2019年11月15日金曜日

農業前波はミソロジーが作った?

石器前波を創り出した「ディナミズム:dynamism」、石器後波を創り出した「インモータリズム:immortalismに続いて、3番目の人口波動である農業前波を生み出した時代識知とは一体どのようなものだったでしょう。

農業前波は「粗放農業文明」によって生まれた、B.C.3500年頃からA.D.400年頃に至る約4000年の波です。

この時代の人類はシュメール、インダス、ミノア、古代エジプト文明などに見られるように、「神話的な世界観(ミソロジー:mythology)」によって、人口容量を約2億6000万人まで増やしてきたと思われます。

「神話」(mythまたはmythology)の定義や内容については、古代ギリシャから現代に至るまで、歴史学、民俗学、文化人類学、心理学などの諸分野で研究されており、さまざまな言説が展開されています。

その中でも「ミソロジー:mythology」とは何かについて、有力な言説を展開しているのは、イギリスの文化人類学者、E.B.タイラー(1832~1917年)、スイスの心理学者、C.G.ユング(1875~1961年)、フランスの構造人類学者、C.レヴィ=ストロース(1908~2009年)などでしょう。







E.B.タイラーの言説
(詩的な伝説の形成者と伝達者)は祖先から受け継いだ思考と言葉を神々や英雄の神話的な生へと成形し、その伝説の構造のうちに自らの精神の働き示し、自分たちが生きた時代、正規の歴史ではその記憶自体が失われていることも多い時代の技芸や慣習、哲学や宗教を記録にとどめている。

神話とは、その作り手の歴史であって、それが語る内容の歴史ではない。 超人的な英雄たちの生ではなく、詩によって語る諸民族の生を記録しているのである.
     (『原始文化〈上〉』500p、奥山倫明他訳、宗教学名著選・国書刊行会)

C.G.ユングの言説

 神話とは何よりも心の表明であり、そこに表わされているものはこころ(ゼーレ)の本質である(中略)。

未開人は太陽が昇り沈むのを見ているだけでは満足しない。この外的な観察は同時にこころ(ゼーレ)の中の出来事でもなければならない。すなわち太陽の動きは、間の心の中に必ずや住んでいるはずの神や英雄の運命を示している違いないのである。

夏と冬、月の満ち欠け、雨季といったすべての自然現象の神話化は、これらの客観的な経験の比喩であるというよりは、むしろこころ(ゼーレ)の内的無意識的なドラマをシンボルによって表現したものである
                   (『元型論』30p、林道義訳、紀伊国屋書店)

C.レヴィ=ストロースの言説

神話の実体は、文体や話法の中にもまた統辞法の中にもなく、そこで語られる物語の内に見出される

神話は一個の言語であるしかし、きわめて高い水準ではたらく言語活動であって、そこでは、いってみれば、意味がまずその上で滑走をはじめた言語的基礎から、離陸することに成功するのである。

われわれが達した暫定的諸帰結を要約しよう。それらは三つある。


⑴神話が意味をもつとすれば、その窓味は、神話の構成にはいってくる個々の要素にではなく、それらの意味か結びつけられている仕方にもとづいている。

⑵神話は言語の種類に属し、その構成部分をなしている。とはいえ、神話の中で用いられる言語は特殊な諸性格を示す。

⑶これらの諸性格は、言語表現の通例の水準より上にしかもとめることができない。換言すれば、それらは、他の何らかの言語表現の中に見いだされるものよりも複雑な性質のものである。
 
              (『構造人類学』232p、川田順造他訳、みすず書房)

以上のような諸見解を参考にしつつ、時代識知としての「ミソロジー」の位置付けを改めて考えていきましょう。

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