生成AIに代表される技術革新を、どのように社会進化に応用していくのか。この件については、さまざまな意見が飛び交っています。
前回述べたように、代表的な意見として、効果的利他主義(Effective
Altruism)と効果的加速主義(Effective Accelerationism)が、真っ向から対立しています。
前者の立場を敷衍すれば、AIやロボットなどの進歩で生産性が急拡大し、経済規模が拡大すれば、世界中の人々の最低限の生活費を賄うことが可能になるから、公平に分配する体制や制度の構築が求められる、ということでしょう。
一方、後者の立場は、技術革新の急進で経済規模が拡大すれば、自由市場がさらに進展し、資本主義をさらに加速させるから、その成果を応用すれば、さまざまな社会的課題を解決していくことができる、というものです。
どちらの意見に説得性があるのでしょうか。
AI関連企業の起業家や投資家などは、後者の支持者が多いようですが、よりマクロな展望を考察する研究者や技術者などでは、前者への関心が高いようです。
この差は、現在の世界が現在、どのような歴史的位置にあるのか、という視点の差異に起因するものと思われます。
これまで述べてきた人口波動の視点から見ると、世界の人口は間もなくピークに達し、その後は減少を続けると予測されています。科学技術文明によって生まれた人口容量が限界に達し、さまざまな人口抑制装置が作動するからです。
AIやロボットなどの進展で生産性が上がり、経済規模が維持できたとしても、環境問題の深刻化やグローバル化の限界などで、人口容量そのものは拡大できず、人口は減り続けます。
この視点に立てば、今後半世紀は従来の社会・経済構造もまた限界に達し、新たな方向を模索しなければならない時代、ル・ルネサンスへと移行していきます。
前回の人口減少期であった中世末期、ルネサンスの時代に生み出された活版印刷術が、宗教改革の素地を育み、産業革命の基盤となったように、情報化の進展は次の文明への橋渡しを意味しています。
生成AIに代表される高度情報化そのものが、文明の方向がすでに物質的拡大から情報的充実へ移行していることを示しているのです。
そうだとすれば、効果的利他主義には、その具現化方向について、より強力な提案が期待されている、と思われます。
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