2023年7月25日火曜日

地球の人口容量はなぜ限界に至ったのか?

世界人口は、2050年代に8889億人でピークとなる確率が高まっています。

さまざまな要因が絡まっていますが、その第一は人口容量の限界化です。

人口容量=地球環境×近代文明】が限界に近づいているからです。

この式で「近代文明」とは、産業革命以来の科学技術主導による社会構造を意味しています。

それが限界に差しかかかっているのは、次のような事情によります。


①食糧・資源・燃料などの限界化

世界人口の生命や生活を支える食糧・資源・燃料などには、それぞれ限界が迫っています。

生産高の限界が迫るうえ、グローバル化の拡大で進行してきた、食糧・資源・燃料供給の相互依存関係にも揺らぎが見え始めています。

食糧では、パンデミックを機に、❶供給国の輸出規制、❷食糧関連産業の労働者不足、❸物流の停滞、❹買いだめ・備蓄などが進行し、世界的な食糧危機が懸念されるようになりました。

資源・エネルギーについても、石油や天然ガスは、21世紀中に枯渇に向かい始め、200300年は可能と言われてきた石炭もまた、22世紀には供給量がピークとなるなど、化石燃料の資源枯渇が予想され始めています。

このため、風力、太陽光など自然系エネルギーに注目が集まっています。二酸化炭素などの環境汚染物質をほとんど出さず、継続的に利用可能であることから再生可能エネルギーとよばれていますが、未だシェアは広がっていません。

さらに地熱、波力、海洋温度差などの無機系エネルギーに、有機系のバイオマス燃料を加えて、さまざまな研究開発が進められてはいますが、未だ実用化するまでには至っていません。

こうしてみると、工業現波を支えてきた生活財供給体制にも、その限界が現れ始めているようです。

 

②廃棄物増加による地球汚染の深刻化

世界人口の排出物に対する、地球の処理力が衰え、地球温暖化や環境汚染などが露呈し始めています。

産業革命以降、先進各国が効率の高い社会をめざして、大量の化石燃料を生産活動に投じた結果、膨大な温室効果ガスが排出され、数々の気候変動や異常気象を招いています。また核燃料系は高濃度放射能を拡散させるなど、地球環境や生活環境を破壊する恐れも高まっています。さらに車の排気ガスや工場からの排出煙などで、有害物質が空気中に流出し、人体への悪影響も懸念されています。

一方、海洋や水資源でも、廃油や廃棄物工場排水や生活排水などの増加が、河川や海域の汚染を広げています。とりわけ危険視されるのは、海洋への化学用品の廃棄による「マイクロプラスチック問題」であり、対策が遅れた場合、2050年には海洋生物よりもゴミの方が多くなる、とも予測されています。陸地においても、河川、湖、池、地下水などへ生活排水や廃棄物などが流出し、水質汚染によって、生活用水への悪影響が懸念されています。

工業現波を支えてきた生産技術にも、廃棄物処理の面で、やはり限界が現れ始めているようです。

 

③国家・政治・経済など社会構造の限界化

現代社会を支えている、さまざまな社会構造、例えば国家、企業、市場制度などにも、人口容量を抑制する傾向が幾つか生まれています。

例えばグロ―バル化の過度の進展によって、国際機関の空洞化、国際資本主義の肥大化、資源・食糧・燃料などの枯渇化といった現象が目立ち始め、安易なグローバリズム信仰が大きく動揺し始めています。

過度のグローバル化によって、各国は基盤となる生活財までも輸入に依存する産業構造に傾斜させられた結果、それぞれ自給自立構造を弱体化させているのです。

また社会制度の中核である民主主義制についても、ポピュリズムの拡大や、コニュミズムの倒錯による全体主義の拡大という国際情勢の中で、その脆弱性が目立ってきました。

さらに経済構造においても、資本主義を採る諸国家はもとより、国家資本主義を採る国家においても、資本の寡占化や横暴化が進み、所得格差の慢性的拡大、大量生産-大量消費の害毒化、物質的拡大限界化に伴う情報的過剰化といった弊害が拡散することで、市場経済制度そのものの限界が目立つようになってきました。

さまざまな社会構造の変化もまた、人口容量の的確な維持や拡大を抑制するようになっています。


以上のように、近代社会を支えてきた近代文明の構造そのものが、工業現波の人口容量の限界を示唆し始めているのです。

2023年7月5日水曜日

世界人口はなぜ減っていくのか?

このブログでは、何度も述べていますが、世界人口にピークが迫っています。

国連の最新人口予測「World Population Prospects 2022」によれば、世界の人口は中位値で2086年に104億人、低位値で2053年に89億人で、それぞれピークとなります。

ワシントン大学・保健指標評価研究所の「Forecast 2020」によれば、参考値で2064年に97億人で、SDG準拠値で2050年の88億人で、それぞれピークに達します。

今回のコロナ禍の影響を考慮すると、国連の低位値、ワシントン大のSDG準拠値へ接近する可能性が限りなく高まっています。

そうなると、10億人以上の国々では、中国が2022年、インドが20465億人以下の国々でも、ロシアが2022年、ブラジルが2033年、アメリカが2040と、主要な国々が2050年より前にピークに達します(国連・低位値)。

今後30年ほどの間に、世界中の主要国はいずれも人口減少へ向かうことになる、ということです。

なぜピークに達するのか、さまざまな見解がありますが、当ブログの視点からいえば、地球の人口容量が限界に近づき、人口抑制装置が作動し始めているからです。

現在の地球人口の推移、つまり「工業現波」は1400年頃にスタートし、1900年頃から急拡大した人口波動ですが、2000年を超えた辺りから徐々に停滞し始め、今後30年ほどで増加から減少に転ずる、ということです。

人類の歴史を、長期的人口波動から振り返れば、5回目の減少が始まろうとしているのです。

そうなると、増加から停滞へ、停滞から減少へ、そして減少継続へと進む、21世紀の世界は、いかなる方向へ変化していくのでしょうか。人口波動説の立場から、おおまかに展望しておきましょう。


人口容量の限界化・・・【人口容量=地球環境×近代文明】が限界に近づいている。

容量/人間の拡大化・・・世界各国で生活民の生活水準が急上昇し、分配量を急増させている。

抑制装置の作動・・・人口急増が人口容量を突破するという、壊滅的な破局を避けるため、さまざまな人口抑制装置が作動し始めている。

およそ半世紀は減少の時代・・・世界各国で人口減少が定着するにつれて、さまざまな縮小対応策が生まれてくる。

減少期は次期波動の準備期・・・縮小策の検討の中から、新たな人口容量の創造をめざす、大胆な発想転換が行われ、幾つかの具体策も進み始める。

以上のようなプロセスを、さらに詳しく考えていきましょう。