2024年1月19日金曜日

先端技術革新をいかに活用するか?

複合経済体制へ進展する、大きな課題としてグローバル・レシプロシティー(地球民互助機構:Global Reciprocity:GRを提案し、AIによる機構構築や運営方式などを展望しています。

この課題に関連する社会・経済学分野では、この20年ほどの間にさまざまな革新的提案が行われています。グローバル・レシプロシティーへの応用が可能なのかどうか、ひとまず確認しておきましょう。

最も代表的な提案として、効果的利他主義(Effective Altruism効果的加速主義(Effective Accelerationism)の2つを取り上げてみます。



まず概要を整理します。

効果的利他主義(Effective Altruism

●科学的な根拠に基づき、最大のインパクトを生み出す利他行為を実証的に発見し、その実現を目標に掲げるという主張であり、実践的コミュニティーとしても活動を始めている。

2000年代にイギリスの大学教授らが中心となって開始し、2011年には「効果的利他主義」という名称が作られた。

2009年ころから幾つかの非営利組織を創設、社会的に効果の高い「寄付」と「担い手選択」に関する広報やコンサルティング活動を行っている。

2017年には、アメリカのバークレーにも事務所を設立し、「効果的な利他主義センター(CEA」という名称で国際的な活動を行っている。

●すでに3,500人以上の人々が、同組織の誓約書に従って、最も費用対効果が高いと思われる団体に残りの人生で収入の10%以上を寄付し、合わせて15億ドル以上の生涯寄付を誓約している。

●現在では70以上の国々で、何万人かが効果的利他主義に賛同している。


効果的加速主義( Effective Accelerationism)

●技術革新によって加速される自由市場が、社会問題を解決する最も効果的な手段であると主張する立場である。

●効果的利他主義が、科学的な根拠に基づいて最大のインパクトを生み出す利他行為をめざすのに対し、効果的加速主義は技術を利用して資本主義をさらに加速させ、社会変革をめざす。

テクノロジーの進歩市場の成長こそが、さまざまな社会問題を解決できる方向だと考え、テクノロジー規制や脱成長論などに強く反対する。

2022年頃からTwitterX)などを通じて広がり、シリコンバレーの起業家や投資家の間で多数の支持者を集めている。

以上のように、急激に進む技術革新をどのように社会的課題へ応用するかについては、まったく異なる視点からの主張が展開されています。

GRの構築には、どちらの主張が有効なのか、さらに詳しく検討していきましょう。

2024年1月7日日曜日

グローバル・レシプロシティーを構想する!

次の時代を創る工業後波の生産・分配体制として、複合経済体制の構築が期待されます。その中で最も求められるのが、グローバル・レシプロシティー(地球互助組織)の構築です。

前回、提起したところ、「誰が運営するのか?」や「国連以外で運営できるのか?」などのご質問をいただきました。

確かにそうかもしれません。国家を超え、国連の向こう側で、全世界の生活民に向けて、一定額のベーシックインカムを支給する機構など、現在の世界情勢を前提にすると、ほとんど不可能かもしれません。

しかし、ル・ルネサンスには、これまでの社会・経済構造を根本から変える、新たな発想が期待されます。

前回のルネサンスでは、活版印刷の発明により、中世社会の封建制度と、それを支えるローマ教会の思想を超えて、産業革命と国民国家の形成を促進しました。

とすれば、ル・ルネサンスでは、AIの進展により、国民国家制度やそれを支える分散的サイエンスを超えて、「統合的な新科学(Omniscience」という知性を回復させ、新しい世界観(New Cosmology)による地球社会の構築が予想されます。

そうなると、グローバル・レシプロシティーの構想や機構などについても、現在急速に進歩しているAI(人工知能)の応用が期待されるでしょう。

基本的な方向は、次のようなものではないでしょうか。


機構・・・AIによる、価値の収集・自動分配システムの構築自動運営

分配記号・・・暗号通貨などを基準とする、新たな価値記号

システム企画・開発・・・AI研究者等の参加による共同機構

運営方針・・・世界民全員の意見をAIにより集約、運営管理者がシステムに反映

運営管理者・・・国籍を超えた年齢層別代表者数百人がインターネット経由で運営管理に参加


詳しい内容は後述する予定ですが、基本的な方向としてはとりあえず、以上のような展望が予想できます。

こうした構想を具現化していくことで、現代社会のさまざまな矛盾を克服し、新たな人口波動、工業後波が動き始めるのです

2023年12月22日金曜日

グローバル・レシプロシティーをめざして!

ル・ルネサンスでは、次の時代を創る工業後波の生産・分配体制として、複合経済体制の構築が期待されます。

この目標を達成するために、とりわけ重視されるのが地球単位の互助機構、「グローバル・レシプロシティー:Global Reciprocity」の形成です。

地球上に生まれた、全ての人々が、国家という帰属制度を超えて、互いに助け合いながら、それぞれの人生達成を可能にする、新たな仕組みです。

世界中の全ての人間は全て対等で、生まれた時から亡くなる時まで基盤生活はあくまでも平等であることをめざします。国家や地域などで生まれる、さまざまな格差も乗り越え、日常的な暮らしを維持するための基本的な費用をベーシックインカムの形で授与するのです。

運営主体となるのは、国家という組織を超えたグローバルな互酬共同体(Global reciprocal communityであり、さまざまな形で財源を確保していきます。主な事例を挙げておきましょう。



①地球人同志間の寄付や寄贈などを基盤に、贈与や遺贈、あるいは企業や団体からの献金などが想定されます。

②出自による格差を縮小するため、富裕層の遺産や遺物などは、できるだけこの共同体へ遺贈します。

③先進的な企業もまた、その存在自体が社会的な貢献を目ざすものだという視点から、収益の一部を出捐していきます。

以上のような基金を財源にしたベーシックインカムを毎年、世界中の人々に向けて、国籍を問わず、公平に分配していきます。

まったく新たな仕組みですから、一度に地球単位のコミュニティー形成は困難かとも思われます。まずは幾つかの機構が国家や地域を超えて形成され、徐々に世界単位へ統合されて行くことになるか、と思います。

なにやら途方もない目標のようですが、決して夢ではありません。先端的な起業家もまた、同じような構想をすでに企画しています。

例えば生成AI、チャットGPTの開発者で、代表去就問題で注目を集めたオープンAI社のサム・アルトマン・CEO(最高経営責任者)も、2021年に書いたツイートの中で、地球上のすべての人に仮想通貨を無料で配るプロジェクト構想を述べています。

ワールドコイン」と名付けられた電子通貨を配布するものですが、「AIが最低限の生活費を稼ぐようになったら、人間は本当に自分のやりたいことに向き合え、理想を追い求められる」とも語っています。

このプランでは、資金の回収と配布の主体を国家とし、財源回収を税制度改定によるものとしている点などで、なお課題が残ると思われます。

とはいえ、グローバル・レシプロシティー構築への一つの挑戦として、その実現が決して夢ではないことを示しています。

2023年12月12日火曜日

ル・ルネサンス:地球的互助機構へ向かって!

ル・ルネサンスの進むべき生産・分配体制は、市場交換・互酬・再配分・家政の諸制度がほどよくバランスした「複合社会」をめざすべきだ、と述べてきました。

複合社会とはどのようなものなのか、これについては何度も取り上げています。

生産・交換制度の未来を読む!2015914日)

家政・互酬・再配分・交換の比重は変わる!2015929日)

互酬性を再建する!2015103日)

複合社会へ向かって!20151015日)

要するに、次の人口波動、工業後波の生産・分配体制は、現在の市場交換と再配分:福祉国家の比重を緩めて、互酬や家政の比重を回復させるべきだ、ということです。


とりわけ、互酬制度の拡大が必要だと思います。

互酬性を再建する!】では、次のように述べてきました。

破壊された共同体の再建・・・家族や親族、村落や町内会などの共同体を改めて支援し、保護・育成する。

新しい共同体の構築・・・ハウスシェアリングやルームシェアリングなどのシェアリング家族、老齢者や単身世帯などが相互支援を前提に一緒に居住するコレクティブ家族、緊急時の共同対応や生活財の共同購入などを行なうマンション共同体、共同で農業を営む新農業共同体など、新たな共同体を積極的に育成していく。

こうした対応に加え、今回新たに提案するのは、国家という共同体を超えて、地球規模で互いに助け合う機構、「グローバル・レシプロシティー:Global Reciprocity」の構築です。

この言葉は筆者の造語ですが、「International:国際的」でも、「Universal:宇宙的」でもなく、あくまでもGlobal:地球的」な互助機構を意味しています。

現在の工業現波(=工業前波)の世界では、科学という分析・分散型時代知のもとに、国家という共同体が個々人の生命・生活保障を担ってきました。国防はもとより福祉制度もまた、国家単位で行われています。地球単位であっても「国際連合:United Nations」と名乗るように、「国家:Nation」が前提になっています。

しかし、ラストモダンの社会では、国家という機能の限界が目立ち始めています。国境紛争や経済破綻などはもとより、福祉国家や強権国家などという形態もまた、制度そのものの脆弱性を示し始めています。

とすれば、工業前波を超える工業後波では、国家という機能は残しつつも、国家を超える共同体の構築が求められるでしょう。

その一つが「グローバル・レシプロシティー」だと思います。

昨今、さまざまな形で注目を集め始めていますが、どのような機構なのか、次回から考えてきます。

2023年12月3日日曜日

ル・ルネサンス:複合経済制を準備する!

ル・ルネサンスの進むべき生産・分配体制も、市場交換・互酬・再配分・家政の諸制度がほどよくバランスした「複合社会」をめざすべきだ、と述べてきました。

そうだとすれば、工業後波の新たな社会知の方向に従って、生産・分配体制にも、次のような3つの大転換が求められるでしょう。



①言語機能:分節化から合節化へ

極端な市場・政府依存を脱し、互酬や家政の再構築によって、経済構造のバランス化をめざします。

肥大化した市場交換を、租税バランスの変更や共同体的統制の強化などで、極力抑制していくとともに、再配分、互酬、家政の3領域をできるだけ強化していく。

負荷の増加する再配分制度を見直し、税収規模や社会保障構造などの、適正な規模を作り出していく。

互酬制を拡大させるため、地域社会や地縁共同体など伝統的共同体の再建や、シェアリング家族やコレクティブ家族など新型共同体の構築を、多面的に支援していく。さらに地球単位の互助組織、「グローバル・レシプロシティー」(後述)を拡大し、国家による再配分の比重を緩和する。

家政の自給自足力を高めるため、農・漁業自営者、独立系生活者など、自立的な生活民に向けて育成や支援を行う。

市場、再配分、互酬、家政の4領域をそれぞれ深化させるとともに、4つを連携・協調させるような、統合的な仕組みを構築していく。

②数値機能:数値絶対化から数値相対化へ

数量的な指標を優先する視点から、量と質の調和をめざす視点へ、行動視点の転換を図ります。

経済統計や株価指標などに拘泥する社会・経済運営から脱却し、さまざまな現象の示す数値以外の情報や動静を、より全体的に把握できるような観察・運営行動を拡大する。

経済実態とかなり乖離しつつある貨幣指標や株価指標などを修正するため、経済事象をより多角的に把握できる、新たなシンタックス(統辞法)とそれに基づく指標を作り出していく。

③把握機能:システム化からストラクチャー化へ

点と線による効率優先の生産・分配方式から、面と面を重ねて、中身を濃くするような生産・分配方式への転換をめざします。

システムの主導する市場交換や、システムとストラクチャーの混在する再配分には、ストラクチャーの強化を計る。

❷非システム的な互酬と家政には、新たなストラクチャーの構築や強化を進めていく。

❸市場交換のシステム化を他の領域に強引に押し広げるのではなく、4つの領域を構造的に連携させるような、包括的な運営方式を創り出していく。

かなり抽象的な行動目標となりましたが、要約すれば、圧倒的な市場交換中心経済から、生活民一人一人が自立性を再構築できる生産・分配制度へ向かって、数量的な指標を優先する行動視点から、量と質の調和をめざす行動視点への転換を図りつつ、点と線による効率優先の生産・分配方式を、面と面を重ねて中身を濃くする生産・分配方式へと移行させるなど、構造的な転換を推進していく、ということです。

2023年11月25日土曜日

ル・ルネサンス:生産・分配体制を再編する!

ル・ルネサンスでは、生産・分配制度、つまり経済構造についても、根本からの再編成が求められます。

まずめざすべき目標を考えてみましょう。



ウィーン出身の経済人類学者、K・ポランニーによると、人類が歴史的に創り出してきた生産・分配制度には、家政、互酬、再配分、交換の4つがあり、これらの制度をほどよくバランスさせた「複合社会(complex society」こそ望ましい、と述べているようです(【K.ポランニーの複合社会論を応用する!】。

こうした視点を、今後の社会の向かうべき生産・分配制度に当てはめてみると、企業や資本家だけが闊歩する市場交換制度、社会主義国家や福祉国家のような再配分至上制度、家族や集落の相互扶助だけに頼る互酬中心制度、個人や家族内だけで生産・消費する家政主導制度の、いずれの一つに偏るのではなく、4つの制度を4つとも存続させながら、それぞれのバランスをとっていくという方向が浮かんできます。

あるいは、移りゆく時代の変化に応じて、組み合わせの比重を変えたり、それぞれの内容を微妙に変換していくという方向も考えられます。

昨今、経済制度の改革案として、コモンズ再生ポスト資本主義などが囁かれ始めていますが、それらを実現していく場合にも、4つの制度のバランス化が課題となるでしょう。

そうなると、今後の社会が市場交換、互酬、再配分、家政の諸制度のほどよくバランスした「複合社会」へ向かって行くには、3つの調整が必要になってきます。 

市場交換の縮小に比例して、適度に他の3領域を広げること

再配分の適正化に応じて、税金や社会保障などの規模を見直すこと

互酬制の拡大に応じて、贈答、贈与、寄与などの社会的意義を重視すること

以上のように、次の人口波動を生み出すためには、より複合化の進んだ生産・分配制度が期待されます。

果たしてその実現は可能なのでしょうか? あるいは、さらに実現性の高い代替案はあるのでしょうか?

2023年11月13日月曜日

ル・ルネサンス:統治体制を見直す!

ル・ルネサンスでは、国家機構、つまり政治・統治制度においても、根本からの見直しが求められます。

前回の政治制度に続いて、今回は統治制度の修正方向を展望してみましょう。

政治制度が国民の合意形成を図るための制度だとすれば、統治制度は合意形成された方策を実現していく制度です。一般には、行政機能執行機能を意味しています。



この課題についても、①分節化から合節化へ、②数値絶対化から数値相対化へ、③システム化からストラクチャー化へ、という視点に立って、幾つかのアイデアを検討してみましょう。

①言語機能・・・分節化➡合節化】を実現するため、【間接制度中心➡直接・間接整合化】が求められる。

超省庁的課題への対応拡大・・・工業前波の社会的課題を大きく超えた諸問題(脱福祉国家、地球単位の互助組織の進展など)の拡大に伴って、従来の固定的な行政分野では対応できなくなるケースが増えてくるため、超省庁的な新組織の設定と運営を柔軟に行っていく。

専門省庁と課題別チームのバランス化・・・超省庁的な新組織の拡大で、従来の専門別省庁との間に新たな連携方式を形成し、それによって省庁の既存運営方式を大胆に改良・修正していく。

公務員・民間人交換制の導入・・・工業後波の進行に伴って、次々発生する、新たな社会的課題に対応するため、斬新な発想力のある民間人を統治分野に参加させるとともに、統治能力の高い公務員を経済・社会分野に転出させ、両者の合力化を可能にするような、新たなジョブ型雇用制をめざす。

②数値機能・・・数値絶対化➡数値相対化】へ向かうため、【多数決絶対化➡多様意見整合化】を検討する。

数値統計+非数値情報による判断拡大・・・情意のバランスのとれた統治制度を実現するため、さまざまな社会・経済事象を把握する時には、数量・計量的把握に加えて、民意・世論・世相・風潮など超数値的な情報把握に努め、両者の統合をめざす。

統計少数値への肯定的理解の拡大・・・統計的には少数であるマイノリティーに対しては、極力その意見を収集・分析し、多数派意見との調整を図る。

③把握機能・・・システム化➡ストラクチャー化】へ転換するため、【網の目的統治➡風呂敷的統治】を目指す。

超省庁的政策課題の発見・提案拡大・・・工業後波の社会的課題は、従来の省庁的視点を大きく超えているため、専門的・ネットワーク的なアプローチに留まらず、より視野を広げた、多角的・ラッピング的なアプローチによる発見や提案が求められる。

❷政策課題への超省庁的対応拡大・・・個々の政策課題への対応についても、先例・慣例重視の専断的担当を見直し、常に省庁を超えた、横断的な対応の可能性を探っていく。

以上のように、制度改革の基本的な方向を挙げてきましたが、工業後波の統治制度においては、工業前波の専門的統治制度を継承しつつも、省庁の固定的な役割を大きく超えていくような、幾つかの修正が必要になるでしょう。