前者では共食いや子殺しが増えると死亡数が増加し、後者ではなわばりや順位制が強まると出生数が減り死亡数が増えますから、それぞれ個体数が抑えられることになります。
もっとも、生物学や個体群生態学などでは、③の行動は特定の個体が繁殖を最大化するための適応戦術(性淘汰)だ、とも説明しています。ハヌマンやライオンの子殺しは、あくまでもオスの繁殖機会を広げるための行動であって、その結果として個体数が抑制されたとしても、環境制約が子を殺す直接的な動機になっているわけではない、というのです。
とすれば、性淘汰の前提になっているなわばりや順位制もまた、特定のオスの繁殖戦術であって、環境制約への対応ではない、ということにもなるでしょう。
しかし、わなばりや順位制そのものが、もともと生息環境の制約に対応するためのしくみであり、効率的に食糧を獲得するためのしくみでもあることを考え合わせると、「環境制約への対応行動ではない」などと短絡化することはできません。
また、わなばりから排除された「外れ個体」の多くが死に瀕することを考えると、縄張りや順位制もまた、間接的とはいえ、個体数の抑制に関わっているといえるでしょう。
要するに、個々の動物の意図や動機が何であれ、全体として個体数抑制へ向かっているか否かという視点からみれば、生死増減と生殖活動に関わるあらゆる行動は、すべてがキャリング・キャパシティーへの対応とみなすことができるでしょう。
(詳しくは古田隆彦『日本人はどこまで減るか』)
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