世界人口は今後30年ほどで減少していきます。
前回の「人口抑制装置の作動」に続いて、今回は「人口減少ショックの開始」を考えます。
これまで数世紀にわたって増加してきた世界人口は、まもなく人口容量の壁にぶつかり、ピークを経て減少に転じます。
そうなると、人口増加を前提に創られてきた、さまざまな社会装置が大きく揺らぎ始めます。
代表的な事例としては、グローバル化、国民国家体制、市場経済制などの動揺や混乱が挙げられます。
●揺れるグローバル化
人口増加率の低下に伴い、コロナ禍の蔓延や国際紛争の拡大をきっかけに、国際機関の空洞化、食糧・資源・燃料などの枯渇化といった現象が目立ち始め、グローバリズムへの安易な信仰が大きく動揺しています。 現在の国際連合では、新たな世界秩序を創り上げる構想力の欠如、世界平和の維持・達成が困難、安保理常任理事国の巨大特権の弊害化、専門機関の中立的運営の限界化、内政不干渉原則による紛争解決の限界化など、さまざまな限界性が目立っています。 食糧・資源・燃料などでも、世界各国は生活や産業の基盤の供給を相互依存によって強化してきましたが、コロナ禍や国際紛争によって世界的な食糧危機が懸念されています。 これまで進展してきたグローバル化という現象も、総人口の停滞に伴って、各国の自立性や自給性に危機をもたらし、さまざまな限界を示し始めています。 |
●揺れる国民国家制
人口伸び率の停滞にコロナ禍やウクライナ紛争なども加わって、アメリカ合衆国の権威低下、中華人民共和国の強権発動、インドの人口増加継続化などが目立ち始め、国民国家、福祉国家、民主主義制などへの信頼もまた揺らぎ始めています。 福祉国家という、各国の理想的目標についても、人口減少や年齢構成の変化で財源危機や運営困難が目立ち始めています。 さらに民主主義制という政治・統合制度についても、選挙制度、政党政権制、多数決論理などで脆弱化が浮上しています。 |
●揺れる市場経済制
人口の停滞や減少の進み始めている国家では、経済停滞や財政危機が浮上しています。 その背景には、①経済実態と株価推移が乖離し、資本動向と経済動向が分離、②所得格差や生活格差がさらに拡大、③国家財政の急激な逼迫、④富裕層やデジタル企業などへ不公平税制などが潜んでいるようです。 このため、国際市場においても、資本主義国家はもとより国家資本主義国家もまた、総合的自給力の衰退、相互依存の強化に伴う危険負担の増加、先進国・途上国間の経済格差・貧富格差の拡大、低価格商品の競争激化による資源喪失の拡大、人的物的移動拡大による感染症の拡大、といった現象が目立ち始めています。 |
以上のように、世界人口が停滞から減少へ進むにつれて、人口増加・成長・拡大型社会を支えてきた、さまざまな制度も極めて不安定な状況に追い込まれていきます。
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