくのか?

現在の経済的人口容量を100年後も維持していくには、1574歳の国民11人が、現在の35倍の生産性を上げなければなりません。そんなことができるのでしょうか。過去には19002000年の100年間に、日本の1人当たりGDP17.5に伸びた、という研究もありますから、決して不可能ではありません。

人減先進国に適応する産業を考える!

1574歳の国民の11人が、現在の35倍の生産性を上げるためには、従来の成長・拡大型社会に適応した産業構造を大きく超えて、人口減少に見合った飽和・濃密型の産業構造へ向かうことが絶対に必要です。飽和・濃密型とは、いかなるものなのか、3つの分野が浮上してきます。

①人口容量維持産業・・・いわゆるサステナブル対応産業

②情報深化推進産業・・・いわゆるIT応用深化産業

③濃密生活対応産業・・・いわゆるコンデンシング対応産業

以上のような飽和・濃縮型産業構造に向けて、積極的に取り組むことができれば、従来の生産性の概念を大きく超える、新たな生産性の向上が期待できます。

人口容量維持産業とは何か?

人口容量維持産業」、いわゆる「サステナブル対応産業」とはいかなるものでしょうか。

①扶養量対応産業・・・今後の世界では、需給環境が極めて不安定化する可能性が高まっており、自給率を高めていかなければなりません。それゆえ、食糧はもとより衣料素材や建築材料などについても、国内での生産量を増やし、可能な限り自給していくような産業の振興が必要となります。

②許容量対応産業・・・人口密度(過密・過疎など)の居住限界や廃棄物(生活・産業廃棄物・排出ガスなど)の処理限界といった、さまざまな制約を緩和する産業が求められます。

情報深化推進産業とは何か?

情報深化推進産業」、いわゆる「IT応用深化産業」を考えてみます。

①電子情報活用産業・・・IoTAIMetaverseなど、急速に進展する電子情報化を、生産・流通・サービスなどに応用し、新たな産業や斬新な供給形態を柔軟に創造していく。

②認識転換推進産業・・・電子情報化の浸透に伴って、感覚的な認知行動に大きな変化が生じるから、積極的に対応する、新たな産業の創造が期待される。

ル・ルネサンス推進産業・・・第5次情報化が進むとともに、工業前波の次に来るべき工業後波を生み出す時代識知が形成されていくから、それらを応用する新産業が生み出される。

濃密生活対応産業とはか?

濃密生活対応産業」、いわゆる「コンデンシング対応産業」を考えてみます。

①社会(交換・同調・価値)より個人(自給・愛着・効用)を重視する。・・・果実でいえば、売れるか否かよりも、自分の好みや馴染みを重視する。

②言語(理性・観念・記号)より感覚(体感・無意識・象徴)を重視する。・・・衣類でいえば、デザインやブランドよりも、着心地や保温を重視する。

③真実(儀礼・学習・訓練)と虚構(遊戯・怠慢・弛緩)の、両方の密度を高める。・・・勉強の中身を深めるとともに、遊びの中身も濃くしていく。

3軸が交わる「日常・平常」な生活は、肥大化よりも濃縮化へ向かう。・・・暮らしの規模は、量的な拡大よりも、質的な充実をめざす。

生活願望で新産業の行方を考える!

生活民の生活願望の視点から、新たな方向を展望してみましょう。

社会制度分野・・・【社会欲望】生活資源安定産業、情報インフラ安定産業、デジタル共同体産業、【社会欲求】食糧安定産業、エネルギー安定産業、生活インフラ安定産業、【社会欲動】デジタル新感性産業、デジタル象徴交換産業

共生生活分野・・・【共生欲望】生活保障多様化産業、デジタル情報多様化産業、【共生欲求】生活安全支援産業、生活機能AI化産業、【共生欲動】共同感性活性化産業、デジタル祝祭産業

私的生活分野・・・【私的欲望】独自生活支援産業、情報発信支援産業【私的欲求】差延化支援産業、特注化拡大産業【私的欲動】感覚活性化産業、無意識活性化産業

以上のように、これからの日本は世界の最先端にたって、人減先進国をめざさなければなりません。具体的な方向を改めて考えていきましょう。

2023年5月6日土曜日

少子化対策で人口は減るかも?

政府が検討している少子化対策の叩き台「子ども・子育て政策の強化について(試案)」によって、少子化=少産化が本当に克服できるのでしょうか。

前回述べたように、今回の対策のほとんどは、下図に示したとおり、少子化直接背景のうちの「夫婦間少産化」に向けられています。



しかし、前回も指摘したように、莫大な予算がかかる割には、効果にはかなり疑問があります。

そればかりか、巨視的な背景から見ると、このような対策は、人口容量を減らし、個人容量を増やすことで、長期的には人口を減少させる可能性もあります。

例えば、一方では福祉国家への負担を増加させ、他方では社会保障依存度を高める方向ともいえるからです。

とすれば、少子化対策はもっと巨視的な次元から行わなければなりません。

人口減少、つまり少産・多死化の真因は、人口容量の満配化による人口抑制装置の発動にあるからです。

この事実については、すでに8年前から、【人口減少は極めて〈正常〉な現象!:015324日)から【人口抑制装置が的確に作動した:2016929日】などで、詳しく述べていますので、要点を再掲しておきます。 

工業現波の人口容量12800万人が上限に近づくにつれて、さまざまな人口抑制装置が作動している。

人口減少は極めて〈正常〉な現象!2015324・・・人口容量の制約が近づき、日本はさまざまな人為的抑制装置を作動させて人口を抑え始めている。
生物的抑制が始まっている!2015331・・・若い世代のセックス離れ、不妊の増加、流死産の増加など、日本人の生物的な生殖能力も低下し始めている。
生存能力も低下し始めた!201544・・・人口統計によると、死亡数・死亡率が上昇し、平均寿命の伸びも縮小し始めている。
直接的抑制装置も作動している2015410・・・人工妊娠中絶件数や自殺数などの人為的抑制装置は、200508年に人口がピークを過ぎて容量に幾分ゆとりが見えると、やや弱まったものの、今後の楽観は許されない。
間接的抑制ではまず増加抑制装置が動いた!2015417・・・結婚の抑制、子どもの価値の低下、家族の縮小など増加抑制装置も進んでいる。
もう一つの間接的抑制:減少促進装置も作動!2015424・・・自然環境の悪化により、悪性新生物、心疾患、肺炎など健康水準の低下に加え、パンデミックの大流行など、減少促進装置も作動している。
出産奨励策は期待できるのか?201559・・・直接的、間接的抑制が既に作動しているから、政策的な次元で強力な出産奨励策を実施したとしても、さほどの効果は期待できない。
減少促進策はすでに実施されている! 2015514・・・後期高齢者医療制度の負担増、介護保険料の負担増、介護保険・特別養護老人ホーム等費用の負担増など、長寿者の生活を圧迫することで、結果的には死亡者を増やし、人口減少を進めている。
現代日本でも人口抑制装置がすでに作動している! 2015519・・・現代の日本では、生物的抑制に加え、人為的=文化的抑制もすでに始まっている。
 

以上のように、人口容量が飽和した現代日本では、すでに人口抑制装置が動き出しているのです。

とすれば、人口維持対策や出産増加対策を打ち出す前に、こうした事実をまず冷静に理解するところから始めなければならないでしょう。

2023年4月19日水曜日

今回の少子化対策案で出生数は増えるのか?

少子化=少産化対策の効果を計るため、巨視的背景を考えてきました。

3月末に政府が少子化対策の叩き台「子ども・子育て政策の強化について(試案)」を発表しました。幾つかの対策案が提案されていますが、これらの政策で少子化=少産化が本当に克服できるのでしょうか。

叩き台ではおよそ30の項目が提案されています。その要点をまとめてみると、下図のようになります。



➀経済的支援の強化

  • 児童手当の所得制限を撤廃し、支給期間を高校卒業まで延長する。
  • 多子世帯が減少傾向にあり、手当額について見直す。
  • 出産費用の保険適用の導入を含め、出産支援のあり方について検討する。
  • 地方自治体の子ども医療費助成では、国民健康保険の減額調整措置を廃止する。
  • 学校給食費の無償化を検討する。
  • 高等教育の貸与型奨学金では、減額返還制度の利用可能な年収上限を引き上げる。
  • 授業料等減免および給付型奨学金は、多子世帯や理工農系学生などの中間層に拡大する。授業料後払い制度では、修士段階の学生を対象に導入し、さらなる支援拡充を検討する。
  • 公的賃貸住宅に子育て世帯などの優先的入居を進める。
  • 住宅金融支援機構が提供する長期固定金利の住宅ローンを多子世帯へ支援する。

➁子育てサービスの拡充

  • 妊娠・出産・子育てまでの「伴走型相談支援」の制度化を進める。
  • 国立成育医療研究センターに「女性の健康」に関する中核機能をもたせる。
  • 保育士の配置基準を75年ぶりに改善し、さらなる処遇改善を検討する。
  • 就労要件を問わず時間単位などで柔軟に利用できる新たな子ども施設を検討する。
  • 放課後児童クラブの待機児童の受け皿の拡大を進め、職員配置の改善などを図る。
  • 子育て困難を抱える世帯やヤングケアラーなどへの支援を強化する。
  • 地域における障害児の支援体制を強化し、地域の連携体制を強化する。
  • ひとり親の雇用・人材育成・賃上げに向けて取り組む企業の支援を強化する。
  • ひとり親家庭の父母に対する高等職業訓練促進給付金制度をより幅広く対応する。

③働き方改革の推進

  • 男性の育休取得率の政府目標を引き上げる。
  • 育休中の給付率を男性、女性とも引き上げる。
  • 気兼ねなく育休を取得できる体制作りのため、中小企業へ助成措置を大幅に強化する。
  • 子どもが3歳〜小学校入学前までの間の、柔軟な働き方のできる制度を検討する。
  • 子どもが2歳未満の期間に時短勤務を選択した場合の給付を創設する。
  • 子どもが病気の際に休みやすい環境整備を検討する。
  • 20時間未満の労働者も失業手当や育児休業給付など、雇用保険の適用を拡大する。
  • 自営業やフリーランスなどへ、育児期間にかかる保険料免除措置の創設を検討する。

④意識改革

  • 子どもや子育て中の人が気兼ねなく制度やサービスを利用できるよう、社会全体の意識改革を進める。
  • 全ての人ができることから取り組む機運を醸成する。

これらの政策で少子化の克服、つまり出生数の回復はできるのでしょうか。

一読してわかるように、叩き台の30項目のほとんど全てが、先に分析した直接的背景のうちの「夫婦間少産化」に対する対策ということになります。

しかし、過去50年間振り返と、19702020年の間に、出生数は209万人から84万人へと、40%台に落ちています。

その背景には、女性の出産可能人口(1549歳)が85へ、婚姻件数が48へ、夫婦内少産化が86%へ、それぞれ落ちているという事情がありました。

夫婦内少産化以上に、出産可能人口や婚姻件数の減少が大きく影響していることがわかります。とりわけ婚姻件数の低下が最も強く影響しています。

しかし、今回の少子化対策の叩き台では、婚姻件数への対応はまったく触れられてはおりません

とすれば、どれほどの効果があるのでしょうか。

莫大な予算を投資する意味が果たしてあるのでしょうか?

2023年4月2日日曜日

少子化=少産化の巨視的背景:人口抑制装置が作動した!

少子化=少産化対策の効果を計るため、巨視的背景を考えています。

人口容量の満配化個人容量の持続願望によって、何が起こっているのでしょうか?

両面からの圧力によって、人口抑制装置が作動しているのです。

人口抑制装置とは、【人口抑制装置が作動する】で述べたように、R.マルサスが提起した「能動的抑制(主として窮乏と罪悪)」や「予防的抑制(主として結婚延期による出生の抑制)」を継承し、筆者が再構成したものです。

人口容量」への負荷が強まるにつれて、増加を抑制する行動が徐々に作動するしくみ、とでもいったらよいのでしょうか。

現代日本においても、人口が人口容量の上限1億2800万人に近づくにつれて、この装置が作動してきました。生理的(生物的)抑制装置あるいは文化的(人為的)抑制装置として、人口増加を抑えようとしてきたのです。 


生理的・文化的抑制装置とは何なのか、具体的な事例については、上記のブログで紹介しています。

それらの中から、現代日本の人口抑制に関わる装置を抜き出したものが、【人口抑制装置が的確に作動した! 】で取り上げた下表です。

この表には、増加抑制装置と減少促進装置が含まれていますが、少産化という現象に関わるのは前者ですから、そこに含まれる現象の実態を確かめてみましょう。

●生物・生理的抑制

生殖能力低下=不妊症増加

下図に示したように、50歳未満の初婚間夫婦の間では、不妊を心配する比率が、2002年の26%から2021年には39%へ上がっています。



若い世代のセックス離れ

下図に示したように、若年層の性交経験率は、人口ピーク時の2005年あたりを境に急速に低下し始めています。 



●文化・人為的抑制

直接的抑制では、夫婦間の理想子ども数が、下図に示したように、1987年の2.67人から2021年には2.25人にまで低下し、予定子ども数も1987年の2.23人から2021年には2.01人にまで落ちています。

間接的抑制では【まず増加抑制装置が動いた!】で示した通り、結婚の抑制、子どもの価値の低下、家族の縮小などが進んでいます。

政策的抑制では【出産奨励策は期待できるのか?】で述べた通り、出産奨励策がほとんど機能していません。

 

以上のように、出生数急減の要因を巨視的背景から見ると、2000年代初頭から人口容量が満杯に近づいたため、人口抑制装置が生理的(生物的)、文化的(人為的)の両面から作動した、という実情が浮かび上がってきます。

これこそが、少産化の進む、本当の要因なのです。

2023年3月21日火曜日

少子化=少産化の巨視的背景:個人容量の維持願望

少子化=少産化対策の効果を計るため、巨視的背景として、人口容量の限界に続き、個人容量の動向を考えます。

人口容量が伸びなくなっても、一人当たりの個人容量が小さければ人口は増える余地がありますが、個人容量が大きくなればなるほど、人口増加は難しくなります。

それゆえ、現代日本において少産化が進む背景には、人口容量の停滞とともに、国民一人当たりの個人容量の拡大が考えられます。



その実態を算出することはなかなか難しいと思いますが、国民一人一人の消費水準によって概ね推定することが可能です。

下図は個人消費の動向人口動態と比べたものです。



国民一人当たりの消費支出は、国民経済計算の家計最終消費支出(実質:2015年基準)を総人口で割って算出しました。人口動態と比べてみると、次のような傾向が読み取れます。

➀個人消費は2007年頃まで順調に伸びてきたが、200809年の人口減少で一時停滞している。10年以降は回復し、19年までは再び増加を続けたものの、20年以降はコロナ禍の影響でやや停滞している。

②人口減少が始まった後も、大きく減少することなく2019年には2009年の1.07倍にまで伸びている。

③人口が減っているにもかかわらず、一人当たりの個人消費はなお伸び続けている。

この事実は、人口容量の限界化とは、容量を支える諸条件の限界化によって作り出されるとともに、人口を構成する国民一人一人の容量水準にも影響されていることを示しています。

拡大する個人容量が総人口容量の満配化を早めて、人口を減少させている、ということです。

逆に言えば、2011年以降、人口が減っているにもかかわらず、個人消費がなおも伸び続けているのは、国民一人一人が自らの個人容量を維持・拡大せんがために、人口を減らしている、ともいえるのです。

人口容量が満杯となるには、容量を支える物量的・社会的条件の限界化とともに、その容量を分配される一人一人の個人容量の拡大もまた大きな要因なのです。

いいかえれば、科学技術、市場経済、国民国家などで構築された、一国の人口容量は、それらを前提にして作り出された生活構造の変化、換言すればライフスタイルの変動によって、限界化を早めたり遅らせたりしている、ということです。

このように考えると、現代日本人の基本しているライフスタイルの基本構造、❶雇用型労働、❷市場型消費、❸社会保障依存などの維持や増強願望が、人口抑制のもう一つの要因になっている、ともいえるでしょう。

雇用型労働・・・生活資本の大半が、雇用者からの給与によって賄われているため、この関係の持続、あるいは拡大を希望している。

市場型消費・・・生活資源の大半が、消費市場からの購入によって賄われているため、こうした消費行動の維持、あるいは拡大を希望している。

社会保障依存・・・生涯生活資本の多くが、福祉国家による社会保障に委ねられているため、この制度の維持、あるいは拡大を期待している。

以上のように、多くの国民の抱く、現代社会特有のライフスタイルへの持続・拡大願望が個人容量拡大の要因ともなって、人口容量の満配化を促し、人口抑制装置の作動を招いている、ともいえるのです。

2023年3月13日月曜日

少子化=少産化の巨視的背景は・・・

少子化=少産化対策の効果を計るため、子どもの減る現象、つまり少産化の背景を分析しています。

これまで直接的背景や社会・経済的背景を考察してきましたので、今回からさらに視野を広げ、巨視的背景をとりあげます。



巨視的背景とは、【少子化対策で人口が減る!】で述べたように、現代日本を造り上げている人口容量の限界、つまり加工貿易体制による生活資源獲得や西欧型福祉国家の限界などによって、出生数を抑えようとする文化的(人為的)な抑制装置はもとより、パンデミックや死産数増加などに代表される生理的(生物的)抑制装置もまた作動している、ということです。

とすれば、巨視的背景には、人口容量の限界人口抑制装置の作動の両面が考えられますので、今回はまず前者をとりあげます。

現代日本の人口容量は12800万人と推定されますが、これは日本列島という自然環境へ、科学技術を応用した加工貿易体制を適用することによって、多面的に造り出されたものです。

容量の実態については、すでに説明しているように、【12800万人=自給7600万人+輸入5200万人】という構造を持っています。

食糧需給を基礎にすると、自給が可能な75007600万人を基礎にして、その上に加工貿易による52005300万人を乗せしている、ということです。

こうした構造については、2030年ほど前から、幾つかの支柱に限界が見えてきました。グローバル化混乱、加工貿易型経済限界化、福祉型国家限界化などです。

グローバル化の混乱

ポストコロナ・・・揺れるグローバル化】で述べたように、市場交換制度を前提に、資本主義国家はもとより国家資本主義国家もまた、国際市場という交換空間へ競うように参入した結果、それぞれの国の経済構造ではさまざまな弊害が目立ち始めています。

とりわけ注目されるのは、①自国の総合的自給力の衰退、②相互依存の強化に伴う危険負担の増加、③先進国・途上国間の経済格差・貧富格差の拡大、④低価格商品の競争激化による資源喪失の拡大、⑤人的物的移動拡大による感染症の拡大、といった現象が急拡大していることです。

また過度のグローバル化によって、食糧では①供給国の輸出規制、②食糧関連産業の労働者不足、③物流の停滞、③買いだめ・備蓄などが進行し、世界的な食糧危機が懸念されています。資源・エネルギーについても、石炭、石油、天然ガスなどは特定産出国への加重が進行して、化石燃料の資源枯渇が懸念され始めています。

わが国もまた過度のグローバル化によって、生活基盤の大半を輸入に依存する産業構造に傾斜してしまった結果、自給自立の構造を弱体化させている、ともいえるでしょう。

加工貿易型経済の限界化

5番めの壁:加工貿易文明の限界化】で述べたように、最大の機軸である西欧型科学技術、つまりハイテク化という手法は、地球単位という次元でも資源・環境の壁に突きあたっています。一方では化石燃料の限界化が迫り、他方では地球温暖化問題や水資源の汚染や枯渇化が拡大しています。

これに加えて、欧米の市場主義を自国なりに変換して構築した日本型の市場主義もまた、基本モデルである市場原理主義の破綻という事態に直面し、進むべき方向を失いつつあります。

その結果、【経済成長と人口の変化を振り返る】で述べたように、わが国の経済成長率は2000年前後に2%前後の低成長に落ちたうえ、2008年のリーマンショックで急落し、その後は幾分もち直したものの、12%の低成長を続けています。



③福祉型国家の限界化

近代国家に特有の、社会保障制度の拡大やそれに伴う財政への過剰な負担、市場経済の拡大が引き起こす格差拡大や貧困層の増加など、わが国でも社会構造そのものの限界が目立ち始めており、国民負担率が徐々に上昇するとともに、財政赤字もまた急速に増加しています。

こうした状況を超えていくには、生活に関わる諸費用や必要サービスのほとんどを国家に頼る、北欧型の福祉国家モデルを見直し、個人を包み込む、新たな共同体との連携強化をめざすことが課題となりつつあります。



以上のように展望してくると、現代日本の人口容量は、もはやこれ以上の拡大を望めないところにきている、といえるでしょう。

2023年2月17日金曜日

少子化=少産化の社会的背景は・・・

少子化少産化対策の効果を計るため、子どもの減る現象、つまり少産化の背景を分析しています。

社会・経済的背景のうち、前回の経済的背景に続き、今回は社会的背景を考えてみましょう。

社会状況では、晩婚・非婚化、核家族化、平均寿命延長、大都市集中などが少産化の原因となっています。

●晩婚・非婚化

結婚に対する意識が大きく変わり、晩婚化や非婚化が進んでいます。


未婚率は男女とも19502000年は徐々に上昇してきたが、2000年以降は大幅に高齢化が進み、特に男性で急上昇している。

4044歳の未婚率は、男性が2000年の18.7%から2020年の32.2%へ、女性が2000年の8.6%から2020年の21.3%へ上がっている。

③その結果、生涯未婚率(50歳時の未婚率)は、男性が19501.5%から202025.7%へ17.1倍、女性は1.4%から16.4%へ11.7倍になった。

結婚に対する価値観の変化は、そのまま少産化の大きな背景となっています。

●核家族化

家族構成の変化により、出産や子育てに対する意識の偏在化も進んでいます。


3世代などの拡大家族は、1970年の23.0%から2015年に9.5%で10%を割り、2020年には8.3%にまで落ちている。

核家族(夫婦や親子だけで構成される家族)は、1970年の56.7%から1980年に60.3%までは増えたが、2020年には55.9%にまで落ちている。

単身世帯は、1970年の20.3%から1995年の25.6%を経て、2020年には35.7%にまで上昇している。

単身者と夫婦のみの合計は、1970年の30.1%から1995年の43.0%を経て、2020年には56.2%と大幅に上昇している。

全世帯の半数以上が無子世帯となったことが、少産化を大きく進めています。

●平均寿命延長

平均寿命の延長で人生の設計が変わってきたことも、少産化を進めています。



女性の平均寿命は、戦前の4449歳から、戦後は1947年の54歳へと上がり、その後も1960年に70歳、80年に79歳、2000年に85歳、2020年に88歳と大幅に上昇しています。

男性の平均寿命も、戦前の4347歳から、戦後は1947年の50歳へと上がり、その後も1960年に65歳、80年に73歳、2000年に78歳、2020年に82歳と順調に上昇しています。

寿命の延長、つまり長寿化の進行によって、結婚年齢が上昇し、出産年齢も上がることで、少産化が進んでいます。

●大都市集中

大都市圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県)では、未婚率が高く、合計特殊出生率が低いため、人口分布でこれらの比重が高まると、少産化を促進することになります。



大都市圏の人口比重は、戦前の2935%から、戦後は1950年に30.2%、60年に35.5%、80年に43.6%、2000年に45.3%、2020年に48.6%上がっている。

50歳時の未婚割合を見ると、男性では兵庫、女性では愛知を除いて、他の7都府県が上位22地域内に入っている。

合計特殊出生率では、兵庫、愛知を除く6地域が全国平均を下回っている。

以上のトレンドによって、大都市化が進めば進むほど、結婚が遅れ、出産が減ることがわかります。

これまで取り上げた4つの社会的事象が、直接的背景にどのように影響するかを整理してみると、下表のようになります。

社会的背景では、結婚・夫婦数減少夫婦内少産化に対し、より強く影響しているといえるでしょう。