2015年2月26日木曜日

人間の人口抑制装置は二重のしくみを持っている!

さまざまな動物は遺伝的な個体数抑制装置を持っており、その行動には①生殖・生存力抑制、②生殖・生存介入、③生殖・生存格差化、④集団離脱、の4つがあります。こうした抑制装置は、人間という〈種〉の中にも保持されているのでしょうか。

動物の場合、これら4つの抑制行動は、いずれも遺伝的に引き継がれている行動要因、つまり本能的、あるいは生得的な装置に従っています。生得的とは遺伝情報がその動物に予め組み込まれているという意味で、逆にいえば動物の意思(それがあるか否か、それ自体が問題ですが)とは、ほとんど無関係に機能しているということです。

ところが、人間の場合は、「本能が欠如した動物」(日高敏隆:1930~2009)とか「本能が壊れた動物」(岸田秀:1933~)といわれているように、本能によって対応する方法を著しく欠いています。文化という能力を持ったがゆえに、本能の働く力が薄れている、といってもいいでしょう。となると、4つの行動はどのように変化しているのでしょうか。

①の生殖・生存力抑制については、人間の場合もほとんど動物と同じです。食糧不足、環境悪化、高ストレスに晒されていると、精神的・肉体的に体力が低下し、一方では精子減少、排卵減少、性交不能、不妊症、生理不順、流産・死産の増加といった生殖能力の低下が顕著になり、他方では病気の増加、寿命の低下、胎児・乳幼児の死亡率増加といった生存能力の低下現象が発生してきます。


これらはいずれも、人間という〈種〉に備わった生殖・生存力の抑制行動であり、その意味では他の動物と共通する遺伝的、生得的な抑制装置といえるでしょう

しかし、②生殖・生存介入、③生殖・生存格差化、④集団離脱については、人類の歴史を振り返ると、民族や時代によって極めて多種多様な方法がとられており、必ずしも遺伝的、生得的とはいえないようです。



例えば、堕胎(妊娠中絶)、間引き(嬰児殺し)、避妊、あるいは棄民や姥捨て(老人遺棄)といった直接的な次元はもとより、性交禁止や結婚禁止などのタブーや慣習といった間接的な次元、あるいは集団逃亡、強制移民といった離脱的な次元まで、人間はさまざまな方法で対処していますが、そこには民族や時代の世界観が色濃く反映されています。


その意味で、これらの行動は人間に特有な言語的、象徴的能力、つまり広義の「文化」に基づいているというべきでしょう。

とすれば、人間にとって、②~④は遺伝的、生得的な行動ではなく、後天的、人為的な行動ということなります。他のさまざまな行動と同様に、人口抑制についても、人間は「文化」という独自の方法を援用しているのです。

このように考えると、人間の人口抑制装置は、生物的(=生理的)次元と人為的(=文化的)次元の二重構造になっている、といえるでしょう。


注:二重構造については、BLG生活学マーケティングを参照のこと。
 (詳しくは古田隆彦『日本人はどこまで減るか』)

2015年2月25日水曜日

人間もまた個体数抑制をしている!

個体数抑制装置は、人間にもあてはまります。

例えば出産回避の理由として、私たち個々人は経済的理由、優生保護、自己実現制約など、さまざまな意図や目的をあげていますが、それらが集約されると、全体としての人間集団はその人口を抑制しているからです。

要するに、人間もまた動物である以上、独自の「人口抑制装置(Population Control Mechanism)」を持っており、キャリング・キャパシティー=人口容量が上限に近づくにつれて、それらを無意識のうちに作動させている、ということです。

もっとも、このように書くと、必ず反論があります。「原生動物から哺乳類まで、異次元の動物が行っている抑制行動の中から都合のよいものを抜き出して、人間に当てはめるのは不当」とか、「動物次元の生得的(本能的)な行動を、理性を持った人間に拡大するのは論理の飛躍」といった類の批判です。

ご批判には納得する点もありますが、あまりにも狭い視野ではないでしょうか? もう少し視野を広げて柔軟な見方に立ち、「さまざまな種類の動物はそれぞれ独自の個体数抑制装置を持っている可能性がある。とすれば、動物の一種である人間も、それなりの人口抑制装置を持っているのではないか」とは考えられないでしょうか?

そこで、人間の個体数抑制装置、つまり人口抑制装置とはどんなものなのか、それはどのように作動しているのか、を改めて考えていきましょう。

 (詳しくは古田隆彦『日本人はどこまで減るか』
)

2015年2月24日火曜日

抑制行動は遺伝的、生得的に発動する!

①~④の行動をさまざまな動物が意識的、あるいは意図的に行っているわけではありません。
 
動物たちは、キャリング・キャパシティーが満杯に近づくと、これらの行動を自動的に開始しています。というより、キャパシティーが上限に近づく前から徐々に始めています。これは一種の予知能力ともいえるものですが、どうしてそんなことができるのでしょうか。

いうまでもなく、動物たちが人間と同じような、理性的な予測能力を持っているとは思えません。にもかかわらず、これらの行動が自然に行われるのは、環境汚染の度合い、食糧獲得の難易さ、お互いの接触回数といった環境変化が進むにつれて、それぞれの種に予め備わった遺伝的なしくみ、いわば「個体数抑制装置」が自動的に作動し、生理的に反応してしまうからです。

ここで「装置」と書いたのは、抑制のしくみがさまざまなメカニズムで成り立っており、一種の「機械」や一定の「機構」と同じように、予め準備されていて、必要な時に必ず作動し始める、という意味です。
 
例えばハツカネズミやサルといった哺乳類でも、個々の動物が生息環境の制約を意識しているわけではありません。それぞれの群れの中で接触頻度や競争関係が濃密になってくると、各個体の内部でも次第にストレスが高まり、それとともに遺伝的に組み込まれていた行動が呼び覚まされて、共食い子殺といった激しい行動へ突っ走るのです。


つまり、キャリング・キャパシティーへの対応行動は、個々の個体の意思や反応というよりも、遺伝的、あるいは生得的(生れつき生体にそなわっている)な行動様式に基づいている、といえるでしょう。
 
  (詳しくは古田隆彦『日本人はどこまで減るか』)

2015年2月23日月曜日

生死増減・生殖活動に関わる行動はすべてがキャリング・キャパシティーへの対応!

つのパターンのうち、②の生殖・生存介入は直接的に個体数を抑える行動であり、③の生殖・生存格差化は生殖や排除を介して間接的に個体数を抑える行動です。

前者では共食いや子殺しが増えると死亡数が増加し、後者ではなわばりや順位制が強まると出生数が減り死亡数が増えますから、それぞれ個体数が抑えられることになります。

もっとも、生物学や個体群生態学などでは、③の行動は特定の個体が繁殖を最大化するための適応戦術(性淘汰)だ、とも説明しています。ハヌマンやライオンの子殺しは、あくまでもオスの繁殖機会を広げるための行動であって、その結果として個体数が抑制されたとしても、環境制約が子を殺す直接的な動機になっているわけではない、というのです。

とすれば、性淘汰の前提になっているなわばりや順位制もまた、特定のオスの繁殖戦術であって、環境制約への対応ではない、ということにもなるでしょう。

しかし、わなばりや順位制そのものが、もともと生息環境の制約に対応するためのしくみであり、効率的に食糧を獲得するためのしくみでもあることを考え合わせると、「環境制約への対応行動ではない」などと短絡化することはできません。

また、わなばりから排除された「外れ個体」の多くが死に瀕することを考えると、縄張りや順位制もまた、間接的とはいえ、個体数の抑制に関わっているといえるでしょう。

要するに、個々の動物の意図や動機が何であれ、全体として個体数抑制へ向かっているか否かという視点からみれば、生死増減と生殖活動に関わるあらゆる行動は、すべてがキャリング・キャパシティーへの対応とみなすことができるでしょう。

 
 (詳しくは古田隆彦『日本人はどこまで減るか』)

2015年2月20日金曜日

個体数抑制行動には4つのパターンがある!

これまで見てきたように、動物の社会では、キャリング・キャパシティーが飽和してくると、それぞれの種(しゅ)に備わった独自のしくみで個体数を抑制しています。

人間の目からみるとかなり残酷で悲惨な行動ですが、それはヒューマニズムや博愛主義といった、人間特有の価値観のせいであり、動物にとっては種が生き残るための、必然的な行動といえるでしょう。

さらにいえば、人間の社会でも、食糧・資源不足、環境悪化、高密度化などで人口容量が飽和するにつれ、出生数減少、死亡数増加、移住・移民の増加など、似たような抑制行動がとられています。子殺しや共食いといった極端な行動でさえ、避妊、中絶あるいは闘争や戦争という行動を思い起こせば、ほとんど同じようなものでしょう。

とすれば、さまざまな動物の抑制行動には、人間社会にも共通する人口抑制行動の原型が潜んでいます。そこで、以上の抑制行動を整理してみると、次の4つの基本パターンが浮かんできます。

①それぞれの種に備わっている、本来の生殖能力と生存能力、つまり個体の属する群れの出生率・死亡率の増減で個体数を抑える(産卵率低下、幼虫死亡率上昇、成虫死亡率上昇など)。
 ②個々の個体の生殖力や生存力を抑えるような生殖抑制行動や生存抑制行動をあえて行なって、個体数を抑える(成虫の卵食い、子殺し、兄弟殺し、共食いなど)。
 ③キャリング・キャパシティーを小分けすることで、生殖力と生存力に格差を設け、群れ全体の個体数を抑える(なわばり、なわばりと子殺しの併用、順位制、ハレム制など)。
 ④特定空間から一定数の個体を分離させることで、群れの個体数を抑える(移住体型への移行、集団移動など)。

このように、動物の社会で一般的に行なわれている個体数抑制行動は、①生殖・生存力抑制、②生殖・生存介入、③生殖・生存格差化、④集団分離、の4つに整理できます。




  (詳しくは古田隆彦『日本人はどこまで減るか』)

2015年2月18日水曜日

哺乳類はなぜ増えすぎないのか?

哺乳類でも、さまざまな個体数抑制装置が働いています。代表的な事例を見てみましょう。

ハツカネズミ・・・飼育容器の中で飼われているハツカネズミは、生息密度があがってくると、生まれたばかりの子どもを食べてしまう。さらに生息密度が高まると、親どうしで共食いを始めて、個体数を抑えている(日高敏隆『動物にとって社会とはなにか』)。




ノウサギ・・・野生のノウサギは、生息環境に制約が出てくると、胎児を子宮の中に戻すことで、個体数の増加を抑えている(H.V.Thompson and A.N.Worden,the Rabbit)。



オットセイ・・・北方の島に生息するオットセイのオスは、メスより一足先にやってきて、なわばり獲得のために激しい闘争を行う。後からやってきたメスは、1匹のオスの作ったなわばりの中に出産場所を求め、その所有物となってハレムを形成する。出産場所に適した場所に広いなわばりを獲得した強力なオスは、自動的に多くのメスを所有するが、10歳未満の若いオスはなわばり闘争に破れて、交尾のチャンスを逃す。こうしたしくみで、オットセイは生息環境に見合った個体数に抑制している(日高・前掲書)。
 

ライオン・・・タンザニアのセレンゲティ草原に生息するライオンは、成体のオス1匹と複数のメスで1つの群れを作り、なわばりを作って獲物を捕らえている。この群れのオスが他のオスによって追い出されて入れ替わると、新しいオスは前のオスの子をすべて殺す。メスの出産間隔は、授乳中の幼い子を持つ場合は20~30カ月であるが、子を失った場合は間もなく妊娠し新たなオスの子を生む。複数のメスから一斉に生まれた子は、獲物を競い合う年上の子がいないので、生き残る確率が高くなる。追い出されたオスは老齢であったり怪我をしているため、間もなく死亡する。こうしたしくみで個体数が常に抑制されている(杉山幸丸『子殺しの行動学』)。



ハヌマン・・・インドのダルワール地方に生息する猿、ハヌマンも1匹のオスと複数のメスが1つの群れとなって、なわばりを作っている。この群れでオスが入れ替わると、新しいオスは前のオスの子をすべて殺す。それによってメスの生殖行動を促し、新オスの子を増やしていく。こうした行動をくりかえすことによって、ハヌマンは個体群の増えすぎを抑え、共倒れを防いでいる(杉山・前掲書)。
 
古田隆彦『日本人はどこまで減るか』より再録) 

2015年2月15日日曜日

鳥類の個体数抑制行動を探す!

鳥類の個体数抑制行動では、次のような事例が報告されています。

シロフクロウ・・ツンドラ地帯に生息するシロフクロウは、主食であるタビネズミが減少する4年ごとに、南部へ向かって集団で移動する。移動のきっかけは、食糧が漸減するにつれて奪い合いが生じ、各個体がストレスを感じるようになった時である。このストレスが群れ全体に広がると、競うように移動を始める(伊藤嘉昭・桐谷圭治『動物の数は何で決まるか』)。



カンムリクマタカ・・・鷲の一種、カンムリクマタカの番いは、数日の間に続けて2つの卵を産む。その順序で雛がかえると、最初の雛は次の雛を攻撃して数日の間続けるが、親鳥は決して干渉しない。その結果、次の雛は常に殺され、1匹だけが生き残る。猿などの中型哺乳類を主食とする親鳥が、2つ目の卵を産むのは、1つめが壊れた時の予備的行動であるが、食糧が希薄な環境の下では、メスが幼い雛を育てている間、オスは1羽だけで食糧を探さなければならず、3羽分の獲得が供給限界となる。そこで、1羽の雛を殺すことによって、3羽が生き延びる(G.ブロイアー『社会生物学論争』)。



コクルマガラス・・・1群の数が数10羽にもなるコクルマガラスは、それぞれの順位を認識しており、餌を食べている時、自分より順位の高い個体が肩をいからせて近づいてくると、おとなしく餌場を空けわたす。また順位の高いオスは順位の低いメスと番いになれるが、逆はありえないため、成鳥になりたての若いオスは、生殖にあずかるチャンスがほとんどない。一定の生息環境の下でのカラスは、食糧分配と生殖機会の制約という二重のしくみで個体数を抑制している(K.ローレンツ『ソロモンの指輪』)


古田隆彦『日本人はどこまで減るか』より再録)

2015年2月14日土曜日

魚類も個体数を抑制している!

魚類でも、幾つかの種で個体数抑制が報告されています。これらもまた、個体数抑制装置といえるもではないでしょうか。

グッピー・・・鑑賞用の熱帯魚グッピーを、餌を充分に入れた養魚鉢の中に雌雄とりまぜて50匹を入れておくと、卵が孵化する度に成魚が直ちに稚魚を全て食べて、個体数の増加を抑える。さらに成魚同士が共食いを始め、9匹になったところで個体数が安定する。生息密度の上限を越え始めた数を、グッピーは子殺しや共食いで抑制している(V.C.Wynne-Edward,Animal Dispersion in Relation to Social Behavior)。



ワカサギ・・・長野県諏訪湖のワカサギの体重は、多く生まれた時には軽くなり、少なく生まれた時には重くなる。メス1匹あたりの産卵数は体の大きさに比例するから、親が小型化すると産卵数も減少する。湖の生息環境は一定であり、数が増えると、1匹あたりの餌の分け前は少なくなる。そこで、体型の変化によって産卵数を増減し、長期的に個体数を抑制している(宮下和喜『絶滅の生態学』)。


マジロモンガラ・・・珊瑚礁に生息するマジロモンガラは、1匹のオスが大きななわばりを作って、その中に複数のメスの小さななわばりを入れる。オスは他のオスに対しては大なわばりを防衛し、またメスたちはそれぞれの小なわばりを防衛する。1つの珊瑚礁に作られるなわばりの数は限られているから、そこに入れなかったメスは産卵できない。その結果、珊瑚礁内での個体数が抑制される(日本生態学会編『生態学入門』)。
(古田隆彦『日本人はどこまで減るか』より再録)

2015年2月12日木曜日

昆虫の個体数抑制行動

動物の個体数は絶えず増加する傾向を持っており、キャリング・キャパシティーに余裕がある時には、ロジスティック曲線を辿って増えていきますが、余裕がなくなると、修正ロジスティック曲線に沿って停滞から減少へ向かいます。個体数がキャパシティーの上限に近づくと、さまざまな抑制行動を開始して、自ら増加を抑えるようになるからです。

実際、生物学や個体群生態学の調査・研究では、なんらかの理由で生息環境が飽和した時の個体数抑制行動を、昆虫、魚類、鳥類、哺乳類などの調査を通じ、さまざまな形で把握しています。先学諸兄の研究成果に感謝しつつ、それらの中から代表的なものあげてみましょう。まず昆虫では次のようなケースが報告されています。


コクゾウムシ・・・米や麦につくコクゾウムシは、個体数が少ない時にはさかんに交尾するが、成虫の数が小麦一粒あたり10匹に近づくと急に交尾頻度を落とす。小麦一粒あたりの生息密度が制約となって生殖行為が抑制され、個体数が調節されている(日高敏隆『動物にとって社会とはなにか』)。


 ヒラタコクヌストモドキ・・・先にあげた貯蔵穀物害虫のヒラタコクヌストモドキは、生育密度が高まるにつれ、成虫、卵、蛹に対する共食いが増加して、発育途上の死亡率を上昇させ、生育環境の悪化を事前に解消している(高橋史樹『個体群と環境』)






シオカラトンボ・・・シオカラトンボのオスは、池などの水面になわばりを張り、他の雄が入ってくると追い払うが、メスが入ってくると交尾してその中で産卵させる。メスの産卵に適した場所は、一定の生息空間の中では限られているから、なわばりの防衛に成功したオスだけが子を増やせ、失敗したオスは子を増やせない。一定の地域内でのトンボの個体数は、このしくみにより抑制されている(日本生態学会編『生態学入門』)。


トノサマバッタ・・・草地に生息するトノサマバッタは、幼虫時代の接触密度が低いと、緑色や茶褐色で翅も肢も短い「孤独相」という成虫になるが、接触密度が高いと、色が黒く翅も肢も長い「群集相」という成虫に変わり、外部の情報や刺激に敏感に反応するようになる。その結果、群集相は群れをなして生息地から飛び立ち、大空一杯に広がって、数100キロの間、田畑を食い荒らしていく(日高・前掲書)。

 (古田隆彦『日本人はどこまで減るか』より再録)

2015年2月11日水曜日

個体数抑制装置とは何か

生息密度が上がるにつれて、原生動物から哺乳類までさまざまな動物たちは、幾つかの方法で個体数を抑える行動をはじめ、キャパシティーに確かな余裕が出てくるまで続けていきます。実際、生物学や生態学の現場からは、この現象を裏付ける観察結果が数多く報告されています。

その行動には大きく分けて、①群れの出生率・死亡率増減、②個体の生殖力・生存力抑制、③キャリング・キャパシティーの分割=生殖力・生存力の格差化、④群れの分割=集団離脱、の4つがあります。






いずれも、それぞれの種に遺伝的、あるいは生得的(=本能的)に引き継がれている行動要因、いわば「個体数抑制装置」というべきものです。この装置が、環境汚染の進行度、食糧獲得の難易さ、お互いの接触回数など、生息密度が濃くなるにつれて作動しているのです。

2015年2月9日月曜日

「修正ロジスティック曲線」を提唱する!

いくつかの動物の個体数は、増加から上限まではロジスティック曲線をたどりますが、その後、定常的な直線を持続するのはごく短期間で、むしろ下降していくケースが多いようです。

なぜでしょうか。その理由を筆者は下図のように考えています。動物の数が少ない時には、出生数が増えて死亡数も低いのですが、数が増えて生息密度が高まると、密度効果で出生数が落ちて死亡数も上がってきます。そこで、個体数は伸びなくなりますが、一旦、2つの傾向が始まってしまうと、両者が同じ数になった後も、その数をバランスよく保ちつづけることは稀で、出生数は落ち続け、死亡数は増え続けます。









このため、死亡数はしばしば出生数を追い越して、そのまま個体数を減少させます。ロジスティック曲線は定常から下降へと移行していきます。結局、個体数の変化は、微増→急増→漸増→定常→漸減→急減→微減というプロセスを辿ることになります。

こうした推移は、自然界の一つの原理を示しています。つまり、動物の個体数では「サステティナビリティー((sustainability=持続可能性)」とか「静止人口(stationary population=増減のない人口)」といった推移はかなり稀な現象である、ということです。

近年、環境学者の多くが「サスティナビリティー」を、また人口学者の一部が「静止人口」を、それぞれ理想的な社会目標だと論じていますが、これらの概念はあくまでも人間の理想、あるいは幻想にすぎません。生物界の個体数では「激減」や「下降」が当り前なのです。

そうなると、ロジスティック曲線の論理をより広く社会的な現象に応用していくには、新たな名称が必要になってきます。前半はロジスティック曲線、後半は下降していく曲線に、新たな名前が必要ということです。

そこで、筆者は新たな名称として、1996年刊の『人口波動で未来を読む』(日本経済新聞社)で「変形ロジスティック曲線」を、その後、1998年刊の『凝縮社会をどう生きるか』(NHKブックス)では「修正ロジスティック曲線」を提唱してきました。つまり、「修正ロジスティック曲線」こそ、ロジスティック曲線に代わる、一般的な人口法則と考えたのです。



















おかげさまで「修正ロジスティック曲線」は、幾つかの専門分野で支持を得られ、さまざまな応用が行われるようになってきました。


http://www.rikkyo.ac.jp/feature/sympo/2006/1021.html
https://www.hulinks.co.jp/mj/mj_1305.html
https://staff.aist.go.jp/shiro-hara/lecture/lecture-production.pdf

2015年2月7日土曜日

ロジスティック曲線から外れる3つの事例

さまざまな動物の個体数変化を追っていると、ロジスティック曲線から外れるケースがいくつか報告されています。代表的な事例をあげてみましょう。

①ゾウリムシ・・・原生動物のゾウリムシを一定の容器の中で飼育すると、その個体数は分裂増殖によって増え始め、初めのうちロジスティック曲線を辿っていくが、次第に水平状態となり、しばらくその状態を続けるものの、その後は減少していく。



















②ヒラタコクヌストモドキ・・・貯蔵穀物害虫のヒラタコクヌストモドキを小容器の中で生育させると、20週まではロジスティック曲線を辿って増加した後、30~60週までは横ばいを続けるが、その後は減少していく。







③トナカイ・・・哺乳類のトナカイを、競争者である鹿も捕食者もいない無人島に放っておくと、個体数はロジスティック曲線に沿って増加していくが、一旦ピークに達すると、その後は急減していく。

















このように、いくつかの動物の個体数変化をみると、上昇から停滞までは確かにロジスティック曲線を辿りますが、上限へ達した後も定常的な直線を持続するのはごく短期間で、その後はむしろ下降していくケースが多いようです。

2015年2月4日水曜日

ロジスティック曲線を外れるケース

ロジスティック方程式は、その考案以降、ほぼ1世紀の間、忘れられていましたが、1920年代に至って、Johns Hopkins大学のRaymond PearlとLowell J. Reedが、ショウジョウバエの個体群の研究過程でこの式に到達し、フェルフルストの業績であることを再確認しました。

このため、ロジスティック方程式(曲線)は、人間の人口推移はもとより、建築資材の劣化推移や生活財の普及過程などにも応用されています。

しかし、その後のさまざまな研究によって、動物の個体数は必ずしもこの曲線とおりに推移しないことがわかってきました。先にあげた、幾つかのグラフが示しているように、キャリング・キャパシティーの上下で増減したり、キャパシティーの上限以降は次第に減少したり、しばらく減少の後で再び増加に転じるなど、さまざまな推移をたどることが指摘されています。



2015年2月2日月曜日

動物の個体数はロジスティック曲線をたどる?

キャリング・キャパシティーの下で、動物の個体数が変化していくプロセスを、統計学ではロジスティック曲線(ロジスティック方程式)でとらえています。

この曲線は、1838年にベルギーのピエール=フランソワ・フェルフルスト(Pierre-François Verhulst)が、人口増加を説明するモデルとして考案したものです。

ロジスティック(logistic)とは、軍事用語の「兵站」、つまり「食糧などの必需品を確保する」ことですが、この意味を広げて、生物の個体数は、彼らが生きていくうえで必要な生活物資に依存していることを示しています。

ロジスティック曲線は、次の微分方程式で示されます。

この式で、Pは個体数、tは時間、Qは環境収容力(Carrying Capacity)、つまり、その環境における個体数の最大値です。rは個体数自然増加率で、その生物が実現する可能性のある、最大の増加率です。実際の増加率r(Q - P )/Q は個体数P が環境収容力Q に近づくにつれて減少し、P = Q なら増加率は 0となります。P > Qの場合は増加率が負となり、個体数がQ になるまで減少していきます。


このため、個体群の増加につれて、次第に増加率へブレーキがかります。生態学でいう「密度効果」という現象ですが、個体が一つ増加することで増加率が減少する率をtとすると、r=tQ となり、t = r /Qとなります。これを上の式に代入すると、次式になります。

この式で、Pは個体数、rは個体数自然増加率、tは1個体の増加による増殖率の低下率です。つまり、本来の増殖率rに対して、個体数がPの時にはtPの分だけブレーキがかかるということです。


ロジスティック曲線は、次のようなグラフで理解されており、さまざまな動物の個体数は、この曲線にほぼ従っていることが、個体群生態学の実験により報告されています。