2018年10月24日水曜日

逆対数グラフで人口波動が浮上する!

多段階人口波動曲線」を1996年に提唱して以来、より説得的な論拠を探してきましたが、ほぼ10年をかけて、新たな手法を見つけました。

超長期的な人口推移を「逆対数×正対数」のグラフにすることで、さらに明確な波動をとらえることができたのです。

前回紹介したJ-N.Birabenの「
世界人口推移グラフ」では、縦軸だけの片対数グラフとなっていました。このグラフから読み取ったデータで、改めて縦対数尺のグラフを作成してみると、下図のようになります。

Birabenがこうしたグラフを描いた意図は、次のように推測されます。

古い時代の人口推移は、①母集団の数が少ない、②平均寿命が短い、などの理由で、比較的ゆっくりと微妙な変化を示します。一方、新しい時代の推移は、①母集団の数が次第に大きくなる、②平均寿命が徐々に長くなる、などの理由で、比較的短期間に大きな変化を示します。

そこで、縦軸に対数をとれば、古い時代の変化は拡大し、新しい時代の変化は縮小しますから、長期的な人口推移の大まかな波を抽出できるのです。

確かにこのグラフを見ると、人口の長期的な増減が鮮やかに浮上しています。

しかし、-5000年以前の推移が比較的ゆっくりと動いているのに対し、それ以降の推移は急速に増減を繰り返しています。これでは、近時点の微妙な変化を把握することはできません。

そこで、筆者は横軸も対数尺、それも逆対数の両対数グラフを採用してみました。新しい時代はゆっくりと、古い時代は短くとらえたいと思ったからです。

古い時代の人口推移については、量的な変化は拡大、時間的な変化は短縮し、新しい時代の推移については、量的な変化は縮小、時間的な変化は延長して描く、という方法を採用したのです。

こうした手法で新たに描いたのが、下図のような「横軸:逆対数、縦軸:正対数」のグラフです。


いかがでしょうか? これを一目見れば、世界人口の超長期的推移には、5つの波があったことが、どなたにでもはっきりと読み取れるでしょう。

これこそ、筆者の提唱する「人口波動」です。超長期的な人間の個体数変化には、間違いなく5つの波があったのです。

文献やサイトなどで調べてみたのですが、こうした発想は、先達の業績にはまったく見つかりませんでした。その意味では、おそらく世界で初めて人口波動を確認したものともいえるでしょう。

これによって、マルサスが『
人口論・第6版』(1826年)で初めて提唱した「人口の長期的推移は波を打つ」という視点、つまり「オシレーションズ(Oscillations)」(擺動、波動と翻訳)という理論的仮説を、ともかくも実証することができたと思います。

「この種の擺動はおそらく普通の人にははっきりと見えないであろう。そして最も注意深い観察者にとってすら、その時期を計ることは困難であろう」と述べていたマルサスの波動が、誰にでも見分けられるのです

グラフの初出は『
日本人はどこまで減るか』(2008年)であり、その改良版は「5つの人口波動から解く、日本の人口が浮上する条件」(『人の死なない世は極楽か地獄か』所収、2011年)や「人口減少社会の背景と展望」(統計研究会『ECO-レポート』(2015年1月号)に載せています。

さらにいえば、「横軸:逆対数」という発想は、単にグラフを作成する上での改良に尽きるものではありません。


それを超えて、人類の歴史を振り返る時には、古い時代の微量かつ長期の変化は圧縮し、新しい時代の大量かつ短期の変化は拡大して考えるべきだ、というパラダイムそのものの転換を意味しているからです。

2018年10月13日土曜日

「修正ロジスティック曲線」を重ねて「多段階人口波動曲線」へ!

人口波動説のオリジナリティー第6は、長期的な人口の推移を、「修正ロジスティック曲線」を何度も繰り返す「多段階人口波動曲線」である、と改めて定義したことです。

例えば世界人口の超長期的な推移を見ると、いくつもの波が発見できます。

フランスの歴史人口学者
J-N.Birabenなどが行った、詳細な推計に基づく、下記の グラフで見ても、人口の推移にはつ、もしくは6つの急増期があることが読み取れます。








このグラフの 元データをベースに、各年毎の増減率を算出してみると、次のような変化が読み取れます。




つまり、—35000年頃、—5200年頃、—3000~1500年頃、—1000~—200年頃、1000~1150年頃、1800~1970年頃の、ほぼ6つの時期で増加率が高まっていることがわかります

このうち、3番目と4番目は長期的な増加傾向と読めますから、合わせることもできそうです。


そこで、筆者はそれぞれの時期の前後を区切りとして、5つの時期別に人口推移をグラフ化し、さらに連結してみると、下図のような図面を描いてみました。

このような波動が現れる、基本的な背景として、筆者は次のように考えています。


●人間の個体数(人口)は、人口容量(自然環境×文明)の上限に達すると、修正ロジスティック曲線」を辿る

●人間は自ら自然環境を改善する能力、つまり文化や文明を創造する能力を持っているから、それによって新たな人口容量を作ることができる。

●人口の停滞が続いている間に、新たな人口容量を作り出す、新しい知恵・技術・世界観が生まれてくると、それまでの「抑制装置」の鍵が外れ、本来の増加圧力によって人口は再び増加を開始する。

●その結果、長期的な人口の推移は、一つの修正ロジスティック曲線から新たな修正ロジスティック曲線へと、次々に階を重ねる、連続的な曲線を辿っていく。

そこで、この曲線に対し、筆者は「多段階人口波動曲線」という名称を与えました。

個々の「修正ロジスティック曲線」が次々に階を重ねて、連続的な「多段階人口波動曲線」へ発展していく、という視点を提唱したのです。

2018年10月5日金曜日

「修正ロジスティック曲線」という視点

前回は加除式による「修正ロジスティック曲線」を提案しましたが、今回はもう一つ、乗除式による曲線で考えてみましょう。

数理生態学や個体群生態学などの分野では、密度効果を出生数と死亡数の差で表すのではなく、人口総量の増減率で表す、下記のような数式がしばしば使われています。

Pn+1=α×(1-Pn/K)×Pn

Pnはn年の人口、Kは人口容量、αは増減係数を、それぞれ表しています。

この数式を使って、Kを100人とし、αをさまざまに変えてシミュレートしてみると、Pnは下図のように変化します。



 ①α=2.0のケースでは、50人前後をピークとする、ほぼロジスティック曲線を描いています。人口容量が100人にもかかわらず、50人前後でほぼ定常状態となっているのは、αが変化した時の増減幅が50人を基準にして上下に大きく揺れることを前提にしているからです。

②α=3.0のケースでは、65人前後で小波が現れ、以後は小刻みに続いていきます

③αが3.18から3.5へ、さらに3.8へと変わるにつれて、波動の上限は大きく80~95人へ広がるとともに増減の振幅や変化パターンが多様化していきます。

こうしてみると、前回の加除式でも今回の乗除式でも、人口容量の上限に近づくにつれ、人口の動きはロジスティック曲線のような定常状態だけでなく、さまざまな動揺状態を辿るケースが多い、と推測されます。

つまり、容量制約時の人口推移は、安定的な定常状態を辿るのは稀なことで、下降、増減、回復などさまざまな推移を辿ることの方が多い、ということです。

サスティナブル(持続可能)だけではなく、カオティック(混沌)な動き見せるのが常態なのです。

これこそ、筆者の提唱する「修正ロジスティック曲線」が意味するところです。

特定の数式や方程式をさすのではなく、上限到達時以降の人口推移に多様な変化を認めようという視点や見解、そのものを示しているのです。