2022年11月16日水曜日

人減先進国・情報深化推進産業とは何か?

人減先進国の向かうべき産業分野として、①人口容量維持産業、②情報深化推進産業、③濃密生活対応産業の3つを挙げてきました。

前回の「人口容量維持産業」に続き、今回は「情報深化推進産業」、いわゆる「IT応用深化産業」を考えてみます。

今、世界が向かいつつある人口減少社会では、増加時代の物量的拡大とは異なり、情報的充実の時代になっていきます。

増加時代の時代識知は、人口容量の増加をめざして物質的な拡大を推進してきましたが、容量が満杯に近づき、人口が減少し始めると、量よりも質を追い求めるようになるからです。

1980年代以降、急速に進んできたITInformation Technologyという現象自体が、科学技術によって物的拡大を推進する時代が終わりに近づき、質的充実へと転換したことを示しています。

それゆえ、モダン社会も最終段階の「ラストモダン」へと向かいつつあります。

ラストモダンでは、これまでの科学技術という時代識知への、さまざまな反省が試みられ、次の時代を創り出す、新たな時代識知(多分、新版科学技術)への模索、つまり「ル・ルネサンス」が展開される、と予想できます。

こうしたトレンドに乗って、情報産業もまた、新たな次元へと突入してきます。

昨今「4次産業革命」などと表現されている段階ですが、それは第1次(水力や蒸気機関による工場の機械化)、第2次(電力による大量生産)、第3次(電子工学や情報技術によるオートメーション化)に続く第4次(IoT、ビッグデータ、AIによる生産革命)という位置づけです。

しかし、人口波動という、より長期の視点に立つと「第5次情報化」ともよぶべき時代です。第1次の石器前波末期(石器の用具から情具へ!)、第2次の石器後波末期(縄文文明も用具から情具へ!) 、第3次の農業前波末期( 3情報化の時代 、第4次の農業後波末期(4次情報化の時代)に続く、第5次の工業現波末期という位置づけになるからです。

つまり、今後の人減社会で急速に進んでいく情報化やAI化とは、工業現波末期=ラストモダンを象徴する「5次情報化」を意味しているのです。
とすれば、情報深化推進産業とは、生産や経済構造の進化を担うという次元を超えて、科学技術という時代識知を見直すという目標をめざすことになるでしょう。

その方向とはいかなるものでしょうか。3つの次元で大まかに展望してみましょう。



電子情報活用産業

IoTInternet of Things)、AIArtificial Intelligence)、Metaverseなど、急速に進展する電子情報化を、生産・流通・サービスなどに能動的に応用して、後述する濃密型生活態様に対応する、新たな産業や斬新な供給形態を柔軟に創造していく。

認識転換推進産業

電子情報化の浸透に伴って、私たちの感覚次元では、仮想空間の中で感じる視覚・聴覚の変化、ハプティクス(Haptics:触覚操作)が加わった触覚や空間知覚の変動など、感覚的な認知行動に大きな変化が生じる。そうなると、これらの変化に影響されて、私たちの理知的な識知行動にも、かなりの変化が生まれてくる。こうした世界環境に対する認識行動に変化に積極的に対応する、新たな産業の創造が期待される。

ル・ルネサンス推進産業

新たな認知・識知行動によって、環境世界の捉え方が変革されてくると、それに対応して時代識知の変革が進んで行く。ラストモダンの第5次情報化が進むとともに、工業前波の次に来るべき工業後波を生み出す時代識知が形成されていく。それは、ラストミドルのルネサンスが生み出した「科学」という時代識知を超えて、ラストモダンのル・ルネサンスが育て上げる新たな知性、「新科学」ともよぶべき時代識知なのである。こうした識知の形成に対応して、それらを応用する新産業が生み出される。

以上のように、情報深化推進産業では、従来の電子情報の進展を促進するばかりか、その範疇を大きく超えて、「新科学」という新たな時代識知の育成を助長するような、さまざまな産業が期待されます。

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