言語生成論の立場から見れば、現時点の電子言語には幾つかの限界があり、最先端の生成AIといえども、人間の言語活動の完璧な代行まではかなり難しい、と述べてきました。
この課題を突破するには、どのような方法があるのでしょうか。
表象言語(自然言語)の意味するもの(セマンテイックス)には、コト界上の明確な事象だけでなく、モノコト界上に浮遊している象徴言語や、さらにはモノ界上の深層言語までが含まれています。
しかし、電子言語で自然言語処理された電子表象言語は、これらの曖昧な意味を排除し、明確な意味だけを捕獲します。
例えば「水流」という記号で「チャブチャブ」や「どろどろ」などの感覚を、また「動作」という記号で「つんつん」や「ふらふら」などの態度を、いずれも排除しているのです。
こうした意味では、電子言語上の電子表象言語は、理知言語の延長といえるでしょう。
理知言語とは、人類が思考を深めるために創り出した言語であり、「身分け」「識分け」「言分け」が捉えた事象を、「網分け」の“理知”によって精細に捉え直し、音声や記号などの創作言語で表現した言葉です。
とすれば、現段階の電子言語は、工業現波を生み出した時代識知、サイエンスの最終段階ともいえるでしょう。
現段階の電子表象言語を、このように位置づけると、人口波動で次の波動(工業後波)を準備するには、もう一段階進んだ電子言語が必要になると思われます。
甚だ夢想的な展望のようですが、すでにその可能性が生まれています。量子コンピュータという、新たな電子機器の進展です。
従来のコンピュータは、0と1の2進数の論理ビットで情報を扱っていますが、量子コンピュータでは、量子ビット(qubit:キュービット)と呼ばれる仕組みによって生じる、重ね合わせ(superposition)や量子もつれ(entanglement)などを利用し、絡み合った状態での情報も表現できます。
こうした機能が応用できれば、電子言語にも新たな自然言語処理や生成方式が生み出され、電子表象言語も日常的な表象言語の多義性に、今一歩近づく可能性が生まれてくるのではないだしょうか。
確かな予測はまだ困難ですが、もしこのような次世代の電子言語が生まれれば、生成AIにおいても、いっそう複合的な意味を交信できるようになるかもしれません。
そうなれば、サイエンスという時代識知を支える理知言語もまた、もう一歩新たな段階へ進むことが予想されます。分散型のサイエンスから、集約型のサイエンスへの移行ともいえるでしょう。
ルネサンスが生み出した近代社会、人口波動でいえば粗放工業文明による「工業現波」を「工業前波」と位置づけたうえ、次の段階の「工業後波」を準備する時代へと誘導する社会革命、それこそがル・ルネサンスなのです。
次世代電子言語の出現によって、サイエンスという時代識知が革新されると、現在の分散的サイエンスが集約的サイエンスに見直され、粗放次元の工業文明もまた集約的な工業文明へ進展するとともに、人類の社会は「工業後波」という、新たな波動を始めることになるでしょう。









