人口減少時代のトイレットペーパーは、なぜ記号化するのでしょうか?
供給側からみれば、人口減少に比例して需要量が減る以上、記号化(マーケティング戦略では差異化)によって価格上昇や需要拡大を図り、売り上げの減少をカバーしようという、明らかな意図があります。
一方、需要側には人口容量の限界化でモノが伸びなくなったため、コトへの関心が急激に増加しているという背景が考えられます。
このブログで何回も述べてきましたが、人口減少社会とはコト化=情報化が著しく進む時代です。
日本の人口波動で振り返ってみると、過去に4回あった人口減少時代にはいずれもコト化=情報化が進んでいました。
第1波の石器前波では、【用具から情具へ!】(2016年2月9日)で見たように、石器においてもモノ的な用具からコト的な情具への進展が見られました。
第2波の石器後波でも、【縄文文明も用具から情具へ!】(2016年3月8日)で見たように、土器においても用具(実用器)より情具(心理器)の比重が高っています。
第3波の農業前波では、【第3次情報化の時代】(2016年5月14日)で述べたように、土木・建築などを中心とする生産技術から、製紙技術を基盤とする物語・日記・随筆・説話などの国風文学や絵巻物などの情報文化へと移行しています。
第4波の農業後波でも、【第4次情報化の時代①~③】(2016年7月13日~30日)で見てきたように、農産物増産や築城・土木技術が主導したハード拡大時代から、印刷や出版が中心のソフト深耕時代へと移行しています。
このように見てくると、現代の日本で急速に進みつつある情報化やAI化もまた、第5波の工業現波における人口減少時代、つまり「第5次情報化」を意味しています。
すでに【5番めの壁:加工貿易文明の限界化】(2016年9月22日)で述べましたが、現代日本の工業現波は、①ハイテク化の限界、②日本型市場主義の限界、③グローバル化の限界などで、人口容量の物理的な拡大が不可能となったため、人口増加から人口減少に移っているのです。
これに伴って、国民の意識もまた、社会的な関心から産業開発の力点まで、全ての方向がモノよりもコトの方へ移行し始めています。
社会的な次元では、人口容量を支える科学技術そのものが、エネルギー拡大、環境維持、食糧増産などの各面で、モノ的対応がほとんど不可能となってきたため、その裏返しとしてAI化やIoTなどコト的充実の方向へ重点を移し変えて、産業の情報化・コト化を急速に進展させいます。
個人的な次元でいえば、私たちの多くがSNS やInstagramに夢中になっているのもまた、電気製品や自動車などモノはもはや伸びなくなってきているため、やむなくコト消費の方へ関心を移している、というのが実情でしょう。
こうした事情を考えると、トイレットペーパーが、単なる機能的商品からコトを楽しむ記号化商品へ次第に移行しているのもまた、人口減少=コト主導社会の進行を示す、ユニークな現象の一つといえるでしょう。
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