人減先進国の向かうべき産業分野として、①人口容量維持産業、②情報深化推進産業、③濃密生活対応産業の3つを挙げてきました。
前回の「情報深化推進産業」に続き、今回は「濃密生活対応産業」、いわゆる「コンデンシング対応産業」を考えてみます。
人口減少が少なくとも70~80年は続く以上、人口増加を前提に、生活民一人当たりの物質的な需要のみを成長・拡大させ、生活市場を拡大させるというような産業対応は、もはや通用しません。
人口は減っても、前々回述べたように、人口容量が維持されていけば、生活民一人一人に与えられた個人容量は増えていきますから、それらを精神面や生きがい面など、内面的な濃密性の充足に対応させることで、消費量を倍増させるような、新たな生活産業が必要になってきます。
いかなる産業なのか、この件については、筆者の別のブログ【生活学マーケティング】で詳細に述べていますので、その要旨を紹介しておきます。
●人口減少時代の生活様式は、上昇志向、物的拡大、自己顕示といった人口増加時代の様式を超えて、足元志向、心的充実、自己充足などをめざすものとなる。一言でいえば、濃密な生活、つまりコンデンシング・ライフ(Condensing Life)こそ、新たな生活様式になる(コンデンシング・ライフを求めて!)。 ●生活民の生活構造は、【これが生活体だ!】【「生活民」の生活構造とは・・・】【「生活体」から「生活球」へ】などで述べているように、3つの軸から構成されている。 ①縦軸は感覚(体感・無意識・象徴)と言語(理性・観念・記号)を両極とする。 ②横軸は個人(自給・愛着・効用)と社会(交換・同調・価値)を両極とする。 ③前後軸では真実(儀礼・学習・訓練)と虚構(遊戯・怠慢・弛緩)を両極とする。 ④3つの軸が交わる中心として、「日常・平常」な生活が位置づけられる ●このような構造を前提にすると、従来の膨張型生活(Expanding Life)から、今後の濃密型生活(Condensing Life)では、次のようなトレンドが強まってくる。 ❶社会(交換・同調・価値)より個人(自給・愛着・効用)を重視する。果実でいえば、売れるか否かよりも、自分の好みや馴染みを重視する。・・・基本は差延化! ❷言語(理性・観念・記号)より感覚(体感・無意識・象徴)を重視する。衣類でいえば、デザインやブランドよりも、着心地や保温を重視する。・・・下降型生活行動へ向かって! ❸真実(儀礼・学習・訓練)と虚構(遊戯・怠慢・弛緩)の、両方の密度を高める。勉強の中身を深めるととともに、遊びの中身も濃くしていく。・・・虚実濃密行動とは何か? ❹3軸が交わる「日常・平常」な生活は、肥大化よりも濃縮化へ向かう。暮らしの規模は、量的な拡大よりも、質的な充実をめざす。・・・差別化の本質が変わる! |