2021年6月25日金曜日

ル・ルネサンスは集約・統合的な社会知をめざす!

ル・ルネサンスが準備すべき事項として、先に述べたように、①集約的・統合的集中性という知性の回復、②集約的なNew Science(新科学)の準備倫理・使命感を持ったNew Cosmology(新世界観)の創造、の3つを挙げています。

②③についてはすでに述べましたので、今回は➀集約的・統合的集中性という知性の回復を考えてみます。

前回、科学という識知の新たにめざすべき方向として、「言語機能は分節化から合節化へ」「数値機能は数値絶対化から数値相対化へ」「把握機能はシステム化からストラクチャー化へ」の、3つを提案してきました。

こうした転換は科学に限ったことではなく、科学を基盤としている、現代社会のあらゆる知的分野に及んでいくと思われますが、とりわけ急がれるのは、政治、経済、社会などの社会知ではないでしょうか。

今回のコロナ禍で現代の社会構造には、【ポストコロナは「ル・ルネサンス」へ!】以降で度々指摘してきたとおり、グロ―バル化、民主主義制、市場経済制などにおいて、さまざまな混乱が露呈しています。

グロ―バル化・・・コロナ禍への対応が混乱するにつれて、国際機関の空洞化、国際市場経済制の欠陥化、食糧・資源・燃料などの枯渇化といった現象が目立ち始め、安易なグローバリズム信仰が大きく動揺しています。

民主主義制・・・多くの国家が採用している間接民主制についても、❶制度固定化による無力感や不信感の増加、❷政党選挙制による個別意見の排除、❸代議制による政治的無関心の拡大、❹投票者は政策内容・実施状況の検証・理解が困難、❺選挙活動における利益誘導や投票誘導などの不正など、その限界が露呈しています。

市場経済制・・・資本主義国家はもとより、国家資本主義国家においても、❶資本の寡占化や横暴化が進み、❷所得格差の慢性的拡大、❸大量生産-大量消費の害毒化、❹物質的拡大限界化に伴う情報的過剰化・弊害化など、市場経済制度そのものの限界が目立っています。

こうした混乱を乗り越えていくには、科学における識知転換を大きく援用して、社会制度の設計においても、「言語機能の合節化」「数値機能の相対化」「把握機能のストラクチャー化」といった、3つの側面から再検討していくことが必要だと思います。

詳細な検討が求められると思いますが、ひとまずは基本的な方向をあげておきましょう。

グロ―バル化・・・過剰な国際分業を見直し、国際分業と国内自給を整合化することや、国際交流の量的拡大を超えて、質的な充実をめざすために、点と線による一元的な国際交流から、何層かの面を重ねていく多元的な国際交流へと転換していきます。

民主主義制・・・間接民主制の弊害を超えるため、直接民主制の利点を再導入したり、全てを数で決していく多数決絶対制を見直して、少数意見を的確に反映できる合意形成方式を生み出すなど、点と線による権力集中的な国内統治から、面と面を重ねて民意を統合する国内統治へと、それぞれ移行していきます。

市場経済制・・・圧倒的な市場交換中心経済から、生活民一人一人の自給や物々交換を活かせる経済構造に向かって、数量的な指標を優先する行動視点から、量と質の調和をめざす行動視点への転換を図り、点と線による効率優先の生産・分配方式から、面と面を重ねて中身を濃くする生産・分配方式へと、それぞれ転換していきます。

以上の記述は、まったく新たな目標の設定ともいえますから、従来の用語では表現できない事象が多々現れてきます。

詳細な説明は後述することにして、とりあえず大きな目標をあげておきます。

2021年6月15日火曜日

ル・ルネサンスは集約・統合的科学をめざす!

・ルネサンスが準備すべき事項として、先に述べたように、①集約的・統合的集中性という知性の回復、②集約的なNew Science(新科学)の準備、③倫理・使命感を持ったNew Cosmology(新世界観)の創造、の3つを挙げています。

③については前回述べましたので、今回は②集約的なNew Science(新科学)の準備を考えます。

ポストコロナの50100年の間に、現在の粗放的・分散的な科学を超える、集約的・統合的な科学を果たして準備できるのでしょうか。

それに求められる、時代識知の条件を大局的に考えてみると、次の3つが浮かんできます。


順番に説明していきましょう。

分節化から合節化へ

言語を使う、最も基本的な方向として、対象を仕分けして理解することよりも、分けられた対象を合わせて理解する方向へ、と重心を移していくことが求められるでしょう。

分析や解析で得られたコト(言葉)をどのように組み合わせて、新たなコトをいかに創り出していくのか、その方向へ思考の動きを移していくということです。

分析対象を理解する作業でいえば、作業を細かく分業化したうえで全体を取りまとめる方式から、分業はするものの、絶えず全体を念頭に置いて、分業と統業を繰り返していく方式へと移行させていくのです。

数値絶対化から数値相対化へ

工業前波を創り出した科学技術が大きく依存している数値記号思考を、より広い思考方式へと移行していくことが求められます。

現代社会の思考における数値絶対主義は、感覚の捉えたモノコト界を分節的に把握する識知能力の一つにすぎません。

科学技術をさらに進めようとするなら、数値記号と対象観念の間の固定的な枠組みをもう一度見直して、数値が分節化できない対象をも表現できるような、新たな数値記号を生み出すとともに、それらを論理化する、新たなシンタックス(統辞法)の創造が求められるでしょう。

システム化からストラクチャー化へ

分節化で得られた事象の核を網の目状に捉えて全体を理解するという思考方式から、合節化された対象を風呂敷状に重ね合わせて全体を理解するという把握方式へ、思考行動を移行させていかなければなりません。

特定の目的を素早く達成する思考方式としては、網の目状の「システム」の方が確かに適していますが、全体的・本質的な中身をつかんで理解していくには、風呂敷状の「ストラクチャー」の方がふさわしいと思います。

いいかえれば、便利な「システム」思考が全体から漏らしてしまった事象、それもまた、そっくりそのまま把握できるような「ストラクチャー」という思考方式が、改めて求められるのです。

以上のように、ル・ルネサンスが挑戦すべき新科学の準備においても、誰もが疑っていないような現代科学技術の基底論理そのものの見直しがが求められるでしょう。

2021年6月4日金曜日

ル・ルネサンスは新世界観を生み出す!

前回述べたように、・ルネサンスのめざす、新たな方向の一つとして、「倫理・使命感を持ったNew Cosmology(新世界観)を創造・並立し、分散型社会の暴走や弊害を抑えること」が求められます。

モデルとなる農業の識知構造では、集約農業を生み出した万物合観(Integrationism)とともに、宗教(Religionという倫理・使命的世界観が並立していました。

高度な農業文明による社会・経済構造が生み出され、さらに個人の人生や社会の在り方を明示する世界観が、世の中をリードしていた、といえるでしょう。

ところが、私たちが生きている工業前波では、粗放的な科学技術観のみが拡散し、全体がどこへ向かうべきかを示す世界観が極めて脆弱な状況にあります。

政治も経済も学問も、いずれも効率的な科学技術志向にのみ支配され、個々の人生や社会全体がどこに向かうべきなのか、こうした目標はほとんど議論されていません。

いいかえれば、700年前にルネサンスが破壊した中世宗教的世界観が、その後も弱体化したまま続いており、それらをカバーするような、新たな倫理・使命的世界観が未だ生み出されていないのです。

とすれば、ポストコロナで始まる、今回のル・ルネサンスにおいても、今後50100年の間に、集約的な科学技術の萌芽に加えて、まったく新たな世界観の創立もまた求められることになるでしょう。

工業後波のモデルとなる農業では、時代識知としての宗教が、【農業後波はリリジョンが作った?】で述べたように、農業前波(BC3500AD400年)の下降期から農業後波(AD400~1400年)の始動期に、新たに生み出され、ほぼ確立されています。

この時期に生まれた、さまざまな宗教のうち、現代にまで強く継承されているのは、仏教、ヒンドゥー教、キリスト教、イスラム教の4大宗教です。

仏教BC463年インドに生まれたガウタマ・シッダールタにより創始され、BC41世紀に経典化が進みました。紀元前後にサンスクリット語の大乗仏典が編纂され、AD2世紀には大乗仏教として中国へ伝播しています。

ヒンドゥー教はインドやその周辺の庶民信仰が受け継がれて、BC4世紀頃にインダス川周辺で原型が形成され、AD2世紀にグプタ朝において発展し定着しました。ヒンドゥー教聖典群プラーナは、AD314世紀の間に成立したものと推定されています。

キリスト教BC4、ユダヤに生まれたイエスが創始し、AD3~5世紀に新約聖書として文書化が進みました。

イスラム教AD570年頃アラビア半島に生まれたムハンマドを開祖とし、AD650年にコーランとして文書化されています。

こうしてみると、4大宗教は概ねBC5AD6世紀頃に創始されていますが、文書として経典化され始めたのはAD17世紀であり、AD5世紀頃からの農業波を立ち上げる原動力となった、と思われます。

とりわけ、仏教、ヒンドゥー教、キリスト教の3つは、農業波の飽和~下降期に始まり、下降~始動期に識知体系を整えています。

この時期は、農業波の末期にあたるラストアンシェント(Last Ancient200650年頃)であり、次の農業波を創りだすための「一つ前のルネサンス(Former Renaissance」とでもよぶべき時代でした。

とすれば、工業前波の下降期(20302100?年)であるル・ルネサンスにおいても、新たな世界観が準備される可能性が十分に予想できます。