2021年10月22日金曜日

サスティナブルの逆説を解く!

SustainableUnsustainableをもたらす」あるいは「SustainableUnsustainableで初めて成立する」という逆説は、何ゆえに生まれてくるのでしょうか?

国連の提唱するSDGsSustainable Development Goalsは、現代社会に生きる人類の生存を保証するため、地球の持つ人口容量を維持しようという運動、と理解できます。

容量の規模は明らかにされていませんが、世界人口の趨勢やさまざまな予測から推測すると、90110億人と想定されます。

とすれば、SDGsが達成できれば、人口容量90110億人を維持できることになります。

SGDsで人口容量が90110億人で持続可能(Sustainable)となれば、人口の変化によって、1人当たり人口容量、つまり1人当たりの生活水準は大きく変化(Unsustainable)します。

最も低い90億人で算定すると、その変化は下図のようになります。

人口予測値

国連・人口予測中位値・・・2020年の78億人から2040年頃に人口容量90億人を超えて、2050年に97億人、2080年に107億人、2100年に109億人と一貫して増加し続けます。

❷国連・人口予測・低位値・・・2020年の78億人から2050年頃に人口容量90億人でピークに達し、以後は2080年の83億人、2100年の73億人と減少し、容量の8となります。

ワシントン大・人口予測SDG・・・2020年の79億人から2050年に88億人でピークに達し、2080年の77億人、2100年の63億人と減少し、容量の7となります。

1人当たり人口容量・・・人口容量の下限90億人を年々の人口で割った数字は、広い意味での生活水準を表しています。

❶国連・中位値・・・1990年以降、継続的な人口増加によって低下し続け、2100年には2035年の1.00に対し0.83にまで落ちていきます。

❷国連・低位値・・・19902060年は、人口増加によって低下し続けますが、2060年以降は人口停滞によって上昇に転じ、2100年には2035年の1.00に対して1.23にまで上がります。

❸ワシントン大・SDG・・・19902050年の間は、人口増加によって低下し続けますが、2060年以降は人口急減によって上昇に転じ、2100年には2035年の1.00に対して1.43にまで上がります。

以上のようなトレンドを読み解くと、次のような解釈ができます。

①国連の人口予測のうち中位値を実現するためには、地球の人口容量を110億人程度まで上げていかなくてはなりません。しかし、2020年現在の79億人で環境汚染や地球温暖化などが進んでいるのを見ると、今後80年間に約30億人を拡大していくことは、ほとんど不可能と言っていいでしょう。

②国連の低位値やワシントン大のSDGで人口が推移するとすれば、90億人程度が上限であることが示唆されていますから、現状の地球環境をなんとか持続可能(Sustainableにしていけば、その実現は可能となるでしょう。

③人口容量を90億人で持続可能(Sustainable)とした場合、国連の中位値で進めば、1人当たりの人口容量、つまり生活水準は下がり続けますから、持続不可能(Unsustainableとなります。

④国連の低位値やワシントン大のSDGで推移する場合、2050年以降の生活水準は次第に上昇していきますから、その意味でも持続不可能(Unsustainableとなります。

このように見てくると、国連のSDGsが目ざす持続可能(Sustainable)とは、地球の人口容量を90億人程度で維持し、世界人口を低位値に近づけていくこと、といえるのではないでしょうか。

2021年10月16日土曜日

サスティナブルはアンサスティナブルをもたらす?

ワシントン大の予測によれば、SDGsが進め進むほど、世界人口は減少していきます。

人口容量はSustainable(持続可能)となりますが、人口はUnsustainable(持続不可能)になる、ということです。

先に述べたように、私たち人類の生存可能量を支えている人口容量(Population Capacityは、次の式で表わせます。

人口容量=自然環境×文明

より具体的にいえば、【人口容量の中身を考える!】で述べているように、

国土などの扶養量(食糧・衣料・住居など生活資源や、移動・通信・熱源などエネルギーの供給量)と許容量(生活廃棄物・産業廃棄物・排出ガスなどの処理量)の両面から決まってきます。

それゆえ、上記の式を現代社会に当てはめると、次のように変換できます。

世界の人口容量=(地球扶養量+地球許容量)×現代文明

この式が意味しているのは、現代世界の人口容量が、現代の文明によって、❶食糧・衣料など生活資源や移動・通信・熱源などをどこまで保証できるのか、❷生活廃棄物・産業廃棄物・排出ガスなどをどこまで処理できるのか、の両面から決まってくる、ということです。

翻って、現代の地球環境を眺めると、❶では食糧危機やエネルギー不足などが懸念され、❷では温暖化や環境汚染などが顕在化しています。

それゆえ、SDGsSustainable Development Goals:持続可能な開発目標群)が目ざしているのは、これらの不安を縮小し、安定的な地球環境を回復させていこう、ということだと思います。

下図で説明すれば、地球という自然環境を現代文明の改善によって維持し、90億人規模の人口容量をなんとか維持していこう、という趣旨です。

その意味では、人口容量のSustainable(持続可能)をまさに実現しようとしています。

しかし、ワシントン大の予測によれば、SDGsを進めれば進めるほど、世界人口は減少していきます。

2050年ころに88億人となって、人口容量90億人にほぼ達した後、徐々に下がり始め、2100年には63億人となり、人口容量の7割へ落ちていきます。

つまり、人口そのものはUnsustainable(持続不可能)となり、減少していくということです。

その結果、1人当たりの人口容量(90億人/総人口数)は、現在の1.15から2040年に1.03にまで落ちますが、その後は逆転して上昇し始め、2090年には2010年の水準を回復し、2020年には1.43まで上がっていきます。

先進国のライフスタイルが途上国にまで浸透し、世界全体の生活民が高度な生活水準を営めるようになるということです。

このため、世界人口の平均的生活水準は、低下→横ばい→上昇とUnsustainable(持続不可能)な、大きな波を打つのです。

以上のように見てくると、Sustainable(持続可能)という言葉が当てはめられるのは人口容量だけであり、人口推移生活水準については、Unsustainable(持続不可能)の方が妥当だということになります。

要約すれば、SustainableUnsustainableをもたらすのです。

あるいは、SustainableUnsustainableで初めて成立するのです。

この逆説は何ゆえに生まれてくるのでしょうか?

2021年10月5日火曜日

SDGsで人口はなぜ減るのか?

ワシントン大の最新の予測では、国連の推進するSDGsが進むほど、人口は大きく減少すると展望していますので、人口そのもののサスティナブル(持続可能)は不可能になります。

とすれば、国連の主導するSDGsSustainable Development Goals:持続可能な開発目標群)の“Sustainableとは、何を意味しているのでしょうか?

筆者のブログ(JINGENブログ生活学マーケティング)で何度も述べてきましたが、生物の個体数はキャリング・キャパシティーCarrying Capacity環境容量)の許容内までは増加しますが、限界に近づくにつれて、個体数抑制装置を作動させ、自ら減少に向かって行きます。

自然環境が与えてくれるキャリング・キャパシティーは、ほとんどの生物の場合、個体数の上限となります。キャパシティーを自ら変えることができないからです。

ところが、人間の場合は、さまざまな文明で働きかけることによって、キャリング・キャパシティーの大きさをある程度変えることができます。

つまり、人間のキャリング・キャパシティーは、自然環境と文明の掛け算によって決まってきます。

そこで、筆者は人間の環境容量を改めて「人口容量Population Capacity」と名づけ、次の数式で表わしています。

人口容量=自然環境×文明

現代社会でいえば、激変する自然環境にそれに対応する文明力が掛け合わされたものが、人口容量の上限を作り出している、ということです。

となると、国連の主導するSDGs(持続可能な開発目標群)とは、おそらく上記の式において、文明のあり方の変更を意味することになるでしょう。

さまざまな開発目標が達成できれば、人口容量は一定の規模を保って持続可能なる、というわけです。

ところが、ワシントン大の指摘するとおり、SDGsが進め進むほど、いいかえれば、自然環境の変化に文明が対応すればするほど、人口そのものは減少していきます。

人口容量は持続可能となりますが、人口は持続できない、ということです。

となると、何のためのSustainable、という疑問が浮上してきますが、これには国連の意図とは別の、もう一つ裏の意味があるのだ、と思います。

つまり、SDGsとは、人口容量の限界に差し掛かった人類が、破滅的な終末を避けるため、予め人口を抑制していこうとする行動なのではないでしょうか。

いいかえれば、生物学でいう個体数抑制装置、人間に当てはめれば人口抑制装置、その発動を意味しているということです。

その仕組みを、もう少し詳しく眺めていきたいと思います。