2018年5月29日火曜日

トイレットペーパーの“意味”が変わった!

人口減少=消費者減少を覆して、トイレットペーパーが伸びている背景には、必需的な変化(機能・品質など)に加えて、選択的な変化(記号・象徴性など)も考えらます。

モノや商品に対する、生活民の需要の内容や種類については、筆者のもう一つのブログ「生活学マーケティング」で詳細に述べてきました。

その中でも【
7つの生活願望をつかむ、7つのマーケティング戦略】(2015年6月24日)では、私たちの生活構造を“生活球”としてとらえ、ここから発生する、7つの生活願望に対応して、供給者側からの7つの戦略を考察しています。



7つの願望のうち、生活球の中心に位置する「日欲」(欲求・実欲・常欲)は、前回述べた必需的な願望に相当するもので、これを満たしていくには、新しい機能や性能などを提供する、いわゆる「差別化」対応が求められるでしょう。

他方、生活球の外縁に広がる、6つの生活願望(欲望・欲動・世欲・私欲・真欲・虚欲)とは、前回述べた選択的な願望に対応するもので、これらを満たしていくためには、「差異化」「差元化」「差汎化」「差延化」「差真化」「差戯化」の、6つの対応が求められます。

それぞれの具体例については、【
トイレットペーパーから何を学ぶ!?】の中で、すでに述べていますので、ご参照ください。

いずれにしろ、人口減少が進むとなぜ選択的願望が高まるのか、それが問題ですから、しばらくはこの経緯について考えていきます。

2018年5月20日日曜日

トイレットペーパーの機能が変わった!

人口減少=消費者減少にもかかわらず、トイレットペーパーの需要が伸びているのは、一体なぜなのでしょうか?

主な理由を考えてみると、必需的な変化(機能・品質など)と選択的な変化(記号・象徴性など)の両面が浮かんできます。

必需的変化としては、次のような事象が起こっています。

1人当たりの消費量の増加・・・
清潔志向の高まりや温水洗浄便座の普及などで、1回あたりの使用量は確実に増えています。

トイレットペーパーにはシングル巻きとダブル巻きがあり、シングルは一巻き60m、ダブルは30mが一般的な長さですが、1回当たりの使用量では前者の方がやや少ないようです。しかし、最近の傾向では、前者:後者=4:6となりつつあり、消費量が増加する傾向が見られます。

またシャワートイレ用に、吸水力5倍、紙の厚み2倍の、厚手で柔らかい心地を訴求する商品も伸びてきています。

新機能への需要増加・・・
消臭機能や香り付きなど、新たな機能を求める需要の拡大で、対応する高機能商品の販売量も伸びています。

これらの商品では、芯の部分に消臭剤と香料が入っており、ホルダーにセットするだけで尿臭や便臭などの臭いを和らげることができます。

価格の上昇・・・
上記のような理由により、下図に示したように、消費者1人当たりの消費量が伸びていますが、それとともに1g当たりの単価もまた上昇しています。



1人当たりの消費量は2013年の8.04gから2017年の8.30gへ伸びています。

1g当たりの単価は2013年の14.92円から2017年の16.42へ伸びています。

以上のように、人口が減っても、必需的需要の変化によって、トイレットペーパー市場は量的にも金額的にも拡大しているのです。

2018年5月9日水曜日

人口減少で消費が変わる!

先月までは些かマクロな話題へ飛躍していましたので、今月からはもう一度原点に立ち戻り、ミクロな話題を考えていきます。

まずは、当研究所が約40年にわたって研究してきた「人口減少と生活消費の関係」を眺めてみましょう。

これまでのところ、マスメディアの多くは「人口減少が進めば消費支出も減少する」と述べていますが、本当にそうなのでしょうか

この言説を覆す、最も明確なデータが、下表に示した、トイレットペーパーの出荷量と販売高の推移です。

この件については、繊研新聞(2015年7月21日)の「Study Room」(
http://gsk.o.oo7.jp/insist15.htm#tp)で詳しく述べていますが、新たなデータが発表されましたので、改めてグラフ化しました。

この図でわかるように、人口が減っているにもかかわらず、トイレットペーパーの販売量や販売額は伸びています

人口ピークの2008年に比べて、2017年の人口は1.1%減ったにもかかわらず、トイレットペーパーの総販売量は2.5%増の105.2万トン、総販売額は3.8%増の1727億円と増加しています。

トイレットペーパーの使用量は、口総量に極めて比例している、と考えられ、人口が減れば当然、その使用量や販売額も減るものと思われます。

さらに温水洗浄便座などの普及で、1回あたりの使用量も減っている可能性があります。

とすれば、その使用量や購入金額は当然減っていくものと予想されます。

にもかかわらず、トイレットペーパーの販売量や販売額は人口推移とは別の動き示しています。

そこにはどんな背景があるのでしょうか。

実をいえば、ここにこそ、人口減少時代の生活消費を考える時の、最も基本的な視点が潜んでいると思われます。


(ご参考までに・・・『人口減少”激活”ビジネス』)