2022年10月28日金曜日

人減先進国に適応する産業を考える!

人減先進国を目ざす日本が、現在の経済的人口容量を100年後も維持していくには、1574歳の国民の11人が、現在の35倍の生産性を上げなければならない、と述べてきました。

それを実現するには、従来の成長・拡大型社会に適応した産業構造を大きく超えて、人口減少に見合った飽和・濃縮型の産業構造へ向かうことが絶対に必要です。

飽和・濃縮型産業構造とは、いかなるものでしょうか。人減社会の構造を考えると、下図に示したような、3つの分野が浮上してきます。


 (人口の将来予測は【21世紀後半に逆転させるには・・・】参照)

人口容量維持産業・・・いわゆるサステナブル対応産業

人口容量12800万人の基本条件である環境容量、つまり自然環境の維持は食糧自給率の確保や、人口容量12800万人の基本条件である環境容量、つまり自然環境の維持には、食糧自給の確保や、空気・水・寒暖などの安定化など、生活環境の持続性を求める需要に向けて、国内での対応産業の拡大はもとより、国際的な対応産業の進展もまた必須となるでしょう。

情報深化推進産業・・・いわゆるIT応用深化産業

超長期的な人口波動の視点から見ると、人口増加時代物質的な技術開発が主導し、人口減少時代情報的な技術振興が充実する傾向が読み取れます。今回の人口減少時代もまた、物質的な科学技術から情報的な科学技術へと、産業開発の重点が移行していくと思われます。それゆえ、これまでのIT産業などをさらに深化させ、「科学」という時代識知そのものの改革や進展をめざすような、新しい識知産業が求められるでしょう。

濃密生活対応産業・・・いわゆるコンデンシング対応産業

人口減少が少なくとも7080年は続く以上、人口増加を前提に、生活民一人当たりの物質的な需要のみを成長・拡大させ、生活市場を拡大させるというような産業対応は、もはや通用しません

人口は減っても、前回述べたように、人口容量が維持されていけば、生活民一人一人に与えられた個人容量は増えていきますから、それらを精神面や生きがい面など、内面的な濃密性の充足に対応させることで、消費量を倍増させるような、新たな生活産業が必要になってくるでしょう。

以上のような飽和・濃縮型産業構造に向けて、積極的に取り組むことができれば、従来の生産性の概念を大きく超える、新たな生産性の向上可能性が生まれてくるはずです。

次回から順番に考えていきます。

2022年10月16日日曜日

誰がGDI規模を維持していくのか?

人口減少が進むと、GNIが現状の水準をほぼ維持できれば、一人当たりGNIは、現在より大きく伸びていくはずです。

まさに人減先進国の目ざすべき目標ですが、これを実現するには、国民全体のGNI維持力、つまり生産性の向上が求められます。

それには、実際に生産活動に携われる年齢階層、いわゆる生産年齢人口の規模一人一人の生産性が問われることになります。

そこで、前回設定した2115年の経済規模を前提に、生産年齢に該当する国民一人がどれくらいGNI成長を分担していかなければならないのか、を大まかにシミュレートしてみました。

目標となる2115年の経済規模2015年時価)を、次のような伸び率で設定します。

0.2成長時・・・688兆円

0成長時・・・ 575兆円

0.2成長時・・・480兆円

一方、生産年齢人口は、経済協力開発機構(OECD)の定義により1564の人口とされていますが、今後の100年間が人口構成の変化に伴って、かなり変化していくものと思われますから、3つのケースを想定してみました。

1564・・・OECDの定義・・・2115年:1871万人

2574・・・当ブログの定義・・・同:2164万人

2074・・・今回設定の定義・・・同:2302万人

上記のような生産規模3ケースと年齢別3ケースを掛け合わせてみると、次の図になります。







 



2つの図を整理して、生産年齢国民一人当たりに期待される生産額の変化を確かめてみると、以下の表になります


0.2%成長の場合、いずれの年齢定義でも、期待生産額は現在の45となる。

0%成長の場合、いずれの年齢定義でも、期待生産額は現在の3.5倍前後となる。

❸-0.2%成長の場合、いずれの年齢定義でも、期待生産額は現在の3倍前後となる。

現在の経済的人口容量を100年後も維持していこうとすれば、1574歳の間に入ってくる国民の11人が、現在の35倍の生産性を上げなければならない、ということです。

そんなことができるのでしょうか。過去には19002000年の100年間に、日本の1人当たりGDP17.5に伸びた、という研究もありますから、決して不可能ではありません。

どのような社会・経済構造が構築できれば可能になるのか、さらに考えていきましょう。

2022年10月6日木曜日

経済指標で考える100年後の日本

人減先進国・日本の社会構造を展望しています。

人口減少で個人の経済的容量はどう変わるのか?】で述べた視点にもう一度立ち戻り、経済指標から将来を展望してみます。

人口容量の大きさを経済的指標で示すGNI(国民総所得)は、今後約100年間どのように推移するのでしょうか。

人口減少の進む100年後の経済規模を想定するのはかなり困難ですが、減少が始まってすでに10数年、GNIは緩やかとはいえ、なお上昇していますから、今後もある程度の規模を維持していくことはできるのではないでしょうか。

加えて、政府はもとより産業界もまたマイナス成長を回避し、プラス成長をめざしますから、経済的人口容量は維持される可能性が高いと思います。

そこで、コロナ禍以前の2017年に達した575兆円(実質:2015年基準)が、今後どのように変化していくのか、幾つかの条件によって想定してみました。

2025の規模を575兆円と仮定したうえで、以降の変化を、年率0.5%、同0.2%。同0.1%で成長、あるいは同0%で無成長、同-0.1%。同-0.2%で縮小と想定する。

②この想定によれば、2115年のGNIは、年率0.5%で901兆円、同0.2%で688兆円、同0.1%で575兆円、同0%で572兆円、同-0.1%で525兆円、同-0.2%で480兆円となる。

0成長時を基準とすると、年率0.5%時で1.60.2%時で1.20.1%時で1.1、- 0.1%時で0.9、-0.2%で0.8となる。

人口急減を考えれば、今後の年度成長率は0.5%程度が上限かとも思われます。

よりリアルな予想となれば、+0.2~−0.2%の間と考えるべきかもしれません。

とすれば、2115年のGNI901兆円を上限に、688480兆円程度になるものと想定されます。

これらの規模を一人当たり所得(GNI/人口)で見ると、どうなるのでしょうか。

0.5%成長時には、2025年の476万円から2115年に2379万円へと5になる。

+0.2−0.2とすれば、2025年の476万円から2115年には18181268万円となり、3.82.7となる。

いずれの場合にも、一人当たりGNIは、現在より大きく伸びることになります。

まさに人減先進国の目ざすべき目標ですが、実際に生活民がこれを享受するには、適切な分配制度の進展が必須の条件といえるでしょう。

果たしてこのような成長が可能なのかどうか、次回からは経済構造や生産参加者などの側から考えていきましょう。