農業後波の飽和期(1300~1350年頃)をモデルに、人口容量限界化、社会的混乱、時代識知動揺の3つの次元から、工業現波の飽和期(2020~2070年頃)の世界を予測しようとしています。
前回の「人口容量の限界化」に続いて、今回は「社会的混乱」です。ここでは➀伝染病、➁基本制度、➂国際情勢、➃経済制度において、大きな変化が予想されます。人口容量の限界化に伴って、これまでの成長・拡大型社会が限界に達するのです。
➀伝染病ではネクストパンデミック(Next Pandemic)が予想されます。
2019年以来のコロナ禍に続いて、新たなパンデミックが広がります。 科学技術文明が発達したがゆえに、自然界の細菌類が耐性を強化し、抗生物質が全く効かないスーパー耐性菌類などが、世界中でさらに猛威を振うことが予想されるからです。 WHO(世界保健機関)が2024年に発表した、病原菌の最新リストによると、コレラ菌、ペスト菌、肺炎桿菌などの細菌類や、デングウイルス、サル痘ウイルスなど、33種がピックアップされており、今後の危険性が指摘されています(The Changing Face of Pandemic Risk: 2024 Report)。 さらに抗菌薬(抗生物質)の効かない薬剤耐性菌による「サイレントパンデミック」も、密かに増加しており、2050年のまでの死者数は計3900万人を超え、関連死を含めると計1億6900万人超と予測されています(Mohsen Naghavi :Global burden of bacterial antimicrobial resistance 1990-2021:The Lancet, 2024 Sep 28)。 以上のように、パンデミックは、動物由来の新ウイルスや細菌が人間に感染する、新しい病原体の出現によって発生することが多く、免疫を持たない人類の間では急速に拡大します。 とりわけ現代社会ではグローバル化の拡大で病原体が短期間で各地に拡散するうえ、拡大する都市エリアによって密閉空間や公共交通機関での接触が感染を広げ、さらに高齢化、貧困化、医療アクセスの不均衡などが死亡率を高めます。 いっそう根本的な背景には、人口容量の限界化に伴う人口抑制装置の作動があります。キャリング・キャパシティー(環境容量)の上限が迫るにつれて、あらゆる動物はその数を抑えようとするからです。 今後50年の人類社会では、ネクストパンデミックがおそらく発生するでしょう。 |
➁基本制度ではデモクラシー(Democracy)の脆弱化が予想されます。
民主主義制という政治・統治制度にも、今後脆弱化の可能性が高まってきます。 すでに10年ほど前から、民主主義を採用する国は、地球のあちこちで減り始めています。 スウェーデンの独立調査機関V-Dem研究所が発表した2025年版「民主主義リポート」によると、24年時点の調査対象179カ国のうち、民主主義国は88と前年より3カ国減り、強権的な権威主義国の91を下回りました。 同リポートは各種指数に基づいて、各国の政治・統治制度を「自由民主主義」「選挙民主主義」「選挙権威主義」「閉鎖権威主義」に4つに分けています。それによると、自由民主主義国29、選挙民主主義国59(両者で88)、選挙権威主義国56、閉鎖権威主義国35カ国(両者で91)となっています。 自由民主主義国は国別では49%ですが、人口別に見ると過去50年で最少の12%に留まり、選挙民主主義国の16%を除けば、すでに72%の人々が権威主義国で生活しているのです。 以上のように、民主主義に属する国の退潮には歯止めがかからず、コロナ禍やウクライナ紛争に続いて、米国においても制度の崩壊が加速し、中華人民共和国の強権発動などで、制度そのものへの信頼が大きく揺らぎ始めていますから、民主主義制という政治・統治制度そのものが2070年頃までに消滅していく可能性も予測されます。 もともと民主主義(Democracy)という国家制度は、古代ギリシアのdemocratiaに始まり、17~18世紀の市民革命によって近代的民主主義として作り上げられ、国民主権、基本的人権の尊重、法の支配、間接的民主制、三権分立、成年男女の普通・平等選挙権などを構成要素として、現代社会を構成してきました。その意味では、工業現波の成立条件の一つともいえるでしょう。 しかし、それ自体が揺らぎ始めるとすれば、DX(デジタル・トランスフォーメーション)による直接的政策参加、議員就任期間の限定化、非選挙議員推薦制など、社会の変化に対応した制度改革が、新たな検討課題となるでしょう。 |
➂国際情勢、➃経済制度については、次回へ回します。









