2022年2月4日金曜日

科学識知が分散型エネルギー観を生み出した

「科学」という時代識知観が、工業現波を創った基盤である、と述べてきました。

基盤となったエネルギー観については、【コロナ禍が壊す生産構造とは・・・】や【ロナ禍に手も足も出せない分散型無機エネルギー観】などで、すでに検討していますので、その内容をひとまず要約しておきましょう。

●工業現波のエネルギー観は、「要素還元主義」に基づく「分散型エネルギー観」とでもいうべきものです。

モノを動かす力を「エネルギー」とみなす発想は、15世紀イタリア・ルネサンスの巨匠、レオナルド・ダ・ビンチの梃や滑車の活用研究に始まり、1617世紀のドイツのJ.ケプラー、イタリアのG.ガリレイ、フランスのR.デカルト、18世紀のフランスのR.ダランベールらの研究を経て、19世紀初頭、イギリスのT.ヤングにより「エネルギー:Energy」という名称で確定されました。

●こうした理論展開に裏付けられ、19世紀に産業革命がヨーロッパ全体に広がると、蒸気機関の普及と鉄道の発達が、エネルギー転換装置の典型として認知され、熱力学が成立します。さらに化学や生物学でもエネルギー転換に関心が高まり、電磁気学の成立で「エネルギー保存の法則」も生まれました。かくして19世紀中葉に物理学で確立されたエネルギー概念は、力学的エネルギー、熱エネルギー、電磁気的エネルギーなどを統一的にとらえるようになりました。

●初期の蒸気機関では、熱源として薪や石炭が用いられましたが、19世紀後半にアメリカで石油が発見され、精製技術が発達すると 徐々に石油や天然ガスの比重が高まってきました。

20世紀に入って、エネルギー概念が普遍的かつ基本的な自然法則として維持されるようになると、より直接的に熱エネルギーを力学的エネルギーへ変換する内燃機関(エンジンなど)が発達し、さらに蒸気機関や電気動力(モーターなど)も急速に発展しました。

20世紀中葉に至ると、核分裂エネルギーが登場しました。化学物質の燃焼である蒸気機関や内燃機関に対し、核分裂反応を利用して莫大なエネルギーを取り出すもので、原子力発電として拡大しました。1980年代になると、核分裂よりも大きなエネルギーが得られる核融合が研究され、核分裂よりもリスクが少ないため、核融合炉などによる発電用途に向けて、実用化の研究開発が進められています。

●ところが、1970年代以降、化石燃料系は大気汚染を引き起こし、また核燃料系は高濃度放射能を拡散させるなど、地球環境や生活環境を破壊する恐れが高まり、それぞれの限界が現れてきました。また石油や天然ガスも21世紀中に枯渇に向かい始め、石炭も22世紀には供給量がピークとなるなど、22世紀には化石燃料の資源枯渇が予想されています。

●このため、風力、太陽光など自然系エネルギーに再び注目が集まりました。二酸化炭素などの環境汚染物質をほとんど出さず、継続的に利用可能であることから再生可能エネルギーとよばれています。さらに地熱、波力、海洋温度差などの無機系エネルギーに、バイオマス燃料や家庭の生ごみ、外食産業の食品残菜、飼料・たい肥、木質系廃棄物などを利用する有機系エネルギーを加えて、さまざまな研究開発が進められていますが、未だ開発途上といえるでしょう。

以上のように、工業現波の世界では、物理学がリードする諸科学に基づいて、さまざまな無機エネルギーが利用され、さらに最近では有機系エネルギーも加わっています。

科学という識知が把握した世界像、つまり太陽を初めとする宇宙のエネルギー源を、人類の手で工学的に把握し、多様な熱源として利用しようとする発想といえるでしょう。

とすれば、工業現波を支えているエネルギーの基本は、宇宙エネルギーを蓄積した諸物を、多角的に利用しようとする「分散型・無機・有機エネルギー観」ではないでしょうか。 

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