言語階層で示した6つの言語、つまり深層言語・象徴言語・表象言語・交信言語・思考言語・理知言語のうち、一番後の「理知言語」について考えていきます。
前回述べたように、理知言語とは、「身分け」「識分け」「言分け」が捉えた事象を、「網分け」次元の“理知(ことわり)”によって精細に捉え直し、音声や記号などの創作言語で表現した言葉です。
思考言語から理知言語への進展は、「網分け」行動の進化によるものです。思考言語段階での「網分け」はいわば慣習的な行動によるものでしたが、理知言語段階になると、極めて人工的、意図的な「網分け」となって、環境世界をさらに精密に仕分けた「アミ界(理知界)」を創り出します。
アミ界を創り出した「理知言語」は、いつ頃、どのようにして生まれてきたのでしょうか。
人類史の上では、BC5~BC3世紀に古代ギリシャで、数式や幾何学的関係を表す記号の萌芽が見られましたが、その後はほとんど進展がありませんでした。
12~14世紀になると、ラテン語を用いた数学文献の中に、ようやく初歩的な代数記号や省略記法が散見されるようになり、15世紀には次第に拡大していきます。
16世紀に入るといっそう本格化し、フランスの数学者、F.ビエトが既知数の記号化を行って、記号代数の原理と方法を確立しました。続く17世紀には、フランスの哲学・数学者、R.デカルトが解析学的記号を、イングランドの自然哲学者、I.ニュートンが微分記号を、ドイツの数学者、G.ライプニッツが微積分記号や普遍記号法などを、それぞれ創り出しています。
18世紀に入ると、スイスの数学者、L.オイラーが虚数単位 i や自然対数の底 e を定義し、19世紀には、1814年にスウェーデンの化学者、J.J.ベルセリウスがラテン語などから1文字または2文字を利用した元素記号を考案しました。また1860年代にイギリスの理論物理学者、J.C.マクスウェルも電磁気学の方程式で様々な記号を使用しました。
その後、20世紀には、ドイツの物理学者、A.アインシュタインも相対性理論や量子力学において、新たな科学記号が次々と導入しています。
以上のように、およそ600年前から人類が創造し始めた理知言語によって、その思考行動はいっそう深まり、専門的知識人や特定社会集団などの“理”縁共同体が、高度な思考を推進するようになりました。
理知言語の浸透で、人類共同体の内部に“理知(ことわり)”観念が集積されるとともに、世界認識の方法にも「サイエンス(科学)」という「時代識知」が広がっていきます。

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