2015年3月17日火曜日

人為的抑制装置には3つの次元がある!

さまざまな時代に、幾つかの民族が行なってきた、多様な人口抑制装置の実態を眺めてきました。
 
そのほとんどが生物的な抑制を超えており、意思的、制度的、社会的に人口を抑え込んでいますから、その意味で「人為(文化的)抑制装置」というべきものです。

そこで、人口抑制装置の構成を表のように整理してみますと、人為的な抑制は人口増加抑制と人口減少促進の両面で、次のような装置に分けられます。


 

●人口増加を抑える装置としては、
直接的抑制(妊娠抑制、出産抑制など)、間接的抑制(生活圧迫、結婚抑制、家族縮小、都市化、社会的頽廃化など)、政策的抑制(強制的出産抑制、出産増加への不介入など)があります。

●人口減少を促す装置もまた、
直接的抑制(集団自殺、環境悪化や死亡増加への不介入など)、間接的抑制(飽食・過食による病気の増加、生活習慣病の増加、都市環境悪化など)、政策的抑制(老人遺棄、棄民、戦争など)にわけられます。

とすれば、人為的な抑制装置は概ね、直接的抑制、間接的抑制、政策的抑制の3つに整理できます。政策的というのは、村落、都市、国家などの集団が、一定の意図を持って人口増減に介入するという意味です。

いずれにしろ、私たち人間は人口容量の制約が強まるにつれて、これら3つのうちいずれかを選んで行なったり、あるいは3つ全てを動員して、人口増加を抑えているのです。

もっとも、このように書くと、私たち一人一人が容量の上限を大局的に理解して、国家や社会のために意識的に抑制装置を作動させるのだ、と誤解されそうです。

だが、そうではありません。3つの装置は個々人の社会的な意識の高さとして作動しているのではなく、経済的な苦しさ、居住空間の圧迫、生活時間の多忙さなど、彼らが肌身で感じた実感あるいは感触によって、自から作動させているものです。苦しい生息環境を少しでも改善しようとする時、意識的あるいは無意識的に作動し始める、といってもいいでしょう。

それはちょうど、多くの動物が種全体を保存するために個体数を抑えるのではなく、自らの生存適応度を高めるために抑制行動を始めるのとまったく同じことなのです。
 
  (詳しくは古田隆彦『日本人はどこまで減るか』)

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