2025年3月5日水曜日

深層言語とマナイズムが旧石器文明を生み出した!

深層言語が生み出したマナイズムによって、人類は環境世界の動力を自らの手中に引き込もうと、さまざまな石器類を生み出し、旧石器(Paleolith)という文明を創り出した、と述べてきました。そのプロセスを改めて整理しておきましょう。



原始時代の人類は、周りの環境世界に対し、体感が「身分け」し、意識が「識分け」する前の次元を、無意識から意識への移行過程として捉え、ため息、喘ぎ、息づかいなどの口頭表現や、手振り、身振り、しぐさなどの動作表現といった原初的な言語、つまり「深層言語(Deep language」によって表象化し、互いに交信していました。

深層言語の発達で、人類は周りの環境について、「人間、事物、動植物、諸現象の作用や活動とは、活力、威力、生命力、呪力、超自然力である」(前回)と理解しました。これこそ、「マナイズム」という識知でした。

このような環境把握によって、人類はマナイズムで捉えた宇宙エネルギーを、深層言語をさらに活用して、自らの内部に取り込もうとしました。それは言語能力で最も基本的な「分節化」という行動でした(注1)。

まずは「身分け」によって捉えた対象を、「識分け」によって意識対象と無意識対象に「分節化」し、続いて意識対象を「言分け」によって有意語と無意語に「分節化」しました。

つまり、宇宙エネルギーを「動」と「不動」に「識分け」したうえで、「活力・生命力」と「沈滞・消沈性」に「言分け」しました。

その一方で、人類は野山に点在する岩石を「可動」と「不動」に「識分け」したうえで、「掌中」と「掌外」に「言分け」しました。

2つの「分節化」に続いて、人類は宇宙エネルギーの「活力・生命力」岩石の「断片」を「合節化」し、「石刃」を創り出しました。「合節化」とは、「分節化」の対義語で、「分けた対象を合わせる」ことを意味します(例:「雪」という言知と「雨」という言知を合節化し、「みぞれ」という言葉を作ります。)

この石刃を基礎にして、削器(スクレーパー)、石槍、石錐、握斧などの旧石器類が作られました。これこそ旧石器文明の誕生でした。

旧石器文明によって、自然環境のエネルギー自らの生存エネルギーに移行する手段が確立されるとともに、石器前波の人口容量が拡大しました。

以上のようなプロセスこそ、石器前波の人口容量が形成された、根源的な背景だったのではないでしょうか(注2)。 


注1.「識分け」と「言分け」の2つの段階が、構造言語学者F.ソシュールの主張する、いわゆる「二重分節」に相当します。但し、A.マルティネの提唱している「二重分節」説は、ソシュールの主張とはかなり異なっていますので、注意が必要です。

注2.以上のような推論に対し、実証性がないとのご批判をいただいておりますが、4~5万年前の事象について、科学知レベルの検証はほとんど不可能ではないか、と思います。それゆえ、論理的仮説として、以上のような推論を提案しています。これもまた時代識知の一段階としてのアプローチにすぎません。

2025年2月25日火曜日

深層言語➔マナイズム➔旧石器文明

深層言語こそ、マナイズムの創造源であった、と述べてきました。

これまで当ブログでは、石器前波の生成要因をマナイズムから説明してきました【ディナミズムが旧石器文明を生み出した!2022223日、ディナミズム=動体生命観が石器前波を創った!2019913日】。ディナミズムとは、マナイズムの別称です。

しかし、マナイズムという時代識知が生まれてくる、さらにその背景を考えてみると、より深い次元に、人類の環境世界把握の基本的変化があった、と思われます。

私たち人類は、【「ことしり」から「ことわり」へ!】で触れたように、環境世界のさまざまな事象を“身分け”(感覚)によってひとまず“認知”したうえで、“識分け”(意識)によって無意識から意識を“識知”し、さらに“言分け”(言語化)によって“言知”しています。

こうした認識の仕組みこそが、さまざまな時代識知の生まれてくる根源ではないでしょうか。

とすれば、マナイズムという時代識知の発生源にも、やはり識分けや言分けの変化があったはずです。つまり、マナイズムが生まれるには、身分けから識分け、言分けへの“認識”装置の変化があったのです。

どのような変化であったのでしょうか。・・・といえば、前回指摘したような深層言語の発生と発展でした。

無意識から意識への移行過程を担う深層言語(Deep languageとは、無意識のため息、喘ぎ、息づかいや、意識的な手振り、身振り、しぐさなどという、初期的、胎内的な“言葉”です。

こうした深層言語によって、環境世界の動態を直観的に把握した識知、これこそがマナイズムだったのではないでしょうか。

太陽や月、風や波、獣や魚などの動きを、人類はオノマトペ(擬音・擬態語)ジェスチャー(身振り・手振り)などで、活力や生命力として理解し、お互いに会話し合ったのです。

何度も会話が繰り返されるとともに、環境世界はマナ(mana:超自然力、呪力)で動いているという共通認識が、人類共同体の中に育まれていきました。

それゆえ、マナイズム(Manaismとは、深層言語という識知装置の進展によって、初めて創り出された時代識知だった、といえるでしょう。

このマナイズムによって、環境世界の動力を人類自らの手中に引き込むことが促され、さまざまな石器類を創造させて、旧石器(Paleolithという文明へと昇華させていきました。

2025年2月18日火曜日

マナイズムは深層言語が創った!

石器前波を創ったマナイズムから、石器後波を創ったアニミズムへと、時代識知の変換を担ったのは「深層言語」から「象徴言語」への移行でした。

マナイズム(manaismを生み出した深層言語とは、どのような言葉だったのでしょうか。筆者の別のブログ(生活学マーケティング)の【言語6階層説:深層言語とは・・・】では、次のように説明しています。


深層言語とは、「身分け」が把握したものの、「識分け」が漏らした、無意識(深層意識)の事象を、言葉になる前のイメージや偶像などで表した記号です。

いいかえれば、感覚が捉えた対象を、意識が把握する前の、体感的・心像的な動作やイメージであり、自然的な言葉が生まれる前に、胎内的な言葉が湧き上がる次元です。

具体例としては、音声言語(無意識のため息、喘ぎ、息づかい)動作言語(無意識の手振り、身振り、しぐさ)などが考えられます。

このような深層言語こそ、マナイズムを産み出した、認識的な基盤でした。

マナイズムは【アニマティズムという時代識知】で述べたように、イギリスの人類学者、R.R.マレットが提唱した観念形態です。

彼によれば、マナイズムとは、動植物のみならず無生物や自然現象など、すべてのものに生命があり、生きている、と察知する考え方です。

人間、事物、動植物、諸現象の作用や活動とは、活力、威力、生命力、呪力、超自然力である、と感じる心理や態度である」と考えて、「活力や生命力という観念が、歴史的にも心理的にも霊魂や精霊という観念に先行している」と述べています(Pre-animistic Religion1900)

メラネシアやポリネシアの先住民が抱いているマナ(manaという観念は、超自然力や呪力であり、神や人間はもとより自然現象全てに含まれて、物から物へと転移していきます。

例えば、戦士が敵を倒せるのは、槍に強力なマナが付加されているからです。南アフリカのコーサ人が、暴風が吹きよせる時、丘に登って風の進路を変えるように呼びかけるのは、暴風に霊魂を認めているのではなく、暴風そのものを生き物とみなして反応しているからだ、と説明しています。

要するに、未開時代の人間は、動物や事物そのものに非人格的な威力や活力を認めたうえで、それらに情動的に反応し、驚異や恐怖、さらには尊敬や畏敬の念を抱いていた、と考えているのです。

とすれば、無意識のため息、喘ぎ、息づかいや、無意識の手振り、身振り、しぐさなどという、まさに深層言語によって、環境世界の動態を直観的に把握した識知、これこそがマナイズムだったのではないでしょうか。

このような深層言語によって、太陽や月、風や波、獣や魚などの動きを、世界を動かす動力や活力の根源と捉える観念そのものが、速やかに創り出されたのです。

深層言語こそ、マナイズムの創造源だった、と言えるでしょう。

2025年2月8日土曜日

人口減少期は次期波動の準備期!

世界人口はまもなくピークを越え、減少期に入って行きます。

人類の歴史をふりかえると、人口波動が減少から始動に移る時期には、次の波動を準備する、さまざまな事象が起こっているようです。

ル・ルネサンスのモデルとなる時代を求めて】で既に述べましたが、世界の人口波動における、過去の4つの減少期には、次のような模索が行われています。


上図は以下のように説明できます。

石器前波(Stone early waveでは、BC20000~BC10000Last pre-stone ageで、粗放石器文明から集約石器文明への橋渡しが模索されている。

石器後波(Stone latter waveでは、BC4500BC3500年のLast stone ageで、石器文明から農耕文明への橋渡しが模索されている。

農業前波(Agri early waveでは、200700年のLast ancient ageで、粗放農耕文明から集約農耕文明への橋渡しが模索されている。

農業後波(Agri latter waveでは、13501400年のLast middle ageで、農耕文明から工業文明への橋渡しが模索されている。

これらの橋渡しはどのように行われたのでしょうか。

基本的には、周りの環境世界をどのように把握したのか、つまりどのような仕組みで言語化したのか、さらにそれによってどのような識知で理解したのか、という認識プロセスの変化が行われたのではないか、と思います。

いいかえれば、人口の減少期には、新たな言語使用法を生み出すことで、環境を理解する識知を変革し、それに見合った文明を創造していった、ということです。

こうした視点に立って、とりあえずは全体的な推移を眺めておきましょう。

この図が示すのは、次のような状況です。

Last pre-stone ageには、粗放石器文明から集約石器文明への橋渡しとして、深層言語から象徴言語へマナイズムからアニミズムへの転換が模索された。

Last stone ageには、石器文明から農耕文明への橋渡しとして、象徴言語から自然・交信言語へアニミズムからミソロジーへの転換が模索された。

Last ancient ageには、粗放農耕文明から集約農耕文明への橋渡しとして、自然・交信言語から思考言語へミソロジーからリリジョンへの転換が模索された。

Last middle ageには、農耕文明から工業文明への橋渡しとして、思考言語から観念言語へリリジョンからサイエンスへの転換が模索された。

以上のような変革の推移を、時代別に眺めていきましょう。

2025年1月15日水曜日

ル・ルネサンス展望・・・新たなルネサンスが始まる!

グローバル・レシプロシティー論を展開してきましたが、ゴールにはまだまだ未到達です。そこで、一休みして、しばらくは間もなく始まろうとしている「ル・ルネサンス」について考察していきたいと思います。

ル・ルネサンスとは、現代社会を構築した知性の誕生、つまり「ルネサンスの再来」を意味しています。

当ブログではすでに【ポストコロナは「ル・ルネサンス」へ!】【ル・ルネサンスのモデルとなる時代を求めて】などで、人口波動の減少期や始動期には、「モノ作りからコト作りへ」、あるいは「物質的拡大から情報的深化へ」といった動向が強まり、それによって新たな時代識知が育まれると、次の人口波動が始動し始める、と主張してきました。

こうした視点を今や進行している世界波動の工業現波に当てはめると、次の3点が浮かび上がってきます。

➀工業現波の伸び率が急速に衰え、20数年後、2050年代には減少に移行していくのは、この波動の人口容量を担ってきた科学技術文明がすでに限界に達したことを示している。環境問題の深刻化食糧需給の不安化などは、それを如実に物語っている。

➁一方、昨今の社会で急速に進んでいるITや生成AIなど技術革新は、この波動を担ってきた科学技術文明が物資拡大の限界に達したため、その方向を情報化へと転換し始めていることを示している。

➂こうした動向は、一つ前の人口波動、農業後波の末期に起こったルネサンスの再来、いわば「ル・ルネサンス」ともよぶべき時代を創り出す可能性がある。

人類史を振り返ると、人口波動が減少から増加へと転換する時代には、次のようなプロセスが考えられます。

❶人口減少、つまり人口容量の限界化とともに、新たな情報革命が進行する。

❷情報革命によって、次の波動を創り出す世界観、つまり時代識知の大転換が進む。

❸時代識知が変わると、新たな物質的技術もまた生み出される。

❹それに基づいて、次世代の人口容量が創り上げられる。

❺人口容量の拡大に対応して、次の人口波動が増加し始める。

以上のようなプロセスを一つ前の人口波動、つまり農業後波に当てはめてみると、「ルネサンス」が浮上してきます。

人口がピークに達して減少し始めた1300年代から、再び人口が増え始める1400年代にかけて、ヨーロッパ諸国では、活版印刷術の進展とともに、文化や知性の復興運動が始まっています。

この文芸復興、つまりルネサンスによって、「サイエンス」という時代識知が新たに育まれ、その応用によって、人口容量の拡大見通しが浸透してくるとともに、新たな人口波動、つまり工業現波が上昇を開始したのです。

文明の方向がモノ的拡大からコト的転換へ進むと、それによって新たな物的拡大の可能性が浮上してくる、ということです。

以上のようなルネサンスの仕組みは、14~15世紀に限ったことではありません。

人類の歴史をふりかえると、人口波動が減少から始動に移るプロセスには、何度も起こっているようです。

石器前波から石器後波へ、石器後波から農業前波へ・・・など、人口波動の初期段階からこのようなプロセスを振り返ってみましょう。