ル・ルネサンスがいかなる時代になるのか、3つの予測要件から推察しています。
3番めは、③一つ前の個別波動における下降期の変容推移です。
現在検討している工業現波(=工業前波)でいえば、一つ前の農業後波における下降期の変容推移ということになります。
農業後波はAD400~1400年の波動であり、その下降期とは【ル・ルネサンスのモデルとなる時代を求めて】で述べたように、1350~1400年のラストミドル(Last middle age)に相当し、農耕文明から工業文明への橋渡しを模索した時代、いわゆる「ルネサンス」の時期に当たります。
この時代に、人類はどのような手続きで工業文明の準備をしたのでしょうか。
一般的な定説によると、ルネサンス(文芸復興)とはフランス語の「再生」を意味し、古代のギリシア・ローマ精神の再興によって、中世のキリスト教的人間観・世界観から解放をめざし、人間と世界と関係の再発見を求めたもの、とされています。
確かに歴史を振り返れば、古代ギリシアの精神のうち、プラトン主義は東ローマ文化へ、新プラトン主義はローマ・カトリック文化へ、アリストテレスの自然科学論は南アラブ文化へとそれぞれ継承され、数学、化学、天文学、医学といった“科学”をリードさせました。一方、古代ローマはギリシア神話を引き継いで、カトリック文化を興隆させています。
とすれば、ギリシア・ローマ精神の再興とは、単なる科学志向を超えて、より高次元の精神復興だったのではないでしょうか。
この件については、すでに【ポストコロナ・・・ルネサンスは何をめざしたのか?】で触れていますが、一言でいえば、農業前波の上昇期(BC3500~AD200年)の精神構造を参考にしたのだ、と思います。その要点を再掲します。
①農業前波の高揚・飽和期は、【農業前波はミソロジーが作った?】以降で述べたように、「神話的な世界観(ミソロジー:mythology)」が主導していました。 ②BC2000年頃のギリシアでは、ゼウス神を中核に先住民族や近隣民族の神々などを合せた、いわゆるギリシア神話が生まれています。これらを継承して、BC700年代には詩人のホメロスやヘシオドスらが、宇宙や自然の動向、神々の活躍、英雄譚など、自然環境と人間の関係を詳細に述べる神話的作品を広げています。 ③ここでいう「神話」とは、単なる故事・伝説の類を超えて、【ミソロジーとは何だろうか?】で提起したように、❶環境世界を言語で理解する観念的装置、❷元型・象徴で構成する文章・物語、❸多様な現象を擬人化した主体群による複合的物語、❹自然と人為の相互関係を識知、❺自然現象を応用する人間活動の経緯、などを特徴とする観念体系であり、一言でいえば、広義でのリレーショナリズム(Relationalism:万物関係観)といえるものです。 |
以上のような意味でのミソロジーこそ、農業前波を生み出した時代識知だったと思います。
とすれば、ルネサンスが再興しようとしたものもまた、ミソロジー的精神だったのではないでしょうか。
ルネサンスが「神話の再興」などというと暴論だと批判されそうですが、ここで提起しようとする「ミソロジー」とは、農業後波の時代識知であった「Religion(宗教」の観念体系、つまり「統一的・集団的拘束性」を大きく超えて、「分散的・個別的拡散性」を認めようとするものだったのです。
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