2025年12月27日土曜日

言語生成・新仮説Ⅷ・・・音声・文字の進展で思考言語が・・・

表象言語に続き、思考言語の成立過程を考えています。

思考言語とは、【言語はどのように進化してきたのか?】で述べたように、共同体との交流を通じて個人の中に育まれた「表象言語(自然言語)」を、特定の音声や記号に変えて、自らの思考や集団内の合意形成などに使用する言語です。

この言葉によって、人類は「言分け」による「コト界(言知界)」から、「網分け」による「アミ界(理知界)」への移行を促され、集団的な思考を行うようになります。

「網分け」とは、言語6階層論へ進展する!で述べたように、「言分け」による「分節」によって生み出された表象言語や表象記号に対し、さらに特定の意図による「網」をかけ、抽象化した言葉や記号を創り出すことです。

このような思考言語はなぜ生まれたのでしょうか。

表象言語が共同体の中で広く共有されるにつれて、言葉の意味機能(セマンティクス)に加え、言葉のつなぎ方、つまり文法機能(シンタックス)が強まってきます。
すると、単語そのものにも具象的な意味だけでなく、抽象的な意味を持つものが生まれます。
これこそが「思考言語」です。表象言語の捉えた対象に「網」をかけ、網の目を示す言葉を作り出したのです。

思考言語はいつ頃、どのようにして生まれてきたのでしょうか。

音声表現の変化

音声表現では、古代ギリシアの紀元前700~400年頃に、“詩”的な言葉で「言分け」状況を表現する「語り部」が現れていました。タレス、ヘラクレイトス、ピタゴラス、プロタゴラスといった人たちです。

彼らの言葉によって、神話ではさまざまな神々として捉えられていた諸物にも、構造や秩序といったヒエラルキーが生まれてきます。中核となる神や彼に従う神々の行動などを把握する行為です。

これにより、ミソロジー(神話)からリリジョン(宗教)への移行が進むきっかけが作られました。

文字表現の変化

西欧では、文字表現においてアルファベットが成立し、思考を表現するようになります。

文字表現の発祥は紀元前4000年紀後半と想定されていますが、紀元前1100年頃になると、アルファベットが生まれてきます。

エジプト北東端のシナイ半島のセム語族が使っていた古代エジプトの象形文字(ヒエログリフ)を、紀元前1100年頃からフェニキア人が発展させ、アルファベットの原型が創られました。

この文字体系を紀元前400年頃までにギリシア人が24文字の構成に変え、紀元前後にローマ帝国がラテン語として26文字に改良して、現在のアルファベットを生み出しました。

アルファベットによって、キリスト教は313年に国教化されています。

インドでも、紀元前400年頃に生まれたブラーフミー文字が、500年前後にシッダマートリカー文字に進化して中国に伝わり、「悉曇文字(梵字)」となって、仏教・密教用に使われています。

このような文字表現の進化もまた、リリジョンの形成を促したもの思われます。

音声表現や文字表現が急速に変わってくると、人類の表現行動そのものも、表象言語から思考言語へと進化していきます。

思考言語の浸透によって、共同体の内部での合意形成が進むとともに、世界認識の方法にも「リリジョン(宗教)」という「時代識知」が広がっていきます。

リリジョンによって集約農業という文明が生み出され、4つめの人口波動「農業後波」が始動しました(思考言語とリリジョンが農業後波を創った!)。

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