ルネサンスが再生の目標としたのは、農業前波の上昇期の精神構造、つまりミソロジーだったのではないか、と述べてきました。
ここでいうミソロジーとは、単なる「神話」を意味するだけではなく、環境世界のさまざまな対象と人類の関係を、擬人化と文章化によって理解しようとする時代識知だった、ということです。
こうした視点に立つと、ルネサンスをヨーロッパ社会の革新現象として考えるのではなく、より視野を広げて、人類史の中で理解することが必要だと思います。
そこで、世界の人口波動を描いた下図で確認してみると、ルネサンスは農業後波の下降期、いわゆるラストミドルに当たります。
とすれば、コロナ禍に触発されて今や始まろうとしている「ル・ルネサンス」、これもまた工業現波の下降期、つまりラストモダン(Last modern age)に相当するはずです。
そう考える時、ル・ルネサンスのモデルとなる時代は、図に示したように、人類が過去に4回経験してきた、4つの下降期が浮上してくる、と思われます。4つの下降期とは、次のような時代でした。
①石器前波(Stone early wave)では、BC15000~BC3500年のLast pre-stone ageで、粗放石器文明から集約石器文明への橋渡しを模索した時代。 ②石器後波(Stone latter wave)では、BC4500~BC3500年のLast stone ageで、石器文明から農耕文明への橋渡しを模索した時代。 ③農業前波(Agri early wave)では、200~700年のLast ancient ageで、粗放農耕文明から集約農耕文明への橋渡しを模索した時代。 ④農業後波(Agri latter wave)では、1350~1400年のLast middle ageで、農耕文明から工業文明への橋渡しを模索した時代。 |
いずれの時代も一つの人口波動の最終段階にあたり、人口が減少していく中で、新たな人口波動を創り出すための方策を模索し、そのきっかけを生み出した時代といえるでしょう。共通する特徴をまとめておきましょう。
❶一つの人口波動を創り出した文明とその基礎にある時代識知が限界に達し、もはや人口容量を伸ばすことができない状態に陥っている。 ❷人口容量の限界化に伴って、さまざまな社会的混乱が多発している。 ❸人口抑制装置の作動によって、人口推移が飽和から減少へ向かっている。 ❹人口容量の物質的拡大が限界に達するとともに、情報的深化が進行する。 ❺社会的混乱を解消しようと、さまざまな対応策が模索されている。 ❻成功した対応策に通底する発想が集約され、社会的革新の基盤として、新たな時代識知が形成されていく。 |
以上のように、ル・ルネサンスのモデルとなる、4つの時代はいずれも、次の人口波動を起動するための準備段階ということができます。
いよいよ始まるル・ルネサンスは一体、どの時代をめざすのでしょうか。