2019年9月5日木曜日

アニマティズム(animatism)よりディナミズム(dynamism)がふさわしい!

前回【アニマティズムという時代識知:2019年8月24日】で紹介したように、イギリスの人類学者、R.R.マレットは原始社会の世界観として「アニマティズム(animatism)を提唱し、「人間、事物、動植物、諸現象の作用や活動とは、活力、威力、生命力、呪力、超自然力である、と感じる心理や態度である」と説明しています。

さらに「活力や生命力という観念が、歴史的にも心理的にも霊魂や精霊という観念に先行している」とも述べていますから、別名である「ディナミズム(dynamism:学術用語としてはダイナ・・・ではなくディナ・・・)の方がよりふさわしいのか、とも思います。



この「ディナミズム(dynamism)」こそ、「石器前波」時代(BC40000~BC9000年頃)の「時代識知」、略して「石前識知」であった、と筆者は推定しています。

宇宙や地球という自然環境に放り込まれた人間は、まずはその身に備わる五感、つまり「認知」能力によって内外、明暗、遠近などを捉え、そのうえで言語、つまり「識知」能力によって、自他、昼夜、天地などを「分節」したのではないか、と思います。

つまり、「混沌」とした世界を見分けるには、まずは「」と「」を分節し、続いて「自」は「」と「」に、「他」は「」と「」に分け、そして「物」は「空間」と「時間」に分節することが必要でした。

「空間」の上に識知された、さまざまな「物」は、時間」の推移とともに少しずつ変化しますから、その変化を引き起こすものが「動力」であり、それを生み出すのが「活力」、さらには「生命力」ではないか、と考えたのでしょう。

このような経緯によって、「石前識知」は時間の推移とともに動いたり変化する、あらゆる物の中に「動力」や「活力」を認め、その延長上にそれらを生み出す「生命力」を想定していたのです。

この「石前識知」を、先に【
時代識知」の要件を考える!:2019年6月3日】で挙げた、5つの要件によって確認してみましょう。

①「認知」次元ではなく、「識知」次元を捉える言語網。

五感の「認知」した環境世界の事物のそれぞれを、「可動」か「不動」か分節化し、前者を「活力」や「生命力」のあるものとして「識知」しています。

②「言(こと)分け」による言語表現と未言語表現の両面を捉える言語網。

「可動」する対象を「活力」や「生命力」として言語化する一方、「不動」な対象については「静止」や「死」として潜在化させています。

③網状(networking)の「システム(system)」ではなく、分節的(articulating)な「構造(structure)」を捉える言語網。


ディナミズムは、周囲の環境世界を「動」か「静」の既定の網よって仕分ける関係的な識知行動ではなく、「動かない」ものの中に「動く」ものを身分ける分節的な識知行動です。

④世界を理解する受動的な次元に加え、世界に働きかける能動的な次元もまた意味する言語網。


ディナミズムは、さまざまな物質の中に「活力」や「生命力」として認めるとともに、それらを動かそうとする意識の存在を認めています。

⑤学問、思想、科学などの次元を超えて、より根底的な認識次元を捉える言葉。


ディナミズムは、学問、思想、科学などの理念的な言語次元はもとより、霊魂や精霊など宗教的な言語次元もまた超えて、環境に対する人間の素朴な認識次元を示しています。

以上のような「石前識知」の登場によって、人類初期の人口波動である「石器前波」が瑞々しく生み出されたものとわれます。

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