2022年12月21日水曜日

生活願望で新産業の行方を考える

人減先進国の向かうべき、新たな産業分野として、①人口容量維持産業、②情報深化推進産業、③濃密生活対応産業の3つを提案してきました。

前回はRE産業の視点から、それぞれの方向を考えましたが、今回は生活願望の視点から、新たな方向を展望してみましょう。

いうまでもなく、この視点は社会全体として消費需要を示すものではなく、あくまでも一人一人の生活民の立場から見た生活需要の方向を意味しています。

私たち生活民が心に抱く生活願望の構造は、別のブログで説明していますが、この上に上記の3方向を重ねてみると、次のような図になります。






これによって、生活構造の各分野における生活願望と期待される新産業の方向が、下図のように想定されます。



それぞれの内容をとりあえず、大まかに想定してみましょう。

社会制度分野

【社会欲望】

●生活資源安定産業・・・生涯生活資源の確保を補完する金融・理財産業・・・例:私的生活保障ビジネス

●情報インフラ安定産業・・・生活判断の多様化に対応する情報基盤産業・・・例:次世代通信システム関連産業

●デジタル共同体産業・・・DXDigital Transformation)の進展を応用した、新たな共助組織を育成する情報産業・・・例:次世代コミュニティー育成ビジネス

【社会欲求】

●食糧安定産業・・・国内自給・国際調達の高度化産業・・・例:高度生産性農業

●エネルギー安定産業・・・生活用エネルギーの安定供給産業・・・例:自然系発電産業

●生活インフラ安定産業・・・住宅・都市・道路など公共基盤安定化産業・・・例:公共基盤高度メンテナンス産業

【社会欲動】

●デジタル新感性産業・・・DX進化に連動する感覚拡大産業・・・例:デジタル体感産業

●デジタル象徴交換産業・・・DX進化に連動する相互共助産業・・・例:デジタル共助育成産業

共生生活分野

【共生欲望】

●生活保障多様化産業・・・生涯生活資源の多様化を実現する産業・・・例:新型生涯保障産業

●デジタル情報多様化産業・・・生活の多様化に対応する情報提供産業・・・例:デジタル医療サービス産業

【共生欲求】

●生活安全支援産業・・・日常生活の安全・安定化を促進する産業・・・例:デジタル防災サービス産業

●生活機能AI化産業・・・生活機能の多様化に対応するデジタル産業・・・例:多国的日常通訳産業

【共生欲動】

●共同感性活性化産業・・・DX進化を応用する新芸術産業・・・例:デジタルアート推進ビジネス

●デジタル祝祭産業・・・DX進化を応用する新祝祭産業・・・例:デジタル祭礼推進ビジネス

私的生活分野

【私的欲望】

●独自生活支援産業・・・個性的生活の充実化に応える新産業・・・例:自己実現支援産業

●情報発信支援産業・・・個人情報発信の多様・拡大化に応えるデジタル産業・・・例:自己発信支援デジタル産業

【私的欲求】

差延化支援産業・・・個人的効能の拡大に応えるリアル・デジタル産業・・・例:DIY支援産業

●特注化拡大産業・・・特注拡大に応えるリアル・デジタル産業・・・例:オーダー簡易化産業

【私的欲動】

●感覚活性化産業・・・五感の拡大を促すリアル・デジタル産業・・・例:VR-リアル化産業

●無意識活性化産業・・・無意識の多様化を促すデジタル産業・・・例:催眠誘導デジタル産業

上記の事例だけでは、具体的な内容には届いていませんので、個々の産業の詳細については、追って検討していきます。

こうしてみると、人減先進国では、人口容量の維持を前提にしつつ、濃密化する生活願望を情報の高度化によっていかにして実現していくか、が新たな産業開発の中核的な課題となっていきます。

2022年12月6日火曜日

RE産業が時代を切り拓く

人減先進国の向かうべき産業分野として、①人口容量維持産業、②情報深化推進産業、③濃密生活対応産業の3つを提案してきました。

さまざまな産業に共通する要素として、某経済新聞の編集委員が提案した「レコノミー時代」の「レ(RE」の視点から改めて整理してみます。

レコノミーとは「RE型経済:re-economy」を略したもので、古着、中古品、再生品など再生型経済への移行が加速する昨今の経済動向を、集約的に表現した新語です。

この視点を応用すると、人減時代の中核産業では、さらに「RE」を重ねていくことになると思います。



人口容量維持産業で述べた扶養量対応産業では、食糧、衣料素材、建築材料などについても、国内で可能な限り自給していく産業への転換、つまり「再供給:rechargeが求められます。

もう一つの許容量対応産業でも、成長・拡大型の新規事業を抑えて、既存の国土・都市環境をいかにして「保存reserve・改善:reformしていくか、という飽和・濃密型需要への対応が、新たな産業目標となってきます。

情報深化推進産業のうち、電子情報の活用が進んだ認識転換推進産業では、視覚・聴覚・触覚・空間知覚など、感覚的な認知行動に大きな変化が進むにつれて、理知的な識知行動にも「再生:renovaterefreshともよぶべき変化が生まれてきますから、これに対応する、新たな産業の創造が期待されます。

さらにル・ルネサンス推進産業では、環境世界の捉え方が変革され、現代社会の次に来るべき、新たな社会を生み出す時代識知へも転換、つまりルネサンスの再来ともよぶべき「ル・ルネサンス:Re-Renaissanceが進展し、それに伴って、「新科学:Re-Scienceともよぶべき、新たな時代識知からさまざまな新産業が生み出していきます。

濃密生活対応産業においても、従来の膨張型生活(Expanding Lifeから、新たに濃密型生活(Condensing Lifeへ移行していくにつれて、社会(交換・同調・価値)よりも個人(自給・愛着・効用)を、言語(理性・観念・記号)よりも感覚(体感・無意識・象徴)を、生活構造の肥大化よりも濃縮化を、それぞれ「再評価:reassessする傾向が強まってきますから、それぞれに対応する産業が伸びていきます。 

以上のように、人減先進国では、経済の「レコノミー」化という次元を大きく超えて、社会構造の変革をめざす「ル・ルネサンス」化が新たな目標となるでしょう。 

2022年11月27日日曜日

人減先進国・濃密生活対応産業とは何か?

人減先進国の向かうべき産業分野として、①人口容量維持産業、②情報深化推進産業、③濃密生活対応産業の3つを挙げてきました。

前回の「情報深化推進産業」に続き、今回は「濃密生活対応産業」、いわゆる「コンデンシング対応産業」を考えてみます。

人口減少が少なくとも7080年は続く以上、人口増加を前提に、生活民一人当たりの物質的な需要のみを成長・拡大させ、生活市場を拡大させるというような産業対応は、もはや通用しません。

人口は減っても、述べたように、人口容量が維持されていけば、生活民一人一人に与えられた個人容量は増えていきますから、それらを精神面や生きがい面など、内面的な濃密性の充足に対応させることで、消費量を倍増させるような、新たな生活産業が必要になってきます。

いかなる産業なのか、この件については、筆者の別のブログ【生活学マーケティング】で詳細に述べていますので、その要旨を紹介しておきます。

●人口減少時代の生活様式は、上昇志向、物的拡大、自己顕示といった人口増加時代の様式を超えて、足元志向、心的充実、自己充足などをめざすものとなる。一言でいえば、濃密な生活、つまりコンデンシング・ライフ(Condensing Lifeこそ、新たな生活様式になる(コンデンシング・ライフを求めて!)。

生活民の生活構造は、【これが生活体だ!】【「生活民」の生活構造とは・・・】【「生活体」から「生活球」へ】などで述べているように、3つの軸から構成されている。

縦軸感覚(体感・無意識・象徴)と言語(理性・観念・記号)を両極とする。

横軸個人(自給・愛着・効用)と社会(交換・同調・価値)を両極とする。

前後軸では真実(儀礼・学習・訓練)と虚構(遊戯・怠慢・弛緩)を両極とする。

3つの軸が交わる中心として、「日常・平常」な生活が位置づけられる

●このような構造を前提にすると、従来の膨張型生活(Expanding Lifeから、今後の濃密型生活(Condensing Lifeでは、次のようなトレンドが強まってくる。

❶社会(交換・同調・価値)より個人(自給・愛着・効用)を重視する。果実でいえば、売れるか否かよりも、自分の好みや馴染みを重視する。・・・基本は差延化!

❷言語(理性・観念・記号)より感覚(体感・無意識・象徴)を重視する。衣類でいえば、デザインやブランドよりも、着心地や保温を重視する。・・・下降型生活行動へ向かって!

❸真実(儀礼・学習・訓練)と虚構(遊戯・怠慢・弛緩)の、両方の密度を高める。勉強の中身を深めるととともに、遊びの中身も濃くしていく。・・・虚実濃密行動とは何か?

3軸が交わる「日常・平常」な生活は、肥大化よりも濃縮化へ向かう。暮らしの規模は、量的な拡大よりも、質的な充実をめざす。・・・差別化の本質が変わる!


以上で述べた4トレンドの濃厚化に対し、人口容量維持産業情報深化推進産業がいかに的確に対応していくか、それこそが人減時代産業育成の中心的な課題となるでしょう。

2022年11月16日水曜日

人減先進国・情報深化推進産業とは何か?

人減先進国の向かうべき産業分野として、①人口容量維持産業、②情報深化推進産業、③濃密生活対応産業の3つを挙げてきました。

前回の「人口容量維持産業」に続き、今回は「情報深化推進産業」、いわゆる「IT応用深化産業」を考えてみます。

今、世界が向かいつつある人口減少社会では、増加時代の物量的拡大とは異なり、情報的充実の時代になっていきます。

増加時代の時代識知は、人口容量の増加をめざして物質的な拡大を推進してきましたが、容量が満杯に近づき、人口が減少し始めると、量よりも質を追い求めるようになるからです。

1980年代以降、急速に進んできたITInformation Technologyという現象自体が、科学技術によって物的拡大を推進する時代が終わりに近づき、質的充実へと転換したことを示しています。

それゆえ、モダン社会も最終段階の「ラストモダン」へと向かいつつあります。

ラストモダンでは、これまでの科学技術という時代識知への、さまざまな反省が試みられ、次の時代を創り出す、新たな時代識知(多分、新版科学技術)への模索、つまり「ル・ルネサンス」が展開される、と予想できます。

こうしたトレンドに乗って、情報産業もまた、新たな次元へと突入してきます。

昨今「4次産業革命」などと表現されている段階ですが、それは第1次(水力や蒸気機関による工場の機械化)、第2次(電力による大量生産)、第3次(電子工学や情報技術によるオートメーション化)に続く第4次(IoT、ビッグデータ、AIによる生産革命)という位置づけです。

しかし、人口波動という、より長期の視点に立つと「第5次情報化」ともよぶべき時代です。第1次の石器前波末期(石器の用具から情具へ!)、第2次の石器後波末期(縄文文明も用具から情具へ!) 、第3次の農業前波末期( 3情報化の時代 、第4次の農業後波末期(4次情報化の時代)に続く、第5次の工業現波末期という位置づけになるからです。

つまり、今後の人減社会で急速に進んでいく情報化やAI化とは、工業現波末期=ラストモダンを象徴する「5次情報化」を意味しているのです。
とすれば、情報深化推進産業とは、生産や経済構造の進化を担うという次元を超えて、科学技術という時代識知を見直すという目標をめざすことになるでしょう。

その方向とはいかなるものでしょうか。3つの次元で大まかに展望してみましょう。



電子情報活用産業

IoTInternet of Things)、AIArtificial Intelligence)、Metaverseなど、急速に進展する電子情報化を、生産・流通・サービスなどに能動的に応用して、後述する濃密型生活態様に対応する、新たな産業や斬新な供給形態を柔軟に創造していく。

認識転換推進産業

電子情報化の浸透に伴って、私たちの感覚次元では、仮想空間の中で感じる視覚・聴覚の変化、ハプティクス(Haptics:触覚操作)が加わった触覚や空間知覚の変動など、感覚的な認知行動に大きな変化が生じる。そうなると、これらの変化に影響されて、私たちの理知的な識知行動にも、かなりの変化が生まれてくる。こうした世界環境に対する認識行動に変化に積極的に対応する、新たな産業の創造が期待される。

ル・ルネサンス推進産業

新たな認知・識知行動によって、環境世界の捉え方が変革されてくると、それに対応して時代識知の変革が進んで行く。ラストモダンの第5次情報化が進むとともに、工業前波の次に来るべき工業後波を生み出す時代識知が形成されていく。それは、ラストミドルのルネサンスが生み出した「科学」という時代識知を超えて、ラストモダンのル・ルネサンスが育て上げる新たな知性、「新科学」ともよぶべき時代識知なのである。こうした識知の形成に対応して、それらを応用する新産業が生み出される。

以上のように、情報深化推進産業では、従来の電子情報の進展を促進するばかりか、その範疇を大きく超えて、「新科学」という新たな時代識知の育成を助長するような、さまざまな産業が期待されます。

2022年11月7日月曜日

人減先進国・人口容量維持産業とは何か?

人減先進国の向かうべき産業分野として、①人口容量維持産業、②情報深化推進産業、③濃密生活対応産業の3つを挙げてきました。

最初に「人口容量維持産業」、いわゆる「サステナブル対応産業」とはいかなるものか、を考えてみましょう。

人口容量12800万人の基本である生活資源の規模を維持していくには、図に示したように、扶養量と許容量の両面への対応が必要であり、両方を確保していくには、国内での生産と国外からの調達の両方向があります。 





扶養量対応産業

扶養量対応では、生活資源(食糧・衣料・住居など)や生活素材(熱源・移動・通信など)といった、生活基礎物質を確保する産業の維持が求められます。

従来の人口増加社会では、これらの資源や素材の大半を国外からの輸入に頼ってきました。しかし、ラストモダンに突入した、今後の世界では、需給環境が極めて不安定化する可能性が高まっており、自給率を高めていかなければなりません。

それゆえ、食糧はもとより衣料素材や建築材料などについても、国内での生産量を増やし、可能な限り自給していくような産業の振興がまずは必要となります。

それでも、国内では調達できない資源や素材については、国外からの調達がどうしても必要ですから、それらの輸入対価を得られるほどの輸出製品を生産する、さまざまな産業の振興もまた振興していかなければなりません。

その時、新たな輸出商品として求められるのは、従来の成長・拡大型商品ではなく、後述するような濃密生活対応商品となるでしょう。そうした商品の開発する産業こそ、国内需要を超えて、人減社会の新たな産業構造をリードしていくことになるでしょう。

 

➁許容量対応産業

許容量対応では、人口密度(過密・過疎など)の居住限界や廃棄物(生活・産業廃棄物・排出ガスなど)の処理限界といった、さまざまな制約を緩和する産業が求められます。

過密・過疎など居住環境の限界を調和する、土木・建築などの生活環境改善産業では、成長・拡大型の新規事業を抑えて、既存の国土・都市環境をいかにして保存・改善していくか、という飽和・濃密型需要への対応が、新たな産業目標となってきます。

一方、大気汚染・水質汚染・廃棄物増加などへの環境改善産業では、国内での対応はもとより、国際的な環境保全需要に対応する、さまざまな産業の育成が求められます。その意味では、国際連合の提唱するSDGs17目標のうち、地球環境対応の5目標に連動するともいえるでしょう(それ以外の12対策については当ブログのSDGs)

以上のように、見てくると、両方の産業はともに、人口容量の拡大をめざすのではなく、既存の人口容量をいかにして維持していくか、を目標にしています。

その意味において、人口容量維持産業とは、広義の「Sustainability(サステナビリティ)」を実現する産業ともいえるでしょう。

2022年10月28日金曜日

人減先進国に適応する産業を考える!

人減先進国を目ざす日本が、現在の経済的人口容量を100年後も維持していくには、1574歳の国民の11人が、現在の35倍の生産性を上げなければならない、と述べてきました。

それを実現するには、従来の成長・拡大型社会に適応した産業構造を大きく超えて、人口減少に見合った飽和・濃縮型の産業構造へ向かうことが絶対に必要です。

飽和・濃縮型産業構造とは、いかなるものでしょうか。人減社会の構造を考えると、下図に示したような、3つの分野が浮上してきます。


 (人口の将来予測は【21世紀後半に逆転させるには・・・】参照)

人口容量維持産業・・・いわゆるサステナブル対応産業

人口容量12800万人の基本条件である環境容量、つまり自然環境の維持は食糧自給率の確保や、人口容量12800万人の基本条件である環境容量、つまり自然環境の維持には、食糧自給の確保や、空気・水・寒暖などの安定化など、生活環境の持続性を求める需要に向けて、国内での対応産業の拡大はもとより、国際的な対応産業の進展もまた必須となるでしょう。

情報深化推進産業・・・いわゆるIT応用深化産業

超長期的な人口波動の視点から見ると、人口増加時代物質的な技術開発が主導し、人口減少時代情報的な技術振興が充実する傾向が読み取れます。今回の人口減少時代もまた、物質的な科学技術から情報的な科学技術へと、産業開発の重点が移行していくと思われます。それゆえ、これまでのIT産業などをさらに深化させ、「科学」という時代識知そのものの改革や進展をめざすような、新しい識知産業が求められるでしょう。

濃密生活対応産業・・・いわゆるコンデンシング対応産業

人口減少が少なくとも7080年は続く以上、人口増加を前提に、生活民一人当たりの物質的な需要のみを成長・拡大させ、生活市場を拡大させるというような産業対応は、もはや通用しません

人口は減っても、前回述べたように、人口容量が維持されていけば、生活民一人一人に与えられた個人容量は増えていきますから、それらを精神面や生きがい面など、内面的な濃密性の充足に対応させることで、消費量を倍増させるような、新たな生活産業が必要になってくるでしょう。

以上のような飽和・濃縮型産業構造に向けて、積極的に取り組むことができれば、従来の生産性の概念を大きく超える、新たな生産性の向上可能性が生まれてくるはずです。

次回から順番に考えていきます。

2022年10月16日日曜日

誰がGDI規模を維持していくのか?

人口減少が進むと、GNIが現状の水準をほぼ維持できれば、一人当たりGNIは、現在より大きく伸びていくはずです。

まさに人減先進国の目ざすべき目標ですが、これを実現するには、国民全体のGNI維持力、つまり生産性の向上が求められます。

それには、実際に生産活動に携われる年齢階層、いわゆる生産年齢人口の規模一人一人の生産性が問われることになります。

そこで、前回設定した2115年の経済規模を前提に、生産年齢に該当する国民一人がどれくらいGNI成長を分担していかなければならないのか、を大まかにシミュレートしてみました。

目標となる2115年の経済規模2015年時価)を、次のような伸び率で設定します。

0.2成長時・・・688兆円

0成長時・・・ 575兆円

0.2成長時・・・480兆円

一方、生産年齢人口は、経済協力開発機構(OECD)の定義により1564の人口とされていますが、今後の100年間が人口構成の変化に伴って、かなり変化していくものと思われますから、3つのケースを想定してみました。

1564・・・OECDの定義・・・2115年:1871万人

2574・・・当ブログの定義・・・同:2164万人

2074・・・今回設定の定義・・・同:2302万人

上記のような生産規模3ケースと年齢別3ケースを掛け合わせてみると、次の図になります。







 



2つの図を整理して、生産年齢国民一人当たりに期待される生産額の変化を確かめてみると、以下の表になります


0.2%成長の場合、いずれの年齢定義でも、期待生産額は現在の45となる。

0%成長の場合、いずれの年齢定義でも、期待生産額は現在の3.5倍前後となる。

❸-0.2%成長の場合、いずれの年齢定義でも、期待生産額は現在の3倍前後となる。

現在の経済的人口容量を100年後も維持していこうとすれば、1574歳の間に入ってくる国民の11人が、現在の35倍の生産性を上げなければならない、ということです。

そんなことができるのでしょうか。過去には19002000年の100年間に、日本の1人当たりGDP17.5に伸びた、という研究もありますから、決して不可能ではありません。

どのような社会・経済構造が構築できれば可能になるのか、さらに考えていきましょう。

2022年10月6日木曜日

経済指標で考える100年後の日本

人減先進国・日本の社会構造を展望しています。

人口減少で個人の経済的容量はどう変わるのか?】で述べた視点にもう一度立ち戻り、経済指標から将来を展望してみます。

人口容量の大きさを経済的指標で示すGNI(国民総所得)は、今後約100年間どのように推移するのでしょうか。

人口減少の進む100年後の経済規模を想定するのはかなり困難ですが、減少が始まってすでに10数年、GNIは緩やかとはいえ、なお上昇していますから、今後もある程度の規模を維持していくことはできるのではないでしょうか。

加えて、政府はもとより産業界もまたマイナス成長を回避し、プラス成長をめざしますから、経済的人口容量は維持される可能性が高いと思います。

そこで、コロナ禍以前の2017年に達した575兆円(実質:2015年基準)が、今後どのように変化していくのか、幾つかの条件によって想定してみました。

2025の規模を575兆円と仮定したうえで、以降の変化を、年率0.5%、同0.2%。同0.1%で成長、あるいは同0%で無成長、同-0.1%。同-0.2%で縮小と想定する。

②この想定によれば、2115年のGNIは、年率0.5%で901兆円、同0.2%で688兆円、同0.1%で575兆円、同0%で572兆円、同-0.1%で525兆円、同-0.2%で480兆円となる。

0成長時を基準とすると、年率0.5%時で1.60.2%時で1.20.1%時で1.1、- 0.1%時で0.9、-0.2%で0.8となる。

人口急減を考えれば、今後の年度成長率は0.5%程度が上限かとも思われます。

よりリアルな予想となれば、+0.2~−0.2%の間と考えるべきかもしれません。

とすれば、2115年のGNI901兆円を上限に、688480兆円程度になるものと想定されます。

これらの規模を一人当たり所得(GNI/人口)で見ると、どうなるのでしょうか。

0.5%成長時には、2025年の476万円から2115年に2379万円へと5になる。

+0.2−0.2とすれば、2025年の476万円から2115年には18181268万円となり、3.82.7となる。

いずれの場合にも、一人当たりGNIは、現在より大きく伸びることになります。

まさに人減先進国の目ざすべき目標ですが、実際に生活民がこれを享受するには、適切な分配制度の進展が必須の条件といえるでしょう。

果たしてこのような成長が可能なのかどうか、次回からは経済構造や生産参加者などの側から考えていきましょう。