2021年5月25日火曜日

コロナ禍は宇宙からの警告では?

 「今のコロナ禍は戦争ができなくなった人間に対する自然または地球の人口調節である」

文壇の大御所、筒井康隆先生が「偽文士日録」に書かれたご見解です。

お説のとおりで、筆者もまた25年前から「人口は人口容量の限界で減少に転じる」という「人口抑制装置」論を提唱し、『人口波動で未来を読む(日本経済新聞社:1996)や『日本人はどこまで減るか』(幻冬舎新書:2008)などの著作で展開してきました。

とすれば、今回のコロナ禍は、地球の資源を食い尽くし、かつ汚染物資を垂れ流しつつ、無節操にも人口を増やし続けている人類に向けて、宇宙が諫めた警告ともといえるでしょう。

そこまではともかくも、ルネサンス以降、西欧の主導により、600年ほど続いてきた近代社会は、既に述べたように、物量的限界に達した工業技術形骸化した民主主義格差拡大する経済制度過剰分業・分散化する国際社会そして思考基盤としての分断的科学技術など、その限界をまざまざと示しています。

人類が自らの力で解決できなければ、宇宙の摂理はポピュレーション・キャパシティーの限界という形で、強烈なショックを与えてくれます。

700年前に黒死病の大流行が、中世社会の限界をさまざまに露呈させ、新たな方向を模索するルネサンスを引き起こました。それとほとんど同じことが、今や起ころうとしているのです。

以上のように考えると、ポストコロナのル・ルネサンスとは、人類が新たに目ざすべき方向を模索させてくれる、絶好の機会ともいえるでしょう。

いいかえれば、ル・ルネサンスとは、現在の工業現波の次に始まる、新たな人口波動の準備期間なのです。

何を準備すればいいのでしょうか? ルネサンスが農業後波から工業現波への移行を準備したことを先例とすれば、ル・ルネサンスには工業現波の前半、つまり工業前波から工業後波への移行を模索することが期待されます。

前回も触れたように、農業後波の識知構造をモデルとして、次のような方向をめざすことだともいえるでしょう。

◆工業前波を主導してきた「分散的・個別的充足性」という理性を細かく反省して、もう一度集約的・統合的集中性」という知性を回復させること。

◆工業前波の粗放的なScience(科学)の後に、集約的なNew Science(新科学)の到来を準備すること。

倫理・使命感を持ったNew Cosmology(新世界観)を創造・並立し、分散型社会の暴走や弊害を抑えること。

要するに、今回のコロナ禍によって、人類の歴史は今や新たな段階に向かい始めている、ということです。

私たちは人類の文明の最先端に立っているように思いがちですが、必ずしもそうではありません。

超長期の人口波動からみれば、石器文明、農業文明の後、工業文明によって工業前波を起こしはしたものの、未だ粗放的な科学技術によって自然破壊や社会的混乱を引き起こし、その前半を終わろうとしているに過ぎません。工業前波の後には必ず工業後波がやってくるのです。


今後は、上記のような時代識知を育成することによって、工業波動後半の波、つまり工業後波を大胆に創り上げていかなければなりません。

2021年5月15日土曜日

ルネサンスが破壊した統一構造をル・ルネサンスは再興する!

・ルネサンスの進むべき、3つめの要件は「工業後波は農業後波の時代識知を利用する」です。

元々のルネサンスは、【ル・ルネサンスの要件・・・ラストミドルがモデルになる!】で述べたように農業前波の時代識知「ミソロジー」構造を再興することでよって、工業前波を創り上げました。

ここでいう「Mythology(神話)」構造とは、農業後波の「Religion(宗教)」の支配する「統一的・集団的拘束性」を一旦抑え込んで、それ以前の「分散的・個別的充足性」を回復させること、それを意味しています。

こうした先例を応用すると、今後のル・ルネサンスに期待されるのは、工業現波の「Science(科学)」の支配する「分散的・個別的充足性」をしばらく抑え込んで、もう一度「統合的・総合的集中性」を回復させること・・・となるのではないでしょうか。

この動きを新たな世界観の模索と考えて、仮に「ニュー・コスモロジー(New Cosmology」志向と名づけると、それが直に影響してくるのは、次の3つの分野だと思います。

学問・観念分野・・・自然科学、社会科学、人文科学などに分散した、現代の識知構造の基盤にある科学的思考と、その特性である「分散的・個別的充足性」を徐々に修正し、「統一的・集合的」な「New Science(新科学)?」の樹立をめざします。

分析・数量化志向で細分化された思考方法の上に、それらを統合・連結化する方法を取り入れ、領域を超えた知的行動の充実を実現していきます。

社会組織分野・・・政治、行政、経済、企業、自治体、病院など、さまざまな組織に分散した、現代の社会機構に対し、他の分野との連結をできるだけ拡大させ、統合的な連帯行動を実施できるような仕組みを強化していきます。

強度な専門・分担意識による専業化によって、全体的・総合的な対応力を縮小させてしまった分断組織に向けて、分野を超えた共同行動を促し、統一的な目標の実現をめざすことともいえるでしょう。

時代識知次元・・・ルネサンスが厳しく破棄してしまった「Religion(宗教)」の「統一的・集合的並立性」の視点をもう一度復活させるべく、新たな世界観(New Cosmologyを生み出して、Science(科学)と並立させていきます。

過去の人口波動を振り返ると、石器前波の生命力(Dynamism)から後波の霊魂力(Animism)へ農業前波の神話(Mythology)から後波の宗教(Religion)へと、分散的認識から統括的認識へ、つまり分節化から合節化への移行が見られました。

こうした変化は、前者を後者が否定したものと捉えるべきではなく、むしろ前者と後者の並立をめざしたものだ、と理解すべきでしょう。

個々の生命力を霊魂として統一化したり、さまざまな神々を中央神との連携として位置づけるなど、両者の並立化が進んだのです。

以上のように考えてくると、人口波動の前・後波では、前波では分立志向が、後波では統合志向が、それぞれ生まれてきますが、両方の志向は移行するのではなく、後波において並立するのだ、とも考えられます。


農業前波で育った、さまざまな神々は、農業後波においては、エホバや大日如来などの中央神と並立したということです。

こうしたトレンドを工業現波に当てはめれば、工業前波のScienceが作り出した、さまざまな合理性と、工業後波で新たに生み出される新世界観(New Cosmologyがともに連立し、互いに連携をとりつつ、人類の世界を充実化させていくのではないか、と予想できます。 

極端にいえば、約700年前からの、元々のルネサンスが悉く破壊してしまった統一構造を、今回のル・ルネサンスではもう一度復興させ、過去の2つの後波のように、両者を並立させていくことになるでしょう。

2021年5月4日火曜日

ル・ルネサンスは工業後波をめざすのか?

・ルネサンスの進むべき、2つめの要件は「工業前波から工業後波へ」です。

前回述べたように、人類の人口波動において、過去の4つの波動は2つずつペアになっていました。つまり石器前波と石器後波農業前波と農業後波です。

とすれば、現在の工業現波もまた、前波と後波に分かれてくるでしょう。

私たちの生きている工業前波は未だ工業波動の前半にすぎず、これが終われば、次の工業後波が始まる、ということです。

工業後波とは、どのような特性を持つものになるのでしょうか。

過去の4波動における発展構造を、技術、生業、共同体などで整理してみると、次表のようになります。

この表を基に、前波と後波の関係を推測してみると、次のような関係が浮かんできます。

➀技術では、旧石器から新石器へ、粗放農具・金属器から集約農業技術へと、粗放段階から集約段階への移行が見られます。

②生業では、狩猟・採集から狩猟・採集・耕作へ、粗放農業から集約農業へと、基礎次元の生産から高度次元の生産への移行が見られます。

③共同体では、血縁・地縁から地縁・集落へ、村落・市井から村落・都市・国家へと、縁故的な単位集団から広域的な連合集団への移行が見られます。

④識知では、生命力(Dynamism)から霊魂力(Animism)へ、神話(Mythology)から宗教(Religion)へと、分散的認識から統括的認識へ、つまり分節化から合節化への移行が見られます(詳細は後述します)。

以上を参考にすれば、工業には、次のような特性が予想できます。

❶技術では、粗放的機械生産から集約的機械生産へ進展します。

❷生業で、工業・分業化から工業・統合化へ移行します。

❸共同体では、企業・都市・国家から3団体+新共同体へ移行します。

❹識知では、科学(Science)から統合的科学(Integrated Science)へ進展します。

以上のような基礎的要件の変化を前提にしつつ、ル・ルネサンスには、コロナ禍が摘発した現代社会のさまざまな欠陥を、速やかに改善していく発想力が求められます。

例えば物量的限界に達した工業技術、形骸化した民主主義、格差拡大した経済制度、過剰分業・分散化する国際社会、そして思考基盤としての分断的科学技術など、それぞれを基盤から見直して、大胆に再構築していかなければなりません。