2018年10月13日土曜日

「修正ロジスティック曲線」を重ねて「多段階人口波動曲線」へ!

人口波動説のオリジナリティー第6は、長期的な人口の推移を、「修正ロジスティック曲線」を何度も繰り返す「多段階人口波動曲線」である、と改めて定義したことです。

例えば世界人口の超長期的な推移を見ると、いくつもの波が発見できます。

フランスの歴史人口学者
J-N.Birabenなどが行った、詳細な推計に基づく、下記の グラフで見ても、人口の推移には5つ、もしくは6つの急増期があることが読み取れます。








このグラフの 元データをベースに、各年毎の増減率を算出してみると、次のような変化が読み取れます。




つまり、—35000年頃、—5200年頃、—3000~1500年頃、—1000~—200年頃、1000~1150年頃、1800~1970年頃の、ほぼ6つの時期で増加率が高まっていることがわかります。

このうち、3番目と4番目は長期的な増加傾向と読めますから、合わせることもできそうです。


そこで、筆者はそれぞれの時期の前後を区切りとして、5つの時期別に人口推移をグラフ化し、さらに連結してみると、下図のような図面を描いてみました。

このような波動が現れる、基本的な背景として、筆者は次のように考えています。


●人間の個体数(人口)は、人口容量(自然環境×文明)の上限に達すると、「修正ロジスティック曲線」を辿る。

●人間は自ら自然環境を改善する能力、つまり文化や文明を創造する能力を持っているから、それによって新たな人口容量を作ることができる。

●人口の停滞が続いている間に、新たな人口容量を作り出す、新しい知恵・技術・世界観が生まれてくると、それまでの「抑制装置」の鍵が外れ、本来の増加圧力によって人口は再び増加を開始する。

●その結果、長期的な人口の推移は、一つの修正ロジスティック曲線から新たな修正ロジスティック曲線へと、次々に階を重ねる、連続的な曲線を辿っていく。

そこで、この曲線に対し、筆者は「多段階人口波動曲線」という名称を与えました。

個々の「修正ロジスティック曲線」が次々に階を重ねて、連続的な「多段階人口波動曲線」へ発展していく、という視点を提唱したのです。

2018年10月5日金曜日

「修正ロジスティック曲線」という視点

前回は加除式による「修正ロジスティック曲線」を提案しましたが、今回はもう一つ、乗除式による曲線で考えてみましょう。

数理生態学や個体群生態学などの分野では、密度効果を出生数と死亡数の差で表すのではなく、人口総量の増減率で表す、下記のような数式がしばしば使われています。

Pn+1=α×(1-Pn/K)×Pn

Pnはn年の人口、Kは人口容量、αは増減係数を、それぞれ表しています。

この数式を使って、Kを100人とし、αをさまざまに変えてシミュレートしてみると、Pnは下図のように変化します。



 ①α=2.0のケースでは、50人前後をピークとする、ほぼロジスティック曲線を描いています。人口容量が100人にもかかわらず、50人前後でほぼ定常状態となっているのは、αが変化した時の増減幅が50人を基準にして上下に大きく揺れることを前提にしているからです。

②α=3.0のケースでは、65人前後で小波が現れ、以後は小刻みに続いていきます。

③αが3.18から3.5へ、さらに3.8へと変わるにつれて、波動の上限は大きく80~95人へ広がるとともに、増減の振幅や変化パターンが多様化していきます。

こうしてみると、前回の加除式でも今回の乗除式でも、人口容量の上限に近づくにつれ、人口の動きはロジスティック曲線のような定常状態だけでなく、さまざまな動揺状態を辿るケースが多い、と推測されます。

つまり、容量制約時の人口推移は、安定的な定常状態を辿るのは稀なことで、下降、増減、回復などさまざまな推移を辿ることの方が多い、ということです。

サステイナブル(持続可能)だけではなく、カオティック(混沌)な動きも見せるのが常態なのです。

これこそ、筆者の提唱する「修正ロジスティック曲線」が意味するところです。

特定の数式や方程式をさすのではなく、上限到達時以降の人口推移に多様な変化を認めようという視点や見解、そのものを示しているのです。

2018年9月28日金曜日

定常にはならないロジスティック曲線へ!

オリジナリティー第5「修正ロジスティック曲線の提唱」の続きです。

前回提案した「加減式」を用いて、人口増減の推移をシミュレートしてみましょう。

従来提唱されてきた「ロジスティック方程式」によるシミュレート結果は、下図の上のような「ロジスティック曲線」になります。




これに対し、加減式を採用した「修正ロジスティック曲線」の一つは、上図の下に示したように、微かに増減を繰り返すグラフになります。

さらに加減式の係数αとβを変えてみると、下図のように山と谷がさらに大きく揺れるグラフとなります。


以上のように、人口容量が満杯となった後の人口の推移は、定常的な「ロジスティック曲線」ではなく、一定の容量の下で増減を繰り返す「修正ロジスティック曲線」となる可能性がかなり高いといえるでしょう。

2018年9月12日水曜日

繊研新聞(2018年9月11日)に「人口減少でライフスタイルが変わる」を寄稿 しました!




人口減少が始まって、すでに10年。このまま減り続ければ、2100年には6千万人を割る。ほぼ200年間維持されてきた人口増加社会はもはや過去のもので、少なくとも今後の半世紀は人口減少社会となる。その影響はさまざまな分野に及ぶが、とりわけ私たちのライフスタイルは大きく変わる。・・・以下はhttp://gsk.o.oo7.jp/insist18.html

2018年9月8日土曜日

「ロジスティック曲線」から「修正ロジスティック曲線」へ!

オリジナリティーの第5は「修正ロジスティック曲線」の提唱です。

生物の個体数は「ロジスティック曲線」を辿る、といわれてきました。【
動物の個体数はロジスティック曲線をたどる?】(2015年2月2日)で説明したとおりです。

しかし、20世紀後半にさまざまな動物の実態がわかってくるにつれて、必ずしもそうとは限らず、上限に達した後は下降したり、増減を繰り返したり、しばらくして回復するなど、さまざまなケースが多々報告されるようになりました。

そこで、こうした動物行動学や個体群生態学の成果を踏まえ、筆者もまた個体数がロジスティック曲線から外れるケースを「変形ロジスティック曲線」という名称で捉えてはどうか、と提案しました(『人口波動で未來を読む』1996)。

但し、この言葉については、それ以降、幾つかの修正を加えてきました。

①「変形ロジスティック曲線」という名称については、やや違和感がありましたので、1997年より「修正ロジスティック曲線」に変えました(論文では『世界と人口』1997,3月号:家族計画協会、著作では『凝縮社会をどう生きるか』:NHKブックス:1998)。

②この曲線が生まれる背景については、「修正ロジスティック曲線の論理」として、出生数と死亡数の循環による、より詳しいモデルを提案しました(『日本人はどこまで減るか』:幻冬舎新書:2008)。その内容については、【
「修正ロジスティック曲線」を提唱する!】(2015年2月9日)で一通り述べています。

以上の論理を数式化すると、人口容量(K)に対する、該当年の密度効果を「加減」で表す、次のような差分方程式が考えられます。
一般にはK対Pnの関係を乗除式でとらえて、微分方程式に変換されるケースが多いようです。

これらの修正によって、ロジスティック曲線は、さまざまに変形する「修正ロジスティック曲線」へと進展してきたといえるでしょう。

2018年8月26日日曜日

人口抑制装置が作動する・・・文化的装置から生理的装置へ!

「人口波動説・10のオリジナリティー」の第3は「人口抑制装置」の提唱です。

「人口容量」への負荷が強まるにつれ、増加を抑制するしくみが徐々に作動し始めますが、それを「人口抑制装置」と定義しなおし、その中身を「生理的抑制装置」と「文化的抑制装置」の2面から捉えました。

この点について、マルサスは『人口論・第6版』の中で、次のように述べています。


人口と生活資料の間に不均衡が発生すると、人口集団には是正しようとする力が働く。
 人口に対してはその増加を抑えようとする「能動的抑制(主として窮乏と罪悪)」や「予防的抑制(主として結婚延期による出生の抑制)」が、また生活資料に対してはその水準を高めようとする「人為的努力(耕地拡大や収穫拡大など)」が、それぞれ発生する。

この論理の前半を継承しつつ、オリジナリティー第3では、人口抑制について次のように説明しています。

仮説Ⅱ・・・人口は、人口容量が低下した場合、あるいは人口容量の上限に近づいた場合に、さまざまな抑制装置の発動によって、その増加を停止する。この抑制装置は、文化の安定している時には主として「文化的抑制装置」が、また文化の混乱している時には「生理的抑制装置」が、それぞれ発動する。

仮説Ⅱ-1・・・文化的抑制装置とは、人口が人口容量の上限へ接近した時、直接的抑制(死亡促進、妊娠抑制、出産抑制、人口分散など)、間接的抑制(生活圧迫、結婚抑制、家族縮小、家族・子どもの価値の低下、都市化・社会的頽廃化など)、政策的抑制(強制的な出産抑制、動乱・戦争、強制移動)といった文化的抑止力が自動的に作動し、単独もしくは複合的に人口増加を抑えるしくみである。

仮説Ⅱ-2・・・生理的抑制装置とは、文化的抑制装置が作動しない時に、体力低下、寿命限界、生殖能力低下、胎児や乳幼児の生存能力低下などが、自動的に作動するしくみである。
                        (古田隆彦『人口波動で未来を読む』1996)

つまり、マルサスのいう「能動的抑制(主として窮乏と罪悪)」と「予防的抑制(主として結婚延期による出生の抑制)」は、基本的に人類に限るものです。



人口波動説では、この考え方を継承しつつ、第4のオリジナリティーとして「人口抑制装置」という名称で、人類から動物全体に広げる視点を提案し、そのうえで、動物的・生理的・生得的なしくみを「生理的抑制装置」、人類に特有の人為的なしくみを「文化的抑制装置」として再構成しました。

このうち、人為的、文化的装置については、「
人為的抑制装置には3つの次元がある!」(2015年3月17日)において、増加抑制装置と減少促進装置に分けて、すでに詳しくに述べています。

また、人類にとっては「文化的抑制装置」の方が先に作動し、それが遅れた時に「生理的抑制装置」が作動するという
順序についても「人口抑制装置が作動する時」(2015年3月21日)で解説しています。
 
以上がオリジナリティーの第3と第4です。

2018年8月18日土曜日

マルサスの人口原理を再構成する!

「人口波動説・10のオリジナリティー」のうち、第1と第2について、まず解説しておきましょう。

第1のオリジナリティーでは、R.マルサスの立てた2つの公準(①人間の生存には食料が必要である、②人間の情欲は不変である)を継承しつつ、第2にあげた「人口容量」の視点によって、改めて3つの公準に再構成しています。

①人口は常に増加圧力を持つ

②人口は人口容量の範囲内で増加する


③人口容量の規模は、文化や文明による自然環境の利用形態によって決定される

マルサスの「人口原理」は、基本的に人類の人口推移から定立されたもので、立論の根拠もまた各国の人口動向で説明しています。

これに対し、筆者の「人口波動説」は、主として20世紀に発達した生態学や動物行動学などの成果を応用し、動物一般の個体数推移を参考にしつつ、人類の人口動向をとらえ直しています。



動物の個体数推移では、一種の動物が一定の地域空間内で生存できる量を「キャリング・キャパシティー(Carrying Capacity)」という概念でとらえています。

「一定の空間において一種類の動物の数(個体数)は決して増えすぎることはなく、ある数で抑えられる」という現象です。

このキャリング・キャパシティーを人類に応用し、第2のオリジナリティーとして、新たに「人口容量」という用語を提案しました。

「人口容量」とは、自然環境を利用して、文化や文明で作り出す人口の生存規模を意味しています。

日本の生物学や生態学では、「Carrying Capacity」という英語を「環境収容力」とか「環境許容量」と訳すのが一般的であり、「環境」という主体が受け入れてくれる「受動的」能力というニュアンスで使われています。

しかし、人類の場合は他の動物と異なって、しばしば文明という方法によって自然環境に働きかけ、キャパシティーを積極的に拡大しています。

つまり、人類の場合は〔自然環境×文明〕によって容量を変えていますから、「Carrying Capacity」よりももっと「能動的」な意味を込めて、「人口容量(Population Capacity)」と言う用語を使うほうがベターだと思うからです。

以上のような改訂によって、マルサスのoscillations論をよりダイナミックな動態仮説へと変換しました。