2023年3月21日火曜日

少子化=少産化の巨視的背景:個人容量の維持願望

少子化=少産化対策の効果を計るため、巨視的背景として、人口容量の限界に続き、個人容量の動向を考えます。

人口容量が伸びなくなっても、一人当たりの個人容量が小さければ人口は増える余地がありますが、個人容量が大きくなればなるほど、人口増加は難しくなります。

それゆえ、現代日本において少産化が進む背景には、人口容量の停滞とともに、国民一人当たりの個人容量の拡大が考えられます。



その実態を算出することはなかなか難しいと思いますが、国民一人一人の消費水準によって概ね推定することが可能です。

下図は個人消費の動向人口動態と比べたものです。



国民一人当たりの消費支出は、国民経済計算の家計最終消費支出(実質:2015年基準)を総人口で割って算出しました。人口動態と比べてみると、次のような傾向が読み取れます。

➀個人消費は2007年頃まで順調に伸びてきたが、200809年の人口減少で一時停滞している。10年以降は回復し、19年までは再び増加を続けたものの、20年以降はコロナ禍の影響でやや停滞している。

②人口減少が始まった後も、大きく減少することなく2019年には2009年の1.07倍にまで伸びている。

③人口が減っているにもかかわらず、一人当たりの個人消費はなお伸び続けている。

この事実は、人口容量の限界化とは、容量を支える諸条件の限界化によって作り出されるとともに、人口を構成する国民一人一人の容量水準にも影響されていることを示しています。

拡大する個人容量が総人口容量の満配化を早めて、人口を減少させている、ということです。

逆に言えば、2011年以降、人口が減っているにもかかわらず、個人消費がなおも伸び続けているのは、国民一人一人が自らの個人容量を維持・拡大せんがために、人口を減らしている、ともいえるのです。

人口容量が満杯となるには、容量を支える物量的・社会的条件の限界化とともに、その容量を分配される一人一人の個人容量の拡大もまた大きな要因なのです。

いいかえれば、科学技術、市場経済、国民国家などで構築された、一国の人口容量は、それらを前提にして作り出された生活構造の変化、換言すればライフスタイルの変動によって、限界化を早めたり遅らせたりしている、ということです。

このように考えると、現代日本人の基本しているライフスタイルの基本構造、❶雇用型労働、❷市場型消費、❸社会保障依存などの維持や増強願望が、人口抑制のもう一つの要因になっている、ともいえるでしょう。

雇用型労働・・・生活資本の大半が、雇用者からの給与によって賄われているため、この関係の持続、あるいは拡大を希望している。

市場型消費・・・生活資源の大半が、消費市場からの購入によって賄われているため、こうした消費行動の維持、あるいは拡大を希望している。

社会保障依存・・・生涯生活資本の多くが、福祉国家による社会保障に委ねられているため、この制度の維持、あるいは拡大を期待している。

以上のように、多くの国民の抱く、現代社会特有のライフスタイルへの持続・拡大願望が個人容量拡大の要因ともなって、人口容量の満配化を促し、人口抑制装置の作動を招いている、ともいえるのです。

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