2026年2月2日月曜日

農業後波の飽和期を振り返る!

人口波動法では、世界人口の4つの波動の飽和期をモデルに、工業現波の飽和期(20202070年頃)の社会を予測できる、と考えています。

とりわけ最も近い農業後波AD4001400年)の飽和期(13001350年頃)が、最適のモデルとして浮上してきます。歴史学上「中世後期(late middle ages」ともよばれている、この時代は一体どのような時代だったのでしょうか。

前回述べた「飽和期の基本構造」に基づき、当時の人口推移をリードしたヨーロッパを中心に、主な事象を挙げてみましょう。

●人口容量の限界化

➀自然環境の悪化・・・1300年ころに始まった寒冷化、いわゆる小氷期の開始で、集約農業の基本である農業牧畜に多大な影響が及びました。ヨーロッパ諸国では大飢饉が続き、131517年には150万人もの餓死者が出ています。

➁主導文明・農業革命の終了・・・当時のヨーロッパでは、11世紀以降の大開拓時代が終わり、条件の悪い土地にまで農地が広がっていたうえ、中世の農業革命による食糧生産力も飽和状態に近づいていたため、気候条件の悪化によって忽ち凶作と飢饉が現れたのです。

➂国際環境の変化・・・13世紀から続いてきたモンゴル帝国によるユーラシア大陸支配、いわゆる「パクス・モンゴリカ」が終わり始め、1350年代以降は大陸各地で紛争の続く「ポスト・モンゴリカ」の時代へ向かいました。アジア各地でも、中国の明王朝(1368年)、中央アジアのティムール朝(1369年)など、新しい国家が次々に誕生しました。

➃国家体制の変化・・・以上のような変化が、ヨーロッパ諸国にも危機意識を高めさせ、それまでの封建領主制から、君主が絶対的な権力を行使する絶対王政へと、統治体制の転換を促しました。

こうして人口容量の限界が近づくと、社会的混乱時代識知動揺の、2つの現象が生まれました。

●社会的混乱

➀パンデミックの蔓延・・・強烈な伝染病、ペスト(黒死病)は、モンゴル帝国の築いた交易路「シルクロード」に乗って、134748年にイタリア、フランスに上陸し、3年余の間に全ヨーロッパを席巻しました。1340年頃に約7,400万人に達していたヨーロッパの人口は、その後10年間で5,100万人に急減しています。その後も1350年代、65年前後、80年代前半、95年前後と、ほぼ10年間隔で流行を繰り返した結果、ヨーロッパ全体で100年間に約2,000万人が死亡し、14世紀末まで死亡数が出生数を上回った状態が続きました。

➁教会大分裂(13781417年)・・・ペスト(134751年)が蔓延する前の1309年から、ローマ教皇クレメンス5世はフランスのアヴィニヨンに幽囚され、神聖ローマ帝国に侵略されたローマには帰れない状態が続いていました。ペストが一旦終息した後の1377年、教皇グレゴリウス11世はローマへ戻りましたが、翌年没したため、13781417年の約40年間、ローマ教会はアヴィニヨンとローマに教皇が並び立つ大分裂(大シスマ)となり、その権威は次第に失墜しました。

➂英仏百年戦争(13391453年)・・・寒冷化の影響で飢饉が進む中、1339年、イギリス王家とフランス王家が領土問題や国王継承権などを巡って抗争を始め、ペストが収まった後の1360年に一旦は講和に至りました。しかし、1369年から再び戦乱が始まり、休戦、再戦を繰り返して、1453年の終結まで、ほぼ100年の間、戦争を続けました。要因の一つは、王侯間の調停役を務めていたローマ教皇が、アヴィニヨン幽囚や教会大分裂によって、まったく介入できなかったためです。

➃英仏農民反乱(1358年、1381年)・・・百年戦争による社会的混乱に加え、ペストの流行で農民人口が激減すると、労働力不足に悩んだ領主層は農民の移動の自由を奪って、再び農奴制を強化しようとしました。これに反対した農民層は、1358年にフランスでジャックリーの乱1381年にイギリスでワット=タイラーの乱など、農民反乱を蜂起しました。2つの反乱は間もなく鎮圧されましたが、この動きが継続するにつれて、農奴から解放され、自由を獲得した自営農民層が次第に増えていきます。すると、貨幣所得の上昇に促されて、農村から都市へと移動する農民層も増加し、中世的な村落共同体は次第に解体されていきます。

●時代識知動揺

➀リリジョン識知の衰退・・・ローマ教皇のアヴィニヨン幽囚(1309年)から、カトリック教会の大分裂(1378年)に至る過程で、農業後波の基本的な識知である宗教的知性は次第に衰弱していきました。キリスト教の識知基盤である「神地二国論」は、現実としての世俗的な世界が、理想としての神聖な世界をめざすべきだ、という世界観でしたが、この目標が薄れてきたのです。

➁イタリアン・ルネサンスの萌芽・・・都市の拡大と共に1213世紀、イタリアではヴェネツィアやフィレンツェなどに都市共和国(Comune)が出現し、新たな市民文化が成長してきます。14世紀初頭からダンテ(12651321)、ペトラルカ(13041374)、ボッカチォ(13131375らにより、まずは文芸においてルネサンスが始まりました。中世の神学的識知から脱却し、人間の個性と感情を重視する人間主義(ヒューマニズム)へと転換し始めます。大局的に見れば、農耕牧畜という文明が物量的拡大の限界に達したため、情報的深化へと移行していた、ともいえるでしょう。

以上のような現象が、農業後波の飽和期13001350年頃)には起こっています。これらをモデルとすれば、工業現波の飽和期20202070年頃)はどのような時代となるのでしょうか。

2026年1月22日木曜日

人口停滞の背景を考える!

農業後波(AD4001400年)の飽和期(13001350年頃)をモデルに、工業現波(14002100年)の飽和期(20202070年頃)を予測しようとしています。

筆者の提唱する「人口波動法」という予測手法ですが、その論拠をざっと紹介します。

世界の人口波動を振り返ると、飽和期という時代は、石器前波、石器後波、農業前波、農業後波のピーク時に、4回起こっています。


それぞれの波動を修正ロジスティック曲線として描いた場合、前回述べたように、始動―離陸―上昇―高揚―飽和―下降
6つの時期があります。6つの時期の特性としては、【6時期別の社会的特性を読む!】で述べたように、下表のような傾向が読み取れます。

これを前提に、飽和期の特性をより詳しく考えてみると、次のような傾向が浮上してきます。


経緯を説明してみましょう。

➀人口推移が「飽和」に移るのは、人口容量の伸び率が限界に達するとともに、生活水準を高めた人口が増加し、一人当たりの人口容量が伸びなくなるためである。

➁人口容量の限界要因は、自然環境の変化基準文明の限界化が絡み合うためである。

自然環境の変化では、気候変動の進行や水陸環境の変化などが人口容量に限界を迫る。

➃当該波動を支える基準文明では、ハードとソフトの両面で限界に至る。

ハード面では、生産技術、分業技術、輸送技術などの進展が伸び悩みに至る。

ソフト面では、生産主体(労働者、経営者など)、共同体制(村落、企業など)、分配体制(自治体、国家、国際組織など)などが、人口容量の変化に対応できなくなる。

⑦基準文明を支える時代識知が限界に達し、向かうべき方向が未定のままになる。

一人当たりの生活水準は、基準文明の発展とともに上昇し、人口容量の分配を増加してきた結果、限界状況となっていく。

人口飽和期の社会では、以上のような現象が共通して発生します。

とすれば、工業現波の飽和期、つまり20202070年頃の世界をさまざまな視点から展望することができます。

2026年1月17日土曜日

10年前の予測・・・なぜ当たったのか?

10年前の予測が、前回述べたように、ほぼ的中し始めています。

なぜここまで当たり始めたのか、その理由は、筆者の提唱する、新しい未来予測手法、「人口波動法」の成果といえるでしょう。

人口波動法」とは、このブログで何度も述べていますが、長期的な人口推移に見られる波動サイクル「説明変数(モデル)」として、未来を予測する手法です。

具体的な手順は【人口波動で未来を読む!】や【人口波動法による未来の読み方】などで述べています。またこの手法で予測した事例として、【人口波動で世界の未来を読む!】と【21世紀の国際情勢は・・・】を挙げることができます。前回前々回の予測も、これらの成果を取りまとめたものです。

この方法の要旨を取りまとめたうえで、21世紀中葉の予測手順を述べてみましょう。

➀人類の人口は、自然環境×文明で創られる「人口容量」の変化に伴って変動してきた。

➁人類の創り出した文明は、旧石器、新石器から、粗放農業、集約農業を経て、科学技術へと進展してきた。

➂文明の進展によって、世界人口は、石器前波、石器後波、農業前波、農業後波、工業現波の5つを創り出してきた。

➃人口は、人口容量にゆとりがある時には増加し、なくなるにつれて停滞し減少する。この推移は、始動―離陸―上昇―高揚―飽和―下降6つの時期を辿る。

➄現在の人口が6時期のどの位置にあり、どこへ向かおうとしているかを確認することで、基本的な社会構造を推測することができる。

以上のような予測手法を応用すると、今後の世界情勢も次のように展望できそうです。

国際連合などの推定によると、現在の世界人口は工業現波の飽和期に入ったと推定され、今後は下降期に向かおうとしているからです。

とすれば、最も近い人口波動、つまり一つ前の農業後波をモデルとして、今後の世界を展望することができます。

農業後波(AD4001400年)の飽和期(13001350年頃)をモデルにすると、現在の工業現波(14002100年)の飽和期(20202070年頃)の姿が推定できる、ということです。


農業後波の飽和期とはどんな時代だったのでしょう。

気候変動(寒冷化の進行、農耕牧畜大被害、餓死者が急増)、国際紛争(英仏百年戦争)、伝染病大流行(ペストが欧州全土蔓延8,500万人死亡)、新政権誕生(ポスト・モンゴリカで新国家が続出)、世界経済成長鈍化(ポスト・モンゴリカ混乱で経済活動縮小)などが進行しています。

このような事象を説明変数にすると、工業現波の飽和期、つまり20202070年頃の世界情勢が浮かび上がってきます。

次回では、より詳しく展望してみましょう。

2026年1月10日土曜日

10年前に予測しました!

10年前に予測した「2020年代の世界情勢」は、かなり当たっているようです。

2016年に上梓した拙著『平成享保・その先を読む』(Kindle版)の中では、21世紀前半の国際情勢について、6分野(気候変動、100年戦争、伝染病流行、新政権誕生、世界経済成長鈍化、新文化・新思想)別に、幾つかの事象を展望しています(前回

前回は要旨だけでしたので、改めて本文そのものを掲載します。

①温暖化の進行・・・20世紀初頭からの100年間で0.74℃ほど上昇した地球の平均気温は、世紀を超えてさらに加速し、21世紀後半まで続く見込みです。要因の9割は、人間の産業活動等で排出された温室効果ガス(主に二酸化炭素とメタンなど)と推定されており、これによって海水面の上昇や降水・降雪量の変化などが進み、洪水や旱魃、酷暑や暴風雨などの激しい異常気象が増加する一方、真水資源の枯渇、生物相の変化などで農業・漁業への影響が急増してきます。

100年戦争の継続・・・中近東では前世紀半ばからのパレスチナ紛争や、ISILの勃興によるイラク紛争がなお継続していく上、2020年代には米中戦争勃発の可能性という、物騒な予想も取りざたされています。

③スーパー耐性菌の大流行・・科学文明が創造したがゆえに、自然界の細菌類が耐性を持ってしまったため、抗生物質が全く効かないスーパー耐性菌が、世界中ですでに猛威を振い始めています。2013年には全世界で約70万人が死亡した、と米疾病対策センター(CDC)が推計していますが、日本でも2014年秋以降、約2000人が感染し、60人ほどが死亡したとの推計もあります。今後、この種の細菌による感染症の拡大で、2050年には世界中で年間およそ1000万人が死亡する、とCDCは予測しています。

④新政治リーダーの誕生・・・20世紀に世界の覇権を確立したアメリカ合衆国が弱体化し、ヨーロッパの統合を果たしたEU(ヨーロッパ共同体)もまた解体の危機に瀕しているため、アジアではロドリゴ・ドゥテルテ大統領のフィリピン共和国、東欧ではヤロスワフ・カチンスキ「法と正義」党首主導のポーランドなどを筆頭に、強力な右派政権が世界各地で次々に登場してくるでしょう。

⑤経済活動は拡大から鈍化へ・・・「パックス・アメリカーナ」の影響による、20世紀後半のグローバル化の進展で、新興途上国の経済活動が活発化した結果、先進国の経済はやや減速するものの、世界全体では2020年から2050年まで年平均3%強のペースで成長し、2050年ころには3倍近くになるものと予想されています。しかし、この期間の後半になるにつれて、主要新興国の多くで労働年齢人口の伸びが鈍化してくるため、中国やインドなどの成長率がやや鈍化し、世界経済の成長は減速していくでしょう。

⑥近未来ルネサンスの開始・・・20世紀末から急拡大したインターネット文化がナルシシズムの肥大化から、ポピュリズムやオクロクラシー(衆愚政治)を引き起こした後、人口飽和化の進展とともにその反省が巻き起こり、世界各地でネオ・コミュニティズム(新地縁主義)や脱市場主義など、「ポストモダン」ならぬ「ラストモダン」の思想を育むようになっていきます。

いかがでしょうか。イラク紛争問題やポーランド政権動揺など、外れている箇所も幾つかありますが、大きな流れはほぼ当たっている、ともいえるでしょう。

とりわけ、「温暖化」での異常気象や農・漁業の混乱、「感染症拡大」でのコロナ禍大流行、そして「新政治リーダー」でのアメリカ合衆国混乱などは、ほぼ的中といえるでしょう。ここまで当たれば、今後の25年間にはさらに当たるかもしれません。

なぜここまで予測できたのか、その理由として、筆者の提唱する、新しい未来予測手法、「人口波動法」を紹介させていだだきます。

2026年1月5日月曜日

的中し始めた未来予測

謹賀新年、本年もよろしくお願いします。

新たな年が始まりましたので、「言語生成・新仮説」を一休みし、「10年前の予測がどこまで的中したか」について、しばらく述べさせていただきます。

先日、拙著の読者のお一人から「この本で予測されている事象は、ほとんど当たっている」とのメールを頂きました。2016Kindle版で上梓した『平成享保 その先を読む:人減定着日本展望』という著作です。

「まさか、そこまでは・・・」と読み直しつつ、現況に照らしてみると、なるほど幾つかの事象で予測した事態が起こっています。

どれほど当たっているのか、2016年に予測した事項(同書・第3章・図表33)と2026年の現況を突き合わせてみると、次表のようになります。 

6つの予測項目は、人口波動・農業後波飽和~下降期(詳細は後述)の変動事象から推定したものですが、主な対応事象をとりあえず述べておきましょう。 

①気候変動

予測・・・異常気象が増加し、生物相の変化などで農業・漁業への影響が急増

現況・・・温暖化・異常気象が農業・漁業に影響し、生産量減少で供給不足

100年戦争

予測・・・中近東の紛争が継続し、2020年代には米中戦争勃発も予断できない

現況・・・中近東はもとより、世界各地に紛争が広がり、台湾情勢をめぐって米中対立が浮上

③伝染病流行

予測・・・抗生物質が全く効かないスーパー耐性菌などによる感染症の拡大で、2050年には世界中で年間1000万人が死亡

現況・・・2019年に始まった新型コロナウイルス感染症は鎮静化せず、2025年末までに死亡者は710万人へ(WHO統計)

④新政権誕生

予測・・・アメリカ合衆国が弱体化し、ヨーロッパではEUもまた解体危機に瀕し、世界各地で強力な右派政権が次々に登場

現況・・・アメリカではトランプ政権の成立国際・国内状況が混乱し、ヨーロッパでは右派政権の増加でEUも動揺

⑤世界経済

予測・・・グローバル化の進展で経済活動が活発化した新興途上国も、2050年に近づくと、労働年齢人口の伸び低下などで成長率が鈍化し、世界経済は減速

現況・・・コロナ禍の影響を乗り越え、短期的にはやや回復したものの、長期的には低迷の時代へ突入

⑥新文化・新思想

予測・・・人口飽和化の進展とともに、ラストモダン思想が萌芽

 現況・・・生成AIの爆発的な進行で、情報処理や生産方式が変貌し始め、国家を超えたワールドベーシックインカムのような、新たな社会構想が萌芽

こうしてみると、10年前に予測した事象は概ね当たり始めている、といえるのではないでしょうか。

筆者もまた未来予測に関わって半世紀、さまざまな予測手法を試みてきましたが、なんとか的中する方法に近づけたようです。

なぜここまで当たったのでしょうか。詳しい経緯について、次回から述べていきます。

2025年12月27日土曜日

言語生成・新仮説Ⅷ・・・音声・文字の進展で思考言語が・・・

表象言語に続き、思考言語の成立過程を考えています。

思考言語とは、【言語はどのように進化してきたのか?】で述べたように、共同体との交流を通じて個人の中に育まれた「表象言語(自然言語)」を、特定の音声や記号に変えて、自らの思考や集団内の合意形成などに使用する言語です。

この言葉によって、人類は「言分け」による「コト界(言知界)」から、「網分け」による「アミ界(理知界)」への移行を促され、集団的な思考を行うようになります。

「網分け」とは、言語6階層論へ進展する!で述べたように、「言分け」による「分節」によって生み出された表象言語や表象記号に対し、さらに特定の意図による「網」をかけ、抽象化した言葉や記号を創り出すことです。

このような思考言語はなぜ生まれたのでしょうか。

表象言語が共同体の中で広く共有されるにつれて、言葉の意味機能(セマンティクス)に加え、言葉のつなぎ方、つまり文法機能(シンタックス)が強まってきます。
すると、単語そのものにも具象的な意味だけでなく、抽象的な意味を持つものが生まれます。
これこそが「思考言語」です。表象言語の捉えた対象に「網」をかけ、網の目を示す言葉を作り出したのです。

思考言語はいつ頃、どのようにして生まれてきたのでしょうか。

音声表現の変化

音声表現では、古代ギリシアの紀元前700~400年頃に、“詩”的な言葉で「言分け」状況を表現する「語り」が現れていました。タレス、ヘラクレイトス、ピタゴラス、プロタゴラスといった人たちです。

彼らの言葉によって、神話ではさまざまな神々として捉えられていた諸物にも、構造や秩序といったヒエラルキーが生まれてきます。中核となる神や彼に従う神々の行動などを把握する行為です。

これにより、ミソロジー(神話)からリリジョン(宗教)への移行が進むきっかけが作られました。

文字表現の変化

西欧では、文字表現においてアルファベットが成立し、思考を表現するようになります。

文字表現の発祥は紀元前4000年紀後半と想定されていますが、紀元前1100年頃になると、アルファベットが生まれてきます。

エジプト北東端のシナイ半島のセム語族が使っていた古代エジプトの象形文字(ヒエログリフ)を、紀元前1100年頃からフェニキア人が発展させ、アルファベットの原型が創られました。

この文字体系を紀元前400年頃までにギリシア人が24文字の構成に変え、紀元前後にローマ帝国がラテン語として26文字に改良して、現在のアルファベットを生み出しました。

アルファベットによって、キリスト教は313年に国教化されています。

インドでも、紀元前400年頃に生まれたブラーフミー文字が、500年前後にシッダマートリカー文字に進化して中国に伝わり、「悉曇文字(梵字)」となって、仏教・密教用に使われています。

このような文字表現の進化もまた、リリジョンの形成を促したもの思われます。

音声表現や文字表現が急速に変わってくると、人類の表現行動そのものも、表象言語から思考言語へと進化していきます。

思考言語の浸透によって、共同体の内部での合意形成が進むとともに、世界認識の方法にも「リリジョン(宗教)」という「時代識知」が広がっていきます。

これにより、17世紀に4大宗教(仏教、キリスト教、ヒンズー教、イスラム教)が確立されるとともに、リリジョンによって集約農業という文明が生み出され、4つめの人口波動「農業後波」が始動しました(思考言語とリリジョンが農業後波を創った!)。

2025年12月20日土曜日

言語生成・新仮説Ⅶ・・・形象・文字の進展で表象言語が・・・

象徴言語に続き、表象言語の成立過程を考えています。

表象言語とは、【言語生成・新仮説Ⅲ・・・表象言語】で述べたように、人類が「身分け」し、「識分け」した対象を、コトバやシンボル(絵や形)によって「言分け」する行為です。いいかえれば、意識が把握し、モノコト界でゆらゆら浮遊している象徴言語を、より明確なコトバやシンボルに置き換え、コト界を創り上げるコトバ、といってもいいでしょう。

このような表象言語は、何時ごろ形成されたのでしょうか。

音声表現として何時頃現れたのか、明確な史的証拠は不明です。音声表現の進展過程については、物理的な証拠は消えていますし、推定する方法もないからです。


それゆえ、形象表現や文字表現の側面から見るしかありませんが、これらでは次のような進化が確かめられています。

➀岩絵・ペトログリフ(petroglyph・・・岩石や洞窟の壁面に形や文字らしきものを刻んだ彫刻ですが、紀元前1万年と推定されるウクライナの「カメンナヤ・モグリャ」遺跡に始まり、紀元前90007000年頃には絵文字や表意文字のようなものへ進んでいます。

➁音声表現から文字表現へ・・・紀元前90007000年頃に始まった絵文字や表意文字が進歩するにつれて、紀元前4000年ころまでの約4000年間に音声表現を文字表現へ置き換える動きが高まり、やがて古代文字を生み出しています。

➂古代文字の誕生・・・紀元前3500年頃には、さまざまなピクトグラム(pictogram:絵文字)が登場しています。

楔形文字(Cuneiform・・・紀元前3500年頃、メソポタミアのシュメール人によって絵文字の性格が強いウルク古拙文字が発明され、紀元前2500年頃にはシュメール文字になったと推定されています。

ヒエログリフ(Hieroglyph・・・古代エジプトの象形文字の一つで、最古のナルメル遺跡のパレットは紀元前3200年頃と推定されています。

➃古代神話の発生・・・紀元前3000年頃になると、文字の進化によって神話が記録されるようになります。

●古代メソポタミアの神話「ギルガメシュ叙事詩」・・・紀元前3000年代に生まれた可能性が極めて高い、と推定されています。

●古代エジプトの「オシリス神話」・・・紀元前2500年頃の成立と推定されています。

●古代ギリシア神話・・・紀元前15001400年頃に生まれ、紀元前800700年頃にはホメーロスの二大叙事詩『イーリアス』と『オデュッセイア』が口承で広がりました。

古代インダス文明の宗教文書「ヴェーダ」は、紀元前1000500年頃に編纂された、と推定されています。

以上のように、形象表現や文字表現が進むにつれて、人類の表現行動も象徴言語から表象言語へと進化していきます。

表象言語の浸透によって、共同体の内部での交信機能が高まるとともに、世界認識の方法としても「ミソロジー(神話)」という「時代識知」が広がっていきます。

ミソロジーによって初期農耕という文明が生み出され、3つめの人口波動「農業前波」が始動しましたミソロジーが自然農耕文明を創った!