人口減少時代には、効果的加速主義よりも、効果的利他主義の方が有効ではないか、と述べてきました。
それを実証するかのように、効果的利他主義の進展に対応して、学者・研究者や企業家の中には、その実践に挑戦する動きが広がっています。
主な実践組織の動向を、Wikipediaなどを参考にして拾い挙げてみましょう。
(Web上に多様な情報が流れていますので、必ずしも正確ではありせん。)
◆ギブウェル:GiveWell
2006年ころ、アメリカのヘッジファンドで働いていたホールデン・カーノフスキーとエリー・ハッセンフェルドが創設。 同じ1ドルでもっともよいことができる慈善団体を厳密に分析する組織。 最も推奨する慈善団体には、年間9000万ドル以上の個人寄付が集まっている。 例えばフェイスブックの共同創設者の1人が創設した財団GoodVentures(潜在資産140億ドル)は、GiveWellのパートナーであるOpen Philanthropy Projectの助言を受けて、毎年2億ドル以上の助成金を配布している。 |
◆ギビング・ワット・ウィー・キャン:Giving What We Can
2009年、イギリスのOxford大学の上級研究員トビー・オードや哲学准教授ウィリアム・マッカスキルらが、最も費用対効果の高い人に寄付することの重要性を強調し、会員が収入の少なくとも10%を最も費用対効果の高い慈善団体に寄付することを誓約する国際組織を立ち上げた。 2020年2月までに4,500人以上のメンバーに成長し、慈善団体に15億ドル以上を寄付している。 |
◆ギビング・プレッジ:Giving Pledge:寄付誓約宣言
2010年6月、アメリカのMicrosoft社会長、ビル・ゲイツ夫妻と投資家のウォーレン・バフェットが始めた寄付啓蒙活動で、資産家が生前もしくは死後に自身の資産の半分以上を慈善活動に寄付するという「プレッジ(誓約)」を宣言することで、富裕層の寄付行為を促そうとする運動。 1年足らずで、67人の米国のビリオネア(1,100億円以上の資産がある人)を仲間に引きいれ、慈善事業に彼らの資産の多くを寄附するよう約束させる事に成功。 2016年までに142人に増え、参加国も米国だけではなく、ヨーロッパ、大洋州、アジア、アフリカなどにも広がっている。 |
◆ワールドコイン:Worldcoin(WLD)
2019年にアメリカのOpenAI社最高経営責任者サム・アルトマンが、物理学者のアレックス・ブラニアらと開発を進める資産分散プロジェクト。 「オーブ(Orb)」と呼ばれるボール状のデバイスで網膜をスキャンし、各人それぞれの虹彩の特徴をデジタルコードに変換することで個人を識別する「World ID」を発行する。現在このスキャンは無料ででき、スキャンしたユーザーは現在無料の暗号資産「Worldcoin(WLD)」を受け取れる。「WLD」の配布でベーシックインカムの実現も計画されている。 2021年10月、このプロジェクトは2,500万ドルを調達し、半年以内にさらに1億ドルを調達、トークン(交付証券)の価値は2024年1月、34億ドルにまで上がっている。 |
以上のうち、GiveWell、Giving What We Can、Giving Pledgeの3つは、個人や資産家から慈善団体への寄贈を勧めるもので、個人層への直接的な分配をめざすものではありません。
4番目のWorldcoinは、個人層へのベーシックインカム配布をめざしており、その点では先進的と言えますが、財源は電子貨幣への投資に基づくもので、相互扶助というにはやや無理があります。
とすれば、すでに始まっている資産分散システムは、本格的なグローバル・レシプロシティーというには、かなり遠い形態ではないでしょうか。
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