2025年12月2日火曜日

言語生成・新仮説Ⅵ・・・音声・文字・形象・表号の接近で象徴言語が・・・

深層言語に続き、象徴言語の成立過程を考えています。

象徴言語】とは、【深層言語】が捉えた対象を、明確に「言分け」する前の段階で、音声、前文字、動作、形象、表号などの表現で朧気に「識知」するものです。

これらのうち、形象表現、音声表現、文字表現などの進化が、象徴言語の発生に深く関わっている、と思われます。

音声表現でいえば、象徴化の始まりは、感覚が捉えた音響をよく似た音声で表現する方法、いわゆる「オノマトペ(擬声語)」だったのではないでしょうか。

オノマトペは、現生人類、ホモ・サピエンスが複雑な言語を獲得する、最も初期の時期から存在していた、と推定されています。古代ギリシアの哲学者、プラトンも「名前とは、模倣される対象の音声による模造品である」(対話篇『クラテュロス』)と述べていますが、これは深層言語の段階ではなく、まさに象徴言語についての論考でしょう。

音声表現の始まりについては、13.5万年以前説や10~5万年前説が唱えられており、洞窟壁画の始まった5万年前ころには、一層進歩していたはずです。視覚が捉えた対象を形象で表現する方法と、聴覚が捉えた対象を音声で表現する方法は、互いに連動していると思うからです。

形象表現の始まりを示す洞窟絵画では、インドネシアのスラウェシ島南西部で発掘されたものが、BC5万年以前と推定されています。3人の人間のような形象がイノシシと関わっている様子が描かれており、視覚が捉えた現象をそのままイメージ化したものといえるでしょう(ARTnews JAPAN )。

こうしてBC5万年頃から進展し始めた形象表現は、オノマトペを一層進化させました。

擬声語(わんわん,こけこっこー,おぎゃー,げらげら,ぺちゃくちゃ)から擬音語(ざあざあ,がちゃん,ごろごろ,ばたーん,どんどん)といった単純模擬段階から、擬態語(きらきら,つるつる,さらっと,ぐちゃぐちゃ,どんより)や擬容語(うろうろ,ふらり,ぐんぐん,ばたばた,のろのろ,ぼうっと)などの象徴模擬段階へと進んだのです。

さらにBC8千年頃と推定されている人型石器が、ヨルダン西部のザルカ渓谷にある「カレイシン遺跡」で発見されています。意図的に人型がデザインされており、道具として使った形跡が一切ないことも判明しています(Flint ‘figurines’ from the Early Neolithic site of Kharaysin, JordanAntiquityJuly 2020

形象表現がここまで来ると、オノマトペとの融合はさらに進み、文字表現の発生を促すことになります。

南東ヨーロッパの先史時代遺物に書かれている「古ヨーロッパ文字(ヴィンチャ文字)」はBC6千年ころの単純なシンボルに始まり、BC5千年代を通して徐々に複雑さを増し文章の印象を与えるまでに進化しています(Wikipedia)。

音声表現と形象表現の融合によって、象徴段階の「文字」が初めて生み出された、と推測されます。

以上のように見てくると、深層言語から象徴言語への移行は、BC10万年ころから始まり、BC6千年ころから本格的な段階へ至ったものと思われます。

象徴言語の進展に伴って、世界把握の方法も【アニミズム】を生み出し、石器という文明の創造によって、石器後波という人口波動を生み出したものと推定されます。

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