2015年2月18日水曜日

哺乳類はなぜ増えすぎないのか?

哺乳類でも、さまざまな個体数抑制装置が働いています。代表的な事例を見てみましょう。

ハツカネズミ・・・飼育容器の中で飼われているハツカネズミは、生息密度があがってくると、生まれたばかりの子どもを食べてしまう。さらに生息密度が高まると、親どうしで共食いを始めて、個体数を抑えている(日高敏隆『動物にとって社会とはなにか』)。




ノウサギ・・・野生のノウサギは、生息環境に制約が出てくると、胎児を子宮の中に戻すことで、個体数の増加を抑えている(H.V.Thompson and A.N.Worden,the Rabbit)。



オットセイ・・・北方の島に生息するオットセイのオスは、メスより一足先にやってきて、なわばり獲得のために激しい闘争を行う。後からやってきたメスは、1匹のオスの作ったなわばりの中に出産場所を求め、その所有物となってハレムを形成する。出産場所に適した場所に広いなわばりを獲得した強力なオスは、自動的に多くのメスを所有するが、10歳未満の若いオスはなわばり闘争に破れて、交尾のチャンスを逃す。こうしたしくみで、オットセイは生息環境に見合った個体数に抑制している(日高・前掲書)。
 

ライオン・・・タンザニアのセレンゲティ草原に生息するライオンは、成体のオス1匹と複数のメスで1つの群れを作り、なわばりを作って獲物を捕らえている。この群れのオスが他のオスによって追い出されて入れ替わると、新しいオスは前のオスの子をすべて殺す。メスの出産間隔は、授乳中の幼い子を持つ場合は20~30カ月であるが、子を失った場合は間もなく妊娠し新たなオスの子を生む。複数のメスから一斉に生まれた子は、獲物を競い合う年上の子がいないので、生き残る確率が高くなる。追い出されたオスは老齢であったり怪我をしているため、間もなく死亡する。こうしたしくみで個体数が常に抑制されている(杉山幸丸『子殺しの行動学』)。



ハヌマン・・・インドのダルワール地方に生息する猿、ハヌマンも1匹のオスと複数のメスが1つの群れとなって、なわばりを作っている。この群れでオスが入れ替わると、新しいオスは前のオスの子をすべて殺す。それによってメスの生殖行動を促し、新オスの子を増やしていく。こうした行動をくりかえすことによって、ハヌマンは個体群の増えすぎを抑え、共倒れを防いでいる(杉山・前掲書)。
 
古田隆彦『日本人はどこまで減るか』より再録) 

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