人類史を人口波動という視点から見直しています。
人口波動を生み出したのは、人類が環境世界へどのように対応したかという手段、つまり石器、農業、工業などの文明です。
さらにその背後を探ると、いかなる認識力で環境を理解したか、つまり「時代識知」が潜んでいる、と思います。
このブログで繰り返し述べてきたように、石器前波はディナミズム(dynamism:汎力説)が、石器後波はアニミズム(Animism:汎霊説)が、農業前波はミソロジー (Mythology:神話)が、農業後波はリリジョン(Religion:宗教)が、工業現波はサイエンス(Science:科学)が、というように、5つの時代識知がそれぞれの文明をリードしてきたのです。
当ブログでは、それぞれプロセスを詳しく述べてきましたので、今一度、識知と文明の関係を整理しておきましょう。
最初は石器前波を創り出したディナミズム(dynamism:汎力説)。
ディナミズムとは【ディナミズム=動体生命観が石器前波を創った!】で述べたように、動いている物体の全てに対し「活力」や「生命」を感じる、という時代識知でした。
提唱者のR.R.マレットによると、「人間、事物、動植物、諸現象の作用や活動とは、活力、威力、生命力、呪力、超自然力である、と感じる心理や態度である」と考えて、「活力や生命力という観念が、歴史的にも心理的にも霊魂や精霊という観念に先行している」と述べています(Pre-animistic Religion:1900) 。
要約すれば、環境空間の中で動いたり変化している、あらゆる物の中に「動力」や「活力」を認め、その延長上にそれらを生み出す「生命力」を想定する、ということでしょう。
この発想と旧石器文明の間には、次のような展開があります。
①識知次元 ディナミズムとは、人類が感覚で「身分け」した「動くもの」を、「識分け」によって「動力」や「活力」とみなす行為であり、識知界の底部において捉えられたモノコトである。 ②道具次元 「動く力」を人類の暮らしに採り入れるために、[動かない石]と[動く腕力]を[合節化]することで[動く石器]を作り出した。岩石を打ち砕いた打製石器により、石礫、石矢、石斧、石刃、尖頭器などを製作し、環境世界への働きかけを可能にした。 ③文明次元 [動く石器」の使用によって、「動く諸物」の「動力」や「活力」を獲得し、自らの暮らしに[合節化]する仕組みを創り上げた。これにより、さまざまな動植物の体内に蓄積された太陽エネルギーを、石器を利用して採集し、人間のエネルギーに変換するという文明が形成された。 |
以上のようなディナミズムを、生活世界の上に位置付ければ、下図のようになります。
こうしてみると、ディナミズムとは、旧石器時代の人々の行った、さまざまな「合節化」行為を積み重ねて、「狩猟・漁猟・採集」文明を形成し、石器前波の「人口容量」を生み出した時代識知だった、といえるでしょう。