2017年11月27日月曜日

Sustainable から Ripplable へ!

環境問題で目標となっている「Sustainable(持続可能な)や「Sustainability(持続可能性)というキーワードを、人口問題に持ち込んで、人口もまたSustainableやSustainabilityをめざすべきだ、という意見があちこちで囁かれています。

しかし、人口問題に長く関わってきた立場からいえば、かなり違和感があります。

人間を含む動物の人口では、さまざまな事例が示すように、ピークに達した後、そのままの数を持続するのではなく、一旦はダウンするケースが一般的であるからです。

キャリング・キャパシティー(Carrying Capacity)とよばれる環境許容量の上限に達すると、自らその数を減らしていきます。

もっとも、ダウンした後、キャリング・キャパシティーに余裕が出てくると、もう一度アップし始め、再びその上限まで増加していきます。だが、そこでまた壁にぶつかると、またまたダウンし始めます。

その結果、動物の数はキャリング・キャパシティーの範囲内で、小刻みな波動を繰りかえすことになります。

その推移は、いわば「さざなみ=小波(Rippleです。


こうした現象は、人間の場合でも基本的には同じですから、人口容量が増えない限り、その人口もまた、容量の下で増減を繰り返していくことになるのです。




実際、農業後波の後半、江戸中期の人口推移を振り返ると、同じような傾向が読み取れます。



とすれば、人口波動後半の社会とは「Sustainable(持続可能な)」や「Sustainability(持続可能性)」をめざすものではなく、強引に形容詞化あるいは名詞化すれば、「Ripplable(小波的な)や「Ripplablity(小波的継続性)へ向かうものだ、ということになるでしょう。

2017年11月19日日曜日

人口減少で結婚観が変わってきた!

人口が減少し始めてからほぼ10年、人口容量に多少のゆとりが生まれるとともに、人口抑制装置もまた微かながら緩み始めています。

例えば結婚観の変化です。第15回出生動向基本調査(国立社会保障・人口問題研究所)によると、「結婚することに利点がある」と感じている未婚者は、2010~15年の間に男性で1.9%、女性で2.7%増えています。逆に「結婚することに利点がない」と感じている未婚者は、男性で1.0%、女性で1.3%減っています

僅かの差のようですが、長期的推移を下に掲げたグラフで確かめると、トレンドが変わってきたことが推測できると思います。

とりわけ、女性の結婚観が大きく変わり始めています。


女性が結婚相手の男性に求める条件を振り返ると、バブル経済時代の1990年頃には「3高」(高学歴・高収入・高身長)でした。

20年後、人口ピーク時直後の2010年頃には「3平」(平均的な年収・平凡な外見・平穏な性格)に変わった、といわれています。

7年後の現在では、これが「3NO」(暴力しない・借金しない・浮気しない)に変化しているようです(㈱パートナーエージェント、調査対象:25〜34歳の独身女性1897人)。

「3高→3平→3NO」という変化の背後には、経済環境の変化とともに、人口容量の変化が潜んでいるようです。

バブル経済が絶頂で人口容量にも440万人のゆとりがあった時代には、かなり背伸びした対象を求めていました。

だが、経済環境が悪化し人口容量もゼロとなった時代になると、背丈に見合った対象を探すようになりました。

しかし、経済環境がやや回復し、人口容量にも300万人ほどゆとりが生まれてきた現在では、もはや「3高」には戻らず、より慎重な条件に対象が変わってきています。

この理由は、人口減少社会への対応が始まっているからだと思います。人口のピークを挟んで、それ以前と以後では、国民の基本的な生活意識は大きく変わっているのです。

人口増加時代の価値観が「成長・拡大」志向であったのに対し、減少時代のそれは「飽和・濃密」志向に変わってきています。人口減少を前提にしつつ、その中でできるだけ濃密な生き方を求めていく、という方向です。

こうした変化が人口抑制装置の作動を緩め始めると、結婚する人口もまた徐々に増えていくことになるでしょう。

2017年11月9日木曜日

人口容量のゆとりが抑制装置を緩める!

人口減少の進行で人口容量にゆとりが生まれた時、人口が回復するか否かについて、さまざまな視点から眺めてきましたので、一度ポイントを整理しておきましょう。

人口容量と人口抑制装置の基本的関係は【
人口減少は極めて〈正常〉な現象!:2015年3月24日】で述べたよう、次の数式で説明できます。
 この式を変形すると、次のようになります。

 人口容量が一定という環境下で、人口減少でゆとりが出てくると、1人当たりの生活水準が上がり始め、人口抑制装置の緩和する可能性も生まれてきます。そのプロセスは大略、次のように説明できます。

①P(総生息容可能量)は一定だが、人口が減るとV(実際の人口規模)も減るから、L(一人当たりの生息水準)は上がっていく

②Lが上がれば、親世代は素直に子ども増やす選択を採る。また子ども世代は老年世代を扶養する選択を採る。

③その結果、親世代は結婚に踏み切り、避妊や中絶などを回避して、出生数を増やす。また子ども世代は老年世代の世話や年金負担を続けるから、老年世代の生息水準も維持されて、死亡数が減る

④Pが伸びない時代には、動物界のなわばりや順位制のように、Pの分配をめぐって競争が激化するが、Lが増えれば競争は弱まり、分配分の格差も縮小するから、結婚して子どもを増やしたり、老年世代の世話を継続するようになる。

⑤こうした環境下で個々の人間が選ぶ、結婚や同棲などの促進行動、避妊や中絶などの回避行動、老年者介護や年金負担などの扶養維持行動が、次第に集団に広がって、社会的なムーブメントとして定着する。その意味で、これらの行動は人為的・文化的な抑制装置を緩和させることになる。

以上のような視点に立つと、人口容量の範囲内で人口を回復させていくには、次のような対応が求められるでしょう。


人口容量を落とさないように努める。

②人口の回復を焦らないようにする

③的外れの対応で、1人当たりの生息水準を無理に上げないようにする