2017年10月29日日曜日

「子どもに…してあげる」は少産化の要因?

子どもの生まれる数が少なくなった「少産化」の背景には当然、子どもに対する親世代の意識変化があります。

それを端的に示すのは、親たちが子どもに対する時の言葉使いの変化です。

少産化が進み始めた1970~80年代を境に、子どもに対する親の言葉が変わってきました。

例えばおやつを与える場合、それ以前の社会では、自分の子どもに対しては「食べさせてやる」、他人の子どもに対しては「食べさせてあげる」という表現が一般的でした。

ところが、それ以降では、自分の子どもに対しても「食べさせてあげる」という表現が増えています。


日本の社会ではもともと、親が自分の子どもにコトやモノを与える場合は、「食べさせてやる」「着せやる」「大学へ行かせてやる」というように、「・・・してやる」「・・・てやる」という言い方が普通でした。これは、親の立場から子に対して「授ける」「与える」という意味であり、「保護する者から保護される者への恵与」を示していた、と思います。

ところが、最近しばしば聞く「食べさせてあげる」「着せてあげる」「大学へ行かせてあげる」など、「・・・してあげる」「・・・てあげる」などの言い方からは、子どもの立場が「保護される者」から「当然保護すべき者」へと変化していることがうかがえます。

これらの表現には、親の立場から子に対して「差し上げる」「進呈する」というニュアンスが含まれており、「他者に対する謙譲的な贈呈」を示しているからです。

「てやる」派から「てあげる」派へ、言葉使いの、この変化は、親子間の提供関係が「恵与」から「贈呈」に変わったことを意味しています。大げさに言えば、親子の関係が「身内」から「他人」へと変わった、ということにもなるでしょう。

そう考えると、子どもを作るという行為もまた、「自分の延長線上の子孫」というより「新たな他人」を作り出すという意味を持ち、「子どもを大切にしたい」「子どもを増やしたい」という、少産化社会にふさわしい表現に変わってきているともいえます。

だが、その一方で、子どもの立場が次第に大きくなってきますから、親としてはさまざまな義務を負わなければならない、という事情が増えてきます。「食べさせてあげたい」「着せてあげたい」「大学へ行かせてあげたい」というハードルが次第に高くなってきているのです。

そうなると、そこまでは無理だ、と感じる親も増えてきますから、むしろ子どもの数は減っていくことにもなります

どちらの傾向が増えるのか、すぐに答えは出ませんが、てやる×てあげる」の変化には、単なる表現の変化を超えて、少産化社会の価値観が濃厚に現れている思います。

2017年10月19日木曜日

21世紀後半に逆転させるには・・・

前回述べた「新予測②は、出生率と死亡率が2100年ころに1960年の水準に戻ると仮定した場合の総人口の予測値です。

これによると、総人口は2090年代に6640万人台で底を打ち、22世紀初頭から増加していくものと予想されています。

基本的な前提条件は、人口政策の大規模な変更や移民政策の拡大といった、外部条件の変更がないうえ、人口容量が12800万人で変わらず、人口の増加圧力が自然に機能できる場合です。

この条件の下では、おそらく最も早く人口が回復できるケースと考えられますが、それでもなお幾つかの条件が加わります。



①2100年に1960年の水準に戻るという仮定は、先の「新予測①」に比べて、目標時点を10年ほど早めています。先に述べたように、過去からの推移でいえば、総期待肥大値が1億2800万人の人口容量を超えたのは1960年ころであり、下回るのは75年後の2035年ころと予想されています。そこで、元の水準に回復する時点もまた75年後の2010年ころになると推定したのです。

②目標時点を10年ほど早めたということは、75年という間隔を70年に縮めたことを意味していますから、総期待肥大値が1億2800万人の人口容量を下回るのもまた、1960年より70年後の2030年ころ予想されます。

③2030年ころに総期待肥大値が1億2800万人の人口容量を下回るには、当初予想されていた2030年の総期待肥大値13,260万人を12,800万人にまで4~5%ほど下げることが必要になります。

以上のように考えると、総人口を21世紀中に反転させるためには、今後13~15年、2030年に向けて国民の総期待肥大値を4~5%ほど抑制する方向へ、多面的に誘導することが求められるでしょう。

2017年10月8日日曜日

人口容量に本格的な余裕が生まれると・・・

総期待肥大値が2030年代人口容量1億2800万人を下回った後、総人口はどのように回復していくのでしょうか。

総期待肥大値が1億2800万人の人口容量を超えたのは1960年代でしたので、普通出生率普通死亡率が、おそらく当時の水準にまで戻る動きが出てくる、と思われます。

しかし、ほぼ50年にわたる出生率低下と死亡率上昇が、一気に回復するのは不可能ですから、1960年の水準に戻るには、なお70~80年間の年月が必要だと思います。

そこで、出生率と死亡率が2030年から80年後の2110年に1960年の水準に回復すると仮定して、1960年から2015年までのデータと2110年を結ぶ多項式を求めてみると、下図のようになります。


この式でシミュレートしてみると、2050~60年代に両率はともに変曲点を迎え、それ以後、出生率は上昇へ、死亡率は下降へと進みますから、2100年ころに自然動態もまた減少から増加に転じることになります。

いうまでもなく、総人口は自然動態だけで増減するわけではありませんが、日本の場合は社会増減が少ないため、総人口の大勢は自然増減によってほぼ決まる思います。

この多項式に実際の年数の経過を代入してみると、今後ほぼ100年間の出生数と死亡数が推定されて、それより毎年の人口増減率が計算できますから、総人口の今後の動きを下図のように描くことができます。


①一番上の曲線は、国立社会保障・人口問題研究所が2017年4月に発表した予測値(中位推計)です。前回(2012年3月)の中位推計よりやや上目に推計されていますが、2015年まで一貫して減少していく、とされています。

②一番下の曲線(新予測①)は、上記で説明したとおり、出生率と死亡率が2110年ころに1960年の水準まで回復すると仮定した場合の総人口の予測値です。①よりやや下目に推移していますが、2105年ころから上昇に転じ、2110年ころに①を追い抜いていきます

③真ん中の曲線(新予測②)は、出生率と死亡率が、新予測①の前提より10年早い2100年ころに1960年の水準に回復すると仮定した場合の総人口の予測値です。これもまた①よりやや下目に推移していますが、2090年ころに追い抜いて、2105年ころからは上昇に転じていきます。

今回は、とりあえず回復目標時点と総人口の関係をざっと眺めてきました。

目標時点を決めるのは、人口容量と総期待肥大値の時間的関係ですから、その前後によって、21世紀後半~22世紀初頭の日本の総人口は、大きく影響を受けるものと思われます。 

2017年9月26日火曜日

減少圧力を抑えられるか?

増加圧力を活用するには、減少圧力、つまり人口抑制装置の作動を緩和させることが必要です。

装置を緩和できるのか否か、それを決めるのは、作動のきっかけとなった、国民の価値観=総期待肥大値の動きです

先に【
人口は再び増加する!:2015年7月5日】で触れましたが、総期待肥大量は現在、1億6000万人の規模にまで膨れ上がっており、人口容量に多少の余裕が生まれた程度では、抑制装置を緩和するまでには至りません。

振り返ってみると、抑制装置が作動し始めたのは、総期待肥大値が1億2800万人の人口容量を超え始めた1960年代でした。・・・【
人口抑制装置を緩められるか?:2017年8月8日

この頃から抑制装置が徐々に強まるにつれて、人口の伸び率も次第に低下し、2008年に至って実数もまた増加から減少に転じたのです。装置の作動から人口の減少まで、実に半世紀の時間がかかっている、ということになります。

とすれば、今後、人口を減少から増加に転じさせるためにも、ほぼ同様の月日が必要になる、と考えるべきでしょう。

先に述べたような単純な予測によれば、総期待肥大値が今後、1億2800万人の人口容量を切るのは2030年代と思われます。

その頃から、抑制装置が緩み始めるとすれば、実際に人口が減少から増加に転じるのは,
半世紀後の2070~80年代から、ということになります。

もしも私たちがそれよりも早い回復を望む、というのであれば、総期待肥大値そのものを抑制して、一刻も早く1億2800万人の人口容量以下に抑え込む、という方向へ向かわなければなりません。


果たして、そんなことができるのでしょうか?

2017年9月17日日曜日

増加圧力とは何か?

生物的な人口増減原理については、何度も述べていますが、増加圧力の視点からもう一度確認しておきましょう。

生物学や生態学では「一定の空間において一種類の動物の数(個体数)は決して増えすぎることはなく、ある数で抑えられる」という現象が知られています。

その上限を「キャリング・キャパシティー(Carrying Capacity)」と名づけていますが、日本語には「環境収容力」とか「環境許容量」と訳されています。・・・【
人口減少の本当の理由:人口容量の限界化:2015年1月27日

動物の個体数は、このラインに近づくにつれて、自ら増加率を落とし始め、ピークを過ぎると、減少していくことがわかっています。

しかし、ある程度減少してキャパシティーにゆとりが出てくると、今度は下図のように再び増加に転じ、もう一度キャパシティーの上限まで増えていきます。そうして再度上限に達すると、またまた減少に転じ、さらにまたゆとりが出てくると増加となって、以後はキャパシティーの内側で増減を繰り返します。・・・
2015年1月27日2015年1月28日

図  魚の個体数変化




こうした現象は、人間の場合でも基本的には同じですから、人口容量が増えない限り、その人口もまた、容量の下で増減を繰り返していくことになるのです。・・・【
人口は回復しないのか?:2017年4月25日
現在、日本の人口は12,800万人という人口容量のもとで、130万人ほどゆとりが生まれています。このゆとりは、先に述べたように、2030年には613~1,149万人、2050年には1,246~2,332万人、2080年には3,481~5,516万人まで増えていきます。

膨大なゆとりの発生・・・これこそ生物的な人口増減原理に従えば、人口増加の圧力となるものです。

もし日本人口を少しでも回復させようと思うのなら、この圧力を巧みに利用しなければなりません

2017年9月9日土曜日

増加圧力はここまで強まる!

増加圧力とは、人口容量と実人口の間に生まれるゆとりです。

国立社会保障・人口問題研究所の2017年の予測をベースにすると、2015年に91万人ほどであったゆとりは、下図にしたように広がっていきます。

 
2030年には中位値で888万人(低位値で1,149万人~高位値で613万人)になります。

2050年には中位値で1,808万人(低位値で2,332万人~高位値で1,246万人)になります。

2080年には中位値で5,370人(低位値で5,516万人~高位値で3,481万人)になります。 
経済的な次元でみると、現在のGDP(実質)約500兆円を今後も維持できたとすれば、1人当たりGDPは、2015年の393万円から、次のように上がっていきます。

2030年には中位値で420万円(低位値で429万円~高位値で410万円)になります。
2050年には中位値で491万円(低位値で517万円~高位値で465万円)になります。

2080年には中位値で673万円(低位値で771万円~高位値で587万円)になります。

1人当たりの経済水準は、2015年を1とすると、ゼロ成長であっても、次のように上がっていくのです。

2030年には中位値で1.07倍(低位値で1.09倍~高位値で1.04倍)になります。

2050年には中位値で1.25倍(低位値で1.31倍~高位値で1.18倍)になります。
2080年には中位値で1.71倍(低位値で1.96倍~高位値で1.49倍)になります。

これをみると、人口減少が進めば進むほど、人口容量にはゆとりが大きくなります。

そうなると、一人当たり生活水準も上昇してきますから、人口抑制装置の作動も抑えられるようになります

抑制装置の作動が緩めば、日本の人口もまた、生物的な人口増減原理に基づいて、再び増加し始めることになるでしょう
 

2017年8月29日火曜日

人口には増加圧力と減少圧力がかかっている・・・

21世紀の日本人口は、増加圧力減少圧力のせめぎ合いの中で、人口回復の糸口を探っています。

増加圧力とは、人口容量と実人口の間に生まれるゆとりです。

日本人口は2008年に史上5番目の人口容量の上限=12,800万人にぶつかって以降、徐々に減少しているため、容量との間には少しずつゆとりが生まれています。

現に2017年8月1日現在、総人口は約12,677万人で、123万人ほどのゆとりが生じています。

このゆとりは、今後数10年間、人口の減少に伴って次第に広がっていきますから、
人口抑制装置の作動を緩め、今後は上図に示したように、増加の圧力を高めていくものと思われます。

一方、減少圧力とは人口抑制装置の継続です。

抑制装置は、人口が人口容量の上限に近づいた、20世紀の後半から徐々に作動し、今もなおも継続しています。

人口抑制装置は一度作動すると、ゆとりが生まれた後も簡単には緩まず、先に【
人口は再び増加する!】で述べたとおり、早くとも2030年代まで続いていくからです。

このように、21世紀の日本人口には、増加圧力と減少圧力の両方が潜んでいます。

今のところ、後者の方が強いため、数十年間は減少していくと思われています。

しかし、抑制装置の継続を少しでも抑えることができれば、その分、減少を抑えたり、うまくいけば回復させることもまた不可能ではありません。

それにはどのような対策があるのか、改めて考えていきましょう。