2021年8月23日月曜日

「人類史、迫る初の減少」って、本当なの???

工業後波の政治・統治制度を検討していますが、某新聞のトップに当ブログの言説とはまったく異なる見出しが表示されましたので、今回は反論を掲げておきます。

日本経済新聞は、2021823日朝刊の、トップ記事の見出しに「人類史、迫る初の減少」という見出しを掲げています。

どこかの本屋が出した『2050年 世界人口大減少』でも、人類初の人口減少などという虚言をまことしやかにPRしていました。


この表現は正しいのでしょうか?

「初の」というのはまったく事実でありません。

人類の人口史を研究してきた、世界中の著名な人口学者の推計によれば、人類は少なくとも4回の人口減少を経験してきています。

詳しくは、このブログ【JINGEN〈人減〉ブログ】の下記の事項で詳しく紹介しています。

逆対数グラフで人口波動が浮上する!20181024日)

人口波動でむコロナ禍!202051日)

「初の」というのは、数十億人に達した現代の人口を前提にした表現だと思いますが、その発想自体が現状肯定を前提にしているのだ、と思います。

石器前波では0.06億人 石器後波で0.5億人、農業前波では2.6億人、農業後波では4.5億人をピークに、その後の人口はそれぞれ減少に向かっています。

人類は4度も人口減少を経験しているのです。

これらの背景をマクロに見れば、工業現波(現在)の90100億人をピークに減少へ向かう要因と共通しています。

にもかかわらず、過去の時代の人口規模や主導文明の差異によって、今回の人口減少の背景を考えるのは、現代人の驕りともいえるでしょう。

2021年8月17日火曜日

政治体制を集約・統合的識知から見直す!

工業後波生産・分配制度を集約・統合的識知から見直してきましたので、続いて政治・統治制度を考えてみましょう。

このブログでは【ポストコロナは「ル・ルネサンス」へ!】以降、度々指摘してきましたが、現代社会の政治・統治制度でも、その限界が目立ち始めています。

とりわけ、多くの国家が採用している間接民主制については、❶制度固定化による無力感や不信感の増加、❷政党選挙制による個別意見の排除、❸代議制による政治的無関心の拡大、❹投票者は政策内容・実施状況の検証・理解が困難、❺選挙活動における利益誘導や投票誘導などの不正など、さまざまな欠陥が露呈しています。

これらを修正し、工業後波にふさわしい政治・統治制度へ進んでいくには、どうしたらよいのでしょうか。

この課題についても、【ル・ルネサンスは集約・統合的な社会知をめざす!】で述べた、工業後波の社会知、つまり①分節化から合節化へ、②数値絶対化から数値相対化へ、③システム化からストラクチャー化へ、という視点に立って、幾つかのアイデアを検討してみましょう。

政治・統治制度のうち、まずは政治制度について、次のような方向が考えられます。


①言語機能・・・【分節化
合節化】を実現するため、【間接制度中心直接・間接整合化】が求められる。

IT化による選挙方式の導入・・・現在の直接投票唯一制に、パソコンやスマホなどで個人認証を徹底化したIT投票制を加え、投票率の拡大を図る。

個別政策別意思表示法の導入・・・政党主導型政策選定に加え、重要な個別政策については、国民自身がその是非を選べる投票制度を導入する。

議員任期・回数限定制の導入・・・議員の固定化・職業化を脱するため、任期や回数などの制限を導入し、議員の流動化・多角化を図る。

②数値機能・・・【数値絶対化数値相対化】へ向かうため、【多数決絶対化多様意見整合化】を検討する。

多数決+異見調整方式の導入・・・多数決を前提にしつつも、投票の事前事後に反対意見との調整を図る機会を拡大し、合意形成の上昇を図る。

少数意見探索・組み込み方式の導入・・・政策案の立案に際しては、主導意見だけでなく、少数意見や反対意見なども広く収集し、効果・逆効果利益層・不利益層などを明示したうえで、議会への提案を図る。

③把握機能・・・【システム化ストラクチャー化】へ転換するため、【網の目的政治風呂敷的政治】を目指す。

代議制+直接投票制による関心拡大・・・重要な個別政策については、国民の直接投票制をいっそう拡大し、政治課題への参加拡大を促す。

社会的課題の網羅的抽出・・・国家の取り組むべき社会的課題については、利害関係者や主要関心者の意向だけをくみ取るだけでなく、その背後や影響にまで広く目を配った、統合的な政策提案をめざす。

課題解決策の多様な提案・・・新たな社会的課題に取り組むには、合理的な解決策に加えて、非合理的にもかかわらず合意形成が可能な方策なども提示し、一面的な提案から多面的な提案への転換を図る。

以上のように、工業後波の政治制度では、工業前波の間接民主制を継承しながらも、国民の参加をいっそう可能にするような、幾つかの修正を加えていくことが必要になるでしょう。 

2021年8月8日日曜日

「複合社会」論を集約・統合的識知から見直す!

工業後波の社会構造を展望するため、ポランニーの「複合社会」論を検討してきました。

しかし、ポランニーの著作では、膨大な論述にもかかわらず、複合社会とはいかなるものなのか、具体的なイメージはほとんど示されていません。

そこで、複合社会のめざすべき、基本的な方向を、当ブログの視点から改めて考えてみました。

さきに【ル・ルネサンスは集約・統合的な社会知をめざす!】で述べたように、工業後波の社会知もまた、①分節化から合節化へ、②数値絶対化から数値相対化へ、③システム化からストラクチャー化へ、という大転換を求められます。

とすれば、生産・分配制度についても、次のような転換が急務となるでしょう。 

分節化から合節化へ・・・前回述べたように、次のような対応が求められます。

❶肥大化した市場交換を、租税バランスの変更共同体的統制の強化などで、極力抑制していくとともに、再配分、互酬、家政の3領域をできるだけ強化していく。

❷負荷の増加する再配分制度を見直し、税収規模や社会保障構造などの、適正な規模を作り出していく。

❸互酬制を拡大させるため、地域社会や地縁共同体など伝統的共同体の再建や、シェアリング家族やコレクティブ家族など新型共同体の構築を、多面的に支援していく(詳細は【互酬性を再建する!】参照)

家政の自給自足力を高めるため、農・漁業自営者、独立系生活者など、自立的生活民に向けて育成や支援を行う。

❺市場、再配分、互酬、家政の4領域をそれぞれ深化させるとともに、4つを連携・協調させるような、統合的な仕組みを構築していく。

数値絶対化から数値相対化へ・・・数量的な指標を優先する行動視点から、量と質の調和をめざす行動視点への転換を図ります。

❶経済統計や株価指標などに拘泥する社会・経済運営から脱却し、さまざまな現象の示す数値以外の情報や動静を、より全体的に把握できるような観察・運営行動を拡大していく。

❷経済実態とかなり乖離しつつある貨幣指標や株価指標を修正するため、経済事象をより多角的に把握できる、新たなシンタックス(統辞法)とそれに基づく指標を作り出していく。

システム化からストラクチャー化へ・・・点と線による効率優先の生産・分配方式から、面と面を重ねて中身を濃くする生産・分配方式への転換をめざします。

❶システム化の主導する市場交換、システム化とストラクチャー化の混在する再配分には、ストラクチャー化の強化を計るとともに、非システム的な互酬と家政には、新たなストラクチャーの構築や強化を進めていく。

❷市場交換のシステム化を他の領域に強引に押し広げるのではなく、4つの領域を構造的に連携させるような、包括的な運営方式を創り出していく。 

かなり抽象的な行動目標となりましたが、要約すれば、先に述べたように、圧倒的な市場交換中心経済から、生活民一人一人が自立性を再構築できる生産・分配制度へ向かって、数量的な指標を優先する行動視点から、量と質の調和をめざす行動視点への転換を図りつつ、点と線による効率優先の生産・分配方式を、面と面を重ねて中身を濃くする生産・分配方式へと移行させるなど、幾つかの転換を推進していく、ということです。