2025年3月26日水曜日

自然言語とミソロジーが農業前波を創った!

石器後波を創ったアニミズムから農業前波を創ったミソロジーへ、時代識知の変換を担ったのは「象徴言語」から「自然言語」への移行でした。

自然言語(Natural languageとは、人類が通常、思考や会話を行っている言語であり、筆者の別のブログ(生活学マーケティング)の【言語6階層説:自然言語とは・・・】では、次のように説明しています。

自然言語とは、人類が「身分け」し、「識分け」した対象を、「言分け」、つまりコトバやシンボル(絵や形)によって捉え直す言語記号です。

この言語によってミソロジー(Mythologyが生み出され、初期的、粗放的な農耕・牧畜の生産形態が作られると、粗放農業(Extensive Agricultureという文明が成立しました。



その構造的なプロセスを、改めて整理しておきましょう。

➀人類は「身分け」「識分け」が捉えた事象を音声や図像などで表す「象徴言語」を使用しているうちに、次第に音声の「言分け」を多用する「自然言語」を形成した。

自然言語には、「内言語:個人内言語」「外言語:交信用言語」の両面があり、両者の相互的な発達が言語能力を向上させ、集団化を促していった。

➂自然言語によって、アニミズムが捉えていた「霊魂・霊力」、つまり「動いているもの全ては、意志や感情を持つ主体である」という現象を、「人格」という観念で受け止め、「神々」という言語で表現するようになった。これにより、神々=自然環境に対し、人類がより積極的に働きかける、さまざまな行為の可能性や、その影響が的確に述べられるようになった。

➃同時に、特定の神話=文章を一定地域の人々が共有すると、個々人の次元を超えた、人間集団が自覚され始め、共同して生活活動や生産活動へと向かうようになる。その結果、多様な人間集団という活動主体となって、人類はさまざまな自然環境へ関わり、環境そのものもまた作り直されていく可能性が生まれてきた。

➄こうした時代知が醸成されていくにつれ、人間集団が与えられた自然環境を積極的に活用して、循環的な農耕や定着的な牧畜などを継続することができるようになった。神々の持つ自然エネルギーを、農耕・牧畜へ最適に転換させることで、より多くの人間が生きられる人口容量を創り上げた。

以上のようなプロセスによって、農業前波の人口容量、26000万人が創り上げられたものと推察されます。

2025年3月18日火曜日

象徴言語とアニミズムが新石器文明を創った!

石器前波を創ったマナイズムから、石器後波を創ったアニミズムへと、時代知の変換を担ったのは「深層言語」から「象徴言語」への移行でした。

象徴言語(Symbolic languageとは、どのような言語だったのでしょうか。筆者の別のブログ(生活学マーケティング)の【言語6階層説:象徴言語とは・・・】では、次のように説明しています。

象徴言語とは、動物的、衝動的に捉えた事象を音声や図像などで表した言葉であり、具体例としては、音声言語(オノマトペ:擬声語、擬音語、擬態語、擬容語、擬情語など)、象形文字(ヒエログリフ、楔形文字など)、表象記号(古墳壁画や銅鐸絵画など)が考えられる。

このような象徴言語こそ、アニミズム(Animismを産み出し、高度な石器類の創出によって、新石器(Neolithicという文明を生み出した、深層的な基盤でした。



そのプロセスを改めて整理しておきましょう。

先史時代の人類は、周りの環境世界について、「身分け」で把握し、「識分け」で捉えた事象を、生成段階の「言分け」である「象徴言語」、つまり擬声語や擬態文字、イメージや偶像などで表し、互いに交信していた。

象徴言語の発達で、人類は周りの環境について、有機物・無機物を問わず、あらゆるモノの中に霊魂あるいは霊が宿っている、と考えるようになった。これこそ「アニミズム」という時代知であった【石器後波はアニミズムが作ったのか?】。

深層言語が環境世界を「動き回る」モノと捉え、その姿を「活力・生命力」と理解したのに対し、象徴言語は「動き回る」モノの中に意識や意志の存在を識知し、霊魂・霊力」と象徴化した。

このような環境把握によって、人類はアニミズムで捉えた宇宙エネルギーを、象徴言語をさらに活用して、自らの内部に取り込もうとした。

彼らは擬態語や偶像などを使って、「動いているもの全てには意志や感情を持つ主体があり、目には見えないものの、生死を超えて“循環”的に存続している」と理解し、そのエネルギーを高度な石器によって狩猟、漁労、初期農耕へと誘導し、“反復的”に利用する仕組みを創り出した。

これらの仕組みにより、太陽エネルギーを狩猟、採集、農耕などで集約的に利用するとともに、血縁・地縁集団や村落住民の生命の維持や拡大が可能になるという、いわゆる新石器文明を創り出した。

新石器文明による人口容量の拡大とともに、世界の人口は上昇し始め、石器後波が形成された。

以上のようなプロセスこそ、石器後波の人口が形成された、根源的な背景だったのではないでしょうか。

2025年3月5日水曜日

深層言語とマナイズムが旧石器文明を生み出した!

深層言語が生み出したマナイズムによって、人類は環境世界の動力を自らの手中に引き込もうと、さまざまな石器類を生み出し、旧石器(Paleolith)という文明を創り出した、と述べてきました。そのプロセスを改めて整理しておきましょう。



原始時代の人類は、周りの環境世界に対し、体感が「身分け」し、意識が「識分け」する前の次元を、無意識から意識への移行過程として捉え、ため息、喘ぎ、息づかいなどの口頭表現や、手振り、身振り、しぐさなどの動作表現といった原初的な言語、つまり「深層言語(Deep language」によって表象化し、互いに交信していました。

深層言語の発達で、人類は周りの環境について、「人間、事物、動植物、諸現象の作用や活動とは、活力、威力、生命力、呪力、超自然力である」(前回)と理解しました。これこそ、「マナイズム」という識知でした。

このような環境把握によって、人類はマナイズムで捉えた宇宙エネルギーを、深層言語をさらに活用して、自らの内部に取り込もうとしました。それは言語能力で最も基本的な「分節化」という行動でした(注1)。

まずは「身分け」によって捉えた対象を、「識分け」によって意識対象と無意識対象に「分節化」し、続いて意識対象を「言分け」によって有意語と無意語に「分節化」しました。

つまり、宇宙エネルギーを「動」と「不動」に「識分け」したうえで、「活力・生命力」と「沈滞・消沈性」に「言分け」しました。

その一方で、人類は野山に点在する岩石を「可動」と「不動」に「識分け」したうえで、「掌中」と「掌外」に「言分け」しました。

2つの「分節化」に続いて、人類は宇宙エネルギーの「活力・生命力」岩石の「断片」を「合節化」し、「石刃」を創り出しました。「合節化」とは、「分節化」の対義語で、「分けた対象を合わせる」ことを意味します(例:「雪」という言知と「雨」という言知を合節化し、「みぞれ」という言葉を作ります。)

この石刃を基礎にして、削器(スクレーパー)、石槍、石錐、握斧などの旧石器類が作られました。これこそ旧石器文明の誕生でした。

旧石器文明によって、自然環境のエネルギー自らの生存エネルギーに移行する手段が確立されるとともに、石器前波の人口容量が拡大しました。

以上のようなプロセスこそ、石器前波の人口容量が形成された、根源的な背景だったのではないでしょうか(注2)。 


注1.「識分け」と「言分け」の2つの段階が、構造言語学者F.ソシュールの主張する、いわゆる「二重分節」に相当します。但し、A.マルティネの提唱している「二重分節」説は、ソシュールの主張とはかなり異なっていますので、注意が必要です。

注2.以上のような推論に対し、実証性がないとのご批判をいただいておりますが、4~5万年前の事象について、科学知レベルの検証はほとんど不可能ではないか、と思います。それゆえ、論理的仮説として、以上のような推論を提案しています。これもまた時代識知の一段階としてのアプローチにすぎません。