2018年9月12日水曜日

繊研新聞(2018年9月11日)に「人口減少でライフスタイルが変わる」を寄稿 しました!




人口減少が始まって、すでに10年。このまま減り続ければ、2100年には6千万人を割る。ほぼ200年間維持されてきた人口増加社会はもはや過去のもので、少なくとも今後の半世紀は人口減少社会となる。その影響はさまざまな分野に及ぶが、とりわけ私たちのライフスタイルは大きく変わる。・・・以下はhttp://gsk.o.oo7.jp/insist18.html

2018年9月8日土曜日

「ロジスティック曲線」から「修正ロジスティック曲線」へ!

オリジナリティーの第5は「修正ロジスティック曲線」の提唱です。

生物の個体数は「ロジスティック曲線」を辿る、といわれてきました。【
動物の個体数はロジスティック曲線をたどる?】(2015年2月2日)で説明したとおりです。

しかし、20世紀後半にさまざまな動物の実態がわかってくるにつれて、必ずしもそうとは限らず、上限に達した後は下降したり、増減を繰り返したり、しばらくして回復するなど、さまざまなケースが多々報告されるようになりました。

そこで、こうした動物行動学や個体群生態学の成果を踏まえ、筆者もまた個体数がロジスティック曲線から外れるケースを「変形ロジスティック曲線」という名称で捉えてはどうか、と提案しました(『人口波動で未來を読む』1996)。

但し、この言葉については、それ以降、幾つかの修正を加えてきました。

①「変形ロジスティック曲線」という名称については、やや違和感がありましたので、1997年より「修正ロジスティック曲線」に変えました(論文では『世界と人口』1997,3月号:家族計画協会、著作では『凝縮社会をどう生きるか』:NHKブックス:1998)。

②この曲線が生まれる背景については、「修正ロジスティック曲線の論理」として、出生数と死亡数の循環による、より詳しいモデルを提案しました(『日本人はどこまで減るか』:幻冬舎新書:2008)。その内容については、【
修正ロジスティック曲線」を提唱する!】(2015年2月9日)で一通り述べています。

②で述べた論理を差分方程式で表す場合、次の2式が考えられます。

1つは、人口容量(K)に対する、該当年の密度効果を「加減式」で表すものです。
もう一つは、乗除式で表すものです。
一般には、②の乗除式をベースとして、微分方程式に変換されるケースが多いようです。

それによって、ロジスティック曲線は、さまざまに変形する「修正ロジスティック曲線」へと進展してきたといえるでしょう。


2018年8月26日日曜日

人口抑制装置が作動する・・・文化的装置から生理的装置へ!

「人口波動説・10のオリジナリティー」の第3「人口抑制装置」の提唱です。

「人口容量」への負荷が強まるにつれ、増加を抑制するしくみが徐々に作動し始めますが、それを「人口抑制装置」と定義しなおし、その中身を「生理的抑制装置」と「文化的抑制装置」の2面から捉えました。

この点について、マルサスは『人口論・第6版』の中で、次のように述べています。


人口と生活資料の間に不均衡が発生すると、人口集団には是正しようとする力が働く。
 人口に対してはその増加を抑えようとする「能動的抑制(主として窮乏と罪悪)や「予防的抑制(主として結婚延期による出生の抑制)が、また生活資料に対してはその水準を高めようとする「人為的努力(耕地拡大や収穫拡大など)」が、それぞれ発生する。

この論理の前半を継承しつつ、オリジナリティー第3では、人口抑制について次のように説明しています。

仮説Ⅱ・・・人口は、人口容量が低下した場合、あるいは人口容量の上限に近づいた場合に、さまざまな抑制装置の発動によって、その増加を停止する。この抑制装置は、文化の安定している時には主として「文化的抑制装置」が、また文化の混乱している時には「生理的抑制装置」が、それぞれ発動する。

仮説Ⅱ-1・・・文化的抑制装置とは、人口が人口容量の上限へ接近した時、直接的抑制(死亡促進、妊娠抑制、出産抑制、人口分散など)、間接的抑制(生活圧迫、結婚抑制、家族縮小、家族・子どもの価値の低下、都市化・社会的頽廃化など)、政策的抑制(強制的な出産抑制、動乱・戦争、強制移動)といった文化的抑止力が自動的に作動し、単独もしくは複合的に人口増加を抑えるしくみである。

仮説Ⅱ-2・・・生理的抑制装置とは、文化的抑制装置が作動しない時に、体力低下、寿命限界、生殖能力低下、胎児や乳幼児の生存能力低下などが、自動的に作動するしくみである。
                        (古田隆彦『人口波動で未来を読む』1996)

つまり、マルサスのいう「能動的抑制(主として窮乏と罪悪)」と「予防的抑制(主として結婚延期による出生の抑制)」は、基本的に人類に限ものです。



人口波動説では、この考え方を継承しつつ、第4のオリジナリティーとして「人口抑制装置」という名称で、人類から動物全体に広げる視点を提案し、そのうえで、動物的・生理的・生得的なしくみを「生理的抑制装置」、人類に特有の人為的なしくみを「文化的抑制装置」として再構成しました。

このうち、人為的、文化的装置については、「
人為的抑制装置には3つの次元がある!」(2015年3月17日)において、増加抑制装置少促進装置に分けて、すでに詳しくに述べています。

また、人類にとっては「文化的抑制装置」の方が先に作動し、それが遅れた時に「生理的抑制装置」が作動するという
順序についても「人口抑制装置が作動する時」(2015年3月21日)で解説しています。
 
以上がオリジナリティーの第3第4です。

2018年8月18日土曜日

マルサスの人口原理を再構成する!

「人口波動説・10のオリジナリティー」のうち、第1第2について、まず解説しておきましょう。

第1のオリジナリティーでは、R.マルサスの立てた2つの公準(①人間の生存には食料が必要である、②人間の情欲は不変である)を継承しつつ、第2にあげた「人口容量」の視点によって、改めて3つの公準に再構成しています。

①人口は常に増加圧力を持つ

②人口は人口容量の範囲内で増加する


③人口容量の規模は、文化や文明による自然環境の利用形態によって決定される

マルサスの「人口原理」は、基本的に人類の人口推移から定立されたもので、立論の根拠もまた各国の人口動向で説明しています。

これに対し、筆者の「人口波動説」は、主として20世紀に発達した生態学動物行動学などの成果を応用し、動物一般の個体数推移を参考にしつつ、人類の人口動向をとらえ直しています。



動物の個体数推移では、一種の動物が一定の地域空間内で生存できる量を「キャリング・キャパシティー(Carrying Capacity)という概念でとらえています。

「一定の空間において一種類の動物の数(個体数)は決して増えすぎることはなく、ある数で抑えられる」という現象です。

このキャリング・キャパシティーを人類に応用し、第2のオリジナリティーとして、新たに「人口容量」という用語を提案しました。

「人口容量」とは、自然環境を利用して、文化や文明で作り出す人口の生存規模を意味しています。

日本の生物学や生態学では、「Carrying Capacity」という英語を「環境収容力」とか「環境許容量」と訳すのが一般的であり、「環境」という主体が受け入れてくれる「受動的」能力というニュアンスで使われています。

しかし、人類の場合は他の動物と異なって、しばしば文明という方法によって自然環境に働きかけ、キャパシティーを積極的に拡大しています。

つまり、人類の場合は〔自然環境×文明〕によって容量を変えていますから、「Carrying Capacity」よりももっと「能動的」な意味を込めて、「人口容量(Population Capacity)」と言う用語を使うほうがベターだと思うからです。

以上のような改訂によって、マルサスのoscillations論をよりダイナミックな動態仮説へと変換しました。

2018年8月8日水曜日

「人口波動説」・・・10のオリジナリティー!

22年前、筆者の提唱した「人口波動モデル」は、その後、社会学、未来学、建築学などの関係者から「人口波動説」とよばれるようになり、現在に至っています。

「人口波動説」は、従来の「人口波動理論」や「人口原理」どこが違うのでしょうか。さまざまな面から確かめておきましょう。




①マルサスの2公準を3公準に改訂し、人口の増加・停滞過程を動態仮説として設定した。

②自然環境を利用して、文化や文明で作り出す人口の生存規模を「人口容量」と定義した。

③「人口容量」への負荷強化によって、増加抑制の作動するしくみを「人口抑制装置」と定義し、その中身を「生理的抑制装置」と「文化的抑制装置」の2面から捉えた。

④「文化的抑制装置」のしくみとして、「直接的抑制」「間接的抑制」「政策的抑制」の3面を提唱した。

⑤一定期間の人口推移を描く曲線の名称を「ロジスティック曲線」から「修正ロジスティック曲線」に改訂した。

⑥長期的な人口推移を「修正ロジスティック曲線」の繰り返しとする「多段階人口波動曲線」と定義した。

⑦さまざまな人口推計による人口の推移を、正対数・逆対数のグラフに描いて、5つの波動を抽出し、世界や日本の「多段階人口波動曲線」の実在を確認することで、人口波動」仮説を検証した。

⑧多段階を構成する個々の修正ロジスティック曲線の進行プロセスを、始動―離陸―上昇―高揚期―飽和期―下降の6時期に分け、それぞれの時期別特性を抽出した。

⑨6時期の時期別特性をアナロジーとして応用する、未来予測手法「人口波動法」を提唱した。

人類の精神史には、5つの人口波動が造り出した時代、5つの時代精神の、重層的な構造があることを指摘した。

以上の10項目をとりあえず「人口波動説」のオリジナリティーとして提起したうえで、それぞれの成果と現況を説明していきましょう。

2018年7月29日日曜日

22年前に「人口波動モデル」を提唱しました!

22年前、筆者もまた『人口波動で未来を読む』(日本経済新聞社、1996年)で、新たに「人口波動モデル」を提唱しました。

本書の中で、このモデルは「マクロ人口学のさまざまな成果を継承して、新たに構築した」ものであり、「環境、文化、文明、社会、経済といった諸要素を有機的に関連させた、巨視的な人口理論をめざすもの」と述べています。そのくだりを再掲しておきましょう。
(以下、本書より抜粋)

このモデルでは、最初に人口学の開祖R・マルサスの立てた2つの公準、⒜人間の生存には食料が必要である、⒝人間の情欲は不変である、を継承して、①人口は常に増加圧力を持つ、②人口は人口容量の範囲内で増加する、③人口容量の規模は、文化や文明による自然環境の利用形態によって決定される、というつの公準を改めて定立する。

続いてこれらの公準を前提に、人口の成長・停滞過程を、次のような動態仮説として設定する。
 
 仮説I・・・人口は、人口容量の拡大見通しがついた時、つまり自然環境の好転や、自然環境を利用する、新しい知恵・技術・世界観が生まれた時から、その増加を開始する。
 
 仮説Ⅱ・・・人口は、人口容量が低下した場合、あるいは人口容量の上限に近づいた場合に、さまざまな抑制装置の発動によって、その増加を停止する。この抑制装置は、文化の安定している時には主として「文化的抑制装置」が、また文化の混乱している時には「生理的抑制装置」が、それぞれ発動する。
 
  • 仮説Ⅱ-1・・・文化的抑制装置とは、人口が人口容量の上限へ接近した時、直接的抑制(死亡促進、妊娠抑制、出産抑制、人口分散など)、間接的抑制(生活圧迫、結婚抑制、家族縮小、家族・子どもの価値の低下、都市化・社会的頽廃化など)、政策的抑制(強制的な出産抑制、動乱・戦争、強制移動)といった文化的抑止力が自動的に作動し、単独もしくは複合的に人口増加を抑えるしくみである。
  •  仮説Ⅱ-2・・・生理的抑制装置とは、文化的抑制装置が作動しない時に、体力低下、寿命限界、生殖能力低下、胎児や乳幼児の生存能力低下などが、自動的に作動するしくみである。
 
 仮説Ⅲ・・・人口停滞が続く間に、人口容量を拡大する新しい知恵・技術・世界観が生まれてくると、それまでの「抑制装置」の鍵が外れ、本来の増加圧力によって人口は再び増加を開始する。
 
 仮説Ⅳ・・・人間は自ら自然環境を改善する能力、つまり文化や文明を創造する能力を持っているから、長期的にみれば、人口の推移は一つの人口波動から別の人口波動へ、次々に階を重ねる「多段階人口波動曲線」として描くことができる。

要するに、マルサスの『人口論・第6版』の論点を、現象学、言語学、生態学、社会心理学、文化人類学など、現代思想のパラダイムを応用して再整理したものであり、それ以上でも、それ以下(かもしれませんが)でもありません。

2018年7月19日木曜日

oscillations・・・初めは「人口擺動」と訳されていた!

マルサスの提起した「oscillations」という言葉は、明治~昭和前期には「擺動(はいどう=揺れ動くこと)と訳されていたようです。「人口波動」ではなく「人口擺動」だったのです。

最も初期の翻訳の一つ『人口論』(三上正毅訳、日進堂、1910年=明治43年)では「幸福に関する動と反動は常に反復しつつある」と「反復」と訳されていました。

その後は次第に「擺動」という訳語が定着したようで、戦後間もなく発刊された『各版對照 マルサス人口論』(吉田秀夫訳、春秋社、1948年=昭和23年)においても、「短期間の後に、幸福に関しての同じ後退前進の運動が繰返されるのである。この種の擺動はおそらく普通の人にははっきりと見えないであろう」と訳されています。

このためか、マルサスの「人口波動」理論に、日本で初めて取り組んだ南亮三郎もまた、論文「マルサスの人口理論」(小樽高商『商学討究』第9巻中下合冊、1934年=昭和9年)の中で、「マルサスの人口理論は、發展の理念の上に立てる人口の周期的擺動の理論であつた」と述べています。

この訳語はそのまま継続し、南もまた、昭和10年代に発表した『人口理論と人口問題』(千倉書房、1940年=昭和15年)においても、人口の動きを「進展と逆転との周期的な擺動を反復」するものと述べ、さらに『人口原理の研究・人口学建設への一構想』(千倉書房1943年=昭和18年)でも「人口擺動の理論」とよんで、これこそマルサス人口論の本体であると書いています。

さらに南は『人口原理の確立者一トーマス・ロバート・マルサス』(三省堂、1944年=昭和19年)の中で、「人口の進展及び逆転の不断の反復・・・一言にして人口の周期的な擺動oscillations を科学的な思考形式に表現したものがマルサスの人口理論である」と述べたうえで、「私はこれを『人口擺動の理論』と名付け、マルサスによって発展せしめられた近代的人口理論の頂點を成すものと見るのである」と明確に書いています。

ところが、第2次世界大戦を挟んで、1960年代=昭和30年代後半になると、「人口擺動」は「人口波動」に変えられたようです。

南もまた「人口の波と人口様式の史的発展」(商学討究:小樽商科大学、1962年=昭和37年)の中で、「原始社会のこの人口波動は、生物界に観察されるごく通常の波型の運動に類している」とし、「擺動」から「波動」に変えています。

そして『人口思想史』(千倉書房、1963年=昭和38年)においては、「人口波動の理論」と明確に変更しています。

以上のように見てくると、マルサスのoscillationsという言葉は、1960年を境として「人口擺動」から「人口波動」という訳語に変えられたのです。