世界人口は今後30年ほどで減少していきます。
主な原因を考えていますが、前回の「1人当たりの個人容量の急増」に続いて、今回は「人口抑制装置の作動」を考えます。
昨今、世界中の各国に、人口増加を抑制する、さまざまな動きが広がっています。
動物の世界では、キャリング・キャパシティー(環境容量)が満杯に近づくにつれて、増加数を抑えようとする抑制装置が作動します。
「キャリング・キャパシティー」については、サイバースペース上でやや不正確な定義が流布していますので、改めて定義しておきます。
キャリング・キャパシティーとは、特定の生物が一定の環境下において、食物、水、生息地などの確保と、排泄物や廃棄物などの処理が、継続的に維持できる個体数の大きさ、つまり個体数容量を示します。 |
人間の場合も同じであり、その個体数の容量、つまり「ポピュレーション・キャパシティー:人口容量」の上限が迫ってくると、人口抑制装置を作動させ、自らその数を抑えるような行動を始めます。
動物の場合はほとんどが生理的(本能的)な抑制行動ですが、人間の場合は生理的装置と文化的(人為的)な装置の、二重の抑制を行っています。
今、地球上では、人類という種によって、このような抑制行動が、次のような順序で起こり始めています。
①本能的危機意識作動
自然環境悪化、パンデミック、国際紛争、経済低迷、食糧不安など、超長期的な停滞トレンドを肌身で感じ取った地球人の多くが、本能的に人口容量の限界を直感し、無意識のうちにも、さまざまな抑制行動を始動させ始めています。 |
②生理的抑制装置作動
生活環境の未来に危機を感じた人類は、さまざまな動物の世界で行われている個体数抑制行動と、ほぼ同様の人口抑制行動を無意識的に行い始めています。 体力低下、寿命限界、生殖能力低下などが、自動的に作動するしくみです。 世界の平均寿命を見ると、2019年の72.76歳以降、伸び悩みとなっています。 それに連動して、世界の粗死亡率(死亡数/総人口)も、2019年の0.75%から、コロナ禍以降徐々に上昇し、2021年には0.87%にまで上がっています。 人為的な要因も重なって、粗出生率(出生数/総人口)は、1980年代の2.77%から2020年代には1.75%に落ちています。 |
③文化的抑制装置作動
人類は無意識次元に加え、意識的次元でも、さまざまな人為的抑制行動を行っています。他の動物の本能的次元を超えて、独自の文化としての抑制行為も行っているのです。 人口増加を抑える装置としては、直接的抑制(妊娠抑制、出産抑制など)、間接的抑制(生活圧迫、結婚抑制、家族縮小、都市化、社会的頽廃化など)、政策的抑制(強制的出産抑制、出産増加への不介入など)があります。 人口減少を促す装置もまた、直接的抑制(集団自殺、環境悪化や死亡増加への不介入など)、間接的抑制(飽食・過食による病気の増加、生活習慣病の増加、都市環境悪化など)、政策的抑制(老人遺棄、棄民、戦争など)に分けられます。 典型的な事例が、国連が主導して進めているSDGs(Sustainable Development Goals)です。名称からは人口あるいは人口容量の維持が連想されますが、その実態は人口抑制装置そのものです(「人口容量の持続と世界人口の低下を目ざす!」)。 つまり、意識的次元では人口維持を謳いつつ、無意識次元では人口減少を目標にしている、ということです。 現に上記の図のオレンジ色の予測値は、ワシントン大学がSDGsの目標を組み入れた場合を表わしています。 |
このように見てくると、現在の世界で起きている、さまざまな人口現象そのものが、意識、無意識に関わらず、人口抑制装置の着実な作動を示している、ともいえるでしょう。
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