2022年4月25日月曜日

人口反転の可能性を探る!

人口波動と時代識知の連携がひとまず決着しましたので、今回からは新たに、減少を続ける日本人口の反転可能性について考察していきます。

日本人口の減少トレンドについては、政治、経済、社会など、あらゆる分野から危惧や不安が指摘され、マスメディアにも連日のように取り上げられています。

少子化対応の遅滞、高齢者激増の負荷などはもとより、消費市場の縮小、労働力の減少、経済規模の縮小、さらには税収の減少、社会保障制度の脆弱化、社会基盤維持力の低下まで、マイナス事項が次々に指摘され続けています。

このため、人口の維持・回復が喫緊の政策課題だと指摘され、「増子化対策や移民導入策などを促進せよ」との主張が盛んですが、実際の推進策となると、実現性や具体性に欠け、曖昧のまま放置されているのが現状というべきかもしれません。

それゆえなのか、現在の時点で「人口がやがて増加に転じる」などと言えば、暴論、邪論という批判が噴出するのは当然のことです。

まして「人口波動という超長期的な視点から見ると、人口の動態には増加期と減少期があり、減少の後は増加する可能性がある」などという、筆者の主張に対しては、さまざまな方々から厳しいご批判が続いています。

拙著や当ブログはもとより、新聞掲載文やインタビュー記事などについても、既存学会の関係者や高学歴を自尊する方々から、曲学や暴論などと断じられることもしばしばです。

これらに接すると、「何を言っているのだろう。・・・マスメディアの通説や既存学問のパラダイムにどっぷり侵されて、異説異論は退けたいのだろう。短期的な見方にこだわるあまり、長期的な見方を理解できないのではないか・・・」などと、胸内では強く反論もしておりました(もっとも、肯定的に評価して下さるご意見もあり、消沈していたばかりではありません。)

とは思いながらも、もう一方では、「人口波動説の説明が未だ不十分なのだ。論理の説得力がまだまだ低いのではないか」などと反省もしておりました。

そこで、今回からしばらくは、日本人口の反転可能性について、最近の考察を述べていきたいと思います。



予想される、主な論点は、次のとおりです。

●世界人口が減少過程へ・・・主要国は全て人口減少へ・・・人減適応国こそ先進国

●人口減少社会の進展過程・・・減少開始➔減少適応➔反転開始

減少適応社会の方向・・・人口容量維持、再配分制度の見直し、濃縮型生活様式への転換など

増減条件の革新・・・人生設計観の変化、生涯生活費用の確保、個人・家族観の変化など

反転構・・・時代識知(時代精神)の革新、新文明への転換、社会・経済制度の転換など

次回からは、以上のような論点を確かめつつ、人口反転の可能性をクールに探っていきます。

2022年4月15日金曜日

5つの時代識知は世界をいかに認識してきたのか?

5つの人口波動を生み出した時代識知を、ディナミズム、アニミズム、ミソロジー、リリジョン、サイエンスの順番に考察してきました。

5つの時代識知は、人類がどのような形で環境世界生活世界構造)を捉えてきたか、を示しています。

その変化を人間の認識行動の視点から、改めて整理してみましょう。

ディナミズム(dynamism:汎力説)は、人類が「身分け」で捉えた「動くもの」を、「識分け」によって「活力」や「生命力」とみなす識知です。

ソト界という環境世界では、太陽や月から魚や昆虫までが、さまざまな形で動いていますが、人類はそれらの事物を、①その感覚による「身分け」力で「動くモノ」と捉え、続いて②意識による「識分け」力で「活力」や「生命力」と理解しています。

こうした力を粗放石器で自らの暮らしに取り込み、人類は石器前波の人口容量を生み出しました。

アニミズム(Animism:汎霊説)は、人類が感覚で「身分け」したモノの中に、「識分け」によって何らかの精神性を意識し、「言分け」を始動させて、「霊魂」や「精霊」とみなす識知です。

ソト界という環境世界で蠢いている、さまざまな事物を「身分け」で「動くモノ」、「識分け」で「活力」や「生命力」と理解した対象を、さらに「言分け」の基盤(言語阿頼耶識)によって、①「霊魂」という意思の存在を認め、②それらの連関構造もまた認識した、ということです。

こうした連関を高度な石器で自らの暮らしに取り込み、人類は石器後波の人口容量を創造しました。

ミソロジー(Mythology:神話)は、人類が感覚で「身分け」したモノの中に、「識分け」によって、幾つかの “心像象徴”を形象化し、「言分け」によってそれらを連結させ、「文章=神話」の形で、集団的に共有した識知です。

環境世界で蠢いている、さまざまな事物を「身分け」によって「動くモノ」と捉え、「識分け」によって「人格」や「超人性」を認めたうえで、「言分け」によって、①「神性」という主体の存在を「神像」という形で理解し、②さまざまな神々の繋がりもまた「文章=神話」の形によって、集団的に共有しました。

こうした共有を自然農耕で自らの暮らしに取り込み、人類は農業前波の人口容量を創り上げました。

リリジョン(Religion:宗教)は、人類が感覚で「身分け」したモノを、「識分け」によって“心像象徴”に形象化し、さらに「言分け」によって「文章=神話」として連結したうえ、その中核を建てて、統合化をめざした集団的な識知です。

ソト界で蠢く、さまざまな事物を、「身分け」によって「動くモノ」、「識分け」によって「人格」や「超人性」、「言分け」によって「神性」と「文章=神話」の形で共有したものに対し、さらに①それらの中核となる象徴を置くことで、②集団的な「統合(integrate」を実現しました。

こうした統合を集約農耕に応用することで、人類は農業後波の人口容量を生み出しました。

サイエンス(Science:科学)は、人類が感覚で「身分け」したモノを、意識で「識分け」してモノコトにし、さらに言語力の「言分け」によってコト化、つまり数字、観念、記号などの連結体として、集団的に共有した識知です。

ソト界で蠢いている、さまざまな事物を、「身分け」「識分け」によって「モノコト」として認めたうえで、「言分け」を駆使して、①さまざまな「要素」に還元し、②それらの要素の連携体として環境世界を理解しようとしています。

こうした理知界の知識(思考・観念言語)を応用することで、人類は工業現波の人口容量を創造しました。

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以上のように、環境世界に対応する時代識知を次々に転換することで、人類はその生存基盤となる人口容量を次第に拡大し、5つの人口波動を創り出してきました。

視点を変えれば、現代社会の世界認識は、サイエンスを基盤にしつつも、その下層にはリリジョン、ミソロジー、アニミズム、ディナミズムを重層的に潜ませている、ともいえるでしょう。



早朝、出航しようとしている、現代の漁民は、予めパソコンで気象を確認したうえで、お寺で安全を祈り、に首を垂れて、迫りくる竜巻を宥めつつ、登り始めた太陽に希望を託しているのです。

2022年4月4日月曜日

サイエンスという識知が工業文明を創った!

5つの人口波動を生み出した時代識知の構造を考察しています。

ディナミズム(dynamism:汎力説)、アニミズム(Animism:汎霊説)、ミソロジー(Mythology:神話)、リリジョン(Religion:宗教)に続いて、今回はサイエンス(Science:科学)です。

科学とは何でしょうか。時代識知という視点から見ると、【科学という時代識知は…】で述べたように、次のような特性を挙げることができます。

①要素還元主義(機械論的自然観)

デカルトやニュートンが創出した「要素還元主義」によって、「全体は要素の集合から構成されている」という視点で「さまざまな分析を行えば、究極的には全体の理解に及ぶ」という思考方法が確立され、科学と応用技術が多彩な次元で結びついた結果、学問や産業の繁栄がもたらされた。

②数字・記号的思考

16世紀以降、ヨーロッパにおいて進展した西洋数学という学問は、「身分け」できる範囲内での自然現象しか分析できないという、人間の思考限界を突破するため、「数字」や「記号」を応用することで数学や物理学・化学などを発展させた。この思考が、洋の東西を問わず、自然現象の解明はもとより、経済現象や社会現象一般にまで幅広く応用されようになり、時代識知の中核となった。

③科学万能主義

科学は自然の実態を探る、唯一の手法であるという視点を基盤に、さまざまな技術を開発、発展させ、人類の生活や生産力を大きく向上させた。これにより、科学、とりわけ自然科学は、この世の一切の問題は解決するものだという意識を拡散させ、工業現波を生きる人々の思考行動の基礎となった。

こうした識知観は、そのほとんどを理知界の知識(思考・観念言語)に準拠した世界観ですが、これによって、人類は新たな人口容量を獲得することに成功しました。

科学的管理による食糧生産、化石燃料の活用によるエネルギー獲得、科学技術の応用による生活物資の生産といった容量の拡大です。



要するに、太陽を初めとする宇宙のエネルギー源を、人類の手によって工学的に獲得し、多様な熱源として利用できるようにしたのです。

とすれば、工業現波を支えているエネルギーとは、宇宙エネルギーを蓄積した、さまざまな物を、多角的に利用しようとする「分散型・無機・有機エネルギー観です。

❶モノを動かす力を「エネルギー」とみなす発想は、15世紀イタリア・ルネサンスに始まり、19世紀初頭に「エネルギー:Energy」という名称で確定された。

19世紀に産業革命で始まった蒸気機関では、熱源として薪や石炭が用いられていたが、19世紀後半にアメリカで石油が発見されると、徐々に石油や天然ガスの比重が高まった。

20世紀に入って、より直接的に熱エネルギーを力学的エネルギーへ変換する内燃機関(エンジンなど)が発達すると、電気動力(モーターなど)も急速に発展し、さらに20世紀中葉に核分裂エネルギーが登場すると、原子力発電として拡大し、核融合炉などの実用化の研究開発も進められるようになった。

❹一方で、1970年代以降、化石燃料系は大気汚染を、核燃料系は高濃度放射能を拡散させるなど、それぞれの限界が現れるとともに、石油や天然ガスなどの化石燃料では資源枯渇が予想されるようになった。

❺このため、風力、太陽光など自然系エネルギーに再び注目が集まり、さらに地熱、波力、海洋温度差などの無機系エネルギーに、バイオマス燃料や生ごみや産業廃棄物などを利用する有機系エネルギーを加えて、さまざまな研究開発が進められるようになった。

以上のように、工業現波の世界では、物理学がリードする諸科学に基づいて、さまざまな無機系エネルギーが利用されてきましたが、最近では有機系エネルギーも加わっています。

こうしたトレンドは、科学という識知が把握した世界像、つまり太陽を初めとする宇宙のエネルギー源を、人類の手で工学的に把握し、多様な熱源として利用しようとする発想といえるでしょう。

科学技術という時代識知によって、宇宙エネルギーを蓄積した諸物を、多角的に利用しようとする「分散型・無機・有機エネルギー観」が生み出され、それによって工業現波が成立した、ということです。