2017年7月28日金曜日

格差是正が人口を回復させる!

生産年齢人口の見直し、AI やロボットの活用、外国人の適切な導入などで、減少する労働力を補って、GDPの規模が維持できるとすれば、人口減少によって生まれるゆとりを活用する、2つめの条件はその公平な分配です。

人口減少でGDP /人は2倍へ」(2017年5月18日)で述べましたが、現在のGDP水準が維持できれば、1人当たりGDPは伸びていきます。

実際、現在のGDP =500兆円が続けば、国民一人当たりの所得は2015年の393万円から2050年には491万円(1.23倍)、2100年には837万円(2.13倍)へと増えていきます(いずれも実質)。

人口が減る社会では、経済規模が伸びなくても、個々人は豊かになっていくのです。

これを実現していくには、GDPの維持、分配の公平化、移民影響の最小化など、幾つかの条件があります。

「GDPの維持」については、すでに述べてきましたので、2番目は「分配の公平化」です。

いわゆる「経済格差」「所得格差」の問題ですが、これを表す指標として、一般的に使われているのが「ジニ係数」です。

ジニ係数とは、所得がどれくらい均等に分配されているかを、0から1の数字で表す指標であり、0に近いほど格差が少なく、1に近いほど格差が大きいことを示します。

厚生労働省の「所得再分配調査」に基づいて、その推移をグラフ化してみると、下図のようになります。


上の線が雇用者所得や事業所得などを示す「当初所得」、下の線が当初所得から税金と社会保険料を控除し、社会保障給付を加えた「再分配所得」です。

一見してわかるのは、当初所得のジニ係数が1970年代までの縮小傾向を捨てて、1980年代以降は徐々に拡大していることです。とりわけ2000年代に入ると急拡大しています。

これこそ、最近とみに喧伝される「格差拡大」の実態ですが、この傾向が今後も続けば、仮に1人当たりのGDPが増えたとしても、経済的なゆとりを国民全体に浸透させていくことはまず不可能でしょう。

とはいえ、下線の再分配所得のジニ係数は、1980年ころから拡大はしているものの、その伸び方はかなり緩やかで、2005年以降は縮小傾向さえ見せています。これは税と社会保障による格差是正がそれなりに効果をあげていることを示しています。

となると、人口容量のゆとりを国民全体へ配分していくためには、2030~60年代に向けて、次の両面からの対応が求められます。

①雇用者所得の適正化や事業所得への適正課税などにより、所得実態の公正化を進める。

②社会保障などの適正化によって、格差拡大の抑制を進める。

こうした対応によって所得分配が平準化していえば、その分だけ人口回復の可能性が高まってくるものと思われます。 

2017年7月17日月曜日

外国人の労働力を受け入れる!

人口減少時代にGDPを維持していくには、「人口減少でGDP /人は2倍へ!」(2017年5月18日)で述べたように、まずは労働力の確保が必要です。

それには、①労働力対象の見直し、②AIやロボットなど新技術による生産性の向上③外国人労働力の受け入れ、の3つが求められます。

①②についてはすでに述べてきましたので、③について付記しておきますと、すでに「
外国人を増やせるのか?」(2015年1月20日)と「プラス、マイナスの分岐点は?」(2015年1月21日)で触れたように、今後は外国人常住者の受け入れを毎年平均3.7%の割合で増やしていかなければなりません。

だが、それに伴って、総人口に占める比重が次第に高まり、2030年には3%台、2040年には4%台、そして2050年には7%台へ急上昇します。

この比率が5%を超えるあたりから、ヨーロッパ諸国では社会・経済のさまざまな側面で、プラス面よりマイナス面が顕在化しているようです



となると、わが国においても、2040~50年代に5%を超えるまでは、プラス面の効果の方が期待できるものと思われます。

いずれにしろ、人口が減少する時代にGDPを維持していくには、マイナス現象、あるいはデメリット現象への対応を的確に行ったうえで、外国人の受け入れを徐々に行うことが求められます。


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この件に関しては、同趣旨の論文を16年前、『中央公論』(2001年10月号)に寄稿しています。→現代社会研究所サイト
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2017年7月4日火曜日

人工知能やロボットを激活する!

生産年齢人口や労働力人口の減少をカバーするには、人工知能やロボットなどの最先端技術を最大限に活用しなければなりません。

㈱野村総合研究所の推計(2015年12月)によると、10~20年後には国内労働人口の49%に当たる職業が、人工知能やロボットで代替される可能性が高い、とされています。



どのような職業が代替されるのか、次のように指摘しています。

代替可能性の高い職業は、製造や販売などの現場作業であり、可能性の低い職業はクリエイターや研究者、医者や保育士などである。

代替可能性が高のは、必ずしも特別な知識・スキルが求められない職業や、データの分析や秩序的・体系的操作が求められる職業であり、逆に代替が難しいのは、抽象的な概念の知識や他者の理解、交渉などが必要な職業である。

要するに、日本の生産を支えている、さまざまな職種のうち、単純労働や定例的労働などについては、ほぼ半分ほどが人工知能やロボットに置き換えられる、ということです。

このためか、人工知能やロボット技術の進歩によってさまざまな職業が不要になり、失業者が急増するのではないか、という懸念や不安も囁かれ始めています。

しかし、人口減少時代に日本の生産力を全体として維持していくには、一人一人の生産性を上げていくことが必要です。

人工知能やロボットに置き換えられる職種は積極的に代替を進め、その余力を代替不可能職種に振り向け、既存業務全体の生産性を上げていく。そのうえで、生産性の高い新商品や新サービスを創り出す分野へと移行させていく。

人工知能やロボットの導入で失業者が増えるとしても、彼らを非代替分野へ積極的に振り向けることで、全体として不足する労働力をカバーしていかなければなりません。

人口減少時代には、職業能力対策もまた、人口増加・成長・拡大型社会とは異なる、人口減少・飽和・濃密型社会に即した方向へと、大胆に対応していくことが求められるのです。