2020年11月3日火曜日

コロナ禍が暴露した近代社会の限界

黒死病が壊した農業後波の「生産・社会・識知構造」を先例に、コロナ禍が今や壊そうとしている工業現波の「生産・社会・識知構造」を推測してきました。

生産構造社会構造識知構造と順番に考えてきましたので、相互の関連を整理しておきましょう。



一番基底にある「科学」という時代識知は、分散型無機エネルギー観要素還元主義数理思考の、3つを主要構成要素としつつ、生産構造や社会構造にさまざまな影響を与えています。

分散型無機エネルギー観は、宇宙エネルギーを蓄積した鉱物を物理学的、多角的に利用しようとするエネルギー観ですが、「生産構造」の化石・核燃料や工業技術を支えている基本基盤となっています。

要素還元主義は、細かく「分析」することで全体が明らかになるという思考方法ですが、分析結果を「統合」するという視点を忘れたまま、「生産構造」の工業技術や資本・労働・消費制を生み出し、さらには「社会構造」の民主主義制や国家連合制などの制度構造にも及んでいます。

数理思考は、数学や統計学的な思考方法こそ唯一の科学的態度だという思い込みですが、主に「生産構造」の工業技術資本・労働・消費制、さらには「社会構造」の市場経済制などでも、基底的な思考法となっています。また資本・労働・消費制を通じて、「社会構造」の資本主義管理通貨制などにも及び、市場経済制を支えています。

以上のように、工業現波の生み出した近代社会は、「科学」的理性という識知観であれば、環境・世界の全てが認識できるだろう、という集団幻想によって支えられています。

いいかえれば、私たちの世界を動かす基本エネルギーを分散型無機エネルギーに依存しつつ、生産や社会を動かす理性もまた、数理思考や要素還元主義に基づく発想に基づいて、分析・分散型の構造を創り上げていく、というものです。

その結果、理性を追求する学問の構造もまた、自然科学、社会科学、人文科学に大別されたうえ、それぞれの内部をさらに細分化し、さまざまな学群・学類などに分けられてしまいました。

しかし、このような構造では、個別・分断化された知識を一つ一つ深めることはできたとしても、それらを全体的に統合して、実際に具現化するという思考行動については、ほとんど不可能なようです。

現実の世界を見ると、化石燃料系は大気汚染を引き起こし、核燃料系は高濃度放射能を拡散させ、巨大化した資本では寡占化や横暴化が進み、所得格差の慢性的拡大、大量生産-大量消費の害毒化物質的拡大限界化で情報化の台頭などが始まるとともに、ポピュリズムの拡大による民主制の危機コニュミズムの倒錯による全体主義の拡大中央統治機構の弱体化、そして国際機関の空洞化など、工業現波による国際的人口容量の限界化が際立ってきています。

これらの課題に対応していくには、経済学、社会学、法律学、行政学などの専門諸学はもとより、応用数学、システム科学、情報科学などの数理諸学といえども、細かく分離された学問ではもはや不可能でしょう。より統合化され、集中化された、もっと新たな思考行動が求められているのです。

私たちは現代社会の科学的思考法を唯一無二の理性だと思いがちですが、少し視点を広げて、4~5万年単位で振り返れば、せいぜい600年ほどの時代識知にすぎません。環境-世界を眺める識知は、時代とともに大きく変わってきているのです。

このように考える時、今回のコロナ禍によって、いみじくも露呈したのは、科学的理性をベースとして分野別に分離させられた、私たちの思考行動の破綻、そのものだったのではないでしょうか。

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