2019年4月23日火曜日

「時代識知」という新概念が必要だ!

新元号「令和」の制定に伴い、このブログの永年の主張であった「昭和元禄→平成享保→令和明天」について改めて説明してきましたが、ひとまず区切りがつきましたので、もう一度本論の「人口波動に伴う深層心理」に戻ります。

論述の視点は「人口波動を構成する、5つの個別波動の、それぞれの時代に生きた人間は、独自の識知で周りの世界を理解してきた」ということです。

この前提には、私たち人間は周りの環境世界を、「身(み)分け」という網と「言(こと)分け」という網の、2つの網の目を通して見ている、という視点があります。(詳しくは【
生活構造の縦と横:2015年2月25日】、【身分け・言分けが6つの世界を作る!:2015年3月3日】などをご参照ください。)

身分け」というのは、人間が自らの本能という「網」の目によって、周りの外界を理解した世界像、つまりヒトという「種」に特有のゲシュタルト((独: Gestalt:部分の集まりを越えた、全体的な構造)のことです。

また「言分け」というのは、人間が「身分け」の網の上に、もう一つ重ねている網、つまり広い意味でのコトバ(言語)やシンボル(絵や形)によって捉え直している世界像をいいます。

要するに、私たち人間は「身分け」構造という生物次元に加えて、「言分け」構造という人類次元の“二重のゲシュタルト”によって、周りの外界を把握しているのです。

このうち、視・聴・嗅・味・触の五覚による、人間の「身分け」能力については、それなりの変化はあったとしても、原始人も現代人もさほどの差はないと思われます。

とすれば、5つの人口波動を作り出してきたのは、主として「言分け」能力ということができます。つまり、「言分け」能力の変化こそ、新たな人口波動を生み出す源泉だったといえるでしょう。

例えば旧石器人石器を作りだし、獲物を獲得するようになったのは、周りの世界を他の動物とは違った見方で理解するしくみを生み出した結果だった、と思われます。

あるいは古代の農耕民鋤や鍬を作って、農耕を営むようになったのは、旧石器人とは異なる識知によって環境世界を捉えていたからだ、と考えられます。

このように、人類史が始まって以来、人類は「言分け」能力の変化によって、人口容量を拡大させ、人口を増やしてきました。

とすれば、各時代の「言分け」能力の変化、つまり「時代識知(savoir de l'époque)」の変容を一つ一つ時系列的に把握することが必要ではないでしょうか。

そこで、既存の諸学問、つまり歴史学考古学、あるいは哲学史思想史などの業績を探索してみたのですが、まことに浅学菲才のゆえか、あるいは検索方法が未熟なせいか、適切な知見や文献をみつけることはできませんでした

時代精神(ツァイトガイスト:Zeitgeist)、エピステーメー(e
pistēmē)、パラダイム(Paradigm)などの用語が、類似の現象を説明しているようですが、いずれも超長期の識知的変化を表現するには不満が残るように感じました。

何が不満だったのか、節を改めて考えていきます。

2019年4月13日土曜日

「令和明天」時代の基本トレンドを読む!

令和明天」はどのような時代になっていくのでしょうか。
令和・明天シンボル
詳細な展望については、すでに拙著『
平成享保・その先をよむ:人減定着日本展望』で述べていますが、このブログでも度々触れてきましたので、一通り整理しておきましょう。





 ポイントは5つです。

人減定着化
超長期的な人口推移で見る限り、少なくとも今後50~60年間は人口減少が継続し、それとともに社会や経済もまたそれに対応した構造に変わっていきます。・・・【人口減少→人減定着→人口回復:2017年12月10日】

脱拡大・入濃密(コンデンス)化

人減定着に対応した社会構造とは、人口増加に支えられた成長・拡大型ではなく、人口減少に見合った飽和・濃密型を意味しています。・・・【飽和・濃縮の時代へ!:2016年6月21日】

産業構造のコト主導化

人口容量を支える文明が物的な拡大に限界を見せ始めると、過去の人口減少期と同様、産業の中核は電機や自動車などモノ=ハード産業からAIやIoTなどコト=ソフト産業へ移行していきます。・・・【トイレットペーパーはなぜ記号化するのか?:2018年6月29日】

税収財源の見直し化

従来の工業産業中心の徴税構造を見直し、AI財閥や新富裕層などに適切な税負担をさせる、人口減少時代にふさわしい税制度を作り上げていきます。・・・【ポスト平成が見習うべきは・・・:2018年3月8日】

地域人口の平準化

人口容量が限界に達し、地方から人口減少が進んでいますが、東京圏の限界もまた明らかになるにつれて、全国の人口分布は平準化していきます。・・・【人口の地方分散が始まる!:2018年3月30日】

以上のような展望にはいうまでもなく、その前提として、日本を取り巻く国際情勢の変化が影響しています。

この件についても、世界の人口波動から予測した「ラストモダン社会化」を、【
人口波動で世界の未来を読む!:2018年4月19日】や【21世紀の国際情勢は・・・:2018年4月27日】などですでに述べていますが、要約すれば次の通りです。

 21世紀中葉の世界は「ポスト・パックス・アメリカーナ」です。

アメリカ合衆国が弱体化し、EU(ヨーロッパ共同体)もまた解体の危機に陥るため、世界各国で右派政権が次々に登場してくるとともに、中近東での地域紛争や、アメリカとアジア諸国間の紛争拡大も予想されます。

アメリカ主導で進展したグローバル化経済もまた、2050年を過ぎると、世界的な労働年齢人口の停滞に伴って、次第に減速していきます。

一方、インターネット文化が引き起こしたポピュリズムやオクロクラシー(衆愚政治)も、人口の飽和化が進むにつれて反省が巻き起こり、世界各地でネオ・コミュニティズム(新地縁主義)脱市場主義など、「ポストモダン」ならぬ「ラストモダン」の思想を育んでいきます。

こうしてみると、「令和明天」時代とは、世界波動においても日本波動においても、現在の「工業前波(工業現波の別名)」が終焉し、次の「工業後波」が始まる前の、一大過渡期として位置づけられるでしょう。

2019年4月5日金曜日

なぜ「令和明天」なのか?

「平成享保」から「令和明天」へ、これからの時代は変わっていきます。

前回、このように書いたところ、「なぜなのか?」とか「どういうことなのか?」というご意見やご質問を、フォロアーの皆様からいただきました。

そこで、もう少し説明を加えさせていただきます。

もっとも、この件については、このブログで何度も触れていますので、リンク先を明示しつつ、その要点のみを示すことにします。

最初は、この展望が筆者の提唱する社会予測手法
人口波動法」に基づいている、ということです。

長期的な人口推移には5つの波が推定でき、それぞれの波には【始動―離陸―上昇―高揚―飽和―下降】の6つの時期が設定できます。この6つの時期には「人口が波を打つ」という構造のゆえに、それぞれ
独自の構造が推定できます。

それゆえ、「今後の人口がどのような推移を辿るか」がおおまかに予想できれば、過去の時期を参考にして、今後の社会もまた推測できる、ということです。

このような視点に立って、今後40~50年間の社会を推定してみると、ほぼ間違いなく人口の【下降】期になっていきます。

とすれば、一つ前の人口波動である「農業後波」の【下降】期の社会を参考にして、その行方を推定することができます。

実際に比較したものが、【
「平成享保」から「××明天」へ!:2018年4月10日】です。なおこの比較で、今後の人口予測は筆者が独自に推計したもので、その手順は【人口容量に本格的な余裕が生まれると・・・:2017年10月8日】で述べています。
 
この図の「××明天」を「令和明天」に置き換えてみると、下図になります。



この図を素直に見れば、「平成享保」の後にくる、約40年間は「令和寛宝」(寛保~延享~寛延~宝暦期:1741~1764年を略す)とよぶべき時代となります。一世一元制が続くとすれば、「令和寛宝」とよぶのがふさわしいのかもしれません。

しかし、江戸時代の寛保~宝暦期は未だ人口減少対応への混乱期であり、新たな社会がめざすべき時代とは思われません。

そこで、その次に来る約40年間、つまり明和~安永~天明期にまで視線を広げてみると、この時代は当ブログでも何度も述べてきたとおり、適切な順応期に当たります。何が適切であったのかは【
人減定着の時代・明和~天明期を振り返る:2018年1月8日】や【田沼政権の10大政策:2018年1月17日】以下で詳しく述べています。

また、長寿化の進む、令和の時代は今後45~46年間続く可能性もあります。

これらの点を考え合わすと、「令和」時代の別称は、さらなる期待を込めて、「令和明天」(明和~安永~天明期:1764-1789年を略す)とよぶべきだ、と思います。

いやいや、今後約70年間の人減定着時代がめざすべき社会は、かつての「明和~天明」期なのです。

これこそ、当ブログが、「平成享保」から「令和明天」へ、と提唱した理由です。

2019年4月2日火曜日

「平成享保」から「令和明天」へ!

 新元号が決まりましたので、「人口波動説:10のオリジナリティー」を一休みし、人口波動法を応用して、令和」時代について一言述べておきます。

令和・明天シンボルこの件については、すでに【「平成享保」から「××明天」へ!2018年4月10日】やブログ【平成享保のゆくえ】などで何度も触れてきました。

だが、新元号が未定でしたので、「〇〇明天」「××明天」「新元明天」などと表現してきましたが、これらは今や「令和明天」と明言できるようになりました。

つまり、「昭和元禄」から「平成享保」へと進んできた時代は、新たに「令和明天」という時代を迎える、ということです。


なぜ「令和明天」なのか、その根拠は一体何なのか。これについても、上記の記事やサイトで詳しく触れていますので、ご関心があればご笑覧ください。

また「令和明天」がどのような時代になってゆくのか、とりあえず要点をあげれば、次のとおりです。 


人口減少定着

②脱拡大・入濃密(デンス)

③産業構造のコト主導

税収財源の見直し化

⑤地域構造のリゾーム

これらの詳細については、また改めて論述したいと思っております。