2026年3月3日火曜日

今後50年を予測する➁:社会的混乱-2

農業後波の飽和期(13001350年頃)をモデルに、工業現波の飽和期(20202070年頃)の世界を予測しようとしています。

「社会的混乱」については、伝染病、基本制度、国際情勢、経済制度において、大きな変化が予想されます。

前回の伝染病と基本制度に続き、今回は国際情勢経済制度を展望していきます。

国際情勢では紛争多発が予想されます。

農業後波の寒冷化や英仏百年戦争などをモデルにすると、次のように予測できます。

気候変動による干ばつ、洪水、海面上昇などで、水資源争奪、食料不足、気候難民の大量移動が発生します。2050年までに33億人が水不足に直面すると予測されており、ナイル川やメコン川などの上流・下流諸国間では「水戦争」のリスクが急上昇します(IPCCIntergovernmental Panel on Climate Change 2作業部会 第6次評価報告書)。

また海面上昇や干ばつで、2050年までに最大12億人の気候難民が発生するとの予測(Institute for Economics & PeaceIEP)もあり、大規模な人口移動によって、排外主義の台頭や内戦の勃発なども可能性が高まります。

さらに国連や既存の国際機関の機能不全が進みますから、地域紛争の拡大が予想されます。アメリカと中国の対立は、台湾を巡る緊張、南シナ海での限定的軍事衝突、サイバー攻撃・宇宙空間での妨害行為、経済圏のブロック化などで、全面的な戦争には至らないまでも、常時対立状態として2070年代まで続く可能性があります。

中東でもイランvs湾岸諸国の紛争、イスラエルと周辺諸国の限定衝突、トルコの地域覇権志向などが継続する可能性が強く、ヨーロッパではクライナ戦争終結後もNATOとロシア間で断続的な衝突が予想されます。

これらの紛争は、国家間の全面的な戦争には至りませんが、中規模な紛争が同時並行する、慢性的な不安定世界を生み出すことになります。第三次世界大戦は起きないものの、戦時体制が常態化する可能性が高いでしょう。

経済制度では市場経済の混乱が予想されます。

農業後波の農業経済終焉をモデルにすると、これまでの成長・拡大型の市場社会が次のような要因で混乱に陥っていきます。

1要因は人口容量限界化です。地球の環境容量や資源が限界に達しますから、「無限の成長」を前提とした、これまでの経済モデルは終焉します。

異常気象や海面上昇によって、洪水、干ばつ、山火事などが連鎖的に発生し、農漁業生産、サプライチェーン、インフラなど同時多発的な打撃を与え、市場機能の不安定化を招きます。

これに伴って各国の人口もまた停滞や減少に向かいますから、労働力人口の縮小、社会保障費の増大などで、成長前提の資本主義モデルは限界に達します。

第2要因はグローバル構造の変質化です。2050年頃には中国、インド、インドネシアなどが世界経済の中心となり、先進国と新興国の力関係が大きく変わります。

これにより、従来の単一グローバル市場が崩れ、複数の経済圏が併存する世界へと移行します。欧米が主導してきた市場経済のルール(知財、投資、貿易、金融)が縮小し、多極化したルール体系と併存する可能性が高まるでしょう。

第3要因はAI等高度情報化の進展です。AI(汎用人工知能)と高度なロボティクスが、ホワイトカラーとブルーカラー双方の労働を代替し、富の集中が資本側へ加速すると、労働分配率が低下します。これにより、資本家層と労働者層の格差が拡大するにつれて、政治的ポピュリズムを刺激し、市場原理そのものへの反発が強まります。

以上のような変化で、これまでの市場経済制度は、前提条件そのものが揺らぐ「制度的危機」に陥る可能性があります。国家分断化やグローバル経済縮小化が進めば、経済問題を超えて、文明の持続可能性に関わる構造的課題となるでしょう。

以上、「社会的混乱」について、伝染病、基本制度、国際情勢、経済制度の4つの面から、今後の50年を展望してきました。

これらの変化によって、現代社会を支えてきた時代識知もまた、大きな変貌を迫られます。どのように変わっていくのでしょうか。

2026年2月23日月曜日

今後50年を予測する➁:社会的混乱

農業後波の飽和期(13001350年頃)をモデルに、人口容量限界化、社会的混乱、時代識知動揺の3つの次元から、工業現波の飽和期(20202070年頃)の世界を予測しようとしています。

前回の「人口容量の限界化」に続いて、今回は「社会的混乱」です。ここでは➀伝染病、➁基本制度、➂国際情勢、経済制度において、大きな変化が予想されます。人口容量の限界化に伴って、これまでの成長・拡大型社会が限界に達するのです。

➀伝染病ではネクストパンデミック(Next Pandemicが予想されます。

2019年以来のコロナ禍に続いて、新たなパンデミックが広がります。

科学技術文明が発達したがゆえに、自然界の細菌類が耐性を強化し、抗生物質が全く効かないスーパー耐性菌類などが、世界中でさらに猛威を振うことが予想されるからです。

WHO(世界保健機関)が2024年に発表した、病原菌の最新リストによると、コレラ菌、ペスト菌、肺炎桿菌などの細菌類や、デングウイルス、サル痘ウイルスなど、33種がピックアップされており、今後の危険性が指摘されています(The Changing Face of Pandemic Risk: 2024 Report)。

さらに抗菌薬(抗生物質)の効かない薬剤耐性菌による「サイレントパンデミック」も、密かに増加しており、2050年のまでの死者数は計3900万人を超え、関連死を含めると計16900万人超と予測されています(Mohsen Naghavi :Global burden of bacterial antimicrobial resistance 1990-2021:The Lancet, 2024 Sep 28)。

以上のように、パンデミックは、動物由来の新ウイルスや細菌が人間に感染する、新しい病原体の出現によって発生することが多く、免疫を持たない人類の間では急速に拡大します。

とりわけ現代社会ではグローバル化の拡大で病原体が短期間で各地に拡散するうえ、拡大する都市エリアによって密閉空間や公共交通機関での接触が感染を広げ、さらに高齢化、貧困化、医療アクセスの不均衡などが死亡率を高めます。

いっそう根本的な背景には、人口容量の限界化に伴う人口抑制装置の作動があります。キャリング・キャパシティー(環境容量の上限が迫るにつれて、あらゆる動物はその数を抑えようとするからです。

今後50年の人類社会では、ネクストパンデミックがおそらく発生するでしょう。


➁基本制度ではデモクラシー(Democracy)の脆弱化が予想されます。

民主主義制という政治・統治制度にも、今後脆弱化の可能性が高まってきます。

すでに10年ほど前から、民主主義を採用する国は、地球のあちこちで減り始めています。

スウェーデンの独立調査機関VDem研究所が発表した2025年版「民主主義リポート」によると、24年時点の調査対象179カ国のうち、民主主義国は88と前年より3カ国減り、強権的な権威主義国の91を下回りました。

同リポートは各種指数に基づいて、各国の政治・統治制度を「自由民主主義」「選挙民主主義」「選挙権威主義」「閉鎖権威主義」4つに分けています。それによると、自由民主主義国29、選挙民主主義国59(両者で88)、選挙権威主義国56、閉鎖権威主義国35カ国(両者で91)となっています。

自由民主主義国は国別では49%ですが、人口別に見ると過去50年で最少の12に留まり、選挙民主主義国の16%を除けば、すでに72%の人々が権威主義国で生活しているのです。

以上のように、民主主義に属する国の退潮には歯止めがかからず、コロナ禍やウクライナ紛争に続いて、米国においても制度の崩壊が加速し、中華人民共和国の強権発動などで、制度そのものへの信頼が大きく揺らぎ始めていますから、民主主義制という政治・統治制度そのものが2070年頃までに消滅していく可能性も予測されます。

もともと民主主義(Democracy)という国家制度は、古代ギリシアのdemocratiaに始まり、1718世紀の市民革命によって近代的民主主義として作り上げられ、国民主権、基本的人権の尊重、法の支配、間接的民主制、三権分立、成年男女の普通・平等選挙権などを構成要素として、現代社会を構成してきました。その意味では、工業現波の成立条件の一つともいえるでしょう。

しかし、それ自体が揺らぎ始めるとすれば、DX(デジタル・トランスフォーメーション)による直接的政策参加、議員就任期間の限定化、非選挙議員推薦制など、社会の変化に対応した制度改革が、新たな検討課題となるでしょう。


➂国際情勢、経済制度については、次回へ回します。

2026年2月14日土曜日

今後50年(工業現波・飽和期)を予測する➀

農業後波の飽和期(13001350年頃)をモデルに、工業現波の飽和期(20202070年頃)の世界を予測しようとしています。

飽和期の基本的な現象としては、【人口停滞の背景を考える!】で触れたとおり、主導文明の停滞とともに人口抑制装置が作動し、政治面では中心勢力の動揺、社会・経済面では飽和・閉塞・動揺感の上昇、文化面では先行き不安ムードの拡大などが予想されます。

この視点を基盤に、農業後波飽和期をモデルに、人口容量限界化、社会的混乱、時代識知動揺の3つの次元から、さまざまな変化を展望してみましょう。


最初は「人口容量の限界化」です。

➀自然環境の変化では、温暖化が進みます。

20世紀初頭からの100年間で摂氏0.7度ほど上昇した地球の平均気温は、21世紀に入ってさらに加速し、世紀後半まで続くと予想されています。要因の9割は、人間の産業活動等で排出された温室効果ガス(主に二酸化炭素とメタンなど)と推定されます。

これによって海水面の上昇や降水・降雪量の変化などが進み、洪水や旱魃、酷暑や豪雪、暴風雨などの異常気象が頻発し、生活・産業環境の危機が急増します。そのうえ、真水資源の枯渇や生物相の変化なども急進し、農業・漁業等食糧資源への悪影響も懸念されます。

➁主導文明の変化では、科学技術の限界化が進みます。

工業現波を生み出した「科学」という時代識知、そのものの限界が浮かび上がってきます。【科学という時代識知は・・・】で指摘したように、この識知は要素還元主義、記号・数字的思考、科学万能主義によって、さまざまな学問や技術を生み出し、人類の生活や生産力を大きく向上させてきました。

しかし、昨今の世界を見ると、化石燃料系は大気汚染を引き起こし、核燃料系は高濃度放射能を拡散させ、巨大化した資本では寡占化や横暴化が進んでいます。今後は急進するAIによるポピュリズムの拡大で民主制が危機に瀕し、コニュミズムの倒錯による全体主義の拡大中央統治機構の弱体化、そして国際機関の空洞化など、この文明の限界を示すような事象が次々に発生します。

➂国際環境では、ポスト・アメリカーナが進行します。

20世紀に「パックス・アメリカーナ」として、世界の覇権を確立したアメリカ合衆国が次第に弱体化し、ヨーロッパの統合を果たしたEU(ヨーロッパ共同体)もまた解体の危機に瀕します。その一方で、中国の「一帯一路」化戦略をはじめ、ロシアや北朝鮮の専制強化など、強引な外交や強硬な内政を行う政権が次々と登場してきています。

こうした状況を見越すように、中近東では20世紀半ばからのパレスチナ紛争や、ISLの勃興によるイラク紛争などが、再び拡大する恐れが高まります。さらに中国・インド間での国境紛争や、米中間での台湾有事なども推測されます。

➃国家体制では、超国家制度の模索が始まります。

パックス・アメリカーナの終焉やコロナ禍への対応などで、グローバリズムへの安易な信仰が大きく動揺し、国際連合の安全保障理事会(UNSC)や世界保健機関(WHO)などへの信頼も次第に低下していきます。

このため、国際連盟や国際連合に代わる、新たな国際構造として、より統合力のある国際組織の模索が始まります。

以上のような変化によって、工業現波の今後50年の世界は、基盤である人口容量が限界に達するとともに、国際環境はもとより、国家という統治制度にも、大きな見直しが迫られるようになるでしょう。

2026年2月2日月曜日

農業後波の飽和期を振り返る!

人口波動法では、世界人口の4つの波動の飽和期をモデルに、工業現波の飽和期(20202070年頃)の社会を予測できる、と考えています。

とりわけ最も近い農業後波AD4001400年)の飽和期(13001350年頃)が、最適のモデルとして浮上してきます。歴史学上「中世後期(late middle ages」ともよばれている、この時代は一体どのような時代だったのでしょうか。

前回述べた「飽和期の基本構造」に基づき、当時の人口推移をリードしたヨーロッパを中心に、主な事象を挙げてみましょう。

●人口容量の限界化

➀自然環境の悪化・・・1300年ころに始まった寒冷化、いわゆる小氷期の開始で、集約農業の基本である農業牧畜に多大な影響が及びました。ヨーロッパ諸国では大飢饉が続き、131517年には150万人もの餓死者が出ています。

➁主導文明・農業革命の終了・・・当時のヨーロッパでは、11世紀以降の大開拓時代が終わり、条件の悪い土地にまで農地が広がっていたうえ、中世の農業革命による食糧生産力も飽和状態に近づいていたため、気候条件の悪化によって忽ち凶作と飢饉が現れたのです。

➂国際環境の変化・・・13世紀から続いてきたモンゴル帝国によるユーラシア大陸支配、いわゆる「パクス・モンゴリカ」が終わり始め、1350年代以降は大陸各地で紛争の続く「ポスト・モンゴリカ」の時代へ向かいました。アジア各地でも、中国の明王朝(1368年)、中央アジアのティムール朝(1369年)など、新しい国家が次々に誕生しました。

➃国家体制の変化・・・以上のような変化が、ヨーロッパ諸国にも危機意識を高めさせ、それまでの封建領主制から、君主が絶対的な権力を行使する絶対王政へと、統治体制の転換を促しました。

こうして人口容量の限界が近づくと、社会的混乱時代識知動揺の、2つの現象が生まれました。

●社会的混乱

➀パンデミックの蔓延・・・強烈な伝染病、ペスト(黒死病)は、モンゴル帝国の築いた交易路「シルクロード」に乗って、134748年にイタリア、フランスに上陸し、3年余の間に全ヨーロッパを席巻しました。1340年頃に約7,400万人に達していたヨーロッパの人口は、その後10年間で5,100万人に急減しています。その後も1350年代、65年前後、80年代前半、95年前後と、ほぼ10年間隔で流行を繰り返した結果、ヨーロッパ全体で100年間に約2,000万人が死亡し、14世紀末まで死亡数が出生数を上回った状態が続きました。

➁教会大分裂(13781417年)・・・ペスト(134751年)が蔓延する前の1309年から、ローマ教皇クレメンス5世はフランスのアヴィニヨンに幽囚され、神聖ローマ帝国に侵略されたローマには帰れない状態が続いていました。ペストが一旦終息した後の1377年、教皇グレゴリウス11世はローマへ戻りましたが、翌年没したため、13781417年の約40年間、ローマ教会はアヴィニヨンとローマに教皇が並び立つ大分裂(大シスマ)となり、その権威は次第に失墜しました。

➂英仏百年戦争(13391453年)・・・寒冷化の影響で飢饉が進む中、1339年、イギリス王家とフランス王家が領土問題や国王継承権などを巡って抗争を始め、ペストが収まった後の1360年に一旦は講和に至りました。しかし、1369年から再び戦乱が始まり、休戦、再戦を繰り返して、1453年の終結まで、ほぼ100年の間、戦争を続けました。要因の一つは、王侯間の調停役を務めていたローマ教皇が、アヴィニヨン幽囚や教会大分裂によって、まったく介入できなかったためです。

➃英仏農民反乱(1358年、1381年)・・・百年戦争による社会的混乱に加え、ペストの流行で農民人口が激減すると、労働力不足に悩んだ領主層は農民の移動の自由を奪って、再び農奴制を強化しようとしました。これに反対した農民層は、1358年にフランスでジャックリーの乱1381年にイギリスでワット=タイラーの乱など、農民反乱を蜂起しました。2つの反乱は間もなく鎮圧されましたが、この動きが継続するにつれて、農奴から解放され、自由を獲得した自営農民層が次第に増えていきます。すると、貨幣所得の上昇に促されて、農村から都市へと移動する農民層も増加し、中世的な村落共同体は次第に解体されていきます。

●時代識知動揺

➀リリジョン識知の衰退・・・ローマ教皇のアヴィニヨン幽囚(1309年)から、カトリック教会の大分裂(1378年)に至る過程で、農業後波の基本的な識知である宗教的知性は次第に衰弱していきました。キリスト教の識知基盤である「神地二国論」は、現実としての世俗的な世界が、理想としての神聖な世界をめざすべきだ、という世界観でしたが、この目標が薄れてきたのです。

➁イタリアン・ルネサンスの萌芽・・・都市の拡大と共に1213世紀、イタリアではヴェネツィアやフィレンツェなどに都市共和国(Comune)が出現し、新たな市民文化が成長してきます。14世紀初頭からダンテ(12651321)、ペトラルカ(13041374)、ボッカチォ(13131375らにより、まずは文芸においてルネサンスが始まりました。中世の神学的識知から脱却し、人間の個性と感情を重視する人間主義(ヒューマニズム)へと転換し始めます。大局的に見れば、農耕牧畜という文明が物量的拡大の限界に達したため、情報的深化へと移行していた、ともいえるでしょう。

以上のような現象が、農業後波の飽和期13001350年頃)には起こっています。これらをモデルとすれば、工業現波の飽和期20202070年頃)はどのような時代となるのでしょうか。

2026年1月22日木曜日

人口停滞の背景を考える!

農業後波(AD4001400年)の飽和期(13001350年頃)をモデルに、工業現波(14002100年)の飽和期(20202070年頃)を予測しようとしています。

筆者の提唱する「人口波動法」という予測手法ですが、その論拠をざっと紹介します。

世界の人口波動を振り返ると、飽和期という時代は、石器前波、石器後波、農業前波、農業後波のピーク時に、4回起こっています。


それぞれの波動を修正ロジスティック曲線として描いた場合、前回述べたように、始動―離陸―上昇―高揚―飽和―下降
6つの時期があります。6つの時期の特性としては、【6時期別の社会的特性を読む!】で述べたように、下表のような傾向が読み取れます。

これを前提に、飽和期の特性をより詳しく考えてみると、次のような傾向が浮上してきます。


経緯を説明してみましょう。

➀人口推移が「飽和」に移るのは、人口容量の伸び率が限界に達するとともに、生活水準を高めた人口が増加し、一人当たりの人口容量が伸びなくなるためである。

➁人口容量の限界要因は、自然環境の変化基準文明の限界化が絡み合うためである。

自然環境の変化では、気候変動の進行や水陸環境の変化などが人口容量に限界を迫る。

➃当該波動を支える基準文明では、ハードとソフトの両面で限界に至る。

ハード面では、生産技術、分業技術、輸送技術などの進展が伸び悩みに至る。

ソフト面では、生産主体(労働者、経営者など)、共同体制(村落、企業など)、分配体制(自治体、国家、国際組織など)などが、人口容量の変化に対応できなくなる。

⑦基準文明を支える時代識知が限界に達し、向かうべき方向が未定のままになる。

一人当たりの生活水準は、基準文明の発展とともに上昇し、人口容量の分配を増加してきた結果、限界状況となっていく。

人口飽和期の社会では、以上のような現象が共通して発生します。

とすれば、工業現波の飽和期、つまり20202070年頃の世界をさまざまな視点から展望することができます。

2026年1月17日土曜日

10年前の予測・・・なぜ当たったのか?

10年前の予測が、前回述べたように、ほぼ的中し始めています。

なぜここまで当たり始めたのか、その理由は、筆者の提唱する、新しい未来予測手法、「人口波動法」の成果といえるでしょう。

人口波動法」とは、このブログで何度も述べていますが、長期的な人口推移に見られる波動サイクル「説明変数(モデル)」として、未来を予測する手法です。

具体的な手順は【人口波動で未来を読む!】や【人口波動法による未来の読み方】などで述べています。またこの手法で予測した事例として、【人口波動で世界の未来を読む!】と【21世紀の国際情勢は・・・】を挙げることができます。前回前々回の予測も、これらの成果を取りまとめたものです。

この方法の要旨を取りまとめたうえで、21世紀中葉の予測手順を述べてみましょう。

➀人類の人口は、自然環境×文明で創られる「人口容量」の変化に伴って変動してきた。

➁人類の創り出した文明は、旧石器、新石器から、粗放農業、集約農業を経て、科学技術へと進展してきた。

➂文明の進展によって、世界人口は、石器前波、石器後波、農業前波、農業後波、工業現波の5つを創り出してきた。

➃人口は、人口容量にゆとりがある時には増加し、なくなるにつれて停滞し減少する。この推移は、始動―離陸―上昇―高揚―飽和―下降6つの時期を辿る。

➄現在の人口が6時期のどの位置にあり、どこへ向かおうとしているかを確認することで、基本的な社会構造を推測することができる。

以上のような予測手法を応用すると、今後の世界情勢も次のように展望できそうです。

国際連合などの推定によると、現在の世界人口は工業現波の飽和期に入ったと推定され、今後は下降期に向かおうとしているからです。

とすれば、最も近い人口波動、つまり一つ前の農業後波をモデルとして、今後の世界を展望することができます。

農業後波(AD4001400年)の飽和期(13001350年頃)をモデルにすると、現在の工業現波(14002100年)の飽和期(20202070年頃)の姿が推定できる、ということです。


農業後波の飽和期とはどんな時代だったのでしょう。

気候変動(寒冷化の進行、農耕牧畜大被害、餓死者が急増)、国際紛争(英仏百年戦争)、伝染病大流行(ペストが欧州全土蔓延8,500万人死亡)、新政権誕生(ポスト・モンゴリカで新国家が続出)、世界経済成長鈍化(ポスト・モンゴリカ混乱で経済活動縮小)などが進行しています。

このような事象を説明変数にすると、工業現波の飽和期、つまり20202070年頃の世界情勢が浮かび上がってきます。

次回では、より詳しく展望してみましょう。

2026年1月10日土曜日

10年前に予測しました!

10年前に予測した「2020年代の世界情勢」は、かなり当たっているようです。

2016年に上梓した拙著『平成享保・その先を読む』(Kindle版)の中では、21世紀前半の国際情勢について、6分野(気候変動、100年戦争、伝染病流行、新政権誕生、世界経済成長鈍化、新文化・新思想)別に、幾つかの事象を展望しています(前回

前回は要旨だけでしたので、改めて本文そのものを掲載します。

①温暖化の進行・・・20世紀初頭からの100年間で0.74℃ほど上昇した地球の平均気温は、世紀を超えてさらに加速し、21世紀後半まで続く見込みです。要因の9割は、人間の産業活動等で排出された温室効果ガス(主に二酸化炭素とメタンなど)と推定されており、これによって海水面の上昇や降水・降雪量の変化などが進み、洪水や旱魃、酷暑や暴風雨などの激しい異常気象が増加する一方、真水資源の枯渇、生物相の変化などで農業・漁業への影響が急増してきます。

100年戦争の継続・・・中近東では前世紀半ばからのパレスチナ紛争や、ISILの勃興によるイラク紛争がなお継続していく上、2020年代には米中戦争勃発の可能性という、物騒な予想も取りざたされています。

③スーパー耐性菌の大流行・・科学文明が創造したがゆえに、自然界の細菌類が耐性を持ってしまったため、抗生物質が全く効かないスーパー耐性菌が、世界中ですでに猛威を振い始めています。2013年には全世界で約70万人が死亡した、と米疾病対策センター(CDC)が推計していますが、日本でも2014年秋以降、約2000人が感染し、60人ほどが死亡したとの推計もあります。今後、この種の細菌による感染症の拡大で、2050年には世界中で年間およそ1000万人が死亡する、とCDCは予測しています。

④新政治リーダーの誕生・・・20世紀に世界の覇権を確立したアメリカ合衆国が弱体化し、ヨーロッパの統合を果たしたEU(ヨーロッパ共同体)もまた解体の危機に瀕しているため、アジアではロドリゴ・ドゥテルテ大統領のフィリピン共和国、東欧ではヤロスワフ・カチンスキ「法と正義」党首主導のポーランドなどを筆頭に、強力な右派政権が世界各地で次々に登場してくるでしょう。

⑤経済活動は拡大から鈍化へ・・・「パックス・アメリカーナ」の影響による、20世紀後半のグローバル化の進展で、新興途上国の経済活動が活発化した結果、先進国の経済はやや減速するものの、世界全体では2020年から2050年まで年平均3%強のペースで成長し、2050年ころには3倍近くになるものと予想されています。しかし、この期間の後半になるにつれて、主要新興国の多くで労働年齢人口の伸びが鈍化してくるため、中国やインドなどの成長率がやや鈍化し、世界経済の成長は減速していくでしょう。

⑥近未来ルネサンスの開始・・・20世紀末から急拡大したインターネット文化がナルシシズムの肥大化から、ポピュリズムやオクロクラシー(衆愚政治)を引き起こした後、人口飽和化の進展とともにその反省が巻き起こり、世界各地でネオ・コミュニティズム(新地縁主義)や脱市場主義など、「ポストモダン」ならぬ「ラストモダン」の思想を育むようになっていきます。

いかがでしょうか。イラク紛争問題やポーランド政権動揺など、外れている箇所も幾つかありますが、大きな流れはほぼ当たっている、ともいえるでしょう。

とりわけ、「温暖化」での異常気象や農・漁業の混乱、「感染症拡大」でのコロナ禍大流行、そして「新政治リーダー」でのアメリカ合衆国混乱などは、ほぼ的中といえるでしょう。ここまで当たれば、今後の25年間にはさらに当たるかもしれません。

なぜここまで予測できたのか、その理由として、筆者の提唱する、新しい未来予測手法、「人口波動法」を紹介させていだだきます。