2021年12月25日土曜日

ヒンドゥー教はミソロジーだった!

農業後波を作動させた時代識知として宗教(Religionを取り上げ、仏教、キリスト教に続いて、今回はヒンドゥー教を考えてみます。

ヒンドゥー教は、紀元前2~後3世紀ころ、500年ほど前から続いてきたバラモン教が土着の民間信仰・習俗などの諸要素を吸収して成立した宗教といわれています。

聖典としては、最古のベーダ(天啓聖典)に続いて、国民的二大叙事詩『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』、さらに『プラーナ』、『マヌ法典』など多数の法典があります。

この宗教の特性を先学諸賢の膨大な論述に基づき、時代識知という視点から整理してみると、宇宙観、神々、教義3点が浮上してきます。


①宇宙観

宇宙とは創造神ブラフマン(梵天)が遊戯のために創ったもので、その上に現れる現象世界もまたブラフマンの幻力(マーヤー)によって現出されたもの、と考えています。

この宇宙は、ブラフマンにとっての1日、すなわち1カルパ(地上の432000万年)間持続して消滅しますが、その後も1カルパごとに創造と消滅を繰り返していきます。

それゆえ、宇宙とは創造→存続→破壊の過程が永遠に繰り返される輪廻(りんね)であり、それにつれて現象世界も実在するのではなく、あくまでも幻影として続いていきます。

②神々

ヒンドゥー教では、強大な勢力をもつ神々はもとより、山川草木に至る、さまざまな事物が崇拝の対象になっており、時代とともに変化しています。

その本質は多神教ですが、中核となる神は存在しており、宇宙を創造するブラフマン神、これを維持・存続するビシュヌ神、これを破壊するシバ神3神です。また彼らを一体とみなす「三神一体」説も説かれています。

このほか、パールバティー、サラスバティー(弁才天)などの女神、ヤクシャ、ガンダルバなどの半神半人、ウシ・サル・ヘビなどの動物神、アシュバッタ樹やトゥラシーなどの草木神、カイラーサ山やガンジス川などの地形神なども崇拝の対象となっています。

③教義

中核となる教義は、創造→存続→破壊の輪廻からの「解脱」を究極の理想とするものです。

輪廻・・・人間は死んでも、それぞれの業(ごう)のために、来世において再び新しい命を得て、生死を無限に繰り返す「輪廻」を宿命としています。業とは、サンスクリット語のカルマンkarman(行為)の訳語で、あらゆる行為が蓄積されるものを意味し、行為者がその果報を経験し尽くさない限り消失しないものと考えられています。

法(ダルマ)・・・サンスクリット語のダルマには、習慣、義務、教説など多くの意味がありますが、基本は行為の規範です。ヒンドゥー教にはダルマをまとめた法典群があり、その中には、ものごとの成否や利害にとらわれず、利己心を離れて実践することなどが勧められています。

ダルマの実践は、物質的・経済的利益を追求する実利(アルタ)、愛情・性愛を追求する愛欲(カーマ)、および解脱(げだつ)とともに、教徒の人生の四大目的とされています。

解脱・・・ダルマ・実利・愛欲は実現されたとしても、最高の成果は天界での再生までであり、それもまた輪廻のなかに留まっています。そこで、さらに進んで人生の最高の目的は業・輪廻からの解脱であるとし、それを実現する方法として、行為の道、知識の道、信愛(バクティ)の道という3つの道が説かれています。

以上のように見てくると、ヒンドゥー教の時代識知は、宗教というよりも、一つ前の神話( Mythology)の次元を濃厚に引きずっているように思えます。

そのせいか、インド亜大陸の農業後波は、他の地域からかなり遅れ、12世紀ころからようやく上昇を始めています。


4大宗教が世界の農業後波を作ったと述べてきましたが、ヒンドゥー教が参加したのは一番遅かったのかもしれません。

2021年12月14日火曜日

キリスト教が西欧の農業後波を創った!

キリスト教の識知構造を考えてみると、①三位一体説、②神地二国論、③十二使徒制の、3つの構造が浮上してきます。これらはどのような形で、人口波動の農業後波を創り上げていったのでしょうか。

1.三位一体説

この識知を、力の動き、動力譜(energy flowとして考えてみると、神として存在する宇宙エネルギー(父)を明確に捉えたイエス(子)は、さまざまな分野に応用しようとする主体(精霊)である、という構造が浮かんできます。

三位一体論に潜む、このようなエネルギー観によって、農業後波の生産構造が作り上げられ、さらには社会構造が形成されていったと思われます。

2.神地二国論

この識知は、私たちの生きている世界には、理想としての神聖な世界と、現実としての世俗的な世界が並立しており、後者はできるだけ前者をめざすべきだ、という世界観でした。

エネルギー観でいえば、神の国という宇宙エネルギーを、地の国という受容体がどのように受け入れていくべきか、という発想です。

この発想こそ、中世ヨーロッパの社会構造の基本である「教会・王権並立制」を成立させた要因だったともいえるでしょう。

3.十二使徒制

この制度は、人類の集団的行動を、それ以前の自然発生的な地域集団から、目標的、組織的、広域的な集団へと変え行く契機を作りました。

この新たな集団形成によって、生産構造の集団生産制会構造の純粋荘園制などを形成する基盤が、速やかに醸成されていきました。

さらに十二使徒体制は、三位一体説で述べた動力譜energy flow)をいっそう補強することにもなりました。宇宙を支配する唯一神「ヤハウェ(Jehovah)」のエネルギーを、救世主イエスが引き継ぎ、十二使徒へと伝達することで、社会全体へより広く伝えていったからです。

以上のような3つの識知観によって、キリスト教という宗教は、集約農業による人口容量の成立に大きな役割を果たした、といえるでしょう。

2021年12月1日水曜日

再び精神史へ! キリスト教の識知観を考える!

ポストコロナ論、ル・ルネサンス論、人口急減論が一段落しましたので、再び人類の精神史に戻って、時代識知の変化を考えていきます。

3つのテーマに入るまでは、農業後波の時代識知として宗教(Religionを取り上げ、最初に仏教の識知観を分析していました。

続いてキリスト教を考える予定でしたが、この課題については、ポストコロナ論やル・ルネサンス論ですでに取り上げていますので、今一度整理しておきます。

キリスト教の識知構造は、①三位一体説、②神地二国論、③十二使徒制の3つに集約されると思います。それぞれの要点をまとめておきましょう。


三位一体説・・・三位一体説を動力譜(energy flow)として考える!

最も重要な教義である「三位一体」説は、キリスト教の根幹、イエスの本性を「父(神)と子(イエス)と聖霊」という三つの面が一体化したものだ、と主張しています。

この教義について、ローマ帝国末期の神学者・哲学者のアウグスティヌスは、その著『告白』(400年前後)の中で、次のようなアナロジーで説明しています。

私の言う三位とは、存在と認識と意志である。私は存在するし、知っているし、欲するからである。私は知ることも欲することもしながら存在し、私が存在して欲することを知り、私が存在して知ることを欲する。(アウグスティヌス『告白』渡辺義雄訳・世界古典文学全集26・筑摩書房・1966

この文章は、イエスが三位一体であることを論証しようとしたものではなく、三位一体説をアナロジーとして、私たちの精神構造を説明したものです。

しかし、よく考えてみると、私たちの精神そのものが三位一体であるとすれば、その精神に宿っているイエスという存在もまた三位一体であるというトートロジー(恒真命題)を主張しているように思われます。

神地二国論(聖俗並立観)・・・神地二国論が象徴しているものは何か?

2つめの教義は「神地二国論」ですが、これについても、アウグスティヌスは『神の国』(413427年)の中で、現世では「神の国」と「地の国」が併存しているのだ、と解説しています。この主張を先学諸賢の解釈を参考に整理してみると、以下のとおりです。

●「神の国」と「地上の国」は、互いに混ざり合いながら存在している。

●「神の国」が絶対的で永遠で、歴史を超越しているのに対して、「地の国」やその政治秩序はあくまで一時的、かつ限定的なものである。

●神と地の二国論は、精神的なキリスト教共同体と世俗的な権力国家を識別し、前者の後者に対する優位性や普遍性を示している。

●世界の歴史は、神を愛し自己をさげすむ「神の国」と、自己を愛し神をさげすむ「地上の国」との争いである。

●倫理目標の実現の担い手は、国家から教会へ、政治から宗教へと移行すべきである。

以上のように、私たちの生きている世界には、理想としての神聖な世界と、現実としての世俗的な世界が並立しており、後者はできるだけ前者をめざすべきだ、という世界観が読み取れます。

③十二使徒制・・・教団組織化が創り出したのは「万物統合観」だった!

3つめは「十二使徒制」という体制です。イエス・キリストは、彼が説いた「福音」を世の中に伝えるため、12人の弟子を直に選びましたが、これが後に「十二使徒」とよばれる集団となりました。

イエスの昇天後、彼らは一旦各地に分散しましたが、やがて使徒ペテロを中心に原始キリスト教団を結成し、ユダヤ教などからのさまざまな迫害をはねのけて、地中海沿岸地域で勢力を拡大しました。

十二使徒制は、天地万物の創造者で宇宙を支配する唯一神「ヤハウェ(Jehovah)」(エホバと誤読される)の力(energy)を救世主イエスが引き継ぎ、それをさらに十二使徒伝達することで社会全体へ広げていく、という構造を示していました。

このような宗教集団の成立によって、人類の集団的行動は、それ以前の自然発生的な地域集団を超えて、目標的、組織的、広域的な集団の成立可能性を高めることになりました。

キリスト教の識知構造を考えてみると、以上のような3つの教義や体制が浮上してきます。

これらがどのような形で、人口波動の農業後波を創り上げていったのか、さらに整理してみましょう。

2021年11月22日月曜日

SDGsは人口抑制装置の作動だ!

国連のSDGsが目ざす持続可能(Sustainableとは、地球の人口容量を90億人程度で維持しつつ、世界人口を2055年頃の88億人をピークに、以後は2080年の83億人から2100年の73億人へと減少させていく(国連予測・低位値)ことではないか、と述べてきました。

要するに、SDGsとは、人口容量の持続と世界人口の減少という両面を目ざすものだ、といえるでしょう。

いいかえれば、人口容量は持続可能(Sustainableにするものの、世界人口は持続不可能(Unsustainableにする、ということです。


一見矛盾するかのように思われるかもしれません。
それにもかかわらず、国連がSDGsという言葉を喧伝するのは、その真意はともかくも、人口容量という限界に直面した時、人類が採用する、無意識的な反応のせいではないでしょうか。

人類はもとより、あらゆる生物は生存できる環境の上限、つまり環境容量(Carrying capacityの限界に近づくと、自ら個体数を抑制する行動、つまり個体数抑制装置を作動させるからです。

その実例については、このブログで度々紹介してきました。

個体数抑制装置とは何か

昆虫の個体数抑制行動

魚類も個体数を抑制している

鳥類の個体数抑制行動を探す!

哺乳類はなぜ増えすぎないのか?

個体数抑制行動には4つのパターンがある

人類の場合も同様で、人口が人口容量Population capacityの限界に近づくと、人口抑制装置を作動させます。

もっとも、人類の場合は、生得的(遺伝的)な抑制行動に加えて、文化的な抑制行動を行っていますから、人類の人口抑制装置は、生物的(=生理的)次元と人為的(=文化的)次元の二重構造になっているのです。

この件についても、このブログで度々紹介しています。

人間もまた個体数抑制をしている!

人間の人口抑制装置は二重のしくみを持っている!

人為的抑制装置には3つの次元がある!

人口抑制装置が作動する時

以上のように見てくると、国連のSDGsとは、その意図に関わらず、地球の人口容量の限界に直面した人類が、破滅的な終末を避けるため、予め人口を抑制していこうとする対応といえるのではないでしょうか。

2021年11月13日土曜日

SDGsは人口容量の持続と世界人口の低下を目ざす!

国連のSDGsSustainable Development Goals)に掲げられた17の目標が、世界の人口動態にどのような影響を及ぼすのか、国連の説明に従って、そのインパクトを考えています。

前回は前半の7目標について考えましたので、今回は後半の10目標を検討します。

8.経済成長と雇用・・・「包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」

各国の状況に応じ、一人当たり経済成長率を持続させるため、高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどで、多様化、技術向上および技術革新を通じた高いレベルの経済生産性を達成すると、人口容量が維持される傾向が強まりますが、その一方で生活水準の上昇による自己実現願望の上昇出生率が低下し、人口は減少します。

9.インフラ・産業化・イノベーション ・・・「強靱なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」

が高く信頼できる持続可能かつ強靭な地域・越境インフラなどのインフラを開発し、すべての人々の安価なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援し、2030年までに各国の状況に応じて雇用および国内総生産 (GDP) に占める産業セクターの割合を大幅に増加させると、人口容量が安定化し、維持される傾向が強まります。

10.不平等・・・「各国内及び各国間の不平等を是正する」

2030年までに年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々のエンパワーメント、および社会的、経済的、および政治的な包含を促進するため、 差別的な法律、政策、および慣行の撤廃、ならびに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正すると、人口容量は安定化しますが、自己実現願望の上昇で出生率が低下し、人口は減少します。

11.持続可能な都市・・・「包摂的で安全かつ強靱で持続可能な都市及び人間居住を実現する」

2030年までに、すべての人々に適切、安全かつ安価な住宅および基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善したり、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者、高齢者などに、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供すると、人口容量が安定化し、維持される傾向が強まります。

12.持続可能な消費と生産 ・・・「持続可能な生産消費形態を確保する」

2030年までに天然資源の持続可能な管理および効率的な利用を達成し、小売・消費レベルにおける一人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させると、人口容量が安定化し、維持される傾向が強まります。

13.気候変動・・・「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」

すべての国々で気候変動に起因する危険や自然災害に対する強靭性および適応力を強化し、 気候変動対策を国別の政策、戦略および計画に盛り込むと、人口容量が安定化し、維持される傾向が強まります。

14.海洋資源・・・「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」

2025年までに、陸上活動による海洋堆積物や富栄養化をはじめ、あらゆる種類の海洋汚染を防止して大幅に減少させ、 2020年までに海洋および沿岸の生態系の強靭性強化や回復取り組みなどを通じた持続的な管理と保護を行って、大きな悪影響を回避し、健全で生産的な海洋を実現すると、人口容量が安定化し、維持される傾向が強まります。

15.陸上資源・・・「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」

2020年までに、国際協定下の義務に則って、森林、湿地、山地、および乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系およびそれらのサービスの保全、回復、および持続可能な利用を確保し、あらゆる種類の森林の持続可能な管理の実施を促進し、森林破壊の阻止や劣化した森林の回復で、世界全体で植林と森林再生を大幅に増加させると、人口容量が安定化し、維持される傾向が強まります。

16.平和・・・「持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する」

あらゆる場所において、すべての形態の暴力および暴力に関連する死亡率を大幅に減少させ、子どもに対する虐待、搾取、人身売買およびあらゆる形態の暴力および拷問を撲滅すると、死亡率が低下し、人口は増加します。

17.実施手段・・・「持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」

課税および徴税能力の向上に向けた国際的な支援などを通じて、開発途上国の国内資源の動員を強化し、複数の財源から開発途上国のための追加的資金源を動員すると、人口容量が安定化し、維持される傾向が強まります。 

以上で見てきたように、17目標の影響では、人口増加が5人口容量維持が10人口減少が6(ダブり2)ということになります。

とすれば、人口容量を持続Sustainable)しつつ、人口の幾分減る社会を目ざしている、といえるでしょう。

具体的にいえば、先に述べたように、地球の人口容量を90億人程度持続可能にしつつ、世界人口を7080億人へ近づけていくこと、つまり持続微減なのです。

2021年11月4日木曜日

SDGsで世界人口はどう変わるのか?

国連のSDGsSustainable Development Goals)が目ざす持続可能(Sustainable)とは、地球の人口容量を90億人程度で維持し、世界人口を低位値に近づけていくことだ、と述べてきました。

そこで、SDGsに掲げられた17の目標が、世界の人口動態にどのような影響を及ぼすのか、国連の説明に従って、そのインパクトを考えてみましょう。

まずは前半の7目標について。

1.貧困・・・「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」

2030年までに極度の貧困を世界中で終わらせると、一方では死亡率の低下で人口は増加し、他方では生活水準の上昇による出生率の低下で人口が減少するという、両面的な影響が現れます。

2.飢餓・・・「飢餓を終わらせ、食料安全保障と栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する」

飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層や幼児を含む脆弱な立場にある人々が安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにし、若年女子、妊婦・授乳婦、高齢者の栄養需要に対処すると、死亡率が低下し、人口は増加します。

3.保健・・・「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」

2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減し、新生児や5歳未満児の死亡率を激減させると、死亡率が低下し、人口は増加しますが、生活水準が高まるにつれて、出生率が低下し、人口は減少します。

4.教育・・・「すべての人々へ包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」

2030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、適切かつ効果的な学習成果を得られる、無償かつ公正で質の高い初等・中等教育を修了できるようにし、すべての人々が男女の区別なく、質の高い技術教育・職業教育と大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにすると、自己実現願望の拡大で出生率が低下し、人口は減少傾向となります。

5.ジェンダー ・・・「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」

あらゆる場所ですべての女性と女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃し、公共のサービス、インフラ、社会保障政策の提供や、世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を評価し、 政治、経済、公共分野のすべてのレベルの意思決定で、完全かつ効果的な女性の参加および平等なリーダーシップの機会を確保すると、結婚の延期や育児の敬遠などで出生率は低下し、人口減少が進みます。

6.水・衛生・・・「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」

2030年までに、すべての人々が安全で安価な飲料水の普遍的かつ平等なアクセスを達成できるようにすると、衛生水準の上昇で死亡率が低下し、人口は増加します。

7.エネルギー・・・「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」

2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させ、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させると、人口容量の安定化によって、人口の維持される傾向が強まります。

以上のように、前半の7目標の影響では、人口増加が4つ、人口容量維持が1つ、人口減少が4つ(ダブり2項目)ということになりそうです。

後半は次回で。

2021年10月22日金曜日

サスティナブルの逆説を解く!

SustainableUnsustainableをもたらす」あるいは「SustainableUnsustainableで初めて成立する」という逆説は、何ゆえに生まれてくるのでしょうか?

国連の提唱するSDGsSustainable Development Goalsは、現代社会に生きる人類の生存を保証するため、地球の持つ人口容量を維持しようという運動、と理解できます。

容量の規模は明らかにされていませんが、世界人口の趨勢やさまざまな予測から推測すると、90110億人と想定されます。

とすれば、SDGsが達成できれば、人口容量90110億人を維持できることになります。

SGDsで人口容量が90110億人で持続可能(Sustainable)となれば、人口の変化によって、1人当たり人口容量、つまり1人当たりの生活水準は大きく変化(Unsustainable)します。

最も低い90億人で算定すると、その変化は下図のようになります。

人口予測値

国連・人口予測中位値・・・2020年の78億人から2040年頃に人口容量90億人を超えて、2050年に97億人、2080年に107億人、2100年に109億人と一貫して増加し続けます。

❷国連・人口予測・低位値・・・2020年の78億人から2050年頃に人口容量90億人でピークに達し、以後は2080年の83億人、2100年の73億人と減少し、容量の8となります。

ワシントン大・人口予測SDG・・・2020年の79億人から2050年に88億人でピークに達し、2080年の77億人、2100年の63億人と減少し、容量の7となります。

1人当たり人口容量・・・人口容量の下限90億人を年々の人口で割った数字は、広い意味での生活水準を表しています。

❶国連・中位値・・・1990年以降、継続的な人口増加によって低下し続け、2100年には2035年の1.00に対し0.83にまで落ちていきます。

❷国連・低位値・・・19902060年は、人口増加によって低下し続けますが、2060年以降は人口停滞によって上昇に転じ、2100年には2035年の1.00に対して1.23にまで上がります。

❸ワシントン大・SDG・・・19902050年の間は、人口増加によって低下し続けますが、2060年以降は人口急減によって上昇に転じ、2100年には2035年の1.00に対して1.43にまで上がります。

以上のようなトレンドを読み解くと、次のような解釈ができます。

①国連の人口予測のうち中位値を実現するためには、地球の人口容量を110億人程度まで上げていかなくてはなりません。しかし、2020年現在の79億人で環境汚染や地球温暖化などが進んでいるのを見ると、今後80年間に約30億人を拡大していくことは、ほとんど不可能と言っていいでしょう。

②国連の低位値やワシントン大のSDGで人口が推移するとすれば、90億人程度が上限であることが示唆されていますから、現状の地球環境をなんとか持続可能(Sustainableにしていけば、その実現は可能となるでしょう。

③人口容量を90億人で持続可能(Sustainable)とした場合、国連の中位値で進めば、1人当たりの人口容量、つまり生活水準は下がり続けますから、持続不可能(Unsustainableとなります。

④国連の低位値やワシントン大のSDGで推移する場合、2050年以降の生活水準は次第に上昇していきますから、その意味でも持続不可能(Unsustainableとなります。

このように見てくると、国連のSDGsが目ざす持続可能(Sustainable)とは、地球の人口容量を90億人程度で維持し、世界人口を低位値に近づけていくこと、といえるのではないでしょうか。

2021年10月16日土曜日

サスティナブルはアンサスティナブルをもたらす?

ワシントン大の予測によれば、SDGsが進め進むほど、世界人口は減少していきます。

人口容量はSustainable(持続可能)となりますが、人口はUnsustainable(持続不可能)になる、ということです。

先に述べたように、私たち人類の生存可能量を支えている人口容量(Population Capacityは、次の式で表わせます。

人口容量=自然環境×文明

より具体的にいえば、【人口容量の中身を考える!】で述べているように、

国土などの扶養量(食糧・衣料・住居など生活資源や、移動・通信・熱源などエネルギーの供給量)と許容量(生活廃棄物・産業廃棄物・排出ガスなどの処理量)の両面から決まってきます。

それゆえ、上記の式を現代社会に当てはめると、次のように変換できます。

世界の人口容量=(地球扶養量+地球許容量)×現代文明

この式が意味しているのは、現代世界の人口容量が、現代の文明によって、❶食糧・衣料など生活資源や移動・通信・熱源などをどこまで保証できるのか、❷生活廃棄物・産業廃棄物・排出ガスなどをどこまで処理できるのか、の両面から決まってくる、ということです。

翻って、現代の地球環境を眺めると、❶では食糧危機やエネルギー不足などが懸念され、❷では温暖化や環境汚染などが顕在化しています。

それゆえ、SDGsSustainable Development Goals:持続可能な開発目標群)が目ざしているのは、これらの不安を縮小し、安定的な地球環境を回復させていこう、ということだと思います。

下図で説明すれば、地球という自然環境を現代文明の改善によって維持し、90億人規模の人口容量をなんとか維持していこう、という趣旨です。

その意味では、人口容量のSustainable(持続可能)をまさに実現しようとしています。

しかし、ワシントン大の予測によれば、SDGsを進めれば進めるほど、世界人口は減少していきます。

2050年ころに88億人となって、人口容量90億人にほぼ達した後、徐々に下がり始め、2100年には63億人となり、人口容量の7割へ落ちていきます。

つまり、人口そのものはUnsustainable(持続不可能)となり、減少していくということです。

その結果、1人当たりの人口容量(90億人/総人口数)は、現在の1.15から2040年に1.03にまで落ちますが、その後は逆転して上昇し始め、2090年には2010年の水準を回復し、2020年には1.43まで上がっていきます。

先進国のライフスタイルが途上国にまで浸透し、世界全体の生活民が高度な生活水準を営めるようになるということです。

このため、世界人口の平均的生活水準は、低下→横ばい→上昇とUnsustainable(持続不可能)な、大きな波を打つのです。

以上のように見てくると、Sustainable(持続可能)という言葉が当てはめられるのは人口容量だけであり、人口推移生活水準については、Unsustainable(持続不可能)の方が妥当だということになります。

要約すれば、SustainableUnsustainableをもたらすのです。

あるいは、SustainableUnsustainableで初めて成立するのです。

この逆説は何ゆえに生まれてくるのでしょうか?