2023年12月22日金曜日

グローバル・レシプロシティーをめざして!

ル・ルネサンスでは、次の時代を創る工業後波の生産・分配体制として、複合経済体制の構築が期待されます。

この目標を達成するために、とりわけ重視されるのが地球単位の互助機構、「グローバル・レシプロシティー:Global Reciprocity」の形成です。

地球上に生まれた、全ての人々が、国家という帰属制度を超えて、互いに助け合いながら、それぞれの人生達成を可能にする、新たな仕組みです。

世界中の全ての人間は全て対等で、生まれた時から亡くなる時まで基盤生活はあくまでも平等であることをめざします。国家や地域などで生まれる、さまざまな格差も乗り越え、日常的な暮らしを維持するための基本的な費用をベーシックインカムの形で授与するのです。

運営主体となるのは、国家という組織を超えたグローバルな互酬共同体(Global reciprocal communityであり、さまざまな形で財源を確保していきます。主な事例を挙げておきましょう。



①地球人同志間の寄付や寄贈などを基盤に、贈与や遺贈、あるいは企業や団体からの献金などが想定されます。

②出自による格差を縮小するため、富裕層の遺産や遺物などは、できるだけこの共同体へ遺贈します。

③先進的な企業もまた、その存在自体が社会的な貢献を目ざすものだという視点から、収益の一部を出捐していきます。

以上のような基金を財源にしたベーシックインカムを毎年、世界中の人々に向けて、国籍を問わず、公平に分配していきます。

まったく新たな仕組みですから、一度に地球単位のコミュニティー形成は困難かとも思われます。まずは幾つかの機構が国家や地域を超えて形成され、徐々に世界単位へ統合されて行くことになるか、と思います。

なにやら途方もない目標のようですが、決して夢ではありません。先端的な起業家もまた、同じような構想をすでに企画しています。

例えば生成AI、チャットGPTの開発者で、代表去就問題で注目を集めたオープンAI社のサム・アルトマン・CEO(最高経営責任者)も、2021年に書いたツイートの中で、地球上のすべての人に仮想通貨を無料で配るプロジェクト構想を述べています。

ワールドコイン」と名付けられた電子通貨を配布するものですが、「AIが最低限の生活費を稼ぐようになったら、人間は本当に自分のやりたいことに向き合え、理想を追い求められる」とも語っています。

このプランでは、資金の回収と配布の主体を国家とし、財源回収を税制度改定によるものとしている点などで、なお課題が残ると思われます。

とはいえ、グローバル・レシプロシティー構築への一つの挑戦として、その実現が決して夢ではないことを示しています。

2023年12月12日火曜日

ル・ルネサンス:地球的互助機構へ向かって!

ル・ルネサンスの進むべき生産・分配体制は、市場交換・互酬・再配分・家政の諸制度がほどよくバランスした「複合社会」をめざすべきだ、と述べてきました。

複合社会とはどのようなものなのか、これについては何度も取り上げています。

生産・交換制度の未来を読む!2015914日)

家政・互酬・再配分・交換の比重は変わる!2015929日)

互酬性を再建する!2015103日)

複合社会へ向かって!20151015日)

要するに、次の人口波動、工業後波の生産・分配体制は、現在の市場交換と再配分:福祉国家の比重を緩めて、互酬や家政の比重を回復させるべきだ、ということです。


とりわけ、互酬制度の拡大が必要だと思います。

互酬性を再建する!】では、次のように述べてきました。

破壊された共同体の再建・・・家族や親族、村落や町内会などの共同体を改めて支援し、保護・育成する。

新しい共同体の構築・・・ハウスシェアリングやルームシェアリングなどのシェアリング家族、老齢者や単身世帯などが相互支援を前提に一緒に居住するコレクティブ家族、緊急時の共同対応や生活財の共同購入などを行なうマンション共同体、共同で農業を営む新農業共同体など、新たな共同体を積極的に育成していく。

こうした対応に加え、今回新たに提案するのは、国家という共同体を超えて、地球規模で互いに助け合う機構、「グローバル・レシプロシティー:Global Reciprocity」の構築です。

この言葉は筆者の造語ですが、「International:国際的」でも、「Universal:宇宙的」でもなく、あくまでもGlobal:地球的」な互助機構を意味しています。

現在の工業現波(=工業前波)の世界では、科学という分析・分散型時代知のもとに、国家という共同体が個々人の生命・生活保障を担ってきました。国防はもとより福祉制度もまた、国家単位で行われています。地球単位であっても「国際連合:United Nations」と名乗るように、「国家:Nation」が前提になっています。

しかし、ラストモダンの社会では、国家という機能の限界が目立ち始めています。国境紛争や経済破綻などはもとより、福祉国家や強権国家などという形態もまた、制度そのものの脆弱性を示し始めています。

とすれば、工業前波を超える工業後波では、国家という機能は残しつつも、国家を超える共同体の構築が求められるでしょう。

その一つが「グローバル・レシプロシティー」だと思います。

昨今、さまざまな形で注目を集め始めていますが、どのような機構なのか、次回から考えてきます。

2023年12月3日日曜日

ル・ルネサンス:複合経済制を準備する!

ル・ルネサンスの進むべき生産・分配体制も、市場交換・互酬・再配分・家政の諸制度がほどよくバランスした「複合社会」をめざすべきだ、と述べてきました。

そうだとすれば、工業後波の新たな社会知の方向に従って、生産・分配体制にも、次のような3つの大転換が求められるでしょう。



①言語機能:分節化から合節化へ

極端な市場・政府依存を脱し、互酬や家政の再構築によって、経済構造のバランス化をめざします。

肥大化した市場交換を、租税バランスの変更や共同体的統制の強化などで、極力抑制していくとともに、再配分、互酬、家政の3領域をできるだけ強化していく。

負荷の増加する再配分制度を見直し、税収規模や社会保障構造などの、適正な規模を作り出していく。

互酬制を拡大させるため、地域社会や地縁共同体など伝統的共同体の再建や、シェアリング家族やコレクティブ家族など新型共同体の構築を、多面的に支援していく。さらに地球単位の互助組織、「グローバル・レシプロシティー」(後述)を拡大し、国家による再配分の比重を緩和する。

家政の自給自足力を高めるため、農・漁業自営者、独立系生活者など、自立的な生活民に向けて育成や支援を行う。

市場、再配分、互酬、家政の4領域をそれぞれ深化させるとともに、4つを連携・協調させるような、統合的な仕組みを構築していく。

②数値機能:数値絶対化から数値相対化へ

数量的な指標を優先する視点から、量と質の調和をめざす視点へ、行動視点の転換を図ります。

経済統計や株価指標などに拘泥する社会・経済運営から脱却し、さまざまな現象の示す数値以外の情報や動静を、より全体的に把握できるような観察・運営行動を拡大する。

経済実態とかなり乖離しつつある貨幣指標や株価指標などを修正するため、経済事象をより多角的に把握できる、新たなシンタックス(統辞法)とそれに基づく指標を作り出していく。

③把握機能:システム化からストラクチャー化へ

点と線による効率優先の生産・分配方式から、面と面を重ねて、中身を濃くするような生産・分配方式への転換をめざします。

システムの主導する市場交換や、システムとストラクチャーの混在する再配分には、ストラクチャーの強化を計る。

❷非システム的な互酬と家政には、新たなストラクチャーの構築や強化を進めていく。

❸市場交換のシステム化を他の領域に強引に押し広げるのではなく、4つの領域を構造的に連携させるような、包括的な運営方式を創り出していく。

かなり抽象的な行動目標となりましたが、要約すれば、圧倒的な市場交換中心経済から、生活民一人一人が自立性を再構築できる生産・分配制度へ向かって、数量的な指標を優先する行動視点から、量と質の調和をめざす行動視点への転換を図りつつ、点と線による効率優先の生産・分配方式を、面と面を重ねて中身を濃くする生産・分配方式へと移行させるなど、構造的な転換を推進していく、ということです。

2023年11月25日土曜日

ル・ルネサンス:生産・分配体制を再編する!

ル・ルネサンスでは、生産・分配制度、つまり経済構造についても、根本からの再編成が求められます。

まずめざすべき目標を考えてみましょう。



ウィーン出身の経済人類学者、K・ポランニーによると、人類が歴史的に創り出してきた生産・分配制度には、家政、互酬、再配分、交換の4つがあり、これらの制度をほどよくバランスさせた「複合社会(complex society」こそ望ましい、と述べているようです(【K.ポランニーの複合社会論を応用する!】。

こうした視点を、今後の社会の向かうべき生産・分配制度に当てはめてみると、企業や資本家だけが闊歩する市場交換制度、社会主義国家や福祉国家のような再配分至上制度、家族や集落の相互扶助だけに頼る互酬中心制度、個人や家族内だけで生産・消費する家政主導制度の、いずれの一つに偏るのではなく、4つの制度を4つとも存続させながら、それぞれのバランスをとっていくという方向が浮かんできます。

あるいは、移りゆく時代の変化に応じて、組み合わせの比重を変えたり、それぞれの内容を微妙に変換していくという方向も考えられます。

昨今、経済制度の改革案として、コモンズ再生ポスト資本主義などが囁かれ始めていますが、それらを実現していく場合にも、4つの制度のバランス化が課題となるでしょう。

そうなると、今後の社会が市場交換、互酬、再配分、家政の諸制度のほどよくバランスした「複合社会」へ向かって行くには、3つの調整が必要になってきます。 

市場交換の縮小に比例して、適度に他の3領域を広げること

再配分の適正化に応じて、税金や社会保障などの規模を見直すこと

互酬制の拡大に応じて、贈答、贈与、寄与などの社会的意義を重視すること

以上のように、次の人口波動を生み出すためには、より複合化の進んだ生産・分配制度が期待されます。

果たしてその実現は可能なのでしょうか? あるいは、さらに実現性の高い代替案はあるのでしょうか?

2023年11月13日月曜日

ル・ルネサンス:統治体制を見直す!

ル・ルネサンスでは、国家機構、つまり政治・統治制度においても、根本からの見直しが求められます。

前回の政治制度に続いて、今回は統治制度の修正方向を展望してみましょう。

政治制度が国民の合意形成を図るための制度だとすれば、統治制度は合意形成された方策を実現していく制度です。一般には、行政機能執行機能を意味しています。



この課題についても、①分節化から合節化へ、②数値絶対化から数値相対化へ、③システム化からストラクチャー化へ、という視点に立って、幾つかのアイデアを検討してみましょう。

①言語機能・・・分節化➡合節化】を実現するため、【間接制度中心➡直接・間接整合化】が求められる。

超省庁的課題への対応拡大・・・工業前波の社会的課題を大きく超えた諸問題(脱福祉国家、地球単位の互助組織の進展など)の拡大に伴って、従来の固定的な行政分野では対応できなくなるケースが増えてくるため、超省庁的な新組織の設定と運営を柔軟に行っていく。

専門省庁と課題別チームのバランス化・・・超省庁的な新組織の拡大で、従来の専門別省庁との間に新たな連携方式を形成し、それによって省庁の既存運営方式を大胆に改良・修正していく。

公務員・民間人交換制の導入・・・工業後波の進行に伴って、次々発生する、新たな社会的課題に対応するため、斬新な発想力のある民間人を統治分野に参加させるとともに、統治能力の高い公務員を経済・社会分野に転出させ、両者の合力化を可能にするような、新たなジョブ型雇用制をめざす。

②数値機能・・・数値絶対化➡数値相対化】へ向かうため、【多数決絶対化➡多様意見整合化】を検討する。

数値統計+非数値情報による判断拡大・・・情意のバランスのとれた統治制度を実現するため、さまざまな社会・経済事象を把握する時には、数量・計量的把握に加えて、民意・世論・世相・風潮など超数値的な情報把握に努め、両者の統合をめざす。

統計少数値への肯定的理解の拡大・・・統計的には少数であるマイノリティーに対しては、極力その意見を収集・分析し、多数派意見との調整を図る。

③把握機能・・・システム化➡ストラクチャー化】へ転換するため、【網の目的統治➡風呂敷的統治】を目指す。

超省庁的政策課題の発見・提案拡大・・・工業後波の社会的課題は、従来の省庁的視点を大きく超えているため、専門的・ネットワーク的なアプローチに留まらず、より視野を広げた、多角的・ラッピング的なアプローチによる発見や提案が求められる。

❷政策課題への超省庁的対応拡大・・・個々の政策課題への対応についても、先例・慣例重視の専断的担当を見直し、常に省庁を超えた、横断的な対応の可能性を探っていく。

以上のように、制度改革の基本的な方向を挙げてきましたが、工業後波の統治制度においては、工業前波の専門的統治制度を継承しつつも、省庁の固定的な役割を大きく超えていくような、幾つかの修正が必要になるでしょう。

2023年11月3日金曜日

ル・ルネサンス:国家機構を見直す!

ル・ルネサンスでは「統合科学(Omni-science:オムニシェンス)」という知性によって、倫理・使命感を持った「集約的・統合的構造性」という社会知が形成され、グローバル化、国家機構、生産・分配制度などの修正が準備されることになります。

今回は、国家機構への影響を考えてみます。



現代社会では国家機構、つまり政治・統治制度においても、その限界が目立ち始めています。

とりわけ、多くの国家が採用している間接民主制については、❶制度固定化による無力感や不信感の増加、❷政党選挙制による個別意見の排除、❸代議制による政治的無関心の拡大、❹投票者は政策内容・実施状況の検証・理解が困難、❺選挙活動における利益誘導や投票誘導などの不正など、さまざまな欠陥が露呈しています。

これらを修正し、次の時代にふさわしい政治・統治制度へ進んでいくには、どうしたらよいのでしょうか。

この課題についても、統合科学の社会知の特性、つまり①分節化から合節化へ、②数値絶対化から数値相対化へ、③システム化からストラクチャー化へ、という視点に立つと、幾つかのアイデアが浮上してきます。

まずは政治制度について、次のような方向が考えられます。

①【分節化➡合節化】を実現するには、【間接制度中心➡直接・間接整合化】が求められます。

IT化による選挙方式の導入……現在の直接投票唯一制に、パソコンやスマホなどで個人認証を徹底化したIT投票制を加え、投票率の拡大を図る。

個別政策別意思表示法の導入……政党主導型政策選定に加え、重要な個別政策については、国民自身がその是非を選べる投票制度を導入する。

議員任期・回数限定制の導入……議員の固定化・職業化を脱するため、任期や回数などの制限を導入し、議員の流動化・多角化を図る。

②【数値絶対化➡数値相対化】へ向かうには、【多数決絶対化➡多様意見整合化】を検討することが必要です。

多数決+異見調整方式の導入……多数決を前提にしつつも、投票の事前事後に反対意見との調整を図る機会を拡大し、合意形成の上昇を図る。

少数意見探索・組み込み方式の導入……政策案の立案に際しては、主導意見だけでなく、少数意見や反対意見なども広く収集し、効果・逆効果、利益層・不利益層などを明示したうえで、議会への提案を図る。

③【システム化➡ストラクチャー化】へ転換するためには、【網の目的政治➡風呂敷的政治】を目指すことが求められます。

代議制+直接投票制による関心拡大……重要な個別政策については、国民の直接投票制をいっそう拡大し、政治課題への参加拡大を促す。

社会的課題の網羅的抽出……国家の取り組むべき社会的課題については、利害関係者や主要関心者の意向だけをくみ取るだけでなく、その背後や影響にまで広く目を配った、統合的な政策提案をめざす。

課題解決策の多様な提案……新たな社会的課題に取り組むには、合理的な解決策に加えて、非合理的にもかかわらず合意形成が可能な方策なども提示し、一面的な提案から多面的な提案への転換を図る。

以上のように、今後の政治制度では、現在の間接民主制を継承しながらも、国民の参加をいっそう可能にするような、幾つかの修正を加えていくことが求められるでしょう。

2023年10月24日火曜日

グローバル化を見直す!

人口減少の進行に伴って、新たな社会知として「科学(Science)」を超える「統合科学(Omni-science:オムニシェンス)」が芽生えてきます。

それとともに、倫理・使命感を持った新世界観が誕生し、「集約的・統合的構造性」という社会知が形成されます。

社会知の転換によって、社会構造を見直す傾向が強まり、グローバル化、国家運営制度、生産・分配制度などの修正が準備されることになるでしょう。 


最初のグローバル化にも「集約的・統合的構造性」の援用が必要です。

この社会知は「言語機能は分節化から合節化へ」「数値機能は数値絶対化から数値相対化へ」「把握機能はシステム化からストラクチャー化へ」の、3つから構成されていますので、グローバル化の今後にも適用してみましょう。

①言語機能:分節化から合節化へ

グローバル化という言葉は、人、物、金などが国境を越えて広く交流することを意味し、それこそが人類の発展方向だという価値観もまた内包しています。

しかし、野放図なグローバル化によって自国内の生産構造が次第に崩れ、些細な国際変動によって、自国民の生活が危機に瀕するケースが拡大しています。

こうした悪弊を防ぐには、まずは国内の自給構造を再構築し、それに対応した国際分業をめざすことが必要になります。いいかえれば、過剰な国際分業を見直し、国際分業と国内自給を改めて整合化することが急務なのです。

②数値機能:数値絶対化から数値相対化へ

国際情勢を大局的に把握するため、国際連合などでは統計的データによる集積と分析が行われています。ところが、現実の世界情勢は数値を超えて、刻々と変化しています。

世界人口の予測でも、国連人口部の「World Population Prospects 2022」(中位値)では、現在の79憶人から、2030年に85憶人、2050年に97憶人、2100104憶人に達すると予測しています。だが、コロナ禍の影響やSDGs(Sustainable Development Goals)の進展などで、ワシントン大の予測(最低値)では、2050年に87憶人、2100年には62憶人まで落ちていきます。

昨今の大きく変貌する国際構造に対応していくには、視野狭窄に陥りがちな数値・統計的把握だけに留まらず、意見収集・交流実態などを通じて、多様な情動的情報との統合を行い、政策の充実をめざすことが望まれます。

③把握機能:システム化からストラクチャー化へ

国連は環境対応型社会構造の目標として、SDGsを掲げています。だが、SDGsが進めば、人口減少が進んでいきます。つまり、SDGsの推進と人口の維持は対立する目標なのです。

とすれば、今や人口減少へと転換しつつある世界への対応は、もっとストラクチュアルに提示していかなければなりません。

ストラクチュアルとは、個別の目標の積み上げではなく、民主主義制、市場経済制、国際協調制などを含む、人類の社会構造そのものを、横断的、統合的、ラッピング的なアプローチによって、人口増加型から人口減少型へどのように変革していくか、を示すことなのです(具体策は後述します)

以上、3つの点からグローバル化の改善方向を述べてきました。

要するに、点と線による一元的な国際視点から、何層かの面を重ねていく多元的な国際視点への転換が求められているのです。

国家制度という分散的制度もまた大きく超えて、地球単位の社会安定制度が、新たな目標として浮上してきます。

とすれば、工業前波に続く工業後波では、国家という機能は存続させつつも、それらを超える、新たな超国家的な共同体を併設することも求められるでしょう。

2023年10月7日土曜日

ル・ルネサンスが始まる!

世界人口は今後30年ほどで減少していきます。

前回の「人口減少ショックの開始」に続いて、今回は「新たな人口波動の準備」を考えます。



世界人口がピークを過ぎて減り始めると、人口増加を前提に創られてきた、さまざまな社会装置が大きく揺らぎ始めます。

それと並行して、従来の社会装置を超える、新たな社会構造への模索が始まります。

かつて黒死病(ペスト)大流行の後、ルネサンスが開花したように、今回もパンデミックの後、「ル・ルネサンス」が開花するのです。

ル・ルネサンス」という言葉は、当ブログの造語です。元々のRenaissance(再生)がre(再)とnaissance(生きる)の合成語であるのを継承して、もう一度re(再)が訪れてRe-Renaissanceが開花する、という意味です。

今回のル・ルネサンスでは、現在の世界人口容量を超えて、新たな人口容量を創り出すための仕組み、社会的な知恵が模索されます。

それゆえ、最初の課題として、現代文明の基本構造である「科学」という社会知をどのように変えてゆくかという視点から、次の3つが浮上してきます。

1つは、工業前波の分散的な科学(Science)の後に、統合的な新科学(Omniscience)の到来を準備すること。

2つめは、倫理・使命感を持った新世界観(New Cosmologyを創造・並立し、分散型社会の暴走や弊害を抑えること。

3つめは、工業前波を主導してきた「分散的・個別的充足性」という理性を細かく反省し、もう一度「集約的・統合的構造性」という知性を回復させること。 

このような課題が達成されれば、次代の人口波動、工業後波を引き起こす、新たな社会知として「オムニシャンスOmniscience」が生まれるとともに、倫理・使命感を持った新世界観が誕生し、それに伴って「集約的・統合的集中性」という社会知が形成されます。

社会知の転換によって、社会構造を見直す傾向が強まり、グローバル化では、国家を超えた共同体の拡大が、国家観では、間接民主制の修正や超越的な行政運営などが、生産・分配制度では、国際分業や市場経済の見直し、資本集中や所得不均衡の是正などが、それぞれ準備されることになるでしょう。

各分野の方向や目標については、次回から考えていきます。 

2023年9月18日月曜日

人口減少ショックが始まる!

世界人口は今後30年ほどで減少していきます。

前回の「人口抑制装置の作動」に続いて、今回は「人口減少ショックの開始」を考えます。

これまで数世紀にわたって増加してきた世界人口は、まもなく人口容量の壁にぶつかり、ピークを経て減少に転じます。

そうなると、人口増加を前提に創られてきた、さまざまな社会装置が大きく揺らぎ始めます。

代表的な事例としては、グローバル化、国民国家体制、市場経済制などの動揺や混乱が挙げられます。



揺れるグローバル化

人口増加率の低下に伴い、コロナ禍の蔓延や国際紛争の拡大をきっかけに、国際機関の空洞化、食糧・資源・燃料などの枯渇化といった現象が目立ち始め、グローバリズムへの安易な信仰が大きく動揺しています。

現在の国際連合では、新たな世界秩序を創り上げる構想力の欠如、世界平和の維持・達成が困難、安保理常任理事国の巨大特権の弊害化、専門機関の中立的運営の限界化、内政不干渉原則による紛争解決の限界化など、さまざまな限界性が目立っています。

食糧・資源・燃料などでも、世界各国は生活や産業の基盤の供給を相互依存によって強化してきましたが、コロナ禍や国際紛争によって世界的な食糧危機が懸念されています。

これまで進展してきたグローバル化という現象も、総人口の停滞に伴って、各国の自立性や自給性に危機をもたらし、さまざまな限界を示し始めています。

揺れる国民国家制

人口伸び率の停滞にコロナ禍やウクライナ紛争なども加わって、アメリカ合衆国の権威低下、中華人民共和国の強権発動、インドの人口増加継続化などが目立ち始め、国民国家、福祉国家、民主主義制などへの信頼もまた揺らぎ始めています。

福祉国家という、各国の理想的目標についても、人口減少や年齢構成の変化財源危機や運営困難が目立ち始めています。

さらに民主主義制という政治・統合制度についても、選挙制度、政党政権制、多数決論理などで脆弱化が浮上しています。

揺れる市場経済制

人口の停滞や減少の進み始めている国家では、経済停滞や財政危機が浮上しています。

その背景には、①経済実態と株価推移が乖離し、資本動向と経済動向が分離、②所得格差や生活格差がさらに拡大、③家財政の急激な逼迫、④富裕層やデジタル企業などへ不公平税制などが潜んでいるようです。

このため、国際市場においても、資本主義国家はもとより国家資本主義国家もまた、総合的自給力の衰退、相互依存の強化に伴う危険負担の増加、先進国・途上国間の経済格差・貧富格差の拡大、低価格商品の競争激化による資源喪失の拡大、人的物的移動拡大による感染症の拡大、といった現象が目立ち始めています。


以上のように、世界人口が停滞から減少へ進むにつれて、人口増加・成長・拡大型社会を支えてきた、さまざまな制度も極めて不安定な状況に追い込まれていきます。

2023年9月5日火曜日

人口抑制装置が作動した!

世界人口は今後30年ほどで減少していきます。

主な原因を考えていますが、前回の「1人当たりの個人容量の急増」に続いて、今回は「人口抑制装置の作動」を考えます。



昨今、世界中の各国に、人口増加を抑制する、さまざまな動きが広がっています。

動物の世界では、キャリング・キャパシティー(環境容量)が満杯に近づくにつれて、増加数を抑えようとする抑制装置が作動します。

「キャリング・キャパシティー」については、サイバースペース上やや不正確な定義が流布していますので、改めて定義しておきます。

キャリング・キャパシティーとは、特定の生物が一定の環境下において、食物、水、生息地などの確保と、排泄物や廃棄物などの処理が、継続的に維持できる個体数の大きさ、つまり個体数容量を示します。

人間の場合も同じであり、その個体数の容量、つまり「ポピュレーション・キャパシティー人口容量」の上限が迫ってくると、人口抑制装置を作動させ、自らその数を抑えるような行動を始めます。

動物の場合はほとんどが生理的(本能的)な抑制行動ですが、人間の場合は生理的装置文化的(人為的)な装置の、二重の抑制を行っています。

今、地球上では、人類という種によって、このような抑制行動が、次のような順序で起こり始めています。

①本能的危機意識作動

自然環境悪化、パンデミック、国際紛争、経済低迷、食糧不安など、超長期的な停滞トレンドを肌身で感じ取った地球人の多くが、本能的に人口容量の限界を直感し、無意識のうちにも、さまざまな抑制行動を始動させ始めています。

②生理的抑制装置作動

生活環境の未来に危機を感じた人類は、さまざまな動物の世界で行われている個体数抑制行動と、ほぼ同様の人口抑制行動を無意識的に行い始めています。

体力低下、寿命限界、生殖能力低下などが、自動的に作動するしくみです。

世界の平均寿命を見ると、2019年の72.76以降、伸び悩みとなっています。

それに連動して、世界の粗死亡率(死亡数/総人口)も、2019年の0.75から、コロナ禍以降徐々に上昇し、2021年には0.87にまで上がっています。

人為的な要因も重なって、粗出生率(出生数/総人口)は、1980年代の2.77から2020年代には1.75に落ちています。

③文化的抑制装置作動

人類は無意識次元に加え、意識的次元でも、さまざまな人為的抑制行動を行っています。他の動物の本能的次元を超えて、独自の文化としての抑制行為も行っているのです。

人口増加を抑える装置としては、直接的抑制(妊娠抑制、出産抑制など)、間接的抑制(生活圧迫、結婚抑制、家族縮小、都市化、社会的頽廃化など)、政策的抑制(強制的出産抑制、出産増加への不介入など)があります。

人口減少を促す装置もまた、直接的抑制(集団自殺、環境悪化や死亡増加への不介入など)、間接的抑制(飽食・過食による病気の増加、生活習慣病の増加、都市環境悪化など)、政策的抑制(老人遺棄、棄民、戦争など)に分けられます。

典型的な事例が、国連が主導して進めているSDGs(Sustainable Development Goalsです。名称からは人口あるいは人口容量の維持が連想されますが、その実態は人口抑制装置そのものです(「人口容量の持続と世界人口の低下を目ざす!」)。

つまり、意識的次元では人口維持を謳いつつ、無意識次元では人口減少を目標にしている、ということです。

現に上記の図のオレンジ色の予測値は、ワシントン大学がSDGsの目標を組み入れた場合を表わしています。

 

このように見てくると、現在の世界で起きている、さまざまな人口現象そのものが、意識、無意識に関わらず人口抑制装置の着実な作動を示している、ともいえるでしょう。

2023年8月19日土曜日

1人当たりの個人容量が急増した!

世界人口は今後30年ほどで減少していきます。

主な原因を考えていますが、前々回の「人口容量の限界化」に続いて、今回は「容量/人間の拡大化」です。

世界の現況を振りかえれば、各国で生活民の生活水準が急上昇し、個人容量を急増させています。

地球全体の人口容量が停滞し始めているにもかかわらず、1人当たりの個人容量がなおも増加し続けておれば、生存可能数はまちがいなく落ちてゆきます。

個人容量はなぜ増え続けているのでしょうか。



①科学技術主導生活様式

自然環境を科学技術によって利用する近代的生活様式は、世界中へ進展するに伴って、資源消費を拡大させるとともに、廃棄物を増させています。

地球人一人当たりの個人容量が増えれば増えるほど、人口容量への負荷を強めますから、総人口は減って行かざるをえません。

②上昇・拡大型生活志向

世界の経済・社会制度の主流である市場経済においては、生活民の一人一人がそれぞれの生活水準を高め、生活様式を革新させていくのが当然、と是認されています。

それゆえ、個々の生活民は己の生活水準を、常に上昇・拡大させたいという意識を持続させ、個人容量を拡大していきます。

それが可能であるうちは、家族の数を増やしますが、不可能と判断すれば、己の生活を優先して、家族を減らしてゆくことになります。

③分立的国家制度

世界人口を形成している、一人一人の人間は、いずれかの国家に属しています。

ほとんど全ての国家では、国民生活の安定・向上をめざして、生活資源の保証度を上昇させていますから、一人当たりの個人容量は当然増加してゆきます。

国家毎にSDGs(持続可能な開発目標)が進めば進むほど、1人当たりの個人容量も増えてゆくのです。

そのうえ、国家という集団は、その存立を守るという名目で、軍備や訓練、さらには軍事的衝突など、膨大な資源消費壊滅的な環境破壊を続けていますから、地球の人口容量への負荷をいっそう加重させていきます。

以上のような背景により、1人当たりの個人容量はなおも増え続けていきそうです。

科学技術や近代国家の主導する現代的生活様式そのものが、世界人口の減少を招いている、ともいえるでしょう。

2023年8月5日土曜日

どこの国から減っていくのか?

地球の人口容量が限界化した背景を考えています。

容量側の要因に続いて、個人容量の拡大について考えていく予定ですが、その前に各国別の人口ピーク時点を、国連の2019年予測から2022年予測値に変更して、国々の動向を確認しておきましょう。 

10億人以上を誇る国々では、中国が2021インドが2045と、ともに2050年より前にピークを迎えます。

15億人の国々でも、日本が2009ロシアが2019、ブラジルが2037年、インドネシアが2038年、アメリカが2040、バングラディシュが2046年と、各大陸の主要国が2050年より前にピークとなります。

③ヨーロッパでは、ロシア、ウクライナ、ポーランドなどの東欧諸国、ギリシャ、イタリアなどの南欧諸国が、すでに2020年前から人口減少を始めています。ドイツ、スペインもすでにピークを迎えており、フランス、オランダ、イギリスなども2025年ころから減少に入る見込みです。少子化対策などで高く評価されているフランス、オランダなども、2025年前後から減少に入る見込みであり、出生率の改善だけでは減少は止められません

④東アジアや東南アジアでは、日本、韓国、中国がすでに人口減少に、ベトナム、ビルマ、インドネシアなどが2030年ころから、カンボジアやマレーシアも2040年ころからそれぞれ減少していきます。

⑤南アメリカでは、ブラジルコロンビア2030年代に、アルゼンチンやペルーも2040年ころから人口減少に向かいます。

⑥北アメリカでは、メキシコが2030年代から、アメリカ合衆国2040年から、そしてカナダ2050年代から、それぞれ人口減少に向かいます。

⑦南アジアでは、スリランカが2027年、イランが2040年、トルコインド、バングラデッシュなどが2040年代から、それぞれ減少に入ります。その後2070年を過ぎたあたりから、パキスタン、イラクなどが減少していきます。

⑧オセアニアでは、ニュージーランドが2040年代に、オーストラリア2060年代後に、それぞれピークに達します。

⑨アフリカでは、南アフリカ、アルジェリアなどが204050年代に、エジプトエチオピアなどが207080年代に、ナイジェリア、スーダン、コンゴなどが2080年代から、それぞれ人口減少に入ります。

2050年以降にピークを迎える主要国は、エジプトが2070年、パキスタンが2072年、エチオピアが2084年と、南アジア、アフリカの国々です。

こうしてみると、国連予測の最低値では、主要な先進国はもとより、人口大国の中国やインドもまた、今後20年ほどの間に人口減少を迎えることになりそうです。

人口ピーク時の順番は、先進➔後進の順序を示しているのかもしれません。