2021年3月25日木曜日

ル・ルネサンスの要件・・・人口波動の流れで読む!

・ルネサンスがいかなる時代になるのか、3つの予測要件を推察しています。

2番めは、②旧石器と新石器、粗放農業と集約農業の発展推移です。

3大波動のうち、石器波動と農業波動には、それぞれ前と後の2つが含まれています。

石器波動は、旧石器文明による石器前波と、新石器文明による石器後波に分けられます。

農業波動は、粗放農業文明による農業前波と、集約農業文明による農業後波に分けられます。


これら4つの波動の関係は、どのようになっているのか、それぞれの基本構造の推移を、前回述べた5つの要件、つまり生業、技術、共同体、熱源(エネルギー)、時代識知について順番に探ってみましょう。
 

生業

人口容量を作り出す食糧生産の仕組みは、石器前波では狩猟・採集が主導していましたが、石器後波になると狩猟・採集に初期的な耕作(農業)が加わります。

続く農業前波では単純な農耕・牧畜(粗放農業)が中心でしたが、農業後波になるとより密度の高い農耕・牧畜(集約農業)へと進んでいきます。

そして工業前波では、工業が中心となって、農業や商業などを分業化していきます。

技術

生業を支える基本技術は、石器前波では旧石器による狩猟・採集が支えていましたが、石器後波になると、より精密な新石器や土器による狩猟・採集へと移行しました。

農業前波になると、単純な農具や金属器が主導していましたが、農業後波では灌漑や輪作などによる集約農業技術に変わっていきます。

続く工業前波では動力や工具などの機械が、生産を担うようになりました。

共同体

技術を使って生業を営む主体は、石器前波では小規模な血縁・地縁集団が中心でしたが、石器後波になるとより人数の多い地縁・集落集団へと変わっていきます。

農業前波ではさらに規模の大きい村落・町衆集団が活動するようになり、農業後波になると、都市という活動集団やそれらが連結した国家が、生産の主体になりました。

そして工業前波では企業という新集団が登場し、都市や国家と連動しつつ、生産活動を営むようになっていきます。

熱源

生業を成り立たせるエネルギーを自然環境からいかに取り込むか、という課題です。

石器前波と石器後波では、太陽光や水や空気などで直接的に育まれた植物や動物を獲得するという「短期蓄積熱源の採集・消費」が採用されていました。

農業前波と農業後波では、農地や牧畜地などで取集・蓄積された自然エネルギーを利用する「短期蓄積熱源の育成・消費」へと変化しました。

工業前波になると、化石燃料・核燃料などに蓄積された自然エネルギーを活用する「長期蓄積熱源の採集・育成・消費」が、最も基本的な熱源となっています。

識知

生業、技術、共同体、熱源などを全て統合する、人類の最も基本的な精神的能力が「時代識知」ですが、人口波動の進展とともに、大きく変わってきました。

石器前波では「Dynamism:生命力」がリードしたと推測されますが、それが次の石器後波になると「Animism:霊魂力」に変容したものと思われます。

農業前波になると「Mythology:神話」が主導しましたが、これが変化して「Religion:宗教」となり、次の農業後波を生み出したものと思われます。

そして近代社会が近づくと、新たに「Science:科学」という識知が登場し、工業現波を作り出したのだ、と推察されます。(この事項については、改めて詳述する予定です。)

人類がこれまで辿ってきた、5つの人口波動、そこには以上述べたような、幾分複雑な発展構造が潜んでいるものと思われます。

ル・ルネサンスが今後創造しようとしている工業後波の波動構造は、以上の推移から何を学ぶのでしょうか?

2021年3月17日水曜日

ル・ルネサンスの要件・・・3大波動から読みとる!

・ルネサンスがいかなる時代になるかを予測するには、①石器・農業・工業波動の成立構造の推移、②旧石器と新石器、粗放農業と集約農業の発展推移、③一つ前の個別波動における下降期の変容推移の、3つの推移を推察することが必要だ、と述べてきました。

そこで最初に、3大波動を引き起こした基本構造の推移をおおまかに考えておきましょう。

石器波動、農業波動、工業波動を生み出した、生業、技術、共同体、熱源(エネルギー)、およびそれらを可能にした時代識知の、それぞれの変化を考えてみます。

生業・・・各波動の成立する基礎は、人類がいかなる形で自然を利用して生命源を得ているか、つまり「生業」の形によって決まってきます。

一つの人口波動は【人口容量=(自然環境×文明)/1人当たり生息水準】の上限が拡大することによって開始されますが、1人当たり生息水準もまた文明の様相に準拠しています。それゆえ、人口波動は、自然環境をいかなる文明で利用しているか、つまり「文明」の形によって決まってきます。

文明の具体的な形を「生業」と考えると、石器波動では「動物類の狩猟化や植物類の採集化」、農業波動では「植物類の農耕化や動物類の牧畜化」、工業波動では「動植鉱物類の利用拡大を図る機械化・分業化」が指摘できます。

技術・・・生業を成り立たせるために用いられる、直接的な方法が「技術」です。

石器波動では狩猟・採集を行うための「石器」技術が、農業波動では植物類の農耕や家畜類の牧畜化を行うための「農具」技術が、工業波動では自然資源を効率的に利用するための「機械」技術が、それぞれ該当するでしょう。

共同体・・・技術を駆使して生業を行う生産の主体は、個々人が集まった数人のグループに始まり、次第に人数の多い集団へと拡大してきました。

石器波動では親子兄弟などを基礎とする血縁・地縁集団に、農業波動では特定地域に定住した人々による村落・都市共同体に、工業波動では企業や都市共同体、それらが集合した国家に、それぞれ担われています。

熱源・・・生業を成り立たせる技術の中で、最も基盤となるのは、自然エネルギーをいかに獲得し、いかに有効化するかという方法です。

石器波動でいえば「短期蓄積エネルギーの採集と消費」が、農業波動でいえば「短期蓄積エネルギーの育成と消費」が、工業波動でいえば「長期蓄積エネルギーの採取・育成と消費」が、それぞれ目標にされています。

識知・・・生業、技術、共同体、熱源などを統合するうえで、最も基盤となる人類の能力は、環境世界をどのように理解するかという精神能力、つまり「時代識知」です。

石器波動では「Dynamism生命力からAnimism霊魂力へ」が、農業波動では「Mythology神話からReligion宗教へ」が、それぞれベースになっていますが、現在の工業波動では「Science科学からNew Scienceへ」がベースになるでしょう。(詳細は後述します。) 

以上は3大波動の基本的な成立構造(structure)を大雑把に整理したものであり、詳しい説明は②や③を紹介したうえで、改めて考察することにします。

2021年3月10日水曜日

ル・ルネサンスの進行条件を考える!

ポストコロナの時代を、新たな予測手法である人口波動法によって推測し、次の文明革新を引き起こす「・ルネサンス」になる、と展望しています。

14世紀のルネサンスのモデルは「石器文明=石器後波から農耕文明=農業前波への橋渡し」をしたLast stone ageでしたが、ル・ルネサンスのモデルは「粗放農耕文明=農業前波から集約農耕文明=農業後波への橋渡し」をしたLast ancient ageであったのだろう、と前回では述べてきました。

前者が石器文明から農業文明への一大転換期であったのに対し、後者は同じ農業文明の中での転換期にすぎないということです。

前波と後波の関係は、どのようになっているのでしょうか。世界の人口波動における個別波動の推移を振り返っておきましょう。

①人口波動を構成する個別波動は【人口容量=(自然環境×文明)/一人当たり生息水準】の変化によって生まれてくるから、文明の変化が最も基本的な起動要因である。

②人類が経験してきた5つの個別波動を振り返ると、最初の石器前波では旧石器文明が、2番めの石器後波では新石器文明が、3番めの農業前波では粗放農業文明が、4番目の農業後波では集約農業文明が、5番目の工業現波では科学技術文明が、それぞれ起動要因となっている。

③石器前波と石器後波は旧石器と新石器という石器文明、農業前波と農業後波は粗放農業と集約農業という農業文明によってそれぞれ生まれたものだが、現在の工業現波は新旧や前後が未定のままの科学技術文明に準拠している。

5番めの工業現波は、工業文明の前半に当たる工業前波というべき段階であり、6番めの波動として、新たに工業文明の後半にあたる工業後波が推測できる。

このような推移から推論すると、きたるべき工業後波の様相は次のように展望できます。

①現在の工業現波は科学技術文明の前半が作り出した工業前波というべきものであり、その先には科学技術文明の後半が作り出す工業後波が予想できる。

現在の科学技術文明は、その完成段階からみれば、未だ粗放段階にすぎず、次の進化路程には集約段階が予想できる。つまり粗放科学から集約科学への識知転換である。

③集約科学文明を生み出す時代識知を予想するには、過去の変化、つまり粗放石器文明から集約石器文明へ、粗放農業文明から集約農業文明への移行過程を先行モデルにすることができる。

とすれば、ル・ルネサンスの基本構造を推察するには、次のような要件を検討することが求められるでしょう。

①石器文明、農業文明、工業文明の進展過程が、時代識知のどのような変容構造によって生まれてきたのか、を明らかにする。

②旧石器文明と新石器文明、粗放農業文明と集約農業文明が、それぞれどのような発展構造によって進んできたのか、を明らかにする。

③次代の個別波動を模索した、一つ前の個別波動の下降期の変容過程を、過去の4つの下降期から推察する。

以上のように、ル・ルネサンスがいかなる時代になるかを予測するには、過去の5つの個別波動を作ってきた文明の本質、つまり時代識知の変容過程を予め確認しておくことから始めなければなりません。

2021年3月4日木曜日

ルネサンスとル・ルネサンスのモデルは別だ!

 ・ルネサンス」のモデルとなる時代は、人類の過去の4つの人口波動において、いずれも次の波動を起動する準備段階の時代がふさわしいのでは、と述べてきました。

4つの時代のうち、・ルネサンスはどの時代をめざすべきなのでしょうか。

元々のルネサンスでは、1つ前の農業後波の限界を超えるため、2つ前の農業前波の時代識知を継承して、現代の工業現波の科学技術文明を創り出しています。

とすれば、ルネサンスのモデルとなったのは、BC4500BC3500年のLast stone ageであり、石器文明から農耕文明への橋渡しを模索した時代であったのでは、と推測されます。この時代の特性は概ね次のようなものでした。
 

気候・・・完新世温暖期(BC6500~4500)が終わると、BC3500年にかけて寒冷化が進み、農産物の生産を著しく妨げました。

農耕・・・BC9000年頃、中近東に起こった農耕は、メソポタミア、南ロシア、ギリシアを経て、あるいはエジプトから北アフリカを経て、BC4500年頃にヨーロッパに広がり、またBC3500年頃には、メソポタミアからインダス流域へも伝播しています。

神話(Mythology)・・・農耕の伝播に対応するように、BC4000年頃のメソポタミアでは2100の神々が登場するメソポタミア神話が生まれ、BC3100年頃のエジプトでも、初期の神話体系が作り上げられました。

このようにLast stone ageは、農耕と神話という農業前波の基本構造を育んだ時代でした。

とすれば、工業現波の限界を越えようとする、今回のル・ルネサンスもまた、2つ前の下降期、つまり200700年のLast ancient ageをモデルとして、粗放工業文明から集約工業文明への橋渡しを模索するのではないでしょうか。この時代の特性も、概ね次のとおりです。 

ポスト・パクス・ロマーナ・・・「パックス・ロマーナ」(BC27~AD200年頃)が終わり、動乱の時代に向かいました。

気候・・・300600年は寒冷化が進んだため、農作物の生産量が減少し、各国で人口減少が起こりました。このため、375年にはゲルマン人が北欧から南下して東西へと大移動を開始し、その影響で395年にローマ帝国は東西の2つの国に分裂しています。

疫病・・・165180年の「アントニヌス帝のペスト」に続き、542543年には「ユスティニアヌス帝のペスト」が流行し、547年にブリテン島へ、567年にフランスへと広がり、ヨーロッパ、近東、アジアで60年にわたり流行し続けました。

農業・・・510世紀にかけ、古代ローマ時代の地中海的な食習慣であるパンとワインが、ヨーロッパ各地に広まり、ゲルマン社会的な狩猟採集と牧畜が混じり合って、新たな農業方式と村落共同体の萌芽が生まれています。

宗教(Relision)・・・BC463年にインドに生まれた仏教は、200年頃までに大乗仏教として中国へ伝播し、BC4世紀頃にインダス川周辺で始まったヒンドゥー教も、100年代にグプタ朝において定着しました。BC4年に創始されたキリスト教は、200400年代に新約聖書として文書化が進み、570年頃アラビア半島で生まれたイスラム教も、650年にコーランとして文書化されています。このように4大宗教は概ねBC5AD6世紀に創始され、AD17世紀に経典化により普及しています。

以上のように、ルネサンスとル・ルネサンスのモデルは、それぞれ2つ前の下降期を想定することができます。

とはいえ、ルネサンスとル・ルネサンスのモデルには、根本的な違いがあります。

ルネサンスがモデルとしたLast stone ageが「石器文明から農耕文明への橋渡し」を模索した時代であったのに対し、ル・ルネサンスのモデルとなるLast ancient ageは「粗放農耕文明から集約農耕文明への橋渡し」を模索した時代であるからです。

前者が石器文明から農業文明への一大転換期であったのに対し、後者は同じ農業文明の中での転換期にすぎないということです。

このように考えると、ル・ルネサンスは今後、どのような方向へ進むことになるのでしょうか。