2022年7月26日火曜日

人口容量をいかに維持するのか?・・・人減先進国・日本の課題

21世紀後半、世界中のほとんどの国で人口が減少に転じますから、積極的に対応する国家こそ「人減先進国」ということになります。

既に10年以上、人口減少を続けている日本は、その対応如何によっては、人減先進国となる資格を有しています。

そこで、日本の取り組むべき課題をあげてみると、前回述べたような幾つかのテーマが浮上してきます。

最初の課題は、人口容量をいかに維持していくか、という課題です。

超長期的な人口波動説から見ると、人口減少に対応した社会を創り出すには、これまで成長・拡大社会を担ってきた人口容量を、できるだけ維持していくことが求められます。

一つの人口波動の最終段階を創り出す対応であるからです。

現代日本でいえば、【人口容量の中身を考える!】で述べたような構成で、2010年前後に12800万人に達した人口容量をいかにして維持していくのか、という課題です。

当時は、この容量を、総人口の65%にあたる生産年齢人口(1564歳)で概ね担ってきました。この容量を、急激に減少していく人口で、今後も維持していけるのでしょうか。

それを確かめるため、生産年齢人口に相当する一人の人間が、容量の維持にどの程度関わっていかなければならないのか、を大まかに展望してみました。

今後の人口が最も低く推移する予測値を前提に、生産年齢に当たる一人に、どれだけ維持義務が期待されるかを展望してみると、下図のようになります。



人口容量18700万人2100年ころまで維持していく。

総人口生産年齢人口は、国立社会保障・人口問題研究所の予測値(2017年)の最低値とする。

③生産年齢該当者に期待される一人当たりの分担量は、2010年の1.58人分に始まり、2020年の1.73人分、2040年の2.18 人分、2050年の2.53人分2070年の3.42人分、2080年の4.06人分を経て、2100年の5.45人分に達する。

要するに、これからの日本が現在の人口容量を維持していくには、1564歳の人々はこれまでの23ほど関わっていかなければならない、ということです。

そんなことができるのでしょうか。大きな対策として、3つが考えられます。

❶生産年齢の範囲を変えて、1580まで上げていく。

ITやロボット技術等を活かし、分担推進力、つまり生産性を大幅に上げていく。

❸海外からの移民を増やし、該当者の数を増やす。

それぞれの可能性はどこまであるのでしょうか。

もしこれらが不可能、あるいは遅延するようであれば、4番目の対策として、

❹人口容量を徐々に落としつつ、国民全体の容量水準をできるだけ維持していく。

という方策も考えることが求められるでしょう。

2022年7月16日土曜日

「人減先進国」へ向かって!

21世紀後半には、欧米先進国はもとより、人口大国の中国インドでも、人口が減少していきます。そうなると、今後の世界をリードするのは、人口減少に積極的に対応する国家、つまり「人減先進国」ということになります。

これまでの人口増加・成長・拡大型社会を大きく超えて、新たに人口減少・飽和・濃密型社会を目指す国が、先進国の役割を担うということです。

となると、人減先進国として、日本が目ざすべき方向は、いかなるものになるのでしょうか。

日本という国の、今後取り組むべき課題を大まかに整理してみると、国内・国際の両面への対応が求められると思います。



❶国内の人減マイナス面への対応

人口増加を前提に構築されてきた社会構造を、人口減少に見合った構造に向けて、大胆に変換していくことが求められます。

経済的側面・・・労働力の減少や需要の縮小、それに伴う経済規模の縮小へ、どのように対応するのか。

社会保障面・・・年齢構成の逆ピラミッド化による年金制度や健康保険などの破綻を、いかに克服していくのか。

政治行政面・・・野放図に拡大していく政治制度や行政制度を、いかにして縮小対応に変えていくのか。

生活環境面・・・人口分布の偏差拡大や過疎地域の増加などに、柔軟に対応できる地域環境をいかに整備していくのか。

生活様式面・・・上記のように予測される、さまざまな不安に対し、果敢に対応できるような、新たな生活様式をいかに創造していくのか。


❷国際的な「ル・ルネサンス」への対応

人口減少対策が世界の各国に共通する課題になってきましたので、すでに【ポストコロナ・・・ル・ルネサンス(Re-Renaissance)が始まる!】以下で述べたように、次のような課題にも積極的に対応することが求められます。

社会的限界・・・グロ―バル化、民主主義制、市場経済制の限界を確認したうえで、それぞれをいかに改良していくのか。

社会的革新・・・第5次情報化【参考:トイレットペーパーはなぜ記号化するのか?】を活用して、新たなルネサンス、つまり「ル・ルネサンス」をいかに創り出すのか。

統合型科学技術の振興・・・ル・ルネサンスによる識知転換【参考:「時代識知」の要件を考える!】を基礎にして、統合型エネルギー化をいかに推進していくのか。


以上に示したような、国内的課題と国際的課題の両面に配慮すると、人減先進国としての日本の取り組むべき課題は、次のように整理できます。

●人減先進国・日本の課題

経済・・・国際分業と自給自足のバランスを回復し、国内市場でも過剰な資本集中や所得の不均衡分配などを是正していく。

社会・・・福祉国家への過剰な期待を緩和し、家政・互酬・福祉的再分配・市場交換の制度的バランスを目ざす(参考:【.ポランニーを人口波動で読み直す!】。

政治・・・形骸化した民主主義を再構築し、人口減少に見合った縮小型政治・行政制度の構築をめざす。

科学技術・・・現代社会を支えている5次情報化【参考:トイレットペーパーはなぜ記号化するのか?】の成果を積極的に活用して、統合型の科学技術【参考:コロナ禍が暴露した近代社会の限界】へと接近し、現在の分散型エネルギーの統合化をめざす。

生活・・・人口増加に支えられた成長・拡大型のライフスタイルを止揚し、人口減少に見合った飽和・濃密型ライフスタイル【参考:コンデンシング・ライフへ向かって!】を創造するとともに、その成果を地域共同体の再建に広げていく。

大まかに述べれば、以上のような方向こそ、人減先進国・日本に期待されている対応課題といえるでしょう。

2022年7月4日月曜日

世界の主要国は人口減少へ!

世界人口の急減が注目される中で、人口大国を誇る国々にも減少が迫っています。

国際連合2019年予測の低位値に基づき、1億人以上の主要国について、それぞれの人口動向を眺めて見ましょう。

グラフで眺めてみると、各国のピークは次のようなものです。

主要国の人口ピーク

国名

ピーク年

人口:百万人

インド

2042

1503

中国

2024

1447

アメリカ

2047

349

パキスタン

2065

320

インドネシア

2045

302

エチオピア

2079

216

エジプト

2078

161

ブラジル

2031

219

バングラディシュ

2039

177

ロシア

2020

146

日本

2009

129

データ出所:U.N.人口予測2019.低位値

これを見ると、次のような傾向が読み取れます。

10億人以上を誇る国々では、中国2024年、インド2042年と、ともに2050年より前にピークを迎えます。

5億人以下の国々でも、ロシア2020年、ブラジル2031年、バングラディシュ2039年、インドネシア2045年、アメリカ2047年と、各大陸の主要国が2050年より前にピークとなります。

2050年以降にピークを迎える国は、パキスタン2065年、エジプト2078年、エチオピア2079年と、アジア、アフリカの国々です。

以上のように、現代の世界をリードする国々もまた、今後30年ほどの間に人口減少国となっていきます。

とすれば、人口減少をなんとかせき止め、人口維持国人口増加国を目指すというのは、ほとんど的外れの方向ではないでしょうか。

それよりもこれから30年、2050年を過ぎるころには、世界の主要国はいずれも人口減少への対応を迫られることになります。

これまでの近代国家は、人口の増加を前提に、消費の拡大と生産の拡大、税収の増加と社会福祉の拡大、居住地の拡大とインフラの拡充などを目標として、それぞれの社会・経済政策を進めてきましたが、もはやその時代は終わったのです。

今後は人口の減少を前提に、消費の縮小と生産の適合、税収の見直しと社会福祉の変革、居住地の再配とインフラの適合化などを、新たな国家目標として、社会・経済政策を進めていくべき時代になったのです。

歴史を振り返れば、人口の推移には、増える時代と減る時代が何度かありました。その都度、各国の人々はそれぞれに対応する社会を造り上げ、新たな時代への橋渡しをしてきました。人口変化にいち早く対応する国こそ、次代を切り拓く先進国なのです。

とすれば、1921世紀前半の世界をリードしてきた人口増加・成長・拡大型国家、アメリカ中国はもとより、人口維持をめざす福祉国家、イギリススウェーデンなども、このままの対応状況では、もはや先進国とはいえなくなるでしょう。

21世紀後半の世界をリードするのは、人口減少に積極的に対応する国家、つまり「人減対応先進国」という、新たな先進国なのです。