ル・ルネサンスが準備すべき事項として、先に述べたように、①集約的・統合的集中性という知性の回復、②集約的なNew Science(新科学)の準備、③倫理・使命感を持ったNew Cosmology(新世界観)の創造、の3つを挙げています。
②③についてはすでに述べましたので、今回は➀集約的・統合的集中性という知性の回復を考えてみます。
前回、科学という識知の新たにめざすべき方向として、「言語機能は分節化から合節化へ」「数値機能は数値絶対化から数値相対化へ」「把握機能はシステム化からストラクチャー化へ」の、3つを提案してきました。
こうした転換は科学に限ったことではなく、科学を基盤としている、現代社会のあらゆる知的分野に及んでいくと思われますが、とりわけ急がれるのは、政治、経済、社会などの社会知ではないでしょうか。
今回のコロナ禍で現代の社会構造には、【ポストコロナは「ル・ルネサンス」へ!】以降で度々指摘してきたとおり、グロ―バル化、民主主義制、市場経済制などにおいて、さまざまな混乱が露呈しています。
①グロ―バル化・・・コロナ禍への対応が混乱するにつれて、❶国際機関の空洞化、❷国際市場経済制の欠陥化、❸食糧・資源・燃料などの枯渇化といった現象が目立ち始め、安易なグローバリズム信仰が大きく動揺しています。 ②民主主義制・・・多くの国家が採用している間接民主制についても、❶制度固定化による無力感や不信感の増加、❷政党選挙制による個別意見の排除、❸代議制による政治的無関心の拡大、❹投票者は政策内容・実施状況の検証・理解が困難、❺選挙活動における利益誘導や投票誘導などの不正など、その限界が露呈しています。 ③市場経済制・・・資本主義国家はもとより、国家資本主義国家においても、❶資本の寡占化や横暴化が進み、❷所得格差の慢性的拡大、❸大量生産-大量消費の害毒化、❹物質的拡大限界化に伴う情報的過剰化・弊害化など、市場経済制度そのものの限界が目立っています。 |
こうした混乱を乗り越えていくには、科学における識知転換を大きく援用して、社会制度の設計においても、「言語機能の合節化」「数値機能の相対化」「把握機能のストラクチャー化」といった、3つの側面から再検討していくことが必要だと思います。
詳細な検討が求められると思いますが、ひとまずは基本的な方向をあげておきましょう。
①グロ―バル化・・・過剰な国際分業を見直し、国際分業と国内自給を整合化することや、国際交流の量的拡大を超えて、質的な充実をめざすために、点と線による一元的な国際交流から、何層かの面を重ねていく多元的な国際交流へと転換していきます。 ②民主主義制・・・間接民主制の弊害を超えるため、直接民主制の利点を再導入したり、全てを数で決していく多数決絶対制を見直して、少数意見を的確に反映できる合意形成方式を生み出すなど、点と線による権力集中的な国内統治から、面と面を重ねて民意を統合する国内統治へと、それぞれ移行していきます。 ③市場経済制・・・圧倒的な市場交換中心経済から、生活民一人一人の自給や物々交換を活かせる経済構造に向かって、数量的な指標を優先する行動視点から、量と質の調和をめざす行動視点への転換を図り、点と線による効率優先の生産・分配方式から、面と面を重ねて中身を濃くする生産・分配方式へと、それぞれ転換していきます。 |
以上の記述は、まったく新たな目標の設定ともいえますから、従来の用語では表現できない事象が多々現れてきます。
詳細な説明は後述することにして、とりあえず大きな目標をあげておきます。
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