2015年9月14日月曜日

生産・交換制度の未来を読む!

工業後波を支える3つの要素(集約科学技術、集約市場経済、選択的国際化)のうち、集約市場経済、つまり新たな生産・分配制度については、次のような方向が考えられると思います。

経済人類学者のK.ポランニーによると、人類が歴史的に創り出してきた生産・分配制度、つまり経済のしくみには、家政、互酬、再配分、交換の四つがある、といいます(『大転換』『人間の経済』『経済の文明史』による)。



それぞれの内容は次のようなものです。

家政(house holding)・・・「自らの使用のための生産」であり、ギリシャ人が、「エコノミー」の語源たる「オイコノミア(oeconomia)」と名づけていた制度として、「閉鎖集団」内の構成員の「欲求を満足させるための生産と貯蔵という原理」に基づいている。

互酬(reciprocity)・・・「義務としての贈与関係や相互扶助の関係」であり、「主に社会の血縁的組織、すなわち家族および血縁関係に関わって機能する」制度として、「対称的な集団間の相対する点の間の(財の)移動」をいう。

再配分(redistribution)・・・「権力の中心に対する義務的な支払いと中心からの払い戻し」であり、「主に共通の首長の下にある人々すべてに関して効力をもち、従って、地縁的な性格」の制度として、「(財が)中央に向かい、そしてそこから出る占有の移動を表す」ものである。

交換(exchange)・・・「市場における財の移動」であり、「システムにおけるすべての分散した任意の2つの点の間の運動」となる制度である。

現代風にいいなおすと、「家政」とは個々人とその家族だけの自給自足制度、「
互酬」とは家族や親族、さらには継続的な地縁・友縁などによる生活扶助制度、「再配分」とは国家による生活保障制度、「交換」とは市場を通じて形成される生活構築制度ということになるでしょう。

これら4つの制度について、ポランニーは、常に同じ比重で存在してきたのではなく、時代とともに変化してきた、と述べています。つまり、「西ヨーロッパで封建制が終焉を迎えるまでに、既知の経済システムは、すべて互酬、再配分、家政、ないしは、この3つの原理の何らかの組み合わせに基づいて組織されていた」のですが、16世紀以降、重商主義システムの下に、初めて「市場」という、新たな交換システムが登場しました。

この交換システムは、19世紀に入ると、貨幣を交換手段とする市場経済へと発展しました。市場経済は、従来の〝付属物〟的な「市場」とは根本的に異なる「市場交換システム」として拡大しましたので、経済制度の中心は互酬、再分配、家政から交換へと移行しました。しかし、それでもなお互酬、再分配、家政の役割は消滅したわけではなく、とりわけ再分配の比重は高まる傾向にある、とも述べています(『大転換』)。

以上のような生産・分配制度の推移を人口波動と関係を示すと、表のようになるでしょう。




石器前波・・・氏族集団が、捕獲(狩猟中心)・採集生産を前提にした自給自足により、家政を達成してきた。
石器後波・・・氏族や古代王権が、捕獲(狩猟・漁労)・採集生産を前提にした物々交換・互酬・再配分により、家政を達成してきた。
農業前波・・・農民・職人や古代国家が、粗放農業(農耕・牧畜)を前提にした初期商業・互酬・再配分などにより、家政を達成してきた。
農業後波・・・農工職人や封建国家が、集約農業(農耕・牧畜)を前提にした貨幣経済・再配分・互酬により、家政を達成してきた。
工業現波・・企業・工場や福祉国家が、近代工業を前提にした市場経済・再配分・互酬により、家政を達成してきた。

このような関係は、次の人口波動である工業後波になると、どのように変わっていくのでしょうか。

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