2020年1月18日土曜日

農業後波はリリジョンが作った?

農業前波を生み出した「ミソロジー(mythology)=「リレーショナズム(relationalism)の後で、新たに農業後波を作り上げた時代識知とはどのようなものだったでしょう。

農業後波は「集約農業文明」によって生まれた、AD400年頃からAD1400年に至る、約4億5000万人の波であり、この時代の人類はいわゆる「宗教(リリジョン:religion)の発生によって世界を見つめ直してきたと思われます。

宗教というと、シャーマニズム、アニミズム、ミソロジーなど、原始的宗教から始まるという言説もまた流布していますが、これらについては別の時代識知としてすでに詳述していますので、新たな時代識知として考えるのは、現代にまで強く継承されている、仏教、ヒンドゥー教、キリスト教、イスラム教の、4大宗教に絞ることにします。


仏教はBC463年インドに生まれたガウタマ・シッダールタにより創始され、BC4~1世紀に経典化が進みました。AD紀元前後に至ってサンスクリット語の大乗仏典が編纂され、AD2世紀には大乗仏教として中国にも伝播しています。

ヒンドゥー教はインドやその周辺の庶民信仰が受け継がれて、BC4世紀頃にインダス川周辺で原型が形成され、AD2世紀にグプタ朝において発展し定着しました。ヒンドゥー教聖典群プラーナは、AD3~14世紀の間に成立したものと推定されています。

キリスト教はBC4年、ユダヤに生まれたイエスが創始し、AD3~5世紀に新約聖書として文書化が進みました。

イスラム教はAD570年頃アラビア半島に生まれたムハンマドを開祖とし、AD650年にコーランとして文書化されています。






こうしてみると、4大宗教は概ねBC5~AD6世紀頃に創始されていますが、文書として経典化され始めたのはAD1~7世紀であり、AD5世紀頃からの農業後波を立ち上げる原動力となったものと思われます。

2020年1月10日金曜日

リレーショナズム(万物関係観)が農耕・牧畜を促した!

農業前波を生み出したミソロジー(mythology)このブログでは新たに「リレーショナズム(relationalism:万物関係観)」という名称を与えた時代識知について、これまで5つの特徴を述べてきましたが、さらに絞り込んでみると、次の3つの要点が浮かんできます。

第1の要点は、人類が無意識次元で捉えた、さまざまな外部環境を、幾つかの “心像象徴”に形象化し、それらを連結させた「文章=神話」によって、集団的に共有したことです。

人類の言分け能力は、身分けされた対象をイメージとしての“心像”で捉える“象徴”能力と、音声化された“記号”で捉える“記号”能力に大別されます。

前者は無意識次元のイメージを“心像象徴”によって連結化した“神話”となり、後者は意識次元の観念を“音声記号”によって文章化した“物語” になります。

リレーショナズムは、まさしく無意識、心像、神話を特徴とする時代識知といえるでしょう。

第2の要点は、人類が個々人を超え、集団となって生産活動に携わる主体であることを改めて自覚したことです。

一定地域の人々は、特定の神話=文章を共有することで、個々人の次元を超えた、人間集団を自覚するようになり、共同して生活活動や生産活動へ向かっていきます。

第3の要点は、自然環境へ積極的に働きかけ、循環的な農耕や定着的な牧畜などを継続的にようになったことです。

時代識知の流れを振り返ると、石器前波を創り出した「ディナミズム(dynamism)=動体生命観」や石器後波を創り出した「インモータリズム(immortalism:造語)=生死超越観」を礎石としつつ、

リレーショナズム(relationalism)=万物関係観」は人間集団と自然環境の関係を相関的に捉えることによって、農耕・牧畜という、継続的な生産形態を可能にし、農業前波を生み出していった、といえるでしょう。


以上のような3つの要点が絡まったため、ミソロジー=リレーショナズムは自然系エネルギーをさまざまな要素間に循環させることに成功し、新たな人口容量を作り上げていったものと推定できます。

2019年12月26日木曜日

擬人化で自然環境を活用する!

ミソロジーの5つの特徴のうち、⑤自然現象を応用する人間活動の経緯、を要約してみると、以下のようになります。

さまざまな神話の中には、多様なエネルギーの採集・利用・転換法などの識知的理解を促すものが数多く含まれており、これらが意味するのは、自然エネルギーを農耕・牧畜などへ転換させる際の、最適な対応方法を模索していることだ、と思われます。

そこで、この特性について、もう少し詳しく展開してみましょう。

第1に自然環境神々という主体に擬人化したことにより、人類とのさまざまな関わり方が細かく示唆できるようになりました。

第2には、人類が神々=自然環境に対して、より積極的に働きかける、さまざまな行為の可能性や、その影響が的確に述べられるようになりました。

第3に、人類が多様な人間集団という活動主体となって、さまざまな自然条件へ関わることにより、自然環境もまた作り直されていく可能性が生まれてきました。

以上のような経緯により、ミソロジー(mythology)リレーショナズム(relationalism:万物関係観)という時代識知が醸成されていくにつれ、人間集団が与えられた自然環境を積極的に活用して、循環的な農耕定着的な牧畜などを継続することができるようになりました。

 




それこそが、農業前波の人口容量に拡大可能性をもたらした、新たな時代識知の力だったといえるでしょう。

2019年12月14日土曜日

擬人化・文章化で関係性を把握する!

ミソロジーの5つの特徴のうち、今回は③多様な現象を擬人化した主体群による複合的物語、④自然と人為の相互関係を識知、を要約してみると、以下のとおりです。

③多様な現象を擬人化した主体群による複合的物語・・・自然現象、動物、植物などを“擬人化”した、多様な主体によって、喜怒哀楽、対立和睦などさまざまな相互関係を説明しています。

自然と人為の相互関係を識知・・・多くの神話では、自然環境に対する人類の対応作法を“文章”として述べています。

この2つについては、次のように展開できます。

第1は自然現象の擬人化です。

身分け能力が捉えた環境世界の自然現象の動きを、人間集団内部での喜怒哀楽といった相互関係に見立てて、そのアナロジーとして言語化しています。

第2は擬人化した自然現象に対する、人間の関わり方です。

天体、気象、動物、植物など人間以外の諸物を擬人化することにより、それらに対する人間の能動行動と受動行動を、言語によって表現しています。

第3は文章化による関係性の把握です。
人間の言分け能力は、擬人化された万物をまずは“単語”化し、次にそれらを繋ぐ、さまざまな関係を“文章”化によって表現しています。

この作用により、人間の行動が自然現象に影響を与えるとともに、それらの反応が人間に対して及ぼす、さまざまな影響という相互関係が表現されることになります。

こうしてみると、ミソロジーとは、擬人化と文章化によって、環境世界全体と人類の関係性を現そうとする、人間の英知ともいえるでしょう。


その意味でいえば、ミソロジー(mythology)という時代識知は、広義でのリレーショナリズム(relationalism:万物関係観)というべきかもしれません。


2019年12月4日水曜日

“象徴”言語が創り出す世界

ミソロジーの特徴を前回5つ分けて説明してきましたが、最初の2つ、①環境世界を言語で理解する観念的装置と②元型・象徴で構成する文章・物語、を要約してみると、以下のとおりです。

①環境世界を言語で理解する観念的装置・・・私たち人類は、周りの環境世界を、おのれの感覚能力によって「身分け」し、続いて言語能力によって「言分け」することで、それなりに理解していますが、ミソロジーは、そうした「言分け」行動の、最も始原的な段階です。

②元型・象徴で構成する文章・物語・・・認知世界の無意識的なドラマを、既成の言語体系が形成される以前の未言語段階、あるいは前言語段階の意味体系である「シンボル(象徴)」の連鎖によって表現したものです。

この2つについては、次のように展開できます。

 

第1は「言分け」能力で複合的に理解すること。 
ディナミズム(dynamism・・・動いている、あらゆる物体に対して、生き物や生命を感じる識知観)」や「インモータリズム(immortalism・・・動いている諸物の主体は、すべてが意思を持ち、生死を超えた、不可視の存在であるという識知観)」に対して、

ミソロジーは、「見分け」の捉えた環境世界の動態を、単純な動きとして理解するのではなく、単語や文章という「言分け」能力によって、さまざまな主体の絡み合った複合動態として捉えています。

第2は「言分け」の始原的な“象徴言語”段階であること。

ミソロジーとは、「身分け」された対象を「言分け」しようとする「言葉」そのものが、意味が固定化され、明確な表象を示す“記号”言語ではなく、それに至る以前の“象徴言語”で作られています

いいかえれば、「身分け」構造が捉えた万物、例えば太陽や月、雲や風、海や川、大樹や草花、獅子や脱兎、英雄や美女などの対象を、直観的なイメージに置き換え、さらにそれらを象徴的な音声=単語として表現たものといえるでしょう。

第3に「象徴言語=単語」を組み合わせた「文章=物語」であること。

ミソロジーとは、第1と第2の特性を組み合わすことで、「身分け」が捉えた、環境世界の複雑な構造を“記号”的言語に至る以前の“象徴”的言語によって、複合的に表現した文章=物語といえるでしょう。

3つを要約すれば、ミソロジーとは、「身分け」が捉えた環境世界を、象徴的な「言分け」によって言葉に置き換える「時代識知」なのです。

2019年11月22日金曜日

ミソロジーとは何だろうか?

前回紹介したように、ミソロジーの定義や観念については、先達諸賢のさまざまな見解があります。

それらを整理したうえで、時代識知という視点から、その特性を探ってみると、次のような事項があがってきます。
 






  
①環境世界を言語で理解する観念的装置
ミソロジー(μυθολογία:mythology)とは、言語の文章による物語(イストリア:ιστορία:istoria)あるいは詩(ポイエシス:Ποίησις :poiēsis)である、と言われています。

確かに、石器前波の「ディナミズム(dynamism)」や石器後波の「インモータリズム(immortalism)」と比べてみると、ミソロジーはその名の通り「言語」の色彩が濃くなってきます

私たち人類は、周りの環境世界を、おのれの感覚能力によって最初に「身分け」し、続いて言語能力によって「言分け」することにより、それなりに理解しています。

ミソロジーは、そうした「言分け」行動の、最も初期的な段階ともいえるでしょう。

元型・象徴で構成する文章・物語

ミソロジーとは「元型が表現された一つの形態である」と、C.G.ユングが指摘しているように、人類の無意識次元のイメージを言語によって表現した物語です。

元型」というのは、私たちの意識の下に潜む「無意識」を表象する、さまざまなイメージを、幾つかのキャラクターとして抽出したものですが、これらを結び付けて、一連の流れとしたもの、ミソロジーということです。

いいかえれば、認知世界の無意識的なドラマを、既成の言語体系が形成される以前の未言語段階、あるいは前言語段階の意味体系である「シンボル(象徴)」の連鎖によって表現したものともいえるでしょう。

③多様な現象を擬人化した主体群による複合的物語
多くの神話では、自然現象、動物、植物などを“擬人化”した、多様な主体によって、喜怒哀楽、対立和睦など相互関係が説明されています。
 

例えばギリシャ神話でいえば、カオス(空隙)、ガイア(大地)、タルタロス(暗冥)、エロス(美神)、エレボス(暗黒)、ニュクス(夜)から、天界の火を盗んで人類に与えたプロメテウス、地母神パンドラ、半人半神ヘラクレス、勇将アキレウス、ミュケーナイ王アガメムノン、絶世の美女ヘレネーまで、


また北欧神話では、昼の神ダグ、夜の神ノート、太陽の女神ソール、月の神マーニなど、さまざまな登場人物が、多彩なストーリーを演じています。

このことは、自然状況や人間関係の相互作用の中で、善悪的結果への理解や多様な変化への対応など、さまざまな相互関係を示唆しているといえるでしょう。


自然と人為の相互関係を識知
神話とは「人智の及ばぬ自然現象を、文章として説明する試み」(E.B.タイラー)という言説のように、多くの神話では、自然環境に対する人類の対応作法が述べられています。

例えばヴェーダ神話では、雷神インドラは人々から祭祀を受け、それと引き換えに恩恵をもたらす現世利益神、ヴァルナは神通力と幻術を用いて人々に賞罰を下す司法神などです。


また北欧神話では、軍神オーディンは死の神でもあるとともに、文字や魔法を教える知恵の神、ニョルドは風の動きを支配する神、女神フリッグは豊饒と人間の幸福を司る神など、それぞれの持つ人類への影響力が語られています。

自然現象を応用する人間活動の経緯

さまざまな神話の中には、多様なエネルギーの採集・利用・転換法などの識知的理解を促すものが多く含まれています。

インドネシアの死体化生神話に登場する女神ハイヌウェは、自らの死体から様々な種類のを生み出して人民の主食に与えています。

ギリシャ神話デメーテルは、トリプトレモスの種を与え、天から地上に農業を広めて回らせています。

日本神話のアマテラスオオミカミは、アメノオシホミミノカミ稲穂を持たせて地上に降ろし、稲作を始めさせています。

これらの意味するものは、自然エネルギーの農耕・牧畜への最適な転換を促すことであり、それこそが農業前波の人口容量に拡大可能性をもたらしたといえるでしょう。

以上のようなミソロジー観をベースにして、「時代識知」の立場から、農業前波の環境観や世界観を考えていきましょう。

2019年11月15日金曜日

農業前波はミソロジーが作った?

石器前波を創り出した「ディナミズム:dynamism」、石器後波を創り出した「インモータリズム:immortalismに続いて、3番目の人口波動である農業前波を生み出した時代識知とは一体どのようなものだったでしょう。

農業前波は「粗放農業文明」によって生まれた、B.C.3500年頃からA.D.400年頃に至る約4000年の波です。

この時代の人類はシュメール、インダス、ミノア、古代エジプト文明などに見られるように、「神話的な世界観(ミソロジー:mythology)」によって、人口容量を約2億6000万人まで増やしてきたと思われます。

「神話」(mythまたはmythology)の定義や内容については、古代ギリシャから現代に至るまで、歴史学、民俗学、文化人類学、心理学などの諸分野で研究されており、さまざまな言説が展開されています。

その中でも「ミソロジー:mythology」とは何かについて、有力な言説を展開しているのは、イギリスの文化人類学者、E.B.タイラー(1832~1917年)、スイスの心理学者、C.G.ユング(1875~1961年)、フランスの構造人類学者、C.レヴィ=ストロース(1908~2009年)などでしょう。







E.B.タイラーの言説
(詩的な伝説の形成者と伝達者)は祖先から受け継いだ思考と言葉を神々や英雄の神話的な生へと成形し、その伝説の構造のうちに自らの精神の働き示し、自分たちが生きた時代、正規の歴史ではその記憶自体が失われていることも多い時代の技芸や慣習、哲学や宗教を記録にとどめている。

神話とは、その作り手の歴史であって、それが語る内容の歴史ではない。 超人的な英雄たちの生ではなく、詩によって語る諸民族の生を記録しているのである.
     (『原始文化〈上〉』500p、奥山倫明他訳、宗教学名著選・国書刊行会)

C.G.ユングの言説

 神話とは何よりも心の表明であり、そこに表わされているものはこころ(ゼーレ)の本質である(中略)。

未開人は太陽が昇り沈むのを見ているだけでは満足しない。この外的な観察は同時にこころ(ゼーレ)の中の出来事でもなければならない。すなわち太陽の動きは、間の心の中に必ずや住んでいるはずの神や英雄の運命を示している違いないのである。

夏と冬、月の満ち欠け、雨季といったすべての自然現象の神話化は、これらの客観的な経験の比喩であるというよりは、むしろこころ(ゼーレ)の内的無意識的なドラマをシンボルによって表現したものである
                   (『元型論』30p、林道義訳、紀伊国屋書店)

C.レヴィ=ストロースの言説

神話の実体は、文体や話法の中にもまた統辞法の中にもなく、そこで語られる物語の内に見出される

神話は一個の言語であるしかし、きわめて高い水準ではたらく言語活動であって、そこでは、いってみれば、意味がまずその上で滑走をはじめた言語的基礎から、離陸することに成功するのである。

われわれが達した暫定的諸帰結を要約しよう。それらは三つある。


⑴神話が意味をもつとすれば、その窓味は、神話の構成にはいってくる個々の要素にではなく、それらの意味か結びつけられている仕方にもとづいている。

⑵神話は言語の種類に属し、その構成部分をなしている。とはいえ、神話の中で用いられる言語は特殊な諸性格を示す。

⑶これらの諸性格は、言語表現の通例の水準より上にしかもとめることができない。換言すれば、それらは、他の何らかの言語表現の中に見いだされるものよりも複雑な性質のものである。
 
              (『構造人類学』232p、川田順造他訳、みすず書房)

以上のような諸見解を参考にしつつ、時代識知としての「ミソロジー」の位置付けを改めて考えていきましょう。