2015年8月23日日曜日

集約工業文明とは何か

集約工業文明とは、どのようなものになるのでしょうか。

旧石器時代の人間が新石器時代を、奈良時代の人間が江戸時代を、それぞれ予想するのは困難であったように、粗放工業時代に生きている私たちが、集約工業時代を予想することは、やはり困難なことです。



しかし、粗放工業文明の諸要素を解体してみると、その方向がおぼろげながらも見えてきます。

おそらくそれは工業前波を支えていた科学技術、市場経済制度、国際協調主義の3つを大きく変えていくことになるでしょう。

その方向を大胆に見通すとすれば、「粗放科学技術から集約科学技術へ」、「粗放市場経済から集約市場経済へ」、「無制約国際化から選択的国際化へ」という変化に集約できます。




◆粗放科学技術から集約科学技術へ


現代の科学技術は、化石燃料を〝爆発〟させてエネルギーを獲得するという、ある意味では〝粗暴〟な基盤に基づいています。パソコンやインターネットなどのソフトな技術でさえ、爆発エネルギーの提供する電力が途絶えれば、直ちに停止してしまいます。


それゆえ、次の文明を支える科学技術は、もっと緩やかに抽出できるエネルギー源に基礎をおかなければなりません。

この方向を実現するにはさまざまな対応が考えられますが、太陽光、風力、水力、地熱などのエネルギーを直接採集して集約する、より「柔らかな」自然系エネルギーへの転換が一つの方向になるでしょう。


つまり、「太陽エネルギーが長期的に蓄積された化石燃料などを採集・消費する」文明をさらに進展させて、「採集圏域を増やして、化石燃料などをより効率よく採集するとともに、エネルギーの集約や育成を図る」文明へと転換していくということです。

◆粗放市場経済から集約市場経済へ


現在の市場主義は、グローバル市場主義の乱暴な介入に国内経済が引っかき回されたり、競争激化によって貧富の格差が拡大するなど、いわば「粗暴な市場経済」の次元に留まっています。


おそらく工業後波を支える経済制度はこうした欠陥を是正して、国際性と国内性の調和、市場性と象徴性の調和、そして価値と効能(私的有用性)のバランスなどに配慮した、より「柔らかな」体制をめざすことになるでしょう。

◆無制約国際化から選択的国際化へ


これまでの国際主義は、一国の国境を絶対視しつつ、そのうえでどの国とも平等につきあうという、いわば「粗っぽい国際主義」でしました。


しかし、今後はその方向が微妙に修正されていきます。21世紀の地球では人口が爆発的に増加して、2020~2030年ころには食糧・資源・エネルギーが不足し、環境汚染も深刻化します。このため、先進国、途上国を問わず、世界各地で物資の奪い合いや環境汚染のなすり合いなど、さまざまなパニックの発生するおそれが急速に高まります。

そこで、日本もまた、従来の野放図な全面的国際化を修正し、農業国との連携や資源保有国とのタイアップなど、互いに援助しあえる国々との間で、新たな連携をめざす選択的国際化を進めることが必要になってきます。その意味で、日本の外交目標は、無制約国際化から選択的国際化へと転換していかなければなりません。

21世紀後半から22世紀にかけての文明は、以上のような形で、現在とはかなり異なる方向へ向かう可能性があると思います。

2015年8月11日火曜日

集約工業文明に向かって

世界波動も日本波動も、〔人口容量=自然容量×文明〕という式で、右辺の文明が石器文明、農業文明、工業文明と進むにつれて、人口容量が増加してきたことが、それぞれの成因となっています。

より詳しくみると、石器文明は旧石器文明と新石器文明、農業文明は粗放農業文明と集約農業文明、工業文明は粗放工業文明によって、それぞれ5つの波を作ってきました。

石器文明、農業文明、工業文明という区分を「大文明」、旧石器文明、新石器文明、粗放農業文明、集約農業文明、粗放工業文明という区分を「細文明」と名づけますと、文明と人口波動の関係は、次のように整理できます。

世界波動でいえば、5つの細文明が世界各地に成立し拡大したことにより、世界の人口波動が生まれてきました。

日本波動においても、5つの細文明によって、5つの人口波動が生まれていますが、このうち、旧石器文明と粗放農業文明という細文明は日本列島の外側から入ってきた移入的な文明であり、新石器文明と集約農業文明という細文明は列島の内部で育まれた内発的な文明です。

石器文明でいえば、アジア大陸や太平洋地域から渡来した旧石器文明が、日本列島の中で進展し、石器プラス土器を作る文明、いわゆる縄文文明を生み出すことによって、新石器文明に変わっていきます。

揚子江流域から入ってきた粗放農業文明が、日本独自の集約型農業の進展によって、集約農業文明に進展していきます。

つまり、日本列島では、大文明の前段階は外部から入ってきた文明であり、後段階は内部で育まれた文明ということができます。

以上の視点に立つと、私たちの現況を見る目が変わってきます。私たちは今、史上最高度の文明社会に生きていると考えがちですが、実のところは、まだ工業文明の前段階を経験しているだけではないのか、という見方です。

下図で見るように、日本列島の人口波動は、石器前波と石器後波のペア、農業前波と農業後波のペアの後で、最後の工業文明に到達しています。とすれば、工業文明にはもう一つ高度な段階、つまり「集約工業文明」が期待できます。私たちの生きている工業文明社会は、まだ粗放工業文明の段階に留まっており、次の段階では集約工業文明へ向かっていく、ということです。 

 
旧石器時代から縄文時代へ、平安時代から江戸時代へと時代が移行したように、昭和・平成時代の次には、もう一つ新たな時代が来る。そうなると、12800万人まで持ちこたえた人口容量を、22世紀以降には倍以上に引き上げていくこともできる、という大きな展望が生まれてきます。

2015年8月3日月曜日

世界波動と日本波動の関係は・・・

世界の人口波動(世界波動)と日本の人口波動(日本波動)の間には、どのような関係があるのでしょうか。


①双方に5つの波動(石器前波、石器後波、農業前波、農業後波、工業現波)が見られます。

②この背景には、〔人口容量=自然容量×文明〕という式で、右辺の文明が石器文明、農業文明、工業文明と進むにつれて、人口容量が増加してきたという推移が指摘できます。

③石器文明、農業文明、工業文明の、それぞれの詳細な内容については、世界と日本ではやや異なっていますが、基本的な構造においては共通するものがあります。

④石器文明、農業文明には、それぞれ前期段階(粗放段階)と後期段階(集約段階)の、2つの次元がありました。工業文明にも、次の段階が考えられます。

⑤石器文明(旧石器と新石器)によって石器前波と石器後波が生まれ、また農業文明(粗放農業と集約農業)によって農業前波と農業後波が生まれました。その後、工業文明の前段階(粗放工業)によって工業現波(工業前波)が生まれたと考えれば、今後は後段階(集約工業)によって工業後波が生まれることが予想できます。

⑥新たな文明によって人口容量が拡大している間は、世界波動も日本波動も、ともに人口が増加・成長しますが、人口容量の限界に近づくにつれて、停滞・減少へ移行しています。

以上のように、人類は文明の発展に伴って人口容量を拡大させ、それとともに世界においても、日本においても、人口の増加・成長と停滞・減少を繰り返してきました。5つの人口波動が共通する要因はここにあります。

こうした視点に立つと、1960年代から提唱されてきた未来学、例えばD.ベルの「脱工業社会(Post-Industrial Society論や、A.トフラーの「第三の波The Third Wave)」論などは、あまりにも皮相的な展望と思えます。

現在の工業文明の次に来る文明は、D.ベルのいうような、知識や情報が中心となった文明などではありません。また農業革命、産業革命の前に石器革命があったという「第一の波」を見落したA.トフラーが、「第三の波」と予測したような情報文明でもありません。

両者とも、次の文明を「情報や知識が中心となる文明」と考えているようですが、それは単に人口増加が終わった後の「一時期」を表しているにすぎません。

人口の長期的な推移から見れば、いずれの人口波動においても、人口の停滞・減少期は知識や情報の比重が高まっています。石器前波、石器後波、農業前波、農業後波のそれぞれの後半は、いずれも知識・情報の時代でした。「知識文明」や「情報文明」などというものは、決して未来の文明などではなく、それは人口波動の停滞・減少期の時代的特徴にすぎないのです。

現在の工業文明、つまり粗放工業文明の次にくるのは、もう一段階高度化した工業文明、つまり「集約工業文明」だと思います。