2017年5月25日木曜日

生産年齢人口を見直す!

人口減少社会では、GDP がゼロ成長であっても、国民一人当たりの所得は伸びていきます。

そのためには、GDP を維持することが必要であり、方策の第一は労働力人口の定義を見直ことです。

現在、15~64歳とされている生産年齢人口の定義を、現実に即した方向へと移行していくのです。

この件については【
「75歳高齢者制」がようやく認知されてきた!】(2017年1月7日)ですでに述べたように、筆者は20年ほど前から、高齢者の定義を平均寿命の上昇に見合ったものに変えて、生産従事者を増やしていくことを提案してきました。

具体的には、新年齢基準に前提にして「年金制度の改革」「自己責任による積み立て方式」「65歳以上の就労枠拡大へ」「自ら新しい職場を創る」「生涯現役の多毛作人生へ」などを提案しています。

現時点で、この提案を見直してみると、平均寿命の急激な上昇に伴って、高齢者の定義だけでなく、若年者の定義もまた見直しが必要となっています。

従来の定義では、寿命が70歳前後であった1960年ころの人生観に基づいて、0~6歳を「幼年」、7~14歳を「少年」、15~29歳を「青年」、30~64歳を「中年」、65歳以上を「老年」とよんできました。

ところが、2015年の平均寿命は、女性86.99歳、男性80.75歳となりました。平均寿命は0歳児の平均余命ですから、65歳に達した人であれば、女性は89歳、男性は84歳まで生き延びます。人生はすでに「85〜90歳」の時代に入っているのです。

こうなると、過去の年齢区分はもはや通用しません。寿命が1.2~1.3倍に延びた以上、年齢区分もまたシフトさせ、0~9歳「幼年」、10~24歳「少年」、25~44歳「青年」、45~74歳「中年」、75歳以上「老年」とよぶほうが適切になるでしょう。


エッと思われるかもしれませんが、世の中を見渡せば、この区分はすでに通用しています。

過去10数年、新成人(満20歳)
となった若者に聞くと、約7割が「自分は大人ではない」と答えています。

40歳で青年会議所を卒業した男女も、44歳くらいまでは会合に出席しています。

近ごろの70歳は、体力、気力、知力とも旺盛で、老人とか高年者とよばれると、顔をしかめます

このように、現実はすでに新しい区分へ近づいているのです。

とすれば、生産年齢人口もまた、新たな青年と中年、つまり25~74歳と考えるべきではないでしょうか。

定義を変えると、生産年齢人口の実数や構成比率は、どのように変わっていくのでしょうか。

2017年5月18日木曜日

人口減少でGDP /人は2倍へ!

人口減少によって、人口容量には間違いなくゆとりが生まれてきます。

加工貿易文明が作り出してきた、現代日本の人口容量=1億2800万人を維持できれば、人口が減る分だけ、私たちの暮らしにはゆとりが出てきます

経済的に見ると、現在のGDP水準を維持できれば、1人当たりGDPは伸びていきます。ゼロ成長であっても、私たちの所得は伸びていく、ということです。

実際、現在のGDP =500兆円が落ちなければ、下図のように、国民一人当たりの所得は2015年の393万円から2050年には491万円(1.23倍)2100年には837万円(2.13倍)へと増えてきます(いずれも実質)。


人口が減る社会では、経済規模が伸びなくても、個々人は豊かになっていくのです。

いうまでもなく、これを実現していくためには、GDPの維持、分配の公平化、移民影響の最小化など、幾つかの条件があります。

最初の条件は「GDPの維持」です。

人口減少によって、すでに問題化しているように労働力も減少していきますから、生産力もまた落ちていきます

これを覆すには、次のような方策が考えられます。

労働力の見直し・・現在の労働力の前提になっている生産年齢や生産対象層を見直す。

新技術による生産性の向上・・・AIやロボットの応用範囲を拡大し、生産性の向上を図る。

外国人の受け入れによる増加・・・移民の悪影響を最小化する範囲内で、外国人の受け入れを図る。

以上の3つをうまく組み合わせできれば、GDPの維持はさほど難しいことではありません

2017年5月4日木曜日

人口減少でゆとりが生まれる!

12,800万人という人口容量の下で、少しでも人口を回復させるには、どうすればいいのでしょうか。

人口を回復させるためには、人口減少の真因である「人口抑制装置」の作動を弱めることが必要です。

すでに述べたように、1960年代以降、現代日本の人口集団は人口容量が満杯に近づくにつれて、人口抑制装置が徐々に作動させてきました。

その結果、一方では出生数が抑制され、他方では死亡数が増加するという、いわゆる「少産・多死化」が進み、人口は停滞から減少へと移行しました。

この抑制装置は一度作動すると、人口構造の中に組み込まれてしばらくは持続し、容量が満杯となった後もなお続いていきます。

このため、現代日本の人口は、国立社会保障・人口問題研究所の推計のように、21世紀中は回復しない、と予測されることになります。

しかし、今後は人口の減少に伴って、人口容量に少しずつゆとりが生まれてきます。

もしこれを活用できれば、もう少し早く人口を回復させることも可能になるのかもしれません。

ゆとりを利用して、人口抑制装置の作動を少しでも弱めることができれば、その分、人口には回復する可能性が高まってくるということです。

どの程度ゆとりが生まれてくるのか、おおまかに計算してみましょう。

①人口容量は1億2000万人です。
②人口予測値は国立社会保障・人口問題研究所・2017年推計・中位値とします。
③人口容量(1億2000万人)を各年の人口で割ったものが余裕値となります。

とすると、余裕値は、下図に示したように、現在(1.0)に比べて、2067年には1.5倍2094年には2.0倍になります。

これに伴って、人口抑制装置も作動を緩め、人口にも回復の可能性が生まれてくるはずです

21世紀の前半にはまず無理でしょうが、後半になればある程度の回復が予想できます。

それには何が必要なのか、幾つかの条件を考えていきましょう。

2017年4月25日火曜日

人口は回復しないのか?

新しい人口推計でも、日本の総人口は21世紀末まで減少を続けていきます。

出生数の回復や外国人の受け入れなど、さまざまな対応策が議論されていますが、果たして回復の可能性はあるのでしょうか

よりマクロな視点から考えてみると、すでに述べたように、2080年代からは回復の可能性が予想できます。

その基本的な論拠は次のようなものです。



①人口容量の壁に突き当った総人口は、修正ロジスティック線に沿って一旦は減少していく。

②それとともに、人口容量と人口の間には、次第に余裕が生まれくる

③この余裕が、総人口を支える個々の国民のゆとりにまで浸透していくと、出生率は上昇し死亡率は低下するから、総人口は再び増加してくる(詳細なプロセスについては、【
総期待値を2110年まで展望する !】:2015年6月30日を参照)。

④再増加し始めた総人口は、人口容量の上限まで再び伸びていく。

⑤人口容量の壁に突き当たると、またまた総人口は減少し始める。

⑥人口容量が拡大しない限り、総人口は容量の下で増減を繰り返す

⑦新しい文明によって人口容量が拡大されると、ようやく総人口は本格的に増加し始め、新容量の壁に突き当たるまで増加を続けていく。

このような視点に立てば、現在の人口容量(加工貿易文明×日本列島)の下でも、ある程度の回復が考えられ、容量の下で増減を繰り返ことが予想できます。

しかし、さらに継続的な増加を可能にするためには、新たな文明の創造によって、人口容量そのものを拡大しなければなりません。

2017年4月14日金曜日

新推計値を考える!

新しい人口予測(将来推計人口)が、4月10日、国立社会保障・人口問題研究所から公表されました。

最も可能性の高いと推計される「中位値」では、2053年に1億人を割り、2100年に6000万人まで減っていきます。

一番高く推測された「高位値」では、2061年に1億人を割り、2100年に7400万人にまで減っていきます。

最も低く推測された「低位値」では、2047年に1億人を割り、2100年に4800万人にまで減っていきます。

いずれも減少傾向が続くことには変わりはありませんが、前回2012年の予測値より、かなり上向きとなっています


上記の3ケースとも、2100年時点で前回より1000万人ほど増加しています。

この理由として、同推計では、①30~40 歳代の出生率実績上昇を受けて、推計の前提となる合計特殊出生率を上昇させた、②平均寿命の伸び率が上昇した、という、2つをあげています。

これまで公表されてきた将来人口推計では、そのほとんどが前回分より下向きの数字となっていました。

今回の推計で前回より上向きとなった背景には、人口減少が始まって約10年、国民の選択が減少社会に適応した方向へと動き出した、という事実があるのかもしれません。

2017年4月2日日曜日

人口減少とどうつきあうか?

5度目の人口減少が始まって約10年、急激に変化する社会に、私たちはどのようにつきあっていけばいいのでしょうか。

人口回復の可能性については、少子化対策の強化や移民拡大政策の導入など、さまざまな対応案が提唱されていますが、それらの実現性や効果がどれほどのものなのか、明確な展望は未だ出されていません。

このブログでも、人口容量と人口抑制装置という視点から、こうした課題について幾度か触れてきましたので、これから改めて整理していきたいと思います。

基本的な展望として、このブログでは、人口回復の可能性を次の図のように想定しています。



 グラフの中の高・中・低位とは国立社会保障・人口問題研究所の予測値であり、新予測値とは、既存の予測値を基礎にしつつ、「国民の生活意識が人口減少に次第に対応してくる」という、筆者独自の予想を前提に、新たに予測したものです。
(詳細は「
人口減少社会の背景と展望 : 生活心理と消費行動のゆくえ」㈶統計研究会・内外経済情勢懇談会編「Ecoレポート」79号)

予測のプロセスは「
人口は再び増加する!」でも触れていますが、その大略は次のとおりです。

①2010年以降の人口予測値については、国立社会保障・人口問題研究所2012年推計の中から低位を基本にしています。

②2035~2100年については、人口容量に対する国民の「
総期待値」が2035年ころに1970年の水準に戻る想定し、その後の出生率と死亡率が2100年までに2035年の水準にまで回復するという仮説にたっています。

③以上の条件によると、今後の人口は2070年代に6660万人で底を打ち、2100年には7000万人台まで回復してきます。

この新予測値は、もし回復可能性があるとすれば、どのあたりにあるのかという、淡い期待に基づいています。

果たしてこれが実現できるのか、さまざまな側面から考察していきます。

2017年3月19日日曜日

フランスの出産支援策は日本では効果がない!

これまで見てきたように、ヨーロッパ主要国の人口動向は、合計特殊出生率の高低によって、2つのグループに明確に分かれています。

その背景を推定してみますと、次のような事情が浮かんできます。

①2つのグループが生まれるのは、人口容量のピークを経験しているか否かの違いです。容量のピークを超えたドイツ、スペイン、イタリアは低出生率国となり、ピークをまだ超えていないスウェーデン、フランス、イギリスは高出生率国となっています。

②いいかえれば、低グループでは出生率が低いがゆえに、人口ピークの到来、つまり、人口容量の上限が早く現れ、逆に高グループでは、未だ口容量の上限が見えていないから出生率が高い、ともいえるでしょう。

③人口容量の高低が生まれるのは、【国土×加工貿易文明】で生み出される上限が、低出生率国ではグローバル化の限界化で早く現れ、高出生率国では未だ現れていないためです。

④迫り来る人口容量の上限に対して、低出生率国がいち早く対応したのは、過去の歴史上、人口波動(修正ロジスティック曲線)の中間あたりの変曲点に対して、ナショナリズムや覇権主義で対応したことへのトラウマの故、と推定されます。この対応が引き起こした悲惨な結末が、各国民の潜在的な無意識となって、人口抑制装置を速やかに作動させたものと思われます。

⑤高出生率国においても、まもなく人口容量の上限に達することが予想されますが、対応未経験の国では、やはりナショナリズムや覇権主義などに陥る危険性が高い、と予想されます。昨今のアメリカやヨーロッパ諸国における「右傾化」の動向は、もしかしたら、その前兆とも考えられます。

⑥このように考えると、高出生率国であるスウェーデンやフランスなどの出産支援策を、ドイツやイタリアなどの低出生率国へ、単純に導入したとしても、さほどの効果は期待できないでしょう。まして自然環境も国際環境も異なる、アジア地域の日本へ導入するのはほとんど無意味といえるでしょう。

下図を見れば一目でわかりますが、日本という国は、国土面積の比較からみても、人口増減の推移からみても、まったく特異なトレンドを辿っている国家です。




肯定的に言えば、近代工業文明を受容し、急速に工業化と人口増加を達成したものの、その限界を真っ先に味わって、人口減少・飽和濃密型の社会へ向かおうとしている先例、ともいえるでしょう。

以上に述べたことは、いうまでもなく、一つの仮説にすぎません。今後、より詳細に検証していくことが必要だと思います。

しかし、「あらゆる理論は仮説にすぎません。絶対の真理など存在しないのです。もし一つの仮説で行き詰まったとしたら、別の仮説を求めればいい。仮説と仮説の論争の中から、より望ましい方向を求めていけばいい。仮説は仮説を産み、その連鎖がパラダイムを変えていくことになるでしょう」(拙著『日本人はどこまで減るか』P.248)。