2019年9月25日水曜日

石器後波はアニミズムが作ったのか?

前回までの石器前波に続き、今度は石器後波を創り出した「時代識知」について、さまざまな視点から考えていきます。

石器後波」はB.C.9000年ころに始まる約5000万人の波ですが、これを創り出した「時代識知」とは、【
人口波動は5重の精神史を示す!:2019年3月15日】で述べましたように、人類学などで考察されている「アニミズム(animism)が最も近いのでは、と筆者は推定しています。

もっとも、この理論の主張する「霊的存在への信仰」とか「宗教の原点」などという「宗教」論はできるだけ排除し、当時の人々がどのように周りの世界を理解していたか、という「時代識知」を抽出してみたいと思います。

当時の人々の世界観を後世の人間の世界観で判断して、自分たちの識知とは異なっているから、宗教とか信仰など、別次元の観念と決めつけるのは甚だ不当だと思うからです。

さて、アニミズムとは、周知のように、1871年、イギリスの人類学者、E.B.タイラーがその著書『原始文化(Primitive Culture)』の中で提起した観念であり、生物・無機物を問わず、あらゆるモノの中に霊魂あるいは霊が宿っている、という考え方です。

 

この理論の主な特徴を、先学諸賢のさまざまな解説をベースにしつつ、とりあえず整理しておきましょう。

①アニミズムとは、ラテン語の「気息」とか「霊魂」を意味するアニマ(anima)に由来する造語で、神霊、精霊、霊魂、生霊、死霊、祖霊、妖精、妖怪などさまざまな「霊的存在(spiritual beings)への信仰」を示す観念であり、宗教的な営為の最も原始的な形である。

②当時の人々は、死、病気、恍惚、幻想、とりわけ夢などにおける浮遊体験を省みて、身体から自由に離脱しうる非物質的な実態=「霊魂(soul)」の存在を確信していた。

③「霊魂」とは、人間の物質的・身体的特質や機能に対し、神的・人格的特質や機能を独立の存在としてとらえたものである。

④「霊魂」とは、人間の身体に宿って彼を生かしているものであるが、その宿り場(身体)を離れても独自に存在しうるものである。

⑤アニミズムは、人間の霊魂に類似する観念を、類推的に動植物や自然物など人間以外の諸存在にも押し広げ、広く認めるものである。


霊魂はさまざまな物に宿っている限り、それらを生かしているが、物が死滅した後も、それらを超えて独自に存在し続けるから「超自然的存在(super-natural beings)」と見なされる。

⑦さまざまな霊魂は通常、不可視的存在であるから「霊的(spiritual)」とされ、人間と同じように喜怒哀楽の心意を持っているから「人格的(personal)ともみなされる。

以上のようなアニミズム観をベースにしつつ、「時代識知」の立場から、石器後波の環境観、世界観を考えていきましょう。

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